いすみ鉄道

千葉県夷隅郡大多喜町に本社を置く鉄道事業者 ウィキペディアから

いすみ鉄道

いすみ鉄道株式会社(いすみてつどう)は、千葉県夷隅郡大多喜町に本社を置く鉄道事業者[1]日本国有鉄道(国鉄)特定地方交通線の一つだった木原線を引き継いで、いすみ線として運営している[1][2]、沿線自治体や民間企業が出資する第三セクター鉄道事業者である[2]

概要 種類, 市場情報 ...
いすみ鉄道株式会社
Isumi Railway Co., Ltd.
Thumb
Thumb
いすみ鉄道本社
大多喜駅の駅舎の一部が本社となっている)
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 日本
298-0216
千葉県夷隅郡大多喜町大多喜264番地[1]
北緯35度17分11.84秒 東経140度14分38.35秒
設立 1987年昭和62年)7月7日[2][3]
業種 陸運業
法人番号 5040001075140
事業内容 鉄道事業法に基づく第1種鉄道事業及び第2種鉄道事業
旅行業広告業[1]
代表者 代表取締役社長 古竹孝一[1]
資本金 2億6900万円(2019年3月31日時点[4]
売上高 1億5054万9758円(2019年3月期[4]
営業利益 △1億7919万1396円(2019年3月期[4]
純利益 △3698万1928円(2019年3月期[4]
純資産 5560万5503円(2019年3月31日時点[4]
総資産 1億2082万4299円(2019年3月31日時点[4]
従業員数 30人[1]
決算期 3月31日
主要株主 千葉県 34.20%
大多喜町 15.17%
いすみ市 14.28%
小湊鉄道 5.58%
千葉銀行 3.72%
(2019年3月31日時点[5]
関係する人物 鳥塚亮(元社長)
髙橋渡(元社長)
外部リンク https://www.isumirail.co.jp/
テンプレートを表示
閉じる

歴史

路線

車両

現用車両

  • いすみ300型 (301 - 302):2両在籍
    2012年3月28日に運行開始。2011年11月3日鳥塚社長自らのブログで存在が明らかにされ、2012年1月3日に導入を発表。同年2月22日に大多喜駅車両基地に301・302が搬入された。
    新潟トランシスが製造するNDCであり、基本的な車体構造は真岡鐵道モオカ14形(後期形)松浦鉄道MR-600形(いずれも日本車輌製)をベースとしている。座席配置はいすみ200型とは異なりセミクロスシートとなる。開閉可能な側面窓、国鉄の列車を模した青色モケットのクロスシート座席、木目調の内装、幕式の行先表示器などが特徴である。車内には、トイレとその脇にムーミンのぬいぐるみを備えた棚が設置された。2014年度までに3両が導入される予定であったが、3両目は後述のキハ20 1303として導入されることとなった。
  • いすみ350型 (351 - 352) :2両在籍
    いすみ300型と同様に鳥塚社長のブログで導入が発表された。2013年2月1日営業運転開始[10]
    機器的にはいすみ300型と同一のNDCであるが、車体は国鉄キハ20系気動車をモチーフにしたもの。車内はいすみ200型と同様のトイレなしオールロングシートとなった。
    352は2013年12月導入予定であったが諸事情により遅れ、2014年1月23日に搬入、同年2月17日より運行が開始されている。
  • キハ52形 (125)
    西日本旅客鉄道(JR西日本)富山地域鉄道部富山運転センター車両管理室に所属し、大糸線非電化区間で運用されていた車両。1965年製造[11]2010年の廃車後に、いすみ200型の置き換えおよび観光用目的でJR西日本から譲渡された。いすみ鉄道到着後の同年12月12日大多喜駅構内で撮影会を行った後に国鉄気動車標準色(クリーム4号+朱色4号)に塗装変更し、翌2011年1月9日にお色直し撮影会。全般検査後の同年3月27日にお披露目撮影会、翌4月8日にチャリティー公開試運転を行い、同月29日から「観光急行列車」として営業運転を開始した[12]。またこの車両による小湊鉄道線との相互乗り入れ構想があることも社長自らのブログで明らかにしている。また、2014年3月からは、車体塗装を国鉄気動車標準色から首都圏色(朱色5号)に変更して運用されている[13][14]。稼働車両は全国でもいすみ鉄道のみ。老朽化による国鉄一般色への再塗装に必要な費用を、いすみ鉄道元社長の鳥塚亮が理事長を務めるNPO法人「おいしいローカル線をつくる会」(東京)が2019年元日からクラウドファンディングで募集したところ、約1週間で目標額が調達された[11]
  • キハ20 1303
    いすみ鉄道が、老朽化したいすみ200'型を置き換えのために導入した、いすみ300型2両といすみ350型2両に続く新型車両の5両目の車両であり、この車両の導入により新型車両への置き換えが完了する予定である。いすみ300型やいすみ350型と同じく、新潟トランシス製のNDCであるが、車体形状はいすみ350型と同じとし、内装はいすみ300型と同じとしている。車体塗装は、国鉄時代の昭和の再現として、国鉄一般色と呼ばれるオレンジ色とベージュのツートンカラーとしており、形式にも「キハ」の形式名が与えられている。これには、この車両が運用に付いた際には、平日の運用は新型車両5両で行われるため、平日の運用でも「キハ」がいすみ線を走行している運用を実現して、いつでも「キハ」に乗ることができる観光鉄道とするためであるとしている。
    「キハ20 1303」の形式名になった理由には、最初の頃は、内装がいすみ300型と同じであるため、その続番である303となり、「キハ303」の形式名が考えられていたのだが、「キハ303」は岡山県で保存されている旧同和鉱業片上鉄道の車両や甘木鉄道で運用されているAR303と形式名が同じになる理由で却下となり、その後、この車両が「両運転台・1エンジン搭載」気動車であるため、国鉄時代の気動車であるキハ20系と同じであるので「キハ20 303」ではどうだろうかとなったが、同番号の車両はかつて四国に存在していたことが判明したことから、オリジナリティーを出すために1000番台に振り分けて「キハ20 1303」となった経緯があったと鳥塚社長がブログで述べている[15]。2015年6月22日に、製造元の新潟トランシスからトレーラーによる陸送で大多喜の車両基地に到着し、各種試験や試運転の後に同年9月24日から営業運転を開始した[16]

過去の車両

  • いすみ200'型 (201 - 207)
    転換当初に「いすみ100型」として導入された車両で、かつて富士重工業第三セクター鉄道向けに製造していたLE-CarIIシリーズの一形式である。後乗り前降り制のワンマンカー。当初座席タイプはセミクロスシートで形式称号は「いすみ100型」であったが、ロングシート化に際し「いすみ200型」に、さらにその後の床の張替えで「いすみ200'型」に改番された。老朽化に伴う新型車両の導入により2010年から順次廃車が始まり、2024年までにかけて7両全車が廃車となった。
  • キハ28形 (2346)
    JR西日本富山地域鉄道部富山運転センター車両管理室に所属し、2011年3月11日までキハ58系最後の定期運用に使用された4両のうち保留車となっていた車両。2012年8月27日に鳥塚社長のブログでJR西日本から導入することが発表され[17]、国鉄急行色に塗装変更後に2013年3月9日から先行導入されていたキハ52 125と連結して営業運転を開始。
    この車両は1964年4月15日米子機関区(現在の後藤総合車両所)に新製配置されたが、同年5月24日付で新潟機関区(現在の新潟車両センター)に転出、同年7月14日付で千葉気動車区に転出して房総地区での海水浴客輸送に使用され、同年9月17日に米子機関区に転出。実質的には貸し渡し的な転出入で1985年までは山陰地区で、それ以降2011年まで北陸地区で運用され続けた。いすみ鉄道ではレストラン列車などに利用されている[18]
    四国旅客鉄道(JR四国)から急行「いよ」「うわじま」ヘッドマークがいすみ鉄道に貸し出されることになり、2021年10月9日から12月末までキハ28形に取り付けて土休日の観光急行列車で運行されることになった[18][19]
    老朽化を理由に2022年11月27日で定期運行を[20][21]、2023年2月8日で貸切などでの不定期運行も終了した[22]

保存車両

運賃

大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。2019年10月1日改定[24][25]

さらに見る 大原, 西大原 ...
大原
190 西大原
260260 上総東
330260190 新田野
330330260190 国吉
410410330260260 上総中川
480480410330260190 城見ヶ丘
550480410330330260190 大多喜
610550480410410330260190 小谷松
610550480480410330260260190 東総元
610610550480410330260260190190 久我原
670610550480480410330330260190190 総元
730670610550550480410410330260260190 西畑
730730670610550480410410330330260260190 上総中野
閉じる
さらに見る キロ程, 運賃(円) ...
キロ程運賃(円)
初乗り1 - 3 km190
4 - 6260
7 - 9330
10 - 12410
13 - 15480
16 - 18550
19 - 21610
22 - 24670
25 - 27730
閉じる

急行列車を利用の場合は乗車券・急行券が必要。急行列車の指定席を利用の場合は乗車券・急行券に加えて指定席券が必要。

  • 急行料金:全線均一300円(小児半額・10円未満切り上げ)
  • 指定席料金:全線均一300円(小児同額)

2011年4月から急行・指定席料金が設定されたが、急行券・指定席券の発売は急行の始発駅のみで行なっている[26][27]

乗車券は、列車内と大原駅大多喜駅では自動券売機で発売している。大多喜駅では硬券の入場券が購入できる。SuicaPASMOなどのICカードは一切使えない。

  • 入場券:170円(小児半額)

割引乗車券

以下の乗車券類が発売されている[28]

  • いすみ鉄道1日フリー乗車券(平日用大人:1,200円 小人:600円、土休日用大人:1,500円 小人:750円。土休日用は急行の自由席が利用可能)
  • 房総横断記念乗車券(いすみ鉄道 大原駅 - 小湊鉄道 五井駅間の片道割引乗車券、途中下車可能。大人:1,730円 小人:870円)

経営・存廃問題

木原線が第三セクター化されて以降、長年にわたっていすみ鉄道は赤字経営が続いており、2006年度で約1億2,700万円の赤字を出している。そこで、千葉県をはじめとする地元自治体などによって結成された「いすみ鉄道再生会議」は、「2008年からの2年間は収支検証期間として鉄道を存続させるが、2009年度決算でも収支の改善見込みが立たない場合、鉄道の廃止も検討する」ことを取り決めた[29]

このため、経営立て直しのために2007年12月から社長を一般公募し、翌2008年2月に千葉県のバス会社平和交通社長(当時)の吉田平[注釈 2]に内定し、同年3月26日の臨時株主総会と取締役会で正式決定し、4月に就任した[30][31]

ところが2009年2月、吉田が千葉県知事選挙への出馬と社長辞任を発表したため[32]、同年5月4日に社長の再公募を発表し、6月1日、123人の公募の中から元ブリティッシュ・エアウェイズ旅客運航部長の鳥塚亮が内定し、同月28日に開かれた株主総会と取締役会を経て代表取締役社長に就任した[33]

2008年から煎餅「い鉄揚げ」や2009年には饅頭「房総のけむり饅頭」を販売している。また、同年10月以降、大原・国吉・大多喜の各駅に直営店を開店(大多喜駅は新装リニューアル)し、ウェブショップも開設した。

観光客を増やす増収策としてはこのほか、キハ28形車内のテーブル席でイタリア料理などを提供する「レストラン列車」を実施している[34]

2010年3月4日には、訓練費700万円を自己負担することを条件に列車運転免許を取得できるという運転士採用プランを発表した[35][36]。同プランに基づき40代から50代の男性4名が採用された[37]。その後、4人はディーゼル列車の運転資格である国土交通省動力車操縦資格試験に合格し[38]、2012年夏より単独乗務している。これを題材とした『菜の花ラインに乗りかえて』というテレビドラマが制作されている。

こうした経営努力の結果、同年8月6日に鉄道の当面の存続が決定した[39]。存続の決定後は、老朽化していたレールバスのいすみ200形の代替に取り掛かり、いすみ300形といすみ350形の新型車両を導入したほか、沿線の活性化にも更に力を入れてきたが、鳥塚社長は2018年6月12日の株主総会をもって任期満了で退任となった[40][41]

鳥塚社長の退任後は、翌6月13日から暫定的に千葉県副知事の髙橋渡が社長を務めたが、その後改めて後任の社長の公募を行い[42]香川県日新タクシー会長の古竹孝一が選出され、2018年11月7日の株主総会で社長に就任した[43]

脱線事故

要約
視点

2024年10月4日午前8時8分頃、いすみ線国吉駅 - 上総中川駅間の苅谷踏切付近で、大原上総中野行きの5D列車(いすみ350型351・352の2両編成)が脱線した。乗客104名と運転士1名に負傷者はいない。これによりいすみ鉄道は大原駅 - 上総中野駅間の全線で運転を見合わせとなり、バスによる代行輸送を行っている。運転再開の見通しは立っていない。この列車は国吉駅を定刻に出発し、時速42kmで走行中、中平戸踏切を過ぎたあたりで列車に異音、揺れを感じたため、列車を停車させ確認したところ、2両の車輪8軸のうち6軸が脱線していることが判明した。現在、国の運輸安全委員会による調査が行われている[44]

いすみ鉄道においては2020年頃よりSNS等で軌道異常が多発しているとの指摘が多数上がっており[45]、これを見つけた大曽根信太郎いすみ市議会議員より2021年11月4日の「令和3年いすみ市議会第4回定例会」において、同社の安全性を問う質問がなされている[46]。市のヒアリングに対しいすみ鉄道側は「国の基準に基づく検査も保線もしており、大規模改修も必要が無い」旨回答しているが、有志による国土交通省関東運輸局への情報開示請求で、2020年12月10日付けで車両検査切れ、ATS動作検査未実施、ほとんどの駅で建築限界支障、運転士の身体機能検査未実施で行政指導されていたことが発覚する(関鉄管第41号)。さらに2023年1月25日付けで、分岐器検査を2年近く未実施(本来は一年に一度)、遊間(レールつなぎ目の隙間)規定超過94箇所、複数個所で軌道整備基準超過が発覚し、行政指導されている(関鉄管第94号)。この中には脱線現場の9k400m地点も含まれている。しかし、2024年6月26日から28日の監査で、過去に行政指導したところが是正されていないとして、2024年10月18日付けで再び行政指導されている。また、この中では軌道の保全について輸送の安全にかかる管理の徹底がされていないこと、鉄道に関する技術上の基準を定める省令第10条第2項に規定する社員教育が不十分であることなどが行政指導されるも、もはや改善の兆しはないことから、専門機関を活用することを提言される行政指導に至っている[47]。しかし、同社は関東運輸局に対して「自力で修復・改善できない」旨回答している事が、鉄道ライターの取材で明らかとなった[48]。なお、これら行政指導の事実を同社は一度も自発的に公表していないばかりか、鉄道事業法第19条の4で作成義務がある安全報告書にも記していない。

これらの問題について、県民や有志、鉄道ファンから千葉県総合企画部交通計画課に通報が繰り返されており、2022年3月22日には「脱線の恐れがある」と調査報告書の提出、陳情がされていた。また、2023年1月19日には鉄道工事に知見がある有志が国土交通省関東運輸局に陳情したが、同社はこれらの声に耳を傾けることなく脱線事故に至った[49]

運転再開については、当初、2024年10月中の運転再開を目指すとされていたが、同年12月9日、復旧の長期化が見込まれることを発表。その後も「2025年1月末にも運行再開に向けた具体的なスケジュールなどを発表する意向」であると報じられたが、結局1月末までにスケジュールは発表されなかった[50]

テレビ番組

脚注

関連項目

外部リンク

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.