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乗車券の途中の区間で下車すること ウィキペディアから
途中下車(とちゅうげしゃ)とは、乗車券の券面に表示された発着区間内の途中駅で前途区間が有効のまま下車して出場すること[1]。
「下車」という言葉自体は一般に、単に列車から降りることを意味するが、鉄道用語としての「下車」の意味は下車したうえで改札を受けて出場するまでを含める。すなわち、乗り換え等のために単に列車からホームに降りる場合は基本的に下車に当たらない。なお本項では区別のために、単に列車から降りる意味の言葉は「降車」を用いることとする。
「下車」には、出場のため改札を受けることが要素となっているため、駅によって下車が成立する時点が異なる。以下、大まかな例を挙げる。
鉄道運輸規程第13条は、「乗車券ハ其ノ通用区間中何レノ部分ニ付イテモ其ノ効力ヲ有ス但シ特種ノ乗車券又ハ列車ニ付鉄道ガ別段ノ定ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ」と定め[2]、権利の分割行使を認めている。そして但し書きとして、鉄道事業者が「別段ノ定」をすることで、分割行使の制限を認めている。それを受けて、鉄道事業者は原則として途中下車を認め、そして「別段ノ定」として途中下車を認めない場合についてはその旨を規則等に明記することが求められている[注 2]。実際に、ほとんどの鉄道事業者は途中下車に関わる条文を規則等に記述している。以下に、途中下車にかかわる規則の条文の例を挙げる。
使用する乗車券の区間内に途中下車が可能な駅があるかどうかは前述の例のように鉄道事業者や乗車券によって異なる。途中下車できない駅で下車した場合、乗車券は前途無効となり回収される。この場合は「途中駅での下車」ではあっても、運送約款(旅客営業規則[注 3]など)に定められた「途中下車」ではない。
遠距離逓減制を採用している鉄道事業者では、乗車区間ごとに分けて乗車券を購入するのではなく、最終目的地までの乗車券を購入して、途中下車制度を利用したほうが安価になるケースがほとんどであるが、一部例外もある[注 4]。
なお、日本以外の国や地域では、乗車する列車を指定してその列車のみ有効の乗車券を発行するなど、このような制度が存在しない例も多い。
また、運送約款上の用語のほかに、俗語として、使用する乗車券の種類を問わず、旅行中に途中の駅に降りる行為にも用いられる[注 5]。
JRでは、旅規第156条において、途中下車について以下のように定めている。
(途中下車)
- 第156条 旅客は、旅行開始後、その所持する乗車券によって、その券面に表示された発着区間内の着駅(中略)以外の駅に下車して出場した後、再び列車に乗り継いで旅行することができる。ただし、次の各号に定める駅を除く。(以下、各号略)
すなわち、JRにおいては原則として途中下車を認め、例外的に途中下車ができない場合を各号にて駅単位で定めている。
途中下車が認められる場合であれば、乗車券に示された経路内であれば逆戻り(復乗)をしない限り経路内の任意の駅で何度でも途中下車できる。また必ずしも途中下車した駅に戻る必要はなく、逆戻りにならなければ途中下車した駅より先の駅で乗車してそこから旅行を再開することも可能である[注 6]。
以下に、旅規第156条各号に定められている途中下車ができない駅および、その他途中下車が認められないケースを記す。
ただし、以上に該当する場合でも連絡普通乗車券を使用する場合、他社線との接続駅(連絡接続駅)では途中下車が可能である(旅客連絡運輸規則第76条[5])。
JRの乗車券は使用開始後に有効期限が過ぎても券面に示された目的地の駅まで使用することができるが(「継続乗車」という)、有効期限が過ぎたものは途中下車できない(旅規第155条)。
振替輸送中の場合は、本来の乗車予定経路などから外れるなどの理由で途中下車の概念は成立しない。乗車変更として扱われる。
また、特別企画乗車券では、フリー乗車券の乗降自由なエリアを除き、途中下車が禁止あるいは指定駅のみに制約されているものが多い。途中下車が不可能な駅で下車した場合は、前途を放棄したものとして乗車券が前途無効となり回収されるか、乗車券の使用が認められず、改めて正規の運賃・料金を支払うかのどちらかである。
エクスプレス予約(e特急券は区間ごとの購入は可能)や新幹線eチケットなどで予約購入した乗車券は途中下車できない。
これらの途中下車を認めない駅[注 9]で下車した場合は、原則として、乗車券を前途無効として回収すると定めている(旅規第165条)。ただし、旅規第157条3項、同第160条3項、旅客営業取扱基準規程[注 10]第148条第2項などで、券面経路を迂回乗車中の場合にその途中駅で下車したときは、「区間変更」として取り扱うことが定められている[注 11][注 12]。また、特定都区市内・東京山手線内発の乗車券を使用し、出発地と同じ特定都区市内・東京山手線内の別の駅で下車した場合(前述の旅規第156条第3号に該当する場合)、出発駅からその下車した駅までの運賃を別に支払えば乗車券は無効にならず回収されない(旅規第166条)。
特急券やグリーン券といった料金券は基本的に一列車限り有効で、新幹線や首都圏の普通列車のグリーン車など複数列車を乗り継げる特例が存在する場合でも出場すると前途無効となるため、料金券については途中下車の概念は成立しない。ただし、普通列車の座席指定券にあっては、旅規内に途中下車禁止を示唆する文言はなく、長時間停車中に途中下車をして再び同一列車に戻って乗車を続けることが可能である。
途中下車の規則にかかわらず、旅程第145条および同条第2項(接続駅等で一時出場させる場合の取扱方)で規定される「途中下車に準じた」扱い、すなわち前途区間を無効としないまま下車を認められる場合がある。これを「特別下車」と称する。 特別下車の際に特別下車印が押されることがあるが、自駅名を表示した1cm四方の正四角形のものが使用され、途中下車印とは異なるものとなる。また特別下車した旅客は、途中下車をした旅客としては扱われない。
特別下車できるのは、次のいずれかの場合である。第2項、第3項は特に太字の条件を満たす必要がある。
第1項については、途中下車ができない乗車券や駅(区間外乗車における区間外の駅など)であっても乗り継ぎ駅で待ち時間が長い場合などは、係員に申し出ることにより特別下車(一時出場)が認められることがある。また列車別改札やバス代行による出場など、鉄道側の都合による場合も同様である。さらに駅の構造上、改札を出ないと乗り継げない場合の乗り換えによる出場は、特別下車である[注 13]。以下に該当駅を記す。
かつては以下の駅も該当していたが、諸理由により消滅している。
SuicaなどのIC乗車券でSFを利用して乗車する場合[注 21]は、途中下車を認めていない(IC定期乗車券の券面区間内を除く)[27][28][29][30][31]。IC乗車券でJR東日本管内の新幹線に乗車できるサービスである「タッチでGo!新幹線」に関しても、同様に途中下車を認めていない[注 22]。かつて利用可能であったイオカード等の磁気式ストアードフェアシステム乗車券でも、同様に途中下車はできなかった。
国鉄において初めて途中下車が認められたのは1889年(明治22年)7月、東海道本線の全通に際してである。50マイル(80キロ)以上の乗車券を所持する旅客は、途中駅で自由に下車して再度乗車することを認めた。当時は列車の速度が遅いことや、車内の設備が貧弱でもあったため、夜に主要駅で下車して宿に宿泊し、翌朝出発する旅行形態が多かったらしい。その後1890年(明治23年)11月途中下車を制度化し、指定駅のみで途中下車できる制度に改めた。当初、全国で17駅を指定しその後拡大した。1916年(大正5年)5月には、指定駅制度を改め、乗車距離に応じて途中下車できる回数を2回から5回までに制限する方式を採用した。この回数制限は1932年(昭和7年)8月に撤廃され、今日に至っている。回数制限の撤廃当時は、東京と大阪の電車区間(現行の大都市近郊区間の前身)相互発着の乗車券以外は距離の制限なく途中下車が可能であった。しかし、戦後の1958年(昭和33年)10月1日に21キロ以上の制限が加えられ、1966年3月5日の運賃改定にあわせて31キロ以上に、1969年11月に51キロ以上と段階的に制限が引き上げられた後、1980年4月の運賃改定時に101キロ以上になった。
民営化後は途中下車の制度自体に関する変更はないものの、前述のように乗車区間の営業キロにかかわらず大都市近郊区間内のみを経由する乗車券での途中下車はできないため、東京・大阪近郊区間の拡大、新潟・仙台近郊区間の導入により、営業キロ101キロ以上でも大都市近郊区間に含まれるようになり途中下車できなくなった区間もある。これにより、東京都区内からいわき駅、松本駅のように、最短経路の営業キロが200キロを超える区間でも途中下車ができない事例が出ている。
私鉄・公営などのJR以外の鉄道事業者では、普通乗車券での途中下車を認めていない事業者が多い。途中下車を認めている場合、JRと同様に一定の距離以上の乗車券について途中下車を認めている事業者と、指定された駅でのみ途中下車を認めている事業者がある。また、私鉄では、途中下車を認めていても、乗車駅からの運賃が券面に示された運賃と同一となる駅では途中下車できない事業者が多い。
国鉄やJRから移管された第三セクター鉄道には、自社の営業キロが100kmを超えると途中下車を可能とする(した)事業者が複数存在する。ただし、 当初から100kmを超えていた肥薩おれんじ鉄道や、2019年3月23日に通過連絡を挟まない自社の営業キロが100kmを超えた三陸鉄道は、いずれも普通乗車券の途中下車は認めていない(三陸鉄道は専用の企画乗車券を、期間・区間限定で販売[34]。肥薩おれんじ鉄道も移管当初は同種の企画乗車券が存在したがその後廃止)。
※当該事業者の路線内発着の乗車券で可能な事業者のみを記載。連絡乗車券のみ可能な事業者については後述。
JRなど他の事業者との連絡運輸をおこなっており、事業者間の営業キロ合計が101キロ以上となる連絡乗車券についてのみ、当該事業社内の駅で連絡接続駅以外でも原則として途中下車が可能になる(例:小田急電鉄[注 30]・京王電鉄・京浜急行電鉄[注 31]・東急電鉄・西武鉄道・伊豆急行[56]・北越急行[57]・えちごトキめき鉄道[58]・IRいしかわ鉄道[59]・しなの鉄道[60]・ハピラインふくい[61])。また野岩鉄道と東武鉄道の事例は前記の会津鉄道を参照)。連絡運輸規則第76条第5号の規定により、なかには前記にかかわらず途中下車を不可とする事業者もあり、詳細は事業者ごとに確認が必要である。一例として、同条件のJR連絡乗車券があるアルピコ交通は、社線内駅については途中下車不可である。
JRと同様、一度改札を出ないと乗り換えができない駅で乗り換えのために出場が許される場合は、途中下車とはみなされない。以下にその例を示す。なお、東急電鉄の三軒茶屋駅における田園都市線と世田谷線、自社鉄道線と接続しているものの改札外乗り換えとなるケーブルカー(鋼索線)など、通しの普通乗車券を発売していない路線同士は除く。
ただし、これらの駅では自動改札やストアードフェアシステム、IC乗車券の普及に伴い、出場時間に時間制限が設けられていることが多い(制限時間は事業者により異なる)。制限時間を超過すると乗車券は前途無効となり、ストアードフェアシステムカード・IC乗車券はその駅で運賃計算が打ち切られる。東京メトロ一部駅では、IC乗車券のSF利用時は基本的に出場時に通常と同額の支払いがされ、制限時間内に再入場すると実質0円入場(最終目的地出場時の価格も割引)で紙切符と実質同等の待遇を受けられる。
定期乗車券については、日本では一般的に区間内の途中乗降を認めている。世界的に見れば、「定期券は決められた区間を決められた目的で乗車するために運賃を割引いて発行するものであって、それ以外の目的で乗車する場合は、別途乗車券を購入する必要がある」という趣旨から、定期乗車券で途中乗降を認めない例もドイツ鉄道 (DB) などにある。日本において途中乗降を認めていなかった例としては、かつての名古屋市交通局(名古屋市営地下鉄)の通学定期乗車券がある。
地下鉄開業時の1957年に制定された名古屋市高速電車乗車料条例施行規程には、「指定した通用区間内における途中乗降は通学定期を除き、制限しないものとする」という条項が存在した[67]。通学定期券については「途中乗降無効」という取扱をし、区間内の途中下車及び途中乗車を認めず、定期券による乗り越しは「別途乗車」扱いで乗車駅からの運賃を徴収していた。この規制は1973年4月1日に撤廃された[68]。
かつての国鉄バスには、「途中下車取扱駅」が設定されており、普通乗車券ではその自動車駅に限って途中下車が認められていた[69]。2022年時点では、ジェイアール東海バスの東名ハイウェイバスにおいて、「利用区間とバス便を指定する前提」で「当日限り」ではあるが、普通乗車券での途中下車が認められている[70]。
オーストラリアのメトロタスマニアではバス料金にセクションごとの区間制が導入されている[71]。そのためチケットでの最初の乗車時から90分以内であれば何回でも途中下車をすることができ再乗車可能となっている[71]。
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