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鉄道車両の座席(てつどうしゃりょうのざせき)では、鉄道車両のうち客車に備え付けられている椅子(座席)の形態や構造などを解説する。特記なき限り、日本の鉄道についての記述である。
本項では、座席の間が開放されている車両を扱う。数席ずつが個室や壁で区切られた車両は「コンパートメント席」を、ベッドを備えた車両は「寝台車 (鉄道)」を参照。
座面の高さと幅は、乗客の体格や快適性と車両の収容力のバランスで決定される[1]。快適性を重視して座面を下げて奥行きを大きくすると、足を投げ出すような形になるため乗客一人当たりの占有スペースは大きくなる[1]。また、収容力を重視して座面を上げて奥行きを小さくすると、直立した姿勢に近くなり、乗客一人当たりの占有スペースは小さくなる[1]。
乗客が着座する座面と、背中を押し付ける背もたれに使われている素材としては、木や繊維強化プラスチック(FRP)、金属などがあり、表面にはモケットという布や皮革、ビニールレザーなどが張られている。
固定式座席は、車両の床に枠を設置して蹴込板で囲い(暖房用ヒーター等は内部に収容)、その枠の上に座席を組み付ける[2]。固定式座席は回転式の座席に比べて、保守の手間や終着駅での座席の方向転換の手間が省ける利点がある[3]。
欧米など日本以外では座席は固定式のものが多く、座席を回転できない車両が多い[4]。進行方向に応じた座席の転換はできず、集団見合式(車両前部の座席と車両後部の座席を向かい合わせにしている固定式)と集団離反式(車両前部の座席と車両後部の座席を反対向きにしている方式)がある[5]。ヨーロッパでは固定式2人掛けクロスシートも多く採用されているが、日本では座席が前方を向いていないことに乗客の抵抗があるとされ、ほとんど採用されていない[5]。
回転式クロスシートの場合、車両の床に台座を設置し(暖房用ヒーター等は台座内部に収容)、その上に回転軸やフレームを取り付けて座席を組み付ける[2]。
台座や蹴込板を設置する座席の支持構造では床上が複雑になり、清掃が難しくなる欠点がある[2]。そこで床にはこれらの支持物を設置せず、壁面から座席を支持する片持式座席(かたもちしきざせき)またはカンチレバーシートが採用されるようになった[2]。
東日本旅客鉄道(JR東日本)が1991年より運行開始した「成田エクスプレス」に使用される253系の普通車において、椅子の下も荷物置き場とするためにこの構造が採用されたのが最初である。その後、通勤形車両においても209系のロングシートに採用され、その後、全国の事業者に採用されるようになった。
ロングシートは車両側壁に沿って座席を設置する形式である[6]。座席スペースを最低限に抑えて立席スペースを広くすることができ、乗客の乗降を円滑にできる[6]。
クロスシートは横向きの座席の形式で、固定式クロスシート、回転式クロスシート、転換式クロスシートなどに分類される[6]。固定式クロスシートにはボックスシートと同一方向での固定方式がある[6]。
クロスシート車では座席間隔と窓の配置等が設計上不可分の関係にある[8]。日本国外の高速列車では窓と座席の配置が必ずしも合っていない場合がある[9]。クロスシート車では、座席の回転、壁からのテーブルの張り出し等を考慮に入れた設計が必要となる[9]。
観光客の多い路線ではロングシートよりもクロスシートのほうが好まれるため、観光輸送と通勤・通学輸送の両立が課題となる[6]。
婦人・子供専用車(昨今の女性専用車設定は新設ではなく復活したもの)廃止以降、1973年の中央線快速を皮切りに「シルバーシート」が設けられた。しかし、バリアフリーを目指す社会の要請に合わせて「優先席」の呼び名に変更し、高齢者だけでなく傷病人・妊婦など立つことが辛い人に優先的に着席してもらうよう改められた。
2000年頃から携帯電話による医療機器への悪影響を防ぐため、優先席付近では携帯電話の電源を切るよう呼びかけがされるようになり、2005年頃からは該当箇所の吊り革の色で区別を図るなどの方策をとっていた。その後携帯電話の技術進歩で医療機器への影響が少なくなったこともあり、2014年7月より、関西の鉄道事業者では携帯電話の電源を切るマナーを「混雑時のみ」と変更した[13]。関東・信越地区では2015年10月から[14]、東海地区・九州地区では2015年12月から[15][16]、それ以外の地区でも2016年3月までに変更となった[17]事業者がある。
混雑の激しい路線では着席よりも収容力や乗降のしやすさを優先しロングシートを採用することがほとんどであり、国鉄・私鉄・JRの通勤形電車や近郊形・一般形車両に採用されている。クロスシート車から改造、あるいは増備途中からロングシートに切り替えた車両も多い(名鉄6000系、JR九州817系、JR東海キハ25形など)。また、静岡地区の東海道本線の大多数の普通列車のように、乗車時間が比較的短いことからあえてロングシート車を投入している例もある。
一方、車窓が見づらく、窓框高さとの関係から背もたれを低くせざるを得ず、傾斜も付けにくい(ごく一部の車両を除く)など構造上長時間乗車に向かないことから、閑散時や中〜長距離の乗車(都市間連絡や観光目的での利用など)ではあまり好ましい評価を受けない[注 1]。1990年代以降では、四国旅客鉄道(JR四国)のように「鉄道のライバルは鉄道以外にも自家用車やバスなどにある」との輸送モード間競争の観点から、オールロングシート車の新造を止めた事業者もある[注 2]。
2000年代後半以降は快適性の向上を図るため、背もたれを高くしたハイバック形やヘッドレストを持つロングシート車も登場しており、後述するデュアルシート車や京阪8000系(リニューアル車の車端部)、東急2020系等に採用例がある。
先に示したとおり、座席前のスペースを広く取れることから、車両の幅が狭かった時代は一等車や二等車といった特別車両に採用されていた[18]。日本でも大正時代中期までの官設鉄道や鉄道省では、貫通・非貫通式のいずれでも優等車はほとんど長手式であり[19]、車体幅の広がった昭和時代以降にシートピッチの広いボックスシートや転換クロスシートに移行したが、展望車などは1930年代末期のスイテ37049(後のスイテ49)やスイテ37050形(後のスイテ37形)などの時点でも長手方向に向けてソファーを置いたものになっていた[20]。少数ながらソファータイプのロングシートを採用したサロン調の特別車両が見られる(「おいこっと」など)。しかしながら、そのような車両は大変コストがかかるため、比較的少ないスペースでプライベートな空間を提供できること、窓の大きさを犠牲にすることなく背ずりの高さを上げられることなどから、特別料金を必要とする座席にはクロスシートを採用する例が大勢を占め、ロングシートは通勤・近郊形車両に使われている例がほとんどである。なお、通路部分に大きいテーブルを設置して、イベント車に使用することもある。こちらはさほどコストはかからないため、ローカル線や路面電車の車両でもロングシート車をイベント対応車として設定しているケースも見られる。
特殊な配置では、JR東日本キハ100系の一部や、伊豆急行2100系、叡山電鉄900系のように、観光客が車窓風景を楽しめるように中央部から窓を向いたロングシートが設置されたものがある。このタイプは乗客の出入りの関係から1 - 2人が着席できるものが多く、また観光目的であることからロマンスシートに準じた背もたれの高いものが用いられることが多い。近年では南海電気鉄道高野線「天空」や九州旅客鉄道(JR九州)の観光特急「指宿のたまて箱」のように、このタイプのロングシートに限って有料座席(指定席)として発売されることがある。なおこれらの座席について「天空」は「ワンビュー座席」、「指宿のたまて箱」は「ソファーシート」と呼ばれており、公式にはロングシートと呼ばれない。
ロングシートを含む客車の座席では、幅2人分を1人で使う乗客もいる[21]。こうした迷惑行為の防止など快適性向上、鉄道事故時の被害軽減を狙った座席が導入されている。
かつては『普通鉄道構造規則』(2002年廃止)の中で、座席数を車両定員の3分の1以上、かつ1人当たりの着席幅を400 ミリメートル (mm) 以上とすることが規定されていた。国鉄時代は約430 mmに設定していた[23]。この規定は東日本旅客鉄道(JR東日本)の6扉車導入を機に廃止されたが、そうした特殊な例を除けば2000年代以降もおおむね守られている。
1人当たりの着席幅は体格向上に応じて拡大の傾向にあり、最新の車両では450 mmから480 mm程度である[23]。
なお、改定後の条文は次の通り。
国鉄・JRの近郊型電車や一般型気動車、大手私鉄の特急型車両や地方私鉄などにおいて採用されている。関西圏・中京圏などでは以前から鉄道会社間の競合が激しく、都市間列車を中心にJR、私鉄双方とも転換式クロスシートの採用例が多い。一方、首都圏では東武伊勢崎線・東武日光線の6050系、京浜急行電鉄の快特のうち泉岳寺駅・品川駅発着の列車中心に運転される2100形、西武池袋線・西武秩父線の4000系など、主に中距離の都市間利用や行楽客を目的とした列車向けの車両への採用例がある[注 4]。しかし、首都圏では関西・中京圏に比べ混雑率が高く、ロングシートに比べ乗降しづらくラッシュ時の遅延の原因になることや、立ち席スペースが狭いことや、狭い空間で他人と隣り合うもしくは向き合って座ることを好まない昨今の風潮などから料金不要車両での採用例は少ない。その反面クロスシートの要望が完全に消えたわけではなく、車端部のみクロスシートとした車両も登場している。
なお、ケーブルカーは車体の構造上、座席は必ずクロスシートを採用している。
なお、回転式、転換式にかかわらず、鉄道用語としては進行方向に向けることのできる2人掛け座席をロマンスシートと呼ぶ。このような構造の座席設備を持つ車両をロマンスカーと呼び、特に小田急電鉄の小田急ロマンスカーは列車名としても広く親しまれている。
主に有料特急用車両に装備され、向きを転換するときには床面に垂直な回転軸を中心に180度回転する。着席者が進行方向を向いて座ることができ、また必要に応じて前後の座席を向かい合わせにして利用できる。観光路線を運行する車両や、ジョイフルトレインなどの団体利用を念頭に置いた車両においては45度あるいは90度回転させ、通路の反対側の座席と向かい合わせにしたり、窓側に向けて固定したりできるものなどもある。座席の背面に後席の乗客のためのテーブルや小物入れ、足置きなどを備えるもの、肘掛の中にテーブルや内蔵しているものもある。鉄道車両で喫煙が可能だった時代には、灰皿も取り付けられていた。かつての国鉄形の標準座席間隔は、近郊形グリーン車で970mm、特急形普通車で910mmまたは940mm(国鉄キハ183系・キハ185系)であった。
昭和30年代から40年代に製造された国鉄の特急形車両の普通車、準急形車両の二等車(のちの一等車)、近郊形車両のグリーン車ではリクライニング機能のない回転式クロスシートが採用されていた[要出典]。現在採用されている回転式クロスシートの大部分は背もたれの傾斜を変えられるリクライニングシートである。リクライニング機能のない座席を備える車両は、特急などの優等列車専属で使用される車両では東武300系やE4系「Max」の2階自由席車、後述するデュアルシート(回転できるのはクロス状態時のみ)などがある。
背もたれだけが前後に移動する機構により、着席方向を切り替えられる座席である。特に会社間競争の激しい中京・関西地方の近郊形車両に多く採用されているが、関東・東北地方では採用する鉄道会社が少ない。特急形車両では新幹線0系電車や185系、キハ185系の普通車(キロハ186のみ)座席に採用例があるほか、既存車両でも座席改良の際に採用した例がある(キハ80系やキハ58系など)。
比較的簡易な機構で、回転クロスシートと同様に進行方向を向いて座り、前後の座席を向かい合わせにすることが可能である。背もたれに中折れ機構を設け、着座姿勢をより改善しているものもある。戦前から昭和30年代までは二等車・特急形車両などの特別料金を要する列車で用いられることも多かったが、回転式クロスシートに比べると座り心地が悪く、背もたれの背面に設備品を装備できず、また基本的にリクライニング機構も設けられないため[注 5]、この分野では回転式に移行した。代わりに1980年代末期以降ではJR東日本をのぞいたJR各社の普通列車用車両や、一部の私鉄で運行される特別料金不要の特急・急行用車両に導入される例が増えている。座席間隔は国鉄型が910mm、私鉄では900mmとする例が多く、必要に応じて変更される。なお、転換クロスシート車といわれる車両であっても、近郊形・私鉄の特急形では車端部や扉横の座席は転換クロスシート並みに背もたれを傾斜させた固定式とし、中間の座席のみを転換式としているものが多い。これは、背もたれ後部のデッドスペースの発生による乗車定員の減少を防ぐためである。
終着駅で車掌がスイッチを操作することにより一斉に各席の方向が転換する、座席の自動転換装置を備える車両もある。このうち京急2100形は向かい合わせ使用をしないことを前提に座席間隔を詰め、より多くの座席配置とする設計を採っており、営業時の座席は進行方向に固定され、乗客が転換することはできない。運行開始直後はこれを知らない者が強引に転換させようと座席を引っ張り故障が多発した。そのため、背もたれには座席を転換できない旨の注意書きがある。
背もたれの傾斜角度を調節することができる座席である。
国鉄では、1949年(昭和24年)戦後初の特別急行列車「へいわ」復活に際し、一等展望車に使用するため復活されたマイテ39の座席で初めて採用された。本格的な使用は翌年に登場した特別二等車スロ60形からで、このとき採用された機械式5段階ロック・足載せ台付の座席は以後大きな変更もなく国鉄末期まで特急・急行用二等車(→一等車→現グリーン車)の標準装備とされた。なお、スロ60形客車は最初は一等車「スイ60」として設計されたため座席間隔を1,250 mmとしていたが、その後製造されたスロ53形では1,160 mmとなり、これはJR移行後でも特急形車両におけるグリーン車の標準座席間隔である。客車特急列車の展望車の代替車両として151系電車で設計・製造された「パーラーカー」クロ151形車両の1人用リクライニングシートの座席間隔は1,100 mmだった。また例外的に普通車(当時は3等車)より改造されたスロ62形の座席間隔は1,270 mmで、当時の国鉄型では最大だった。
新幹線では1964年の東海道新幹線開業時における新幹線0系の一等車から、現在に通じる座席幅のものを採用している。車体幅が在来線より大きい新幹線では、横一列あたりの座席数が普通車の大多数は3 + 2列なのに対し、グリーン車は2 + 2列として、座席幅にゆとりを持たせている。
普通車で最初に採用されたのは、国鉄183系の簡易式(後述)である。その後、1985年の新幹線100系、在来線用も1986年のキハ183系500番台から普通車においてもフリーストップ式のリクライニングシートを採用しており、現在は一部車種を除き特急型車両では標準装備となっている。
国鉄分割民営化以降、普通車用座席の改良が重ねられた結果、1990年代後半には普通車用座席とグリーン車用座席との差は小さくなった。差は傾きや座席の大きさ、シートピッチ(座席間隔)[注 6]などである。そのため在来線用のグリーン車では横一列当たりの座席数を2 + 2から2 + 1に減らし、新幹線と同様に1人あたり座席幅をゆとりを持たせて普通車用座席との差別化を図る場合も多い。
また、夜行列車の一部では、高速バス等との競争のため、普通車であっても傾きの大きさがグリーン車用に近い座席、あるいはグリーン車から転用した座席を設置し、シートピッチもグリーン車に近い寸法として居住性を高めたものもあった。2003年3月まで「ムーンライトえちご」に充当された165系が始まりとされている。かつての「なは」「あかつき」では夜行高速バス並みに全席1人掛けで千鳥配置とした傾きの角度が大きい「レガートシート」があった。これ以前にも、1980年代からは四国や九州の気動車急行においてグリーン車を座席を交換することなく普通車に格下げして使用する例もあった[注 7]。
1972年(昭和47年)に登場した183系電車の普通車で初めて採用[注 8]された、リクライニングシートの一種である。通称は「簡リク」。同時期に製造された14系客車座席車、485系電車(1974年度以降の新製車)、381系電車や、また、113系電車ではグリーン車の一部などにも採用された。座席下部に設置された受け皿のようなものの上にシートを配置する形状で、背もたれに体重を掛けると座面が前へスライドし背もたれがリクライニングする構造である。普通車用のためリクライニング角度は小さく、リクライニングさせると繰り出した座面の分だけ座席の前後間隔が狭くなるという欠点がある。
初期のものはリクライニングにストッパーが無く、背もたれに体重を掛けていないと座席の傾きが元に戻り、体を起こすたびに大きな音と衝撃が生じることから[注 9]、1976年(昭和51年)以降に製造された車両からは完全にリクライニングさせた時のみ作動するストッパーが追加された。国鉄分割民営化前後から指定席車用座席を中心にフリーストップ式への換装が行われたが、一部には廃車まで無改造で残存した車両も見られた。
このシートは埼玉県さいたま市の鉄道博物館のヒストリーゾーン(現:車両展示ゾーン)で、背もたれのストッパーがあるものと無いもの両方に座ることができたが、現在は撤去されている。
クロスシートは、おおむね以下の構成である。
座席幅の寸法は、特急用車両では普通車で430 - 460 mm、グリーン車では2 + 2配列で450 mm前後、2 + 1配列のタイプや新幹線車両では470 - 500 mm程度が一般的である。数値のみで見た場合普通車とグリーン車との間の差、また前述のロングシート車の数値と大差がないとされるが、座席幅の数値は肘掛部分をのぞいた幅で計測されるのが通常であるため、横方向における体感的なゆとりは座席幅よりもむしろ肘掛の有無や、肘掛の幅の差に表れる[注 10]。
なお、一部の車両には車椅子を固定するために標準の配列から1人分減じた区画がある。
ロングシートとクロスシートを組み合わせた配置で、通常は乗降が円滑になるようドア付近をロングシート、ドア間にクロスシートを配置する。クロスシートは固定式がほとんどだが、JR西日本のように転換クロスシートを採用した例もある。
日本では1920年代の第二次都市間高速電気鉄道(インターアーバン)建設ブームの頃から、長距離輸送とラッシュ時対策の両立や、電動車の主電動機点検蓋(トラップドア)とクロスシートの干渉を防ぐ目的[注 11]などで採用され始め、第二次世界大戦後も都市間輸送用を中心に採用が続いている。
国鉄時代の車両では近郊形車両である113系や415系等の3ドア車や、80系、711系やキハ40系等の2ドア車が存在している。また、交直流急行電車やキハ58系などの急行形車両には「近郊形改造」として、ドア付近の座席を一部ロングシートに改造した2ドアのセミクロスシート車が存在する。ロングシートで落成した車両でも、輸送需要の変化に即してセミクロスシートに改造された車両もある(JR東日本209系(房総地区向け)、阪神8000系など)。私鉄の例では、東武6050系や西武4000系、名鉄6000系、西鉄3000形などが挙げられる。
いわゆる国鉄型車両の場合、新規製造した時点では、3ドアの電車では通常ドア間に左右各2ボックス16名分の固定クロスシートを配していた。また、2ドア車両の場合ではデッキ付きのものはドア間すべてに固定クロスシートを配しており、デッキがないものについては客用扉付近をロングシートにし、扉間中央部にクロスシートを配する例が多かった。
1990年代以降は4ドアの車両でもクロスシートを導入する車両が増えている。日本で初めて登場した4ドアのクロスシート車は1970年に製造された近鉄2600系電車および量産型の2610系・2680系であるが、ロングシート部分はなく全座席が固定クロスシート設置として製造されたため、セミクロスシート車ではない。首都圏の場合、相鉄新7000系電車(7755F)が比較的混まない一部車両[注 12]のドア間に左右1組ずつ固定クロスシートを試験的に設置した。これを筆頭に同等の設備を同社の8000系、9000系、JR東日本のE217系、E231系(近郊タイプ)、E531系や首都圏新都市鉄道TX-2000系電車で採用されている。また、名鉄300系電車や名古屋市営地下鉄7000形電車のようにロングシートと転換式クロスシートを扉を境に交互に配置した例、近畿日本鉄道のL/Cカーや関東私鉄の一部の通勤形車両に見られるデュアルシートなどがある。
なお、東急9000系電車、東京都交通局6300形(1、2次車のみ)、東京メトロ南北線9000系(1次車のみ)、京急新1000形、京急2000形(格下げ改造後)、南海1000系、南海2000系(後期車のみ)、香港鉄路(MTR)のメトロキャメル電車 (交流)(通勤化改造後)などの通勤形車両で、車端部に少数のボックスシートを配した例がある。
また、JR西日本125系・223系5500番台・521系、阪急6300系のように、クロスシート主体で運転席後部や妻面側車端部などに少数のロングシートを配する例もある。
また、トイレを有する車両で、便所使用者の直視を避けるため、当該便所前の座席のみをクロスシートとしている車両も存在する。採用例ではキハ35系、211系、JR東日本107系、JR東日本E233系3000番台の一部編成の6号車等がある。
その他、通路の左右でロングシートとクロスシートを組み合わせて設置する方式もある。第二次世界大戦前の日本では主に琵琶湖鉄道汽船100形電車や山陽電鉄100形電車など、通路の両側を2人掛けのクロスシートとするのに十分な車体幅を確保できない形式に採用された。戦後も草軽電気鉄道や仙北鉄道(キハ2406)、下津井電鉄(モハ1001・2000系“メリーベル”)など、762mm軌間で車体幅が狭い軽便鉄道の車両においてクロスシートを配置する方式として利用された。近年ではJR四国7000系、JR東日本701系5000番台、JR九州キハ220系200番台など、主にラッシュ対策と長距離輸送の両立を求められる3扉構成の車両において、クロスシートとロングシートの組み合わせを車体中央を中心に点対称に配置した千鳥配置のレイアウト[注 13]で採用されている。通常のセミクロスシートに対して通路のスペースが広く取れるほか、ロングシートとクロスシートとの壁が無いために開放的であるなどの利点がある。ただし、クロスシートに座る客にとっては、ロングシートに座る客から横顔を見られる恰好となるので、居心地がよくないという欠点もある。
JR東日本719系電車のクロスシート座席部分は集団見合い型、名鉄6000系電車の一部では集団離反型の配置である。
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