肥薩おれんじ鉄道
熊本県八代市に本社を置く鉄道事業者 ウィキペディアから
熊本県八代市に本社を置く鉄道事業者 ウィキペディアから
肥薩おれんじ鉄道株式会社(ひさつおれんじてつどう、英: Hisatsu Orange Railway Co., Ltd.)は、熊本県と鹿児島県において肥薩おれんじ鉄道線を運営する第三セクター方式の鉄道会社である。沿線自治体および日本貨物鉄道(JR貨物)が出資している。本社は、熊本県八代市萩原町一丁目1番1号にある[4]。
本社屋(左) | |
種類 | 株式会社 |
---|---|
略称 | おれんじ鉄道、おれんじ、おれ鉄 |
本社所在地 |
日本 〒866-0831 熊本県八代市萩原町一丁目1番1号 北緯32度30分13.01秒 東経130度37分19.2秒 |
設立 | 2002年10月31日[1] |
業種 | 陸運業 |
法人番号 | 8330001014082 |
事業内容 | 鉄道事業 |
代表者 | 代表取締役社長 古森美津代 |
資本金 |
15億6000万円 (2022年3月31日現在)[2] |
発行済株式総数 | 31,200株(2008年3月31日時点) |
売上高 |
16億1964万4000円 (2022年3月期)[2] |
営業利益 |
△5億4989万4000円 (2022年3月期)[2] |
経常利益 |
△5億3550万6000円 (2022年3月期)[2] |
純利益 |
6億1597万4000円 (2022年3月期)[2] |
純資産 |
8億8179万9000円 (2022年3月31日現在)[2] |
総資産 |
25億3687万2000円 (2022年3月31日現在)[2] |
決算期 | 3月31日 |
主要株主 |
熊本県 39.8% 鹿児島県 39.8% 日本貨物鉄道 6.4% 八代市 3.9% 薩摩川内市 3.3% (2019年3月31日現在[3]) |
関係する人物 |
嶋津忠裕(初代社長・元えちごトキめき鉄道社長) 古木圭介(2代社長) 淵脇哲朗(3代社長) 田嶋徹(4代暫定社長) 出田貴康(4代社長) |
外部リンク |
www |
九州新幹線新八代 - 鹿児島中央間の開業に伴い、鹿児島本線八代 - 川内間が九州旅客鉄道(JR九州)から経営移管され、肥薩おれんじ鉄道線として運営している。新幹線開業に伴う経営分離で発足した他の第三セクター鉄道会社が県境付近のごく一部を除き、単一県内で運営しているのに対し、2023年現在で唯一、主な営業エリアが熊本・鹿児島の複数県にまたがっている。
JR以外の鉄道としては路線延長が九州で最も長い。2006年4月21日の北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線 (140.0 km) 廃止から、2010年12月4日の青い森鉄道線 (121.9 km) 全線開通(JR東日本からの経営移管)までは日本最長の第三セクター鉄道路線であった。
開業時から、九州新幹線接続と沿線の高校への利便性のために自社線内以外にJR鹿児島本線新八代駅 - 八代駅間と川内駅 - 隈之城駅間に乗り入れ運転している。さらに観光客や沿線地元客誘致の強化のために2013年3月24日から新八代駅 - 川内駅間で観光列車「おれんじ食堂」、同年8月8日からは出水駅 - 八代駅または出水駅 - 川内駅間で「おれんじカフェ」の運行を開始し、「おれんじ食堂」は金曜日・土曜日・日曜日・祝祭日などを中心に、「おれんじカフェ」は貸切専用として運行されている。
2015年3月14日のダイヤ改正では土休祝日に平均速度35km/hで走行する「ゆうゆうトレイン」や、平日に車両、乗務員をレンタルして自由に列車を走らせる「ドリームトレイン(列車レンタル)」の運行を、さらに7月21日からは参加者が実際にダイヤ作成の講習を受けてダイヤを作成して列車を走らせる「マイトレイン・鉄道教室」の販売や運行を開始した。なお、「ゆうゆうトレイン」は2017年3月4日のダイヤ改正ですべて運行休止となっている。
2008年のダイヤ改正で土曜日・日曜日などの休日のみ出水駅から熊本駅を結んでいた快速列車「スーパーおれんじ」と鹿児島中央駅を結んでいた快速列車「オーシャンライナーさつま」が設定され、県庁所在地駅の熊本駅と鹿児島中央駅に乗り入れていたが、2019年ダイヤ改正で熊本駅、鹿児島中央駅への乗り入れを休止したのち2021年ダイヤ改正で全ての快速列車の運行を取り止め、以降は全て普通列車とおれんじ食堂のみの運行となっている。
熊本県と鹿児島県は1991年に、九州新幹線開業後に、鹿児島本線の八代駅 - 川内駅間をJR九州から経営分離し、第三セクター方式の鉄道として運営することで合意した。2000年に両県は具体的な検討を開始したが、収支予測は、熊本県内の区間はいくぶんよいが、鹿児島県内の区間は非常に厳しいとされた。このため、熊本側は県内の収入で鹿児島の面倒を見るのはいかがなものかと主張する一方で、鹿児島側は単県での経営は成り立たないと主張し、議論は2年間も平行線をたどった。2002年2月の合意では、三セク会社は合同で設立し、出資および初期投資の負担は両県で1対1とする、赤字が発生した場合には両県区間の実績を把握し、区間の状況に応じて対応することになった。2002年10月31日に、肥薩おれんじ鉄道が設立された[1]。
新会社の事業基本計画で前提とした2000年の調査数値では、移行区間のローカル列車利用者数は1日6799人、輸送密度1247人/kmだった。近年の数値は漸減していたことから、開業時の輸送密度は1230人/kmと想定された。この数字は、同時期の第三セクター会社と比べると、土佐くろしお鉄道 (1291)、北近畿タンゴ鉄道 (1168)と同レベルで、三陸鉄道 (511)、廃止された北海道ちほく高原鉄道 (302)に比べれば高い。
初期投資を抑制するために、JR九州からの施設譲渡額は10億円とした。新幹線開業にともなう並行在来線の経営分離で最初のケースとなった、しなの鉄道の軽井沢駅 - 篠ノ井駅間では、この金額が簿価を基準に103億円と高額になり、経営圧迫の元凶となった。肥薩おれんじ鉄道では、JR九州としての路線は廃止するのだから、更地化して他社に譲渡する場合はどうなるかと考え、建物も減価償却を終えて資産価値0で算定したのが、10億円の根拠である。
貨物列車のために残す電化設備の維持費を確保するため、開業後10年間は最低でも年額2億8千万円の線路使用料をJR貨物に保証させた。JR貨物としては、おれんじ鉄道区間を通過できなければ競争力を失うため、この条件を受諾し、1億円の出資もした。従来、JR九州に支払っていた線路使用料と、新たな基準で算定される三セクの線路使用料の差額は、国からJR貨物に調整金が支払われる。
おれんじ鉄道の、役員を含む全社員94人のうち9割を、開業から10年間、JR九州からの出向とした。これにより、人件費の半分はJR九州が負担する。こうした支援策により、開業から9年間は、償却前黒字になると予測された。
電化設備は残しているが、これは貨物列車用であり、旅客列車はHSOR-100形気動車を導入した。JR九州から中古電車を譲り受けるとすれば、経営分離時に鹿児島本線の南部区間などで使用されていた3両編成では輸送力過剰であり、475系は老朽化していた。単行運転が可能な電車は、量産タイプが無いため生産コストが高く、小浜線に導入されたJR西日本125系電車は1両あたり1億8千万円だった。一方、軽快気動車は標準仕様が確立され1両あたり1億2千万円で、付帯の設備費などを考慮して選択された。
もし、電化設備を取り払う場合は、おれんじ鉄道区間のために、貨物列車牽引用のディーゼル機関車を用意する必要があり、車両新造費、運転・保守の要員、保守設備の確保、作業量の増大などで、高コストの要因になる。こうした点を考慮して、貨物列車は電化、旅客列車は非電化の使い分けが決まった[25]。
2004年3月にJR九州から経営分離され、第三セクター鉄道として再出発した肥薩おれんじ鉄道だが、八代 - 川内間は開業前の国鉄、JR時代から営業距離が長い割に沿線人口が少ない地域が多く沿線道路も発達していたため、特急列車が運行がメインの路線で普通列車は区間によって1〜3時間に1本程度と少なく、水俣 - 川内間に至っては普通列車は朝7時代から昼過ぎまで5時間近くも運転していなかった時期もあり、また区間列車の水俣、出水などでの接続が悪い、終列車も早いなど利便性が非常に悪かった。そのため、開業時に列車の運行本数を大きく増発して終列車を繰り下げ、区間列車どうしの接続を取るようにして沿線の利便性を高めているが、開業14年目の2018年現在も依然として経営は厳しい状況である。開業当初の計画では初代社長の嶋津忠裕の陣頭指揮の下で初期投資費用や人件費を極力抑えるためにJR九州時代の線路や施設をなるべくそのまま使い、社員も自社社員を必要最小限にとどめてJR九州の出向社員や特定非営利活動法人(NPO法人)等の起用を中心とした「徹底した節約と現状維持」の運営方式で2013年度中に黒字決算にする予定であった。
しかし、開業2年目の2005年度決算で大幅な赤字に転落して早々に経営安定基金の切り崩しを行うなど、早くも経営危機を迎えている。さらに沿線産業の空洞化、少子高齢化による沿線人口の減少、自動車の普及や国道3号線、南九州西回り自動車道日奈久IC - 芦北IC間の部分開通など高速道路の整備が進み、2004年の開業時には年間188万人(収入額5億2300万円)だった利用者数が、6年後の2010年には37万人減の年間151万人(収入額3億9200万円)にまで落ち込んでしまい、収入全体も8億円に対して支出額は10億円と2億円もの赤字を抱えて経営悪化に繋がっている。2010年の収入の内訳は定期が78.8%、定期外が21.2%で通学客が約7割、観光客が2割を占めており、沿線住民の利用客はわずか1割程度と通学客や観光客に依存せざるを得ない状況になっている[26][27]。
2009年7月には2代目社長に古木圭介が就任。2011年10月には本社内に営業部を新設して鉄道利用客以外の収入としてイベント開催の強化、沿線の豊富な観光資源を有効活用するための台湾や韓国などアジア地域を中心とした外国人向けの国内旅行「九州西海岸ウエストコーストツアー」の宣伝と実施、携帯電話専用アプリの「コロニーな生活☆PLUS(コロプラ)」や「おれんじ鉄道で行こう!」への参入、鉄道ファンへの鉄道関連グッズの販売強化、メディアへのプレスリリースの活用、「銀河鉄道999」や「くまモン」、「ぐりぶー」などといった数々のラッピング列車、観光列車おれんじ食堂の運行などの地元誘致活動を頻繁に行って積極的な経営に乗り出しており、2011年度決算からはこれらの鉄道利用客外収入が一般利用客の収入よりも上回って開業以来悪化を辿っていた業績は徐々にだが持ち直し始めている。また、こうした地道な経営努力の結果、2011年度決算には開業7年目にして初めて純利益が1億5700万円の黒字を計上し、おれんじ食堂についても2013年4月と5月の運輸収入は1200万円と好評で、1年間で1万4千人が乗車した。さらにおれんじ食堂の導入で2013年度の輸送人員が139万人と6年ぶりに増加に転じ、売上高も過去最高となる14億6600万円に達した。このため定期外収入が前年比で22.8 - 38%に増加した。しかし、2011年の黒字決算は国の援助強化やJR貨物からの線路使用料の大幅増額によるものが大きく、慢性的な赤字体質から完全に抜けたものとは言えない。2013年6月27日の株主総会において2012年度決算を発表したが、運行支援補助金の減額や人件費、設備投資費などへの投資が影響して前年の黒字から一転して1億8600万円の赤字に転落したことを明らかにした[28]。
また、2014年度には鹿児島県が設置した経営安定基金が底を着くのが確実になるなど問題も多く、開業の2004年度から2013年末までの10年間で輸送人員は26.1%、運賃収入も18.1%の減少となって損失額が累計12億5200万円に達し、さらに車両や施設の老朽化による大掛かりな補修費用が必要になった事なども加わり、今後2013年度から2022年度までの10年間で収支見込みで33億円の資金不足が見込まれている[29]。
株主総会において、同年9月末限りで古木が社長を退任し、10月より3代目社長に沿線の鹿児島県出水市出身でJX日鉱日石石油基地の代表取締役社長であった淵脇哲朗が内定したことや、7月から観光列車「おれんじ食堂」のほかに貸し切り専用列車「おれんじカフェ」の運行を開始する予定で、運輸収入の増加を図る予定であることが公式発表された[30][31]。
その後、8月8日[7] から「おれんじカフェ」の運行を開始したほか、9月30日の臨時株主総会において淵脇哲朗の社長就任が決定。同日付けで古木が退任し、10月1日より淵脇が3代目社長に就任した。
10月1日、乗務員の制服が紺色の新制服に変更された。新制服はおれんじ食堂のデザインを手がけた水戸岡鋭治がデザインを担当しており、3月24日からしばらくはおれんじ食堂限定で着用していたが、この日より開業時より使用されていたグレー基調の制服から新制服に完全統一され、名札もフルネームのものに変更された。
5月3日、前年10月から改装工事をしていた水戸岡鋭治デザインの阿久根駅の駅舎が完成しリニューアルオープンし、新たに「にぎわい交流館阿久根駅」の愛称が付けられた。駅舎内にはオープンテラスカフェやレストラン、土産物屋、イベントスペースなどが設置され、新たな観光客の交流拠点として注目されている。
6月19日、熊本、鹿児島の両県が今後10年間で27億円の追加支援を行うことを表明した。内訳は熊本県が13億円、鹿児島県が14億円である。これにより廃線の危機は免れたが、両県とも既に鉄道存続のために多額の融資、支援を行っているため今後の支援に消極的になりつつある。また、熊本県側が県と沿線自治体のみの一般会計から全13億円を捻出するのに対し、鹿児島県側は4億円が県と沿線自治体の一般会計から、残りの10億円は県内市町村全体の共有財産から捻出するため、当路線が通らない沿線自治体外からの反発が大きい上に鹿児島市議会も支援に難色を示し、鹿児島県が市議会や沿線外の自治体を説得して7月24日にようやく支援の承認を貰うなど鹿児島県側が追加支援の正式決定までに時間を要している。さらに鹿児島県側が「沿線自治体外の財産から支援するため、財産負担を減らす目的で運賃値上げを必要と考えている」と表明しているのに対し、熊本県側は「今後も県と沿線自治体以外からの支援要請の予定はない。運賃を値上げすればさらに乗客減に歯止めがかからなくなるため、徹底合理化による資金の節制を行って運賃を現状維持のままにするのが一番重要な事だと思う」と運賃値上げに反対の意向を示すなど両県の鉄道に対する温度差が大きく、肥薩おれんじ鉄道にとって鉄道存続のために両県の温度差をいかに解決していくかも大きな課題になっている[32][33]。
11月、老朽化していた水俣駅の駅舎リニューアル改装工事に着手した。駅舎のデザインはおれんじ食堂や阿久根駅のデザインを手がけた工業デザイナーの水戸岡鋭治が引き続き担当している。工事費用は総額1億1400万円で、全額環境省と水俣市の補助金が利用されている[34]。
1月、JR九州の豪華観光寝台列車「ななつ星 in 九州」の乗り入れが検討されていることが明らかになった。
3月14日のダイヤ改正では八代 - 出水間・出水 - 川内間を平均速度35km/hで片道2時間から2時間30分をかけてゆっくり走行する「ゆうゆうトレイン」、利用客が車両や乗務員をレンタルして自由に列車の運行区間や時間を設定できる「ドリームトレイン(列車レンタル)」の運行を開始した。
さらに3月29日には開業11年を迎えた事への感謝として、沿線7市町や自治体と協賛の元で、終日1乗車300円以上の区間であれば大人300円、子供100円の均一運賃(300円未満の区間は所定運賃)で乗車可能な「おれんじ鉄道感謝デー」を開催した。当日は「にぎわい交流館」内のレストランメニューも割引になり、加えて佐敷駅近くの芦北町民総合センターでNHKのど自慢、津奈木駅、川内駅付近などでもイベントが開催された[35][36]。感謝デーは今後も沿線7市町にあやかり、2015年度は7回が開催される。
4月29日、前年11月から駅舎の改装工事を行っていた水俣駅がリニューアルオープンした[8]。リニューアルオープンに伴い駅舎に旬彩カフェ水俣屋がオープンし、新たな観光拠点として注目されている[37]。
6月23日、乗り入れが検討されていた「ななつ星in九州」の試運転のため牽引用の機関車DF200形が単機で肥薩おれんじ鉄道に初めて入線し、数日間かけて八代 - 肥後二見間で運転士の運転習熟のための試運転が実施された。その後、6月27日に「ななつ星in九州」が鹿児島中央から博多まで機関車1両、客車7両のフル編成で試運転を行い、その際に肥薩おれんじ鉄道にも川内から八代に向けて初めて乗り入れ、試運転が実施された[38]。
しかし高額な車両改修費用などがかさみ、6月29日の株主総会での2014年(平成26年)度決算報告では経常損益が5億円の赤字、純損失も初めて2億を突破した2億1269万円に達し、開業以来過去最悪の赤字となった。また3年連続で赤字決算になり、累積赤字が14億6512万円になった事も報告された[39][40]。さらに8月24日深夜から翌25日早朝にかけて鹿児島県から熊本県に渡って上陸した台風15号の影響で、全線で倒木や土砂崩れ、架線切断による停電など数十箇所に渡って開業以来最悪の甚大な被害を受け、8月25日始発列車から8月29日夜21時頃まで長時間の運休を余儀なくされた。約5日間程度で復旧したが、復旧費用等で多大な損害を出している[41]。
9月10日、2016年4月よりJR九州の豪華観光寝台列車(クルーズトレイン)「ななつ星in九州」の乗り入れ開始が正式決定し、当社や沿線にとって明るいニュースとなった。現在は肥薩線を経由するルートをおれんじ鉄道経由に変更すると言うもので、九州全体を回る3泊4日コースに組み込まれる。夕方に川内駅を出発し、薩摩高城駅や水俣駅など主要駅に停車して観光案内を行ったり夕食を摂り、八代駅に到着するダイヤが予定されている[42][43][44]。
1月24日の大雪では、全線に渡って積雪10 - 20センチ以上の記録的な豪雪となり、翌日25日の午前10時頃まで全線運休となった。
3月26日のダイヤ改正で「ゆうゆうトレイン」の出水 - 川内間の運行を休止した。また、4月7日から川内から八代までの片道のみ「ななつ星in九州」の乗り入れを開始した。運行開始日の初日は多数の地元住民や鉄道ファンに歓迎されたほか、薩摩高城駅、水俣駅、八代駅などで歓迎記念イベントが開催され、肥後高田 - 八代間の球磨川鉄橋では歓迎の花火が約2分間打ち上げられた。「ななつ星in九州」は毎週木曜日の夕方から夜間にかけて運行される[45][46][47]。
4月14日21:26頃と16日1:25頃に断続的に発生した熊本地震とそれに伴う余震の影響で、14日は地震発生以降運休となった。15日は始発列車から肥後高田 - 川内・隈之城間で運転再開、夕方に八代 - 肥後高田間の点検を終えて全線での運転を再開したが、16日の本震とされる地震発生により翌16日の始発列車から八代 - 肥後高田間が不通となり18日夕方の全線運転再開まで再び肥後高田 - 川内・隈之城間の折り返し運転を余儀なくされた。全線運転再開後も一部列車が運休となったほか、21日午後に鹿児島本線が運転再開するまでは八代 - 新八代間は運休となり、新八代行きも全て八代行きとして運行された。JR線熊本方面へ直通の快速列車スーパーおれんじ号は23日、おれんじ食堂は24日の日中から運転を再開した。地震発生当日は木曜日の夜間であったため、肥後二見駅に運転停車をしていた「ななつ星in九州」や線内の貨物列車が翌日夕方の全線運転再開まで長時間取り残された。また、16日の地震発生では深夜だったことから八代駅に夜間滞泊している車両1両が18日の運転再開まで長時間取り残される事態となった。全通後は27日に九州新幹線の熊本 - 新水俣間が開通するまでは新水俣に運転停車する朝の快速スーパーおれんじ2号熊本行きのみ客扱い(臨時停車)を行ったほか、全線で新幹線の振替輸送を行った[48][49]。なお、震災により長期間運休していた「ななつ星in九州」は、当線では5月13日金曜日より暫定ダイヤで運行を再開した。
12月20日、2013年から3代目社長として就任していた淵脇哲朗社長が体調不良のため、12月26日付で任期を6ヶ月ほど残して急遽辞任する事が発表された[50]。12月26日に八代市内で臨時株主総会が開かれ、後任は熊本県庁の田嶋徹副知事が2017年6月までの任期で暫定的に社長に就任した[51]。
3月4日にダイヤ改正を実施。列車番号が大きく改番され、「ゆうゆうトレイン(八代 - 出水)」と「おれんじ食堂」の第4便(おれんじバー)が廃止されたが、列車の本数や運転時刻などは改正前とほぼ同じであった。
3月12日、肥薩おれんじ鉄道の開業日(2004年3月13日)を記念した沿線住民と鉄道ファン向けイベント「おれんじ鉄道BIRTHDAYフェスタ2017」が水俣駅構内と水俣駅前ふれあい館で大々的に開催された。このイベントでは、保守基地で軌道モーターカーの運転実演やレール細断実演ショー、使用中止中の3番線(旧山野線の線路)を使用したレールカート(スーパーカート)の体験乗車、現役の若手運転士による鉄道教室「おれんじの「鉄」学」やオリジナルグッズ・鉄道関連備品の販売が行われたほか、観光列車おれんじ食堂も先着申し込み順の体験乗車会(コーヒーとスイーツ付きで500円)を開催し、午前中は水俣 - 出水駅間、午後は水俣駅 - 佐敷駅間で各1往復ずつ臨時運行された[52][53]。
4月26日、八代市内で臨時株主総会が開催され、前年12月より暫定的に社長職に就いていた熊本県副知事の田嶋徹社長が辞任し、熊本県庁出身の出田貴康が4代目社長に正式に選任され、翌27日より就任した[54]。
12月1日、肥薩おれんじ鉄道とその沿線を舞台とした映画「RAILWAYS」シリーズの最新作(第三弾)「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発」の制作公開決定が公式にリリースされた[55]。監督は吉田康弘、出演は有村架純、國村隼、桜庭ななみ。2018年11月23日に熊本県と鹿児島県で先行公開され、それ以外の全国の都道府県でも2018年11月30日に公開された。
12月26日、2018年3月17日に実施予定の春ダイヤ改正の内容が発表された。一般列車は朝6時台に八代発西出水行きの下り列車1本を増発するほか、混雑列車の増結やJR線との接続の改善などのダイヤの見直しを行い、おれんじ食堂も鹿児島県出水市出身で「フレンチの鉄人」で知られるフランス料理人坂井宏行監修のメニューを取り入れるほか、ダイヤ見直しなどの変更が盛り込まれる予定[11][12]。
1月16日、映画『かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発』の撮影が開始され、2月15日に終了するまで約1ヶ月間に渡って沿線で映画撮影が行われた。
鹿児島県内の43市町村でつくる県市町村振興協会が、2013年度から10年計画で行ってきた助成が2022年度末で期限切れを迎えた。2023年、鹿児島県と沿線の3市(薩摩川内、阿久根、出水)は、JR貨物の運行により「県全体が貨物輸送で恩恵を受けている」ことを主張して助成の継続の要請[56]。同年12月23日、県市町村振興協会は臨時理事会を開き、全県支援の継続を決定したが、2023年度から5年間で最大7億1900万円、支援終了後は財政支援をしないとの条件を付けた[57]。
組織は主に本社部門と運輸部門に分かれており、本社の総務部は熊本県八代市、営業部、運輸部の運転課、輸送指令室、検修課、工務課および電気課は鹿児島県出水市、工務課と電気課の出先機関は熊本県葦北郡芦北町と鹿児島県阿久根市に所在している。
肥薩おれんじ鉄道は社員研修施設を持たず、運転士の甲種内燃車運転免許および機関士の甲種電気車運転免許を取得するための教育や適性検査はJR九州に委託され、社員研修センターが役目を担っている。
大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。2024年10月1日改定[58][23]。
キロ程 (km) | 運賃 (円) |
キロ程 (km) | 運賃 (円) |
---|---|---|---|
- 3 | 230 | 46 - 50 | 1410 |
4 - 6 | 290 | 51 - 55 | 1550 |
7 - 9 | 340 | 56 - 60 | 1580 |
10 - 12 | 400 | 61 - 65 | 1790 |
13 - 15 | 430 | 66 - 70 | 1830 |
16 - 20 | 590 | 71 - 80 | 2040 |
21 - 25 | 700 | 81 - 90 | 2240 |
26 - 30 | 840 | 91 - 100 | 2450 |
31 - 35 | 980 | 101 - 110 | 2640 |
36 - 40 | 1120 | 111 - | 2810 |
41 - 45 | 1270 |
乗車券は普通乗車券から割引乗車券、団体乗車券、企画乗車券、おれんじ食堂指定席乗車券まで様々な乗車券を発売しており、主に自動券売機か有人駅の出札窓口で購入する。JR線連絡乗車券や一部の企画乗車券はJR九州の自動券売機や駅窓口、みどりの窓口、旅行センターでも購入可能である。逆に企画乗車券によっては当社線で購入不可の乗車券もある。運転士は「おれんじ18フリーきっぷ」(※青春18きっぷ提示時に限る)の発売を行っている。無人駅から乗車する場合は車内で整理券を取り、下車駅で運賃を支払う方式である。現金のほかにおれんじ鉄道が発行している「おれんじ券」や薩摩川内市が発行している「高齢者おでかけ支援助成券」も乗車券購入や運賃に利用できる。ただし、回数券や定期券購入には使用できない。また、青春18きっぷやジャパンレールパスでの乗車も不可であるが、代替として前者は「おれんじ18フリーきっぷ」、後者は「1DAY TRAIN PASS」「2DAYs TRAIN PASS」(共に訪日外国人観光客専用)の購入が可能である。
範囲は以下の通りである。連絡乗車券の自社での発売はその区間の有人駅のみで行われる。
バーコード式で、無人駅・有人駅問わず全駅で停車中に車内(入口側ドア)整理券発行機で発行される。整理券番号は起点側のJR新八代駅が0番、八代駅が1番の順で、終点の川内駅が28番、JR隈之城駅が29番である。下車駅で運賃箱に整理券を投入すると運賃額が表示され、運賃を支払う仕組みである(八代駅・日奈久温泉駅・佐敷駅・水俣駅・西出水駅・野田郷駅・阿久根駅・川内駅の営業時間内の場合は駅係員に運賃を支払う〈一部列車を除く〉)。また、整理券で乗車する場合、出水駅を超えて下車する場合は行き先によって支払い方法が若干違う。
回数券は11枚綴りで10枚分の金額のもの(有効期限3か月間)と6枚綴りで1割引のもの(有効期限1か月)の2種類、定期券は通勤(青色)、通学(黄色)、65歳以上の高齢者用の割引シルバー定期券「いきいきシルバーパス」(オレンジ色)の3種類を発行している。通学定期券についてはおれんじ鉄道線内区間は1種類だが、JR九州との連絡定期券は中学生、高校生、大学生の3種類が発売されている。定期乗車券の発売範囲は上記の連絡乗車券の発売範囲に準じている。
肥薩おれんじ鉄道で購入できる企画乗車券
肥薩おれんじ鉄道で購入できない企画乗車券
かつて発売されていた企画乗車券
接続するJR鹿児島本線から貨物列車の直通運転があるため本線全区間で交流電化設備が維持されているが、旅客車両は経費節減のため高価な交流電車を避けて気動車を採用している[* 3]。
ロゴマークの一般公募を行った際に、およそ900点の中から川西康之(現:株式会社イチバンセン代表取締役)の作品が選ばれ、その後、各種サイン類のほか、きっぷや定期券、名札、ポスター、駅名標、さらに焼酎のボトルに至るまで様々なデザインを担当した。当時、初代社長を務めた嶋津忠裕は、のちにえちごトキめき鉄道の初代社長に就任しており、川西がそのトータルデザインを手掛けるきっかけともなった。
なお、「おれんじ食堂」の運転開始以降、乗務員の制服や各駅のリニューアルにおいてJR九州などのデザインで知られる水戸岡鋭治によるデザインが多数採用されている傾向にある。
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