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国家資格の一つ ウィキペディアから
動力車操縦者(どうりょくしゃそうじゅうしゃ)とは、日本の動力車操縦者運転免許に関する省令で定める一定の動力車を操縦する資格がある者を指すための行政用語である。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
一般的には「鉄道の運転士」や「列車の運転士」「電車の運転士」(機関士とも)[1]などと呼ばれている人を指すための、日本の行政上の用語である。
日本の機関車・電車や気動車・路面電車・トロリーバス(無軌条電車)の運転に必要な資格を持つ者のことである。有資格者以外はその業務を行えない業務独占資格のひとつである。
「動力車操縦者」は日本の法律で定められた鉄道のみを運転できる資格であり、その他の類似するものまで運転できる資格ではない。また、国内外の類似する資格との融通する仕組みもない(自動車の国際運転免許証に相当する制度はない)。
この省令の第2条で、動力車とは、「鉄道及び軌道の蒸気機関車・電気機関車・電車・蓄電池機関車・蓄電池電車・内燃機関車・内燃動車・無軌条電車」とされている。
これ以外の動力を有する車両(例として馬車鉄道の馬車)の操縦には資格制度はなく、鉄道事業者・軌道経営者の教育訓練と確認のみで操縦することになる。
基本的に、この免許を受けていなければ、動力車の操縦はできない。ただし、無軌条電車を除き、運転見習中の係員が運転免許を受けた者と同乗して直接の指導を受ける場合、又は本線に支障を来たす恐れがない側線において移動する場合、この免許は不要である。
動力車操縦者運転免許に関する省令制定当時より、政府及び公共団体の鉄道については鉄道営業法の鉄道係員(鉄道掛員)の資格に関する規定そのものが適用除外とされていたため、政府及び公共団体の鉄道においては動力車操縦者免許は不要であった。ただし、無条件で操縦できるのではなくすべての鉄道係員は国及び公共団体が定める資格や講習が必要とされていた。また、軌道の場合は軌道法上その分類がなかったため、すべての軌道で動力車操縦者運転免許が必要であった。
1987年(昭和62年)4月1日施行の日本国有鉄道改革法等施行法の施行に伴い、政府の鉄道に対する鉄道営業法の除外規定が削除され、これ以降、政府が鉄道を経営する場合には本省令の対象となった。
2006年(平成18年)10月1日施行の運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律の施行に伴い、公共団体の鉄道に対する鉄道営業法の除外規定が削除され、地方公共団体の経営する鉄道についても本省令が適用されることとなり、動力車操縦者運転免許を含む鉄道係員の要件や資格について鉄道営業法で規制されることとなった。
2024年(令和6年)7月1日施工の動力車操縦者試験の受験資格等の改定に伴い以下の改正を行った。
(1) 動力車操縦者試験の受験資格
若年者の雇用拡大につなげる観点から、動力車操縦者試験を受験することができない要件について、「20歳未満」を「18歳未満」に改正しました。 [2]
(2) 運転免許証、運転免許申請書等及び動力車操縦者運転免許原簿の記載事項
性的少数者へ配慮することの社会的な要請の観点から、運転免許証等の記載事項のうち「性別」を削除しました。これに伴い、第1号様式の「男女」欄及び第1号の2様式の「性別」欄を削除するほか、第1号様式、第1号の2様式、第2号様式及び第3号様式において、申請者の負担軽減等の観点から、地方運輸局長の氏名を記載することを不要とする改正を行いました。
(3) 身体検査の基準
視機能の基準における「正常であること」の判断にあたっての基本的な考え方は、「動力車操縦者の操縦に支障が無いと判断した場合は、基準に適合しているものとして扱っている」ことから、視機能のうち「正常であること」と規定されている「両眼視機能」「視野」「色覚」の各基準について、「動力車の操縦に支障を及ぼすと認められる異常がないこと」と改正しました。
(4) 経過措置
運転免許制度の円滑な移行のため、必要な経過措置を設けました
項目 | 基準 |
視機能 |
1 視力(矯正視力を含む。)が両眼で1.0以上、かつ、一眼でそれぞれ0.7以上であること。 |
聴力 | 各耳とも5メートル以上の距離でささやく言葉を明らかに聴取できること |
疾病および身体機能の障害の有無 | 心臓疾患・神経及び精神の疾患・眼の疾患・運動機能の障害・言語機能の障害その他の動力車の操縦に支障を及ぼすと認められる疾病又は身体機能の障害がないこと。 |
中毒 | アルコール中毒・麻薬中毒その他動力車の操縦に支障を及ぼす中毒の症状がないこと。 |
動力車操縦者の資格と試験は、省令上は鉄道事業者・軌道事業者に所属していることを要件としておらず、15歳以上の者で、運転免許の取消を受けた者の場合は、取消日から起算して10年を経過していれば学歴・経験・国籍を問わず受験でき資格を得られる。
視力(深視力も含めて)・色覚・心電図等のチェックをクリアする必要がある。
また、色覚は少しでも異常があると不合格となる。加えて、内田クレペリン精神検査も課される。
国土交通省指定の動力車操縦者養成所で専門の講習(学科講習及び技能講習を行う第一類と学科講習のみの第二類がある。無軌条電車は第一類のみ)を受け、学科と技能についてそれぞれ指定養成所の試験に臨むことが多い。JRや大手私鉄や公営企業は自社の養成所があるが、準大手私鉄や中小私鉄の場合は養成所がないことが多く、指定養成所をもつ鉄道事業者に委託することもある。このため、養成所を持たないモノレールや案内軌条式鉄道事業者の運転士は、他社の鉄レール式の電車で講習を受けることがある(免許の種類が同じであれば可である)。一畑電車で京王電鉄に講習を委託している事例[4]や、開業前の沖縄都市モノレールでは、JR九州、京浜急行電鉄、西武鉄道[5]で学科および技能講習の委託を行った実績がある[6]。
なお、指定養成所での講習(試験含む)が動力車操縦免許取得の条件ではない。養成所で講習を行わない場合は各事業者で教習を行った後、運輸局が実施する学科・技能試験を受けることとなる[7]。自動車の運転免許において、公認教習所に通わずとも試験場で一発試験ができることに似ているが、試験の実施場所は各事業者であり、それほど珍しい事例ではない。
この免許には更新・書換制度がないため、事実上終身免許である。ただし、鉄道事業者や軌道経営者では運転士に対して定期的に健康診断を行っており、乗務に耐えられないと判断されれば、社内的に運転業務から駅務等、他職種へ転換する場合がほとんどである。
地方運輸局長は次の場合に運転免許の取消又は停止をすることができる。
この省令には、免許の自主返納制度が存在する。
電気式内燃車・ハイブリッド鉄道車両の免許
鉄道事業者によっては動力車操縦者の運転資格を所持しない外部者の参加を募り、鉄道車両を運転させるイベントを開催することがある。参加費を徴収し、運転士の指導・監視のもとで車庫・工場内などの非営業線内で実施している。
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