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東日本旅客鉄道・東海旅客鉄道の鉄道路線 ウィキペディアから
中央本線(ちゅうおうほんせん)は、東京都千代田区の東京駅から新宿区の新宿駅、長野県塩尻市の塩尻駅を経由して、愛知県名古屋市中村区の名古屋駅までを結ぶ鉄道路線(幹線)である。
中央本線 | |||
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基本情報 | |||
通称 |
中央線 中央東線(東京駅 - 塩尻駅間) 辰野支線(岡谷駅 - 辰野駅 - 塩尻駅) 中央西線(塩尻駅 - 名古屋駅間) | ||
国 | 日本 | ||
所在地 | 東京都、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、愛知県 | ||
種類 | 普通鉄道(在来線・幹線) | ||
起点 | 神田駅・新宿駅・岡谷駅[1][注釈 1] | ||
終点 | 代々木駅[1]・名古屋駅[2]・塩尻駅[1][注釈 2] | ||
駅数 | 112駅 | ||
電報略号 | チウホセ | ||
路線記号 |
(東京駅 - 大月駅間〈御茶ノ水駅 - 三鷹駅間は急行線〉) (御茶ノ水駅 - 三鷹駅間の緩行線) (大月駅 - 小淵沢駅間) (塩尻駅 - 名古屋駅間) | ||
開業 | 1889年4月11日[3] | ||
全通 | 1911年5月1日[4] | ||
所有者 |
東日本旅客鉄道 (東京駅 - 塩尻駅間) 東海旅客鉄道 (塩尻駅 - 名古屋駅間) | ||
運営者 |
東日本旅客鉄道 東海旅客鉄道 日本貨物鉄道 | ||
使用車両 | 使用車両を参照 | ||
路線諸元 | |||
路線距離 |
8.3 km(神田駅 - 代々木駅間)[1] 386.6 km(新宿駅 - 名古屋駅間)[1][2][注釈 3] 27.7 km(岡谷駅 - 辰野駅 - 塩尻駅間) | ||
軌間 | 1,067 mm | ||
線路数 | 複々線、複線、単線(詳細は路線データ参照) | ||
電化方式 | 直流1,500 V 架空電車線方式 | ||
最大勾配 | 28 ‰ | ||
閉塞方式 | 自動閉塞式 | ||
保安装置 | 路線データ参照 | ||
最高速度 | 130 km/h | ||
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このうち東京駅 - 塩尻駅間は東日本旅客鉄道(JR東日本)[1]、塩尻駅 - 名古屋駅間は東海旅客鉄道(JR東海)の管轄[2]となっている[注釈 4]。なお、国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』上では、本路線のうち東京駅 - 神田駅の間は重複する東北本線の一部[5]とされ、同様に代々木駅 - 新宿駅の間は重複する山手線の一部と[6]されている。また、区間や系統別に「中央東線」「中央西線」「中央線快速」など、様々な呼称がある(詳細は後述)。
地域ごとの詳細については、以下の記事も参照。
中央本線は、東京都心から西の多摩へ延びて山梨県へ入り、長野県中南部および南西部(中信と南信)と岐阜県東南部(東濃)を経由して、愛知県の名古屋までを結ぶ鉄道路線であり、東京都と山梨県や長野県、あるいは長野県と中京圏・京阪神を結ぶ重要な輸送ルートになっている。東京・名古屋の両都市から沿線の主要駅や信州地区を結ぶ特急列車が頻繁に運転されているほか、両都市圏では都心部への通勤輸送の役割も担う。また、日本貨物鉄道(JR貨物)による貨物列車も運転されている。
岡谷駅 - 塩尻駅間は塩尻峠から大城山にかけての山地を避け、辰野駅を経由する約28 kmの迂回ルートで開通したが、1983年(昭和58年)7月に全長約6 kmの塩嶺トンネルを抜けるみどり湖駅経由の短絡線が開通し、同駅間が約12 kmに短縮されたことで、大幅な時間短縮が実現した。どちらの線区も中央本線に属し、旧来の区間(辰野駅経由)は支線となっている。この支線は「辰野支線」または「辰野線」、あるいはみどり湖駅・塩嶺トンネル経由を「新線」と呼ぶのに対して「旧線」などと呼ばれる。また、この路線を伊藤大八という代議士が誘致したという話から大八廻りとも呼ばれた。飯田線の大半の列車がこの支線のうち岡谷駅 - 辰野駅間に乗り入れている(「運行形態」の節を参照)。
本路線の線路は全線独立しているが、国鉄分割民営化時に当時の運輸省に提出された事業基本計画、および国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』では、先行敷設路線との営業距離の重複計上を行わないようにするため、東京方面の東京駅 - 神田駅間は東北本線[5]、代々木駅 - 新宿駅間は山手線[6]となっている[注釈 5]が、名古屋方面では金山駅に東海道本線のホームが設けられたことで、金山駅 - 名古屋駅間[注釈 6]は東海道本線と重複計上されている[7]。
本路線は、同じように首都圏と中京圏を結ぶ東海道本線や東海道新幹線が太平洋沿岸を走るのと比較して山間部を走る路線であり、勾配もきつく距離も長いが、1964年(昭和39年)10月の東海道新幹線開業前は東海道本線のバイパスとしても利用されており、全線を走行する列車も存在していた。しかし、東海道新幹線開業後は、全線を通しての通過輸送はほとんど存在しなくなり、1982年(昭和57年)5月の塩尻駅位置移転以降、東京方面および名古屋方面どちらの列車も、大半が塩尻駅から篠ノ井線の松本駅方面に直通しているため、塩尻駅を跨いで東京方面と名古屋方面を直通する旅客列車は基本的にはなく、平時において前述のようなバイパス機能を果していない。ただし、貨物列車や団体臨時列車などの一部の列車は旧塩尻駅構内敷地(いわゆる塩尻大門。塩尻駅構内扱い)の両方面間直通用の単線線路(連絡線)を通り、塩尻駅のホームを経由せず塩尻駅自体を通過する形で両方面間を直通している(詳細は後述)。
なお、塩尻駅 - 名古屋駅間については、国鉄時代から、列車番号の付け方と駅構内の場内・出発信号機に記されている「上下」の標示が路線本来の上り・下りの方向とは逆となっており、名古屋駅から塩尻駅へ至る方向(距離標の数字が小さくなる方向)を下りとして列車番号には奇数を付け、信号機には「下」と標示している。このため、中央本線は東京駅 - 塩尻駅間も塩尻駅 - 名古屋駅間も塩尻駅・松本駅方面が下り列車であり、東京駅 - 塩尻駅間は原則通り東京駅方面が上り列車だが、塩尻駅 - 名古屋駅間は逆に名古屋駅方面が上り列車となる。
本路線は「中央線」と「中央本線」の2通りの名称で呼ばれており、国土交通省などによる公文書や『鉄道要覧』では「中央線」の名称が使用されることが多いが、JR各社を始めとする民間では、両方の名称が混用されている。また、松本駅に連絡する篠ノ井線との連絡駅であり、JR東日本とJR東海の境界駅でもある塩尻駅を境に東京駅 - 塩尻駅間を中央東線(ちゅうおうとうせん)、塩尻駅 - 名古屋駅間を中央西線(ちゅうおうさいせん)と呼び、区別することがある。
この複雑な使い分けの経緯は、1909年(明治42年)10月の『明治42年鉄道院告示第54号』によって公布された国有鉄道線路名称[8][9]で、鉄道院に所属する鉄道路線は23部72路線に区分され、本路線は当時昌平橋駅 - 篠ノ井駅間を「中央東線」・名古屋駅 - 野尻駅間を「中央西線」として制定、またそれぞれを「中央東線の部」・「中央西線の部」として制定した[9][10](中央東線については歴史の節の「甲武鉄道国有化以降」および「塩尻駅 - 宮ノ越駅間」の節、中央西線は同節「木曽福島駅 - 名古屋駅間」を参照)。その後、1911年(明治44年)5月宮ノ越駅 - 木曽福島駅間の延伸開業に伴い、塩尻駅 - 篠ノ井駅間を篠ノ井線として分離、中央東線と中央西線は中央本線に統合され、中央東線の部および中央西線の部は廃止となり、中央本線と篠ノ井線は追加創設された「中央線の部」(略称:中央線)に組み込まれた[11][12]。
この「中央線」という名称は、本路線(辰野支線も含む)とその系統路線(青梅線・五日市線など)を指す総称として使用され、国鉄分割民営化以降にJR各社に制定された「JR線路名称公告」においても、その扱いが引き継がれた。また、鉄道省(→日本国有鉄道)時代から本路線の東京近郊を走る通勤形電車(省電・国電)も「中央線」と呼ばれていた。しかし、民営化の際に策定された『日本国有鉄道の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画』(JR事業基本計画)[13] において、本路線の名称が「中央線」とされたため、従来は中央本線と呼ばれていた本路線に対しても、公文書を中心にこの名称が使われるようになった。また、前述の線路名称制定時の名残で中央東線は東側(東京駅 - 塩尻駅間)を、中央西線は西側(塩尻駅 - 名古屋駅間)を指す通称名となった。
本路線の東京近郊を走る通勤形電車による運行系統については、各駅停車は「中央・総武線」(あるいは総武線)、快速電車は「中央線」と呼ばれ、「中央本線」とは呼ばれていない。ただし、これは路線の名称ではなく列車の名称として用いられているもので、特急形車両や近郊形車両による列車については同じ区間を走っていても、中央本線と呼ばれることがある。実例として、高尾駅・八王子駅・新宿駅では、普通列車および特急列車を中央本線、快速電車を中央線と明確に区別している。
この区間は当初、中央東線として延伸開業したが、中央本線となった全線開通以降は、この区間を含めて塩尻駅 - 名古屋駅間が中央西線と通称されることになる。
輸送力の増強を計る目的で当初万世橋駅 - 中野駅の複々線化計画が存在しており、関東大震災後に利用度が更に増加したため、復興計画の一環として御茶ノ水駅 - 中野駅で複々線が建設され、1933年に完成した。また、一部時間帯に急行電車(現在の快速電車)を運行させた。また、この計画と同時に総武本線両国駅 - 御茶ノ水駅間についても高架鉄道として建設され、この結果、東京始発のものを一部の時間帯は急行電車として運転することとなり、各駅に停車する列車は一部の時間帯は総武本線に乗り入れることとなった。
第二次世界大戦後、俗に言う「通勤五方面作戦」で中野駅以西の輸送力の増強を計ることになり、1966年に中野駅 - 荻窪駅間の複々線化が完成し、中央緩行線電車と営団地下鉄東西線乗り入れの列車がこの区間に運行されている。1969年には複々線区間が三鷹駅まで延長された。
1999年3月より三鷹駅 - 立川駅間の連続立体交差化に着手している。この工事は、既存の複線の路線を主に高架にすることで道路との立体交差を実現し、踏切を解消することが目的であるため、この工事が完成しても複々線にはならない。本来は高架敷地捻出のために設置した仮線部分が複々線用地であったが、用地取得を行っている1980年代に国民の環境意識が大きく変化し、日照権や騒音問題に関する環境基準が著しく厳しくなった。このため、高架を建設する際には一定幅の緩衝帯を設置しなければならなくなり、中央線高架の完成後も、仮線跡は側道や緑地帯に転用される見通しである。三鷹駅 - 国分寺駅間が2009年12月、国分寺駅 - 立川駅間が2010年11月に完成した。
現在は支線となっている辰野駅経由のルートは、塩嶺トンネルの開業以前は本線であり、「大八廻り」と呼ばれていた。この区間については以下のようなエピソードがある。
中央本線の敷設時、諏訪付近から名古屋までの路線を木曾谷を通すか伊那谷を通すかで論争となり、結局木曾谷側が勝ってこちらに線路を敷くことになった。しかし、これで納得しなかった伊那谷出身の代議士で鉄道局長の伊藤大八が、下諏訪から塩尻峠をトンネルで抜けて塩尻へ向かう案を撤回させて、伊那谷の入口である辰野を経由させるようにした。そのため、この辰野を通るための迂回部分は、伊藤の名前を取って「大八廻り」とも呼ばれることとなった。
ただし、当時の技術力では塩尻峠を貫く長いトンネルを掘れなかったので、塩尻峠を避けるために天竜川や横川川に沿って迂回させただけであるという説もある。実際、この区間にトンネルを開削すると約6 kmの長さになり、当時日本一の長さだった同線の笹子トンネル(長さ4,656 m)を凌ぐものになる上、糸魚川静岡構造線を跨ぐことから地盤も悪く、難工事になることは想像に難くなかった。この区間にトンネルが開通するのは、1983年(昭和58年)の塩嶺トンネル(総延長5,994 m)の完成を待つこととなる。
この路線は1911年5月1日に全通(東京駅乗り入れは1919年3月1日)して以降、東京駅 - 塩尻駅 - 名古屋駅間を通しで運行された列車は、東京側の列車発車駅であった飯田町駅 - 名古屋駅間を1938年まで運行された夜行普通列車701・702列車(列車番号は何度か変更され、末期は813 - 410列車・423 - 324列車と塩尻駅でそれが変わり、さらに名古屋行きは甲府始発で、いずれも松本・長野方面の列車と塩尻駅まで併結していた)が唯一の例とされている。
ただし、東京側からの東西直通運転自体は、第二次世界大戦期間中の一時中断(1938年 - 1945年6月)を経て始発駅を飯田町駅から新宿駅に変更して1956年ごろまで続いた。また、1954年から1961年には準急「きそ」の一部の車両が名古屋駅 - 新宿駅間を直通運転していた。だが、1964年の東海道新幹線開業以降は、この路線を経由して東名間を直通する列車は臨時列車も含めて全く運転されなくなった。
その後、1965年ごろから1974年ごろの毎年夏季に名古屋駅 - 茅野駅もしくは小淵沢駅間(一部の列車は小海線や飯田線に直通)で東・西線直通運転を実施しており、このころから途中の観光地への直通を主眼に置くようになる。
1982年5月17日に塩尻駅の改修を行い、東京方向と名古屋方向と直通する形から、東京・名古屋方向と篠ノ井線方向へ直通する形となった。その後は、貨物・団体専用列車を除き東西直通運転される定期列車は存在しない。なお、東西直通運転を行った臨時列車は以下の通り。
下記各項目を参照のこと。
車両形式・系列は特記なければ電車。
中央本線として全線を通して運行する列車は臨時列車のみである。「中央東・西線直通列車」の節を参照。
特急「あずさ」が、新宿駅(ほか千葉駅、東京駅始発の「あずさ」が1本ずつある)を起点に塩尻駅から篠ノ井線に乗り入れ、松本駅や、大糸線白馬駅・南小谷駅まで運転されている(土・休日や多客期には増発される。上り「あずさ」には東京・千葉行きがある)ほか、これを補完する形で新宿駅(一部は東京駅)からの特急「かいじ」が途中の甲府駅(一部は竜王駅)まで運転されている。このほか、速達タイプの特急「スーパーあずさ」が運転されていたが、2019年3月16日のダイヤ改正で「あずさ」に統一され、使用車両が「あずさ」「かいじ」の全列車ともE353系に統一された[78]。またこの改正で、新宿駅 - 富士急行線河口湖駅間直通の特急「富士回遊」が新設された[78]。首都圏で朝と夕夜間の通勤時間帯に運転されていた東京駅 - 八王子駅間の「中央ライナー」、東京駅 - 青梅駅間の「青梅ライナー」にそれぞれ代わる特急として、「はちおうじ」「おうめ」が設定された[78]。
また、長野県内の広域輸送として、信越本線長野駅と飯田線飯田駅、または天竜峡駅とを結ぶ快速「みすず」が、みどり湖駅を経由して塩尻駅 - 辰野駅間(途中の岡谷駅で方向転換)で運転されている。
名古屋駅から篠ノ井線を経由して、信越本線長野駅まで特急「しなの」が運転されている。また、臨時「しなの」の一部は大糸線白馬駅まで乗り入れる列車もある。2020年までは名古屋駅 - 中津川駅間運行の定期列車の延長で塩尻駅まで快速「ナイスホリデー木曽路」が運転されていた。また、平日に「ホームライナー瑞浪」が2往復運転されている。
また、主な臨時列車として、以下の列車がある。
本節では、「JR東日本管内」と「JR東海管内」の区間毎の輸送形態を記述する。
東京都市圏輸送区間であり、通勤電車が高頻度で運転されている。御茶ノ水駅 - 三鷹駅間は複々線であり、緩急分離運転が行われている。線路は「緩行線」「急行線」と呼ばれ、緩行線を各駅停車の電車(中央・総武緩行線、旅客案内上は「中央・総武線各駅停車」)が、急行線を快速電車(中央線快速電車)が走行する。
各駅停車は、御茶ノ水駅から総武本線の緩行線に乗り入れ、千葉駅まで相互直通運転を行っている。中野駅 - 三鷹駅間では、東京メトロ東西線との相互直通運転も実施されている。
快速電車は、東京駅から高尾駅までが旧来からの運転区間であるが、都市圏の拡大により大月駅まで運転する本数が増加した。さらに一部は、大月駅から富士山麓電気鉄道富士急行線(大月線・河口湖線)に乗り入れ、河口湖駅まで直通運転を行っている。また、立川駅からは青梅線青梅駅まで直通運転を行っている。かつては八高線高麗川駅・五日市線武蔵五日市駅・青梅線青梅駅以西奥多摩駅方面へも直通運転を行っていたが、八高線への直通運転は2022年3月のダイヤ改正で廃止され[JR東 14]、五日市線への直通運転と青梅線青梅駅以西奥多摩駅方面への直通運転も2023年3月のダイヤ改正で廃止された。
なお、2020年3月14日のダイヤ改正において、緩行線各駅へのホームドア設置に伴い、東京駅を発着する列車は全て快速以上の優等列車のみとなり、各駅停車は終日、千葉駅 - 御茶ノ水駅 - 三鷹駅間のみの運転となった。これにより、早朝と深夜の各駅停車の東京駅発着での運転や、総武本線との直通運転で一部運行されていた武蔵小金井駅・国分寺駅・立川駅発着の列車は廃止された[JR東 15][JR東 16][JR東 17]。
中距離列車を中心に運転される区間である。飯田線直通の「みすず」の一部や朝の大糸線からの直通列車を除き、全列車が普通列車で運転区間内の全駅に停車する。高尾駅(一部立川駅・豊田駅・八王子駅)から甲府駅を経て塩尻駅・篠ノ井線松本駅まで一体的に運転される。甲府・小淵沢・富士見発や飯田線直通の列車の中には松本駅からさらに篠ノ井線を進み、信越本線長野駅まで運転される列車や、大糸線と直通運転する列車もある。岡谷駅 - 塩尻駅間は先述のとおり原則的に本線(みどり湖駅)を経由して運転されており、支線区間(後述)とは半ば分断されている。支線区間へは、飯田線への直通列車(茅野・上諏訪・岡谷・塩尻・長野発)と一部の辰野駅経由の列車のみが直通運転する。
立川駅・高尾駅発着列車は6両編成が基本であるが、山梨・長野県内で完結する列車については3両編成やE127系2両編成(主に篠ノ井線松本方面への直通)の運用もある。この区間で使用されていた115系は冬季のみドアが駅停車時に乗客自身が開閉できる半自動になった(厳密には、高尾駅 - 小淵沢駅間は特急列車の待ち合わせなど長時間停車する場合のみ半自動とし、小淵沢駅 - 塩尻駅間はドア扱いが半自動であった)。211系・E127系・快速電車用のE233系のドア扱いは通年半自動である。1時間あたりの運転本数は高尾駅 - 大月駅では2 - 4本、大月駅 - 甲府駅 - 小淵沢駅間では1 - 4本、小淵沢駅 - 塩尻駅間では飯田線直通列車を除いて概ね1本である。
当区間の中距離列車とは、いわゆる旧形国電で運行されていた急行電車(現・快速)の運行上の終点である高尾駅を越える客車列車で、のちに70系電車が充当された(のちに115系電車、2014年からは211系電車を使用)。新宿駅始発の定期列車であった普通列車の停車駅は高尾駅までは立川駅と八王子駅のみであり、当時の急行電車(のちの快速・特別快速)より停車駅が少なかった。1985年(昭和60年)3月14日のダイヤ改正で日中の新宿発着列車がなくなり、朝と夕方以降のみとなった[79]。1986年(昭和61年)11月1日に三鷹駅にも停車するようになり、のちに立川駅発着の列車は西八王子駅(1996年〈平成8年〉12月に日野駅・豊田駅も追加)に停車をするようになった。その後、快速の201系電車による大月駅までの定期列車乗り入れと、富士急行線河口湖駅への乗り入れ拡大と引き換えに、徐々に新宿駅発着の普通の本数が削減され、最終的に残っていた朝晩の下り3本、上り1本の新宿発着の列車が1993年(平成5年)12月1日のダイヤ改正で廃止され、新宿駅 - 立川駅間を走行する定期の中距離列車は姿を消し、再び立川駅・高尾駅発着のみとなった。その名残で現在でもJTBなどの旅客向け時刻表における「中央本線」のページの新宿駅 - 立川駅間では、特急だけではなく、高尾駅以西に直通する快速も三鷹駅のみ時刻が掲載されている。なお、2020年3月13日以前には、夜間大月駅発の中央線快速電車の一部に、中央緩行線直通各駅停車東京駅行きが存在していた。
また、主な過去の立川以東に直通する臨時の中距離列車として、以下の列車が運転されていた。
支線区間では辰野駅で運行系統がほとんど分断されており、全区間通して運転される定期列車はわずかしか設定されていないが、地元住民には必要な生活の足となっている。
岡谷駅 - 辰野駅間を走る列車の大半は飯田線に直通する。この区間はJR東日本の管轄であるが、飯田線はJR東海の管轄のため、飯田線直通列車は辰野駅で乗務員交代が行われる。一部は岡谷駅から茅野駅や上諏訪駅まで直通する。みどり湖駅を経由して松本駅・長野駅に直通する列車もある(飯田線直通列車には、小野駅経由の松本方面発着列車はない)。また、一部列車ではJR東海の313系によるワンマン運転が行われる。1時間に1本程度の運転である。
辰野駅 - 塩尻駅間は、中央本線の中では優等列車も含めた運転本数が最も少ない区間であり、普通列車が1 - 3時間に1本程度運転されるのみである。2024年3月16日のダイヤ改正で辰野駅 - 塩尻駅間の日中の運行が大幅に減便された。
地元では「辰野線」と呼称され、この区間外から乗り入れる列車(主に篠ノ井線直通列車)は「小野経由」と案内されることが多い(前述の通り、塩尻駅からみどり湖駅及び岡谷駅経由で辰野駅に至る列車もある)。ほとんどの列車がこの区間のみの折り返し運転となっているが、朝夕は松本駅または岡谷駅まで直通する列車が設定されている。全列車がE127系によるワンマン運転である。
なお、辰野駅以遠(宮木方面)と塩尻駅以遠(広丘または洗馬方面)の相互発着となる普通乗車券・回数乗車券は選択乗車が可能であり、小野駅経由の乗車券でも川岸駅・みどり湖駅経由で乗車することが出来る(逆も可能。ただしいずれの場合も券面表示区間以外での途中下車は不可)[81]。また、岡谷駅以遠(下諏訪方面)から辰野支線を経由し、塩尻駅以遠(広丘方面または洗馬方面)に直通する急行列車の料金および特別車両料金は辰野支線内で途中下車しない場合、みどり湖駅経由で料金計算される。また、運賃および乗車券の券面の経由表示もみどり湖駅経由となる場合がある[注釈 10][注釈 11][82]。
塩尻駅から南木曽駅までの間は、普通列車の運転本数は少なく、日中は2時間に1本程度の運転、南木曽駅 - 中津川駅間は区間列車も合わせて1時間あたり1本程度の運転である。基本的に313系2両編成によるワンマン列車で、1往復を除いて篠ノ井線松本駅まで乗り入れている。なおワンマン運転区間は中央本線の区間のみで塩尻駅 - 松本駅間は車掌が乗務する。またJR東日本長野総合車両センター所属の211系3000番台も運用に入り、こちらの場合は全区間車掌が乗務する。一部には松本駅 - 木曽福島駅・上松駅間および中津川駅 - 坂下駅・南木曽駅間の区間運転列車も設定されている(かつては南木曽・坂下駅発の名古屋駅行きや名古屋駅発坂下駅行き、神領駅発松本駅行きの直通列車も存在した(後述)。)。全列車が運転区間内の全駅に停車する。この区間の普通列車は上松駅や木曽福島駅などで上下列車の交換や特急の接続・通過待ちなどで長時間停車することがあるが、一部の列車は塩尻駅から中津川駅まで後続の特急に抜かされない。
運用される313系は1999年の投入当初はセミクロスシート仕様の3000番台だったが、2011年から転換クロスシート仕様の1300番台に置き換えられている。
中津川駅から名古屋駅までは、名古屋圏の通勤路線として快速のほか、「ホームライナー瑞浪」が運転されている。
名古屋駅には昼間1時間あたり区間快速3本・普通3本が発着するが、高蔵寺駅・多治見駅・瑞浪駅で折り返す列車が多く、名古屋駅 - 中津川駅間の直通は昼間時間帯で区間快速が2本(定光寺駅・古虎渓駅は通過)となる。2022年の改正によって中津川駅にて系統分離が図られたため、上下線ともに中津川駅を越えて運行する列車は存在しなくなった。また、8両編成に統一された。
この区間では座席指定制の「セントラルライナー」も毎時1本運転されていたが、2013年3月16日のダイヤ改正で廃止された。
この区間を走る快速・普通列車は、2023年度中に全て315系に統一された[JR海 6]。
2005年の愛知万博の開催時には、名古屋駅から高蔵寺駅経由で愛知環状鉄道線万博八草駅(現在の八草駅)まで直通する「エキスポシャトル」が運行された。
貨物列車の運行系統は、関東地方から南松本方面と、稲沢駅から南松本方面の2つに分かれている。定期貨物列車は、東線国立駅 - 塩尻駅間、西線塩尻駅 - 名古屋駅間である。2009年3月改正までは、辰野支線塩尻駅 - 辰野駅間でも貨物列車が運行されていた[83]。
コンテナ輸送も行われており、寒冷地の山梨県・長野県へは石油(灯油・重油・ガソリンなど)の輸送が盛んである。石油は、京葉地区や京浜地区、中京地区にある製油所から内陸の油槽所へ送られている。輸送の高速化のために、タキ1000形貨車で編成された高速貨物列車も設定されている。なお、中京地区からの石油輸送が行われている背景には、タンクローリーが中央自動車道の恵那山トンネルを通れない(延長5000m超のため、危険物積載車両通行禁止)という事情もある。
また、春日井にある製紙工場の製品を輸送する、コンテナ車を連結する専用貨物列車も稲沢駅 - 春日井駅間に設定されている。かつてはワム80000形有蓋車の運用も設定されていたが、2012年3月の有蓋車全廃に伴って廃止された[84]。
中央線の定期貨物列車が発着する駅は、八王子駅・竜王駅・多治見駅・春日井駅である。
団体専用列車用車両(ジョイフルトレイン)は除く。「キハ」とあるのは気動車、客車などの車種が記されていないものは全て電車である。
中央東線は後述する制約があるためと高尾駅以東の混雑が激しいため、JR東日本では山手線や常磐線とともに新形式が最初に導入される路線の一つになっている。
101系以後の定期運用があった系列は以下のとおり。甲府電化以降の旧形車両では72系・70系・80系電車や、EF64形やさらにはEF13形、ED16形などの電気機関車にけん引された客車列車があった。
東線の高尾駅から西線の中津川駅までにかけては勾配のきつい山岳路線となるため、牽引定数や抑速ブレーキの関係上、乗り入れ可能な機関車が次のように限定されている。
ただし、東線の国立駅 - 八王子駅間と西線の名古屋駅 - 多治見駅間は山岳区間に入る手前の平坦線区のため、南武線や武蔵野線、および東海道本線から乗り入れる次の平坦線区向け機関車も入線することができる。
この節の加筆が望まれています。 |
表・編・話・歴・PJR・PJRN・C | ||||||||||||||||
中央東線の115系(1966年 - ) | ||||||||||||||||
← 新宿 長野 → | ||||||||||||||||
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高尾駅 - 南木曽駅間には、非電化時代に断面が小さく作られたトンネルを路盤の掘り下げや改修をせずに特殊な架線(π架線)を使用して電化した区間が多数存在するため、電車においては高尾駅以東から直通する車両を含め、パンタグラフの取り付け部分または車両全体が低屋根化された車両や、パンタグラフを折りたたみ高さの小さい特殊なもの(PS23、PS24、シングルアーム)に取り換えるなどの対策がされた車両しか入線できない。そのため、車両製造会社の工場において落成した新車・改造車や私鉄などの譲渡車を回送する甲種輸送のルートからも中央本線は基本的に外されており、運転されるものは長野・山梨地区の事業者[注釈 14]向けに限られている[注釈 15]。ただし、構造上もともと一般型より車高が低い直流電気機関車や特急形車両(交直流電車や屋根上にヘッドライトを持つ車両などの例外を除く)はその限りではない。
該当区間を通過する車両は、東線ではE233系・183・189系(2003年以降各種臨時列車のみ)・E353系(2017年以降のあずさ・かいじ)・E257系(2003年 - 2019年のあずさ・かいじ。500番台も臨時列車で充当)の各電車のほか、臨時列車で185系(はまかいじ)・215系(ビューやまなし)・253系(むさしのかいじ)・E259系(成田エクスプレス)・E655系、クルーズトレインとしてE001形(TRAIN SUITE 四季島)がある。このうち、交直流電車のE655系とE001形は低屋根化することで入線が可能となっている。JR東日本所属の一般直流電車については、E231系以降、高尾駅以西に入る可能性のほぼない山手線や京浜東北線用などの車両を含め、狭小トンネル対策の設計がなされている。
名古屋方面からは383系および211系低屋根構造車(5600番台など)、311系・313系の各電車などが乗り入れている。JR東海所属の車両は小限界トンネル寸法に準拠したシングルアーム式パンタグラフの開発によって1995年に登場した373系より通常規格の設計が可能となり、中央線以上に限界制約がある身延線用の車両を含めて従来行われていたパンタグラフ取付部の低屋根化が不要となった。電気機関車 (EH200・EF64) は通過可能である。なお、通過できる車両には車体に表記される車号の前に◆マークが付けられている。
停車場・施設・接続路線 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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本路線は東京駅から神田、御茶ノ水、飯田橋、市ヶ谷、信濃町、代々木などをS字を描くように西へ進んで山手線の内側を横断し、新宿へと結ぶ。
新宿からは甲州街道の北方を一直線状に西へ走行して多摩地域(武蔵野)へ進み、中野、高円寺、吉祥寺、三鷹、小金井、国分寺などを貫いて立川へと伸びる。立川からは南西へ折れ、八王子へ進む。
八王子から西側ではおおむね甲州街道に沿って山梨県へ入り、上野原、大月、山梨市などを通って甲府へ至る。甲府からは北西方向へ転じ、韮崎や北杜を通って長野県の南信地域へ入る。
長野県の茅野を抜けて諏訪湖の東岸から北岸を周り、下諏訪から西側ではほぼ中山道に沿って走る。中信地域の塩尻が中央東線と中央西線の分岐点であり(「概要」の節も参照)、塩尻からは南西方向へ転じる。木曽山脈の谷間を縦断し、岐阜県の東濃地域へ入る。
岐阜県の中津川や恵那を経由し、釜戸駅から西側ではほぼ下街道(善光寺道)に沿って走行する。多治見や春日井を通って愛知県へ入り、名古屋まで至る。
起点の東京駅を北に出発し、神田駅で山手線などと分かれて一路西へと向かい、武蔵野台地の東端の谷にある御茶ノ水駅で総武本線支線と合流。ここから複々線に入る。新宿駅までは山手線の内側を横断する形でS字型に路線が敷かれており、神田川や江戸城旧外堀などに沿って都心を走る。四ツ谷駅付近で地下鉄丸ノ内線をくぐり、トンネルを抜ける。代々木駅付近まで首都高速4号新宿線と並行する。特急のほとんどが発着する新宿駅でまた北向きになり、山手線をくぐって西に曲がって、東中野駅付近から立川駅付近まで線路はほぼ東西に直線となる。このあたりまでは、「ヨドバシカメラの歌」にも織り込まれている。沿線は中野区・杉並区など東京のベッドタウンである。複々線の用地は直線だがホームに付帯する曲線がある。三鷹駅で複々線は終わり、多摩地域に入ると高い建物が減り、各駅の前後を除いてほぼ完全な直線区間となる。2010年11月7日に立川駅まで上下線の高架化が完了した。立川駅で南西に曲がって多摩川を渡り、日野駅から登り勾配にかかって多摩川と浅川の間の日野台地を切通しで越えると八王子盆地に入る。八王子駅の西側からは上り急勾配が始まる。
東京都市圏輸送と郊外輸送の分界点となっている高尾駅を過ぎると、沿線は急に山岳地帯となる。遥か先の濃尾平野にある愛知県の高蔵寺駅に入るまで平野部は途絶え、沿線の盆地には中小都市や街が並ぶ。山梨県上野原市・大月市などは、昭和末期頃より東京への通勤圏となり、四方津駅・猿橋駅周辺などは宅地開発が進み、朝夕などは東京方面への列車が頻繁に運行されているなど長距離通勤客も多い。
中央東線は、東京から甲信地方へ向かう路線としてビジネスや観光に利用されているが、並行する中央自動車道経由高速バス(中央高速バス)との競争が激化しており、その対策として格安の回数券や「トクトクきっぷ」などが設定されている。
中央自動車道を北に見ながら小仏トンネル(小仏峠)を通過すると、関東平野から出て、神奈川県相模原市に入るが高層ビルなどは全く無く、相模湖などを望みながら山梨県に入る。通勤形車両のE233系で、東京駅から大月駅や、さらに富士山麓電気鉄道富士急行線の河口湖駅まで直通する列車もある。しかし、高尾駅 - 大月駅間は大雨による運転規制がかかりやすく、防災上の問題点を抱えており、これを解消するための防災工事も継続して行われている。この区間は相模川・桂川の河岸段丘上に路線が敷かれており、短いトンネルが断続してカーブも多い。
大月から先は元スイッチバック駅が多数存在し、現在の各駅はホームが急勾配上に設けられている。なお旅客用ではないが初狩駅では道床に敷くバラストを運ぶ工事用臨時列車用のスイッチバックが今も現役である。
笹子峠を笹子トンネルで越えて甲斐大和駅を過ぎ、新大日影トンネルを抜けるとようやく山が開け、甲府盆地を見晴らして下り勾配で滑り込む。この勾配を緩和するため、路線は塩山駅へと大きく迂回している。甲斐大和駅 - 勝沼ぶどう郷駅間の下り線は1997年(平成9年)2月に新しいトンネルを経由する新線へ切り替えられた。
沿線は山が多く、車窓からは甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳などが見え、甲斐大和駅付近からは南アルプスも見える。甲府盆地は桃の栽培が盛んで、春には線路の両側がピンク色の花に包まれ、文字どおり「桃源郷」の雰囲気を味わえる。またブドウの栽培も盛んで、線路沿いにブドウ棚を見ることもでき、富士山も海側に見える。
酒折駅の先、身延線の善光寺駅の甲府駅寄りから同線が当線と並走する。中央本線の列車・善光寺駅ともに他方を望める。身延線の金手駅の横を通り、甲府駅に到着。特急「かいじ」は一部を除いてここが終着である[注釈 16]。
甲府駅を過ぎると路線は竜王駅付近までは比較的平坦だが、その後は次第に急勾配で北上し、韮崎駅からは八ヶ岳の尾根筋(七里岩)を上り、八ヶ岳の麓の高原地帯である小淵沢駅を過ぎると長野県に入る。この周辺区間では白樺林が絶景であり、標高も900mを越えて夏でも比較的涼しい高原地帯である。
富士見駅からは下りに入り、飯田線からの直通列車が折り返す東限の茅野駅から特急停車駅が並ぶ。単線区間に入って諏訪湖沿いを走りつつ、諏訪市や岡谷市を抜ける。甲州街道はここ諏訪地方までで、ここから西は、北の高原を佐久から回り込んできた中山道と合流する。
岡谷駅を過ぎると、塩嶺トンネルで標高1012mの塩尻峠を抜ける。一方旧線は、天竜川に沿いながら走る。この区間は天竜川が差し迫ってくる区間であり、川岸駅の駅名の由来となっている。辰野駅を過ぎると、今度は横川川に並行して走る。善知鳥トンネルを抜け、東塩尻信号場の遺構を通過すると新線と合流する。
松本盆地に入り、旧駅跡と名古屋方へつながる電留線を左手に、塩尻駅で「東線」と「西線」が背向する。東京方面から東線を走ってきた定期列車はここから篠ノ井線を松本方面に向かい、逆に西線を木曽福島・中津川・名古屋方面に向かう定期列車が松本方面から直通してくる。なお塩尻駅の乗り場案内は、ラインカラー青が中央東線に、橙が中央西線に当てられている。
塩尻駅を出ると国道19号沿いに路線は南下し、奈良井駅 - 藪原駅間で分水嶺の鳥居峠を越える[86] と深い木曽谷に入り、木曽川の渓谷に沿って渓谷美が楽しめる。中央本線では最も風光明媚な場所であるが、単線も一部残り、旧線のままで制限速度が厳しい場所もある。森林鉄道のあった上松駅を通りすぎると、日本五大名峡の一つ、名勝「寝覚の床」があり、すぐ上を通るポイントでは、ダイヤに余裕があれば「しなの」も速度を落としてゆっくり見せてくれる[86]。有名な妻籠宿・馬籠宿を通る旧中山道の山道とは南木曽駅の先で分かれてしまうため、鉄道で同地域に向かう場合には南木曽駅もしくは中津川駅でバスの乗り継ぎを必要とする。田立駅 - 坂下駅間で岐阜県に入り、険しい山々が開けて中津川駅に着く。さらに、中津川駅から先は中央自動車道とも並行して走る。
岐阜県に入り木曽川と分かれると、線形が良くなり、徐々に沿線も宅地化が進んでくる。盆地や台地を頻繁に上り下りし、庄内川の上流、土岐川が並行するようになる。多治見駅を過ぎ、玉野渓谷に入り、愛岐トンネルを抜けると愛知県に入り、愛知環状鉄道と接続する高蔵寺駅を過ぎると完全に濃尾平野内の名古屋都市圏に差し掛かる。次の神領駅には車両基地(神領車両区)があり、春日井駅を過ぎたあたりから、次第に都会の喧噪に引き戻される。なお高蔵寺駅 - 勝川駅間は、瀬戸市と稲沢市を結ぶ瀬戸線(一部は現在の愛知環状鉄道線とJR東海交通事業城北線として開業)が並走する計画だったため、線路の脇に線増できるよう土地が確保してあったが、現在は大半が民間に払い下げられ住宅が建ち並んでいる。庄内川と矢田川を越え、日本唯一のガイドウェイバスの起点がある大曽根駅を過ぎる。なお当駅を経由しナゴヤドームへ向かう人も多いため、ここから名古屋駅までの区間は野球の試合などのイベントにかかる時間帯は非常に混雑する。また大曽根駅 - 名古屋駅間の各駅で名古屋市営地下鉄の各線と接続するため相互間の利用も終日にわたって多い。そのため、快速以下は全て各駅に停車する。金山駅で東海道本線と合流、そのまま名鉄名古屋本線を挟んで並走しながら程なくして両者の下をくぐり、南西から来る関西本線と合流すると、当線の終点である名古屋駅に到着する。
東京駅 - 塩尻駅間(支線含む)は旅客営業規則の定める大都市近郊区間の「東京近郊区間」であり、そのうち東京都内である東京駅 - 高尾駅間が電車特定区間、加えて東京駅 - 新宿駅間が東京山手線内に含まれており、それぞれ区間外よりも割安な近距離運賃が適用される。御茶ノ水駅 - 三鷹駅間は、快速電車や特急列車が走行する急行線と各駅停車が走行する緩行線に分離された線路別複々線となっている。また、東京駅 - 塩尻駅(辰野支線を除く)はIC乗車カード「Suica」の首都圏エリア、中津川駅 - 名古屋駅間は同「TOICA」のエリアとなっている。
旅客鉄道会社の支社ごとの管轄は以下の通り。
JR東日本の管轄区間である東京駅 - 塩尻駅間のラインカラーおよび駅ナンバリングの路線記号は、基本的に
となっている。
上記の区間のうち、高尾駅 - 大月駅間では駅ナンバリングの導入に合わせて「オレンジ」と「青」の両方を表記した駅名標に概ね統一されているものの、立川駅 - 高尾駅間では青を使用した駅名標はない[注釈 17]が、新宿駅の特急発車ホーム(9・10番線)のみ青を使用している。また、オレンジ帯のE233系が定期列車で乗り入れることのない大月以西の笹子駅、甲斐大和駅ではオレンジのみを用いた駅名標が用いられており、統一性がない状態であったが、2020年の初狩駅 - 小淵沢駅間の駅ナンバリング導入に伴い青を用いたものに交換が行われた[JR東 7]。
*印は鉄道要覧上のデータ。全長には括弧内の第二種鉄道事業のキロ程は含まない。
神田駅 - 御茶ノ水駅 - 水道橋駅 - 飯田橋駅 - 市ケ谷駅 - 四ツ谷駅 - 信濃町駅 - 千駄ケ谷駅 - 代々木駅
新宿駅 - 大久保駅 - 東中野駅 - 中野駅 - 高円寺駅 - 阿佐ケ谷駅 - 荻窪駅 - 西荻窪駅 - 吉祥寺駅 - 三鷹駅 - 武蔵境駅 - 東小金井駅 - 武蔵小金井駅 - 国分寺駅 - 西国分寺駅 - 国立駅 - 立川駅 - 日野駅 - 豊田駅 - 八王子駅 - 西八王子駅 - 高尾駅
駅番号 | 駅名 | 駅間 営業キロ |
東京 からの 営業キロ |
接続路線 | 線路 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
JC 24 | 高尾駅 | - | 53.1 | 東日本旅客鉄道: 中央線(東京方面) 京王電鉄: 高尾線 (KO52) |
∥ | 東京都 八王子市 | |
JC 25 | 相模湖駅 | 9.5 | 62.6 | ∥ | 神奈川県 相模原市 緑区 | ||
JC 26 | 藤野駅 | 3.7 | 66.3 | ∥ | |||
JC 27 | 上野原駅 | 3.5 | 69.8 | ∥ | 山梨県 | 上野原市 | |
JC 28 | 四方津駅 | 4.2 | 74.0 | ∥ | |||
JC 29 | 梁川駅 | 3.6 | 77.6 | ∥ | 大月市 | ||
JC 30 | 鳥沢駅 | 3.6 | 81.2 | ∥ | |||
JC 31 | 猿橋駅 | 4.1 | 85.3 | ∥ | |||
JC 32 | 大月駅 | 2.5 | 87.8 | 富士山麓電気鉄道:富士急行線 (FJ01) (高尾方面から河口湖駅まで直通運転) | ∥ | ||
CO 33 | 初狩駅◇ | 6.1 | 93.9 | ∥ | |||
CO 34 | 笹子駅 | 6.5 | 100.4 | ∥ | |||
CO 35 | 甲斐大和駅 | 6.1 | 106.5 | ∥ | 甲州市 | ||
CO 36 | 勝沼ぶどう郷駅 | 6.0 | 112.5 | ∥ | |||
CO 37 | 塩山駅 | 4.4 | 116.9 | ∥ | |||
CO 38 | 東山梨駅 | 3.2 | 120.1 | ∥ | 山梨市 | ||
CO 39 | 山梨市駅 | 2.1 | 122.2 | ∥ | |||
CO 40 | 春日居町駅 | 2.8 | 125.0 | ∥ | 笛吹市 | ||
CO 41 | 石和温泉駅◇ | 2.8 | 127.8 | ∥ | |||
CO 42 | 酒折駅 | 3.4 | 131.2 | ∥ | 甲府市 | ||
CO 43 | 甲府駅 | 2.9 | 134.1 | 東海旅客鉄道: 身延線 | ∥ | ||
CO 44 | 竜王駅◆ | 4.5 | 138.6 | ∥ | 甲斐市 | ||
CO 45 | 塩崎駅 | 4.1 | 142.7 | ∥ | |||
CO 46 | 韮崎駅 | 4.3 | 147.0 | ∥ | 韮崎市 | ||
CO 47 | 新府駅 | 4.2 | 151.2 | ∥ | |||
CO 48 | 穴山駅 | 3.5 | 154.7 | ∥ | |||
CO 49 | 日野春駅 | 5.4 | 160.1 | ∥ | 北杜市 | ||
CO 50 | 長坂駅 | 6.2 | 166.3 | ∥ | |||
CO 51 | 小淵沢駅 | 7.4 | 173.7 | 東日本旅客鉄道:■小海線 | ∥ | ||
- | 信濃境駅 | 4.5 | 178.2 | ∥ | 長野県 | 諏訪郡 富士見町 | |
- | 富士見駅 | 4.7 | 182.9 | ∥ | |||
- | すずらんの里駅 | 3.2 | 186.1 | ∥ | |||
- | 青柳駅 | 1.9 | 188.0 | ∥ | 茅野市 | ||
- | 茅野駅 | 7.2 | 195.2 | ∥ | |||
- | 普門寺信号場 | - | 198.9 | ∨ | 諏訪市 | ||
- | 上諏訪駅 | 6.7 | 01.9 | ◇ | |||
- | 下諏訪駅 | 4.4 | 06.3 | ◇ | 諏訪郡 下諏訪町 | ||
- | 岡谷駅■ | 4.1 | 10.4 | 東日本旅客鉄道:中央本線(辰野方面・飯田線直通含む) | ∧ | 岡谷市 | |
- | みどり湖駅 | 7.8 | 18.2 | ∥ | 塩尻市 | ||
- | 塩尻駅◇ | 3.9 | 22.1 | 東日本旅客鉄道:■篠ノ井線(■信越本線長野駅及び■大糸線南小谷駅まで直通運転)・中央本線支線(辰野方面) 東海旅客鉄道: 中央本線(木曽福島方面) |
∥ |
2022年度の時点で、JR東日本自社による乗車人員集計[89] の除外対象となる駅(完全な無人駅)は、梁川駅・鳥沢駅・初狩駅・笹子駅・甲斐大和駅・東山梨駅・春日居町駅・新府駅・穴山駅・長坂駅・信濃境駅・すずらんの里駅・青柳駅・みどり湖駅である。
2022年度の時点で、JR東日本自社による乗車人員集計[89] の除外対象となる駅(完全な無人駅)は、川岸駅と信濃川島駅である。
駅番号 | 駅名 | 駅間 営業キロ |
累計 営業キロ |
接続路線 | 線路 | 所在地 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名古屋 から |
東京 から | ||||||||
- | 塩尻駅◇ | - | 174.8 | 22.1 | 東日本旅客鉄道:■篠ノ井線(一部を除き松本駅まで直通)・中央本線(岡谷方面)・中央本線支線(辰野方面) | ∥ | 長野県 | 塩尻市 | |
- | 洗馬駅 | 4.2 | 170.6 | 26.3 | ∥ | ||||
- | 日出塩駅 | 4.7 | 165.9 | 31.0 | ∥ | ||||
- | 贄川駅 | 5.2 | 160.7 | 36.2 | ∨ | ||||
- | 木曽平沢駅 | 5.2 | 155.5 | 41.4 | ◇ | ||||
- | 奈良井駅 | 1.8 | 153.7 | 43.2 | ∧ | ||||
- | 藪原駅 | 6.6 | 147.1 | 49.8 | ∥ | 木曽郡 | 木祖村 | ||
- | 宮ノ越駅 | 5.7 | 141.4 | 55.5 | ∨ | 木曽町 | |||
- | 原野駅 | 2.8 | 138.6 | 58.3 | ∧ | ||||
CF30 | 木曽福島駅 | 5.5 | 133.1 | 63.8 | ∥ | ||||
CF29 | 上松駅 | 7.3 | 125.8 | 71.1 | ∥ | 上松町 | |||
- | 倉本駅 | 6.6 | 119.2 | 77.7 | ∨ | ||||
- | 須原駅 | 4.8 | 114.4 | 82.5 | ◇ | 大桑村 | |||
- | 大桑駅 | 3.3 | 111.1 | 85.8 | ◇ | ||||
- | 野尻駅 | 3.0 | 108.1 | 88.8 | ◇ | ||||
- | 十二兼駅 | 3.7 | 104.4 | 92.5 | ∧ | 南木曽町 | |||
CF23 | 南木曽駅 | 5.5 | 98.9 | 98.0 | ∥ | ||||
- | 田立駅 | 6.3 | 92.6 | 304.3 | ∥ | ||||
- | 坂下駅 | 2.8 | 89.8 | 307.1 | ∥ | 岐阜県 中津川市 | |||
- | 落合川駅 | 6.1 | 83.7 | 313.2 | ∥ | ||||
CF19 | 中津川駅 | 3.8 | 79.9 | 317.0 | 東海旅客鉄道: 中央本線(名古屋方面) | ∥ |
中津川駅 - 美乃坂本駅 - 恵那駅 - 武並駅 - 釜戸駅 - 瑞浪駅 - 土岐市駅 - 多治見駅 - 古虎渓駅 - 定光寺駅 - 高蔵寺駅 - 神領駅 - 春日井駅 - 勝川駅 - 新守山駅 - 大曽根駅 - 千種駅 - 鶴舞駅 - 金山駅 - 名古屋駅
( )内は起点からの営業キロ。「下河原線」も参照。
#廃止区間にある駅を除く。( )内は東京駅起点の営業キロ。
各年度の平均通過人員(人/日)は以下のとおりである。
年度 | 平均通過人員(人/日) | 出典 | |||||||
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神田 - 塩尻 | 塩尻 - 名古屋 | ||||||||
神田 - 高尾 | 高尾 - 大月 | 大月 - 甲府 | 甲府 - 小淵沢 | 小淵沢 - 塩尻 (みどり湖経由) |
岡谷 - 辰野 | 辰野 - 塩尻 | |||
2011年度(平成23年度) | 148,595 | [90] | |||||||
642,026 | 43,338 | 27,206 | 14,718 | 13,030 | 2,751 | 618 | |||
2012年度(平成24年度) | 151,454 | 28,832 | [90][91] | ||||||
651,700 | 45,077 | 29,079 | 15,552 | 13,715 | 2,839 | 626 | |||
2013年度(平成25年度) | 155,059 | 29,419 | [90][92] | ||||||
667,820 | 45,834 | 29,504 | 15,886 | 13,904 | 3,001 | 606 | |||
2014年度(平成26年度) | 153,788 | 28,648 | [90][93] | ||||||
662,327 | 45,519 | 29,375 | 15,799 | 13,654 | 2,818 | 599 | |||
2015年度(平成27年度) | 157,094 | 29,698 | [90][94] | ||||||
675,696 | 46,644 | 30,275 | 16,417 | 14,260 | 2,916 | 633 | |||
2016年度(平成28年度) | 157,888 | 29,958 | [95][96] | ||||||
679,307 | 46,358 | 30,363 | 16,546 | 14,463 | 2,973 | 617 | |||
2017年度(平成29年度) | 159,548 | 30,275 | [95][97] | ||||||
686,317 | 46,469 | 30,984 | 16,881 | 14,687 | 2,952 | 592 | |||
2018年度(平成30年度) | 160,328 | 30,301 | [95][98] | ||||||
690,337 | 46,132 | 30,822 | 17,020 | 14,703 | 3,048 | 583 | |||
2019年度(令和元年度) | 156,460 | 29,788 | [95][99] | ||||||
678,404 | 42,677 | 28,031 | 15,791 | 13,670 | 3,021 | 547 | |||
2020年度(令和 | 2年度)100,367 | 19,321 | [95][100] | ||||||
448,960 | 20,402 | 11,967 | 7,232 | 7,239 | 2,499 | 362 | |||
2021年度(令和 | 3年度)108,433 | 20,840 | [101][102] | ||||||
478,876 | 25,621 | 15,570 | 9,076 | 8,282 | 2,375 | 350 | |||
2022年度(令和 | 4年度)124,981 | [101] | |||||||
542,056 | 33,926 | 22,063 | 12,812 | 11,021 | 2,512 | 433 | |||
2023年度(令和 | 5年度)136,389 | [103] | |||||||
584,641 | 40,683 | 26,707 | 15,347 | 13,043 | 2,722 | 490 |
2019年度(令和元年度)の平均通過人員が2,000人/日未満の線区(辰野駅 - 塩尻駅間)における各年度の収支(運輸収入、営業費用)、営業係数、収支率は以下のとおりである。▲はマイナスを意味する。
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