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長野県上田市に本社を置く鉄道事業者 ウィキペディアから
しなの鉄道株式会社(しなのてつどう、英: Shinano Railway Co., Ltd.)は、長野県上田市に本社を置く第三セクター鉄道事業者[1]。北陸新幹線の開業に伴い、東日本旅客鉄道(JR東日本)から1997年(平成9年)と2015年(平成27年)にそれぞれ経営分離された長野県内の並行在来線(しなの鉄道線、北しなの線)を経営している[1]。
種類 | 株式会社 |
---|---|
略称 | しな鉄 |
本社所在地 |
日本 〒386-0018 長野県上田市常田一丁目3番39号[1] 北緯36度23分36.5秒 東経138度15分8.7秒 |
設立 | 1996年5月1日 |
業種 | 陸運業 |
法人番号 | 9100001010566 |
事業内容 | 旅客鉄道事業 他 |
代表者 | 代表取締役社長 土屋智則 |
資本金 |
23億9245万円 (2019年3月31日現在[2]) |
発行済株式総数 | 48,409株[2] |
売上高 | 44億9471万8000円(2019年3月期[2]) |
営業利益 | 1億5451万4000円(2019年3月期[2]) |
純利益 | 1億2398万8000円(2019年3月期[2]) |
純資産 |
40億8961万4000円 (2019年3月31日現在[2]) |
総資産 |
85億6399万4000円 (2019年3月31日現在[2]) |
従業員数 | 266人(2022年4月1日現在)[1] |
決算期 | 3月31日 |
主要株主 | |
外部リンク |
www |
特記事項:並行在来線を経営する目的で設立 |
整備新幹線開業に伴い、JRの経営を離れる在来線を引き継いだ、初の鉄道会社である。
しなの鉄道は当初、1998年長野オリンピックの開催に合わせて整備された北陸新幹線高崎駅 - 長野駅間(長野(行)新幹線)の開業に伴い、JR東日本から経営移管されることとなった信越本線の軽井沢駅 - 篠ノ井駅間を、JR東日本に代わって経営する会社として設立された。同区間は1997年(平成9年)10月1日の新幹線開業と同時に、しなの鉄道へ移管されて同社のしなの鉄道線として開業した。
しなの鉄道線開業当初は、長距離客が新幹線に移乗したことなどにより経営は苦しく、2001年9月の中間決算では累積赤字が24億円以上になり、資本金23億円を上回る債務超過状態に陥った。そのため、同年に「しなの鉄道経営改革に向けての提言」を策定。2002年6月、エイチ・アイ・エス (HIS) 創業者の澤田秀雄に再建を要請し、同社から杉野正を社長に迎えた。杉野は退任するまでの2年間、高齢者の乗降介助を行う乗務員「トレインアテンダント」やサポーター制度の新設といった利用促進策や経営合理化を進めた。不公平な契約の解消など様々な無駄の削減や第三セクター特有のお役所仕事的な社風の変革などに取り組んだ一方、2002年に連絡乗車券の発売駅・発売範囲を大幅に縮小するなど旅客サービスの後退もあった。
杉野の半ば体育会系・営業マン的な経営手法により、しなの鉄道は減価償却費前の利益で黒字を計上するようになったものの、2004年には減損会計導入を進めたい当時の長野県知事田中康夫と「上下分離方式」を主張する杉野が対立して、杉野は社長を辞任。スカイマークエアラインズ(現・スカイマーク)元社長の井上雅之を社長に迎えて減損会計に踏み切り、その結果、2005年度決算において開業以来の初めて最終損益において黒字を計上するに至った。井上の下でも、駅構内で宝くじを販売するなど異業種的な発想の増収策が実行された。
井上は2008年9月30日付で退任し、空席となっていた社長のポストには、2009年6月からJR東日本出身の浅海猛が就任。分離元鉄道事業者の社長は設立以来初めてのことであった。これは、2015年(平成27年)春に予定されていた北陸新幹線の長野駅 - 金沢駅間延伸開業に伴い、JRから経営分離される信越本線の長野駅以北区間の経営主体として、しなの鉄道が候補に挙がっている点を睨んでの起用である旨を、当時の長野県知事村井仁が示唆している[4]。
その長野駅以北の県内区間にあたる信越本線の長野駅 - 妙高高原駅間についても、しなの鉄道が運営主体となる旨が2012年4月に決定し、2013年3月には同区間の路線名称を「北しなの線」とすると発表した[5][6]。北しなの線は同新幹線の延伸開業日にあたる2015年3月14日に開業し[7]、同日以降、しなの鉄道が運営する鉄道路線は前者のしなの鉄道線と、後者の北しなの線の2路線となった。なお篠ノ井駅 - 長野駅間は同新幹線の延伸開業後も引き続きJR東日本が運営するため、しなの鉄道線と北しなの線は同区間を挟んで直接接続しない飛地的な路線となっている(北しなの線の経営引き受けの経緯は「しなの鉄道北しなの線」を参照)。
社長職は2016年、東京海上日動火災保険出身の玉木淳に交代した。東京海上日動社長の北沢利文が長野県出身である縁で県から要請を受けたことと、東京海上日動が長期的な保険市場の開拓も視野に地方再生を支援していることが背景となった。玉木は沿線の人口減少や今後必要となる車両更新費用に備えて、観光・行楽と通勤両面で利用客取込を進める方針を示している[8][9]。
2019年には、玉木を専務として支えた春日良太(長野県庁出身)が社長を引き継いだ[10]。
2020年初頭からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により輸送人員、旅客収入がともに大きく減少。2021年3月期決算では6期ぶりに赤字に転落した。春日は2022年春のダイヤ改正で減便する方針を示した[11]。
その後も赤字経営が続いており、2023年12月14日に社長の土屋智則に長野県知事の阿部守一、東御市長の花岡利夫が東京の国土交通省を訪れ、同大臣の斉藤鉄夫にホーム短縮などの規模縮小やIC乗車カード導入のための支援を要請した。また将来的にはしなの鉄道線の信濃追分駅 - 上田駅間、北しなの線の黒姫駅 - 妙高高原駅間の単線化を検討していると報じられた[12]。
駅の新設・路線の設備・列車の運行関係は「しなの鉄道線#歴史」「しなの鉄道北しなの線」を参照。
営業する路線についての詳細は下記の記事を参照のこと。
1997年(平成9年)に軽井沢駅 - 篠ノ井駅間の並行在来線区間がしなの鉄道へ移管された後も、信越本線の篠ノ井駅 - 長野駅間についてはJR東日本側が「篠ノ井線の特急列車[注 1]ダイヤ調節のため」などを理由に経営分離せず引き続き運営を継続していることから、しなの鉄道は最も運賃収入が見込まれる同区間について早期の経営権譲渡を求めていた。当時の社長である杉野正は「いいとこ取り、初めから知ってたんだと思います」[24]と批判し「JR東日本の都合のいいように契約が結ばれている」と不満を述べていた[25]。
長野県とJR東日本長野支社が2002年(平成14年)に実施した共同調査によると、同区間の運賃収入は年間約14億円にのぼるとされ、県としなの鉄道ではこれを基に同区間の経営権を見直す旨について検討を進めてきた。しかし、2009年(平成21年)6月4日に開かれた「長野以北並行在来線対策協議会」の幹事会において、仮にしなの鉄道が同区間の経営権を得た場合、JR東日本をはじめとするJRグループ各社[注 1]との間で列車の運行調整を担うのは技術や経費等の問題から困難である点が指摘され、また当時のしなの鉄道の実績を基に人件費・駅管理費等の維持コストを推計して営業損益を試算したところ、年間約10億円の損失が生じるとの結果が報告されるなど、予想以上にコストを要することが判明した。これらを基に検討した結果、同区間については引き続き従来通りJR東日本が運営し、しなの鉄道が乗り入れる方式を継続することが適当とする結論に至り、JR東日本に経営権の見直しを求めない方針に転換した[26]。
以下に示すように、前述のSR1系以前にも、新製車両及び他事業者からの中古車両の購入計画があったが、いずれも実現しなかった。
仕業検査は戸倉駅構内の車両基地で、交番検査・重要部検査・全般検査は屋代駅構内の長電テクニカルサービス屋代車両検査場で、それぞれ行われる。
なお、しなの鉄道管内には開業以来汚物処理施設が設置されておらず[55]、その後も「大規模な処理施設建設を伴い財政負担が困難(原文ママ)[40]」として設置を見送り続けてきた。このため、しなの鉄道所属となった車両は、後年「ろくもん」に改造された115系S8編成を除き、トイレを閉鎖している。
なお、前述のSR1系にはトイレが設置されるため、車両基地内に汚物処理施設を建設することとなった[40]。
車内放送はSR1系は加藤純子が日本語放送、亀井佐代子が英語放送[56]、115系の英語放送はリアド慈英蘭が担当している[57]。
なお、2018年に当時の社長の玉木が、長野電鉄の特急の車内放送を担当していた信越放送アナウンサー(当時)山崎昭夫にSR1系の車内放送を依頼したが断られている[56]。
2024年時点では、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードでの運賃精算は一切不可となっているが[58]、2025年度中に導入する方針を固めたことが報じられている[59]。
大人普通旅客運賃(小児半額、10円未満は切り上げ)(2019年10月1日改定[60][61])
しなの鉄道線の「駅一覧」および北しなの線の「駅一覧」から乗車駅・降車駅間の営業キロを計算して1 km単位に切り上げ、それを下表に当てはめたものが運賃となる。
なお後述する通過連絡運輸により、しなの鉄道線各駅と北しなの線各駅相互間を信越本線経由で乗車する場合、しなの鉄道区間の運賃はJR区間(篠ノ井 - 長野:9.3 km … 200円)を挟んだ前後のしなの鉄道区間の営業キロを通算して求める特例が適用される。
キロ程 | 運賃(円) |
---|---|
- 3 km | 190 |
4 - 6 | 230 |
7 - 9 | 240 |
10 - 11 | 260 |
12 km以上 | 20.05円×営業キロ(1 km未満端数切上げ)×1.10(消費税)
(10円未満切り上げ) |
自社で取り扱う乗車券の発券範囲は以下の通り[62][63][64]。
連絡乗車券の発売範囲は、2002年(平成14年)に発売駅・発売範囲を大幅に縮小し、その後、長野電鉄屋代線廃止、北しなの線開業を経て現在の形となっている。なお、妙高高原駅での発売については、同駅がえちごトキめき鉄道管轄のため、えちごトキめき鉄道が同駅を対象とする連絡運輸区間に対してのみ発売される[65][注 2]。「えちごトキめき鉄道#連絡運輸」も参照。
凡例・備考
JR東日本側ではしなの鉄道各線を通過する通過連絡運輸として、以下のものが設定されている[64]。なお、しなの鉄道自体は信越本線黒井駅 - 新潟駅間を連絡運輸範囲に含めていないため、より黒井駅に近い長野駅以北の自社線の駅よりも、遠い安茂里駅以南のJR東日本管轄の駅の方が連絡運輸範囲が広い現象が発生している。
しなの鉄道では片道の営業キロが100 kmまでの乗車券では途中下車ができない、としている[67]。
自社線内のみで片道101 km以上の乗車券は存在しないため、途中下車が可能なのはJR線など他社にまたがる連絡乗車券等(例:軽井沢駅 - 篠ノ井駅 - 長野駅 - 妙高高原駅)に限られることになる。
JRと同じく身体障害者割引・知的障害者割引のほか、精神障害者割引も設定されている。各種障害者手帳を提示すれば普通運賃より5割引となる。JRは精神障害者に対する割引を行っていないため、精神障害者割引利用の際は篠ノ井駅、長野駅、豊野駅などのJRとの接続駅まで購入し、下車駅で清算する必要がある。
発売額は2019年10月1日現在[68]
これらに加えて、東御市観光周遊循環バス(まるっと信州とうみ号)とセットになった「軽井沢-東御 休日ワインきっぷ」、上田電鉄別所線と乗り継げる「軽井沢・別所温泉フリーきっぷ」など期間・区間を限定した割引乗車券[72]を取り扱うほか、記念乗車券[73]を発売することもある。
2018年には、台湾鉄路管理局との友好提携締結に伴い、訪日外国人向けを含む自社のフリーきっぷ類と台鉄の集集線、内湾線、平渓線・深澳線用1日乗車券および[74]、旧山線レールバイクが[75]、台湾側は集集線の1日券および同年の花蓮地震の復興支援を兼ねて花蓮駅発着の使用済み乗車券をしなの鉄道のものと2019年3月末まで無料交換できる相互交流を開始した[74]。
2005年より、鉄道施設内での映画、テレビドラマ、コマーシャルのロケーション撮影の誘致を開始し、同年より撮影が行われている。NHK ドラマ8『七瀬ふたたび』(2008年10月9日 - 12月11日放送)の第1話では主人公3人が出会うシーンで使用された。映画『わたしは光をにぎっている』(2019年)では、しなの鉄道牟礼駅が使われている。
しなの鉄道では、利用促進につながるサービスの提供や情報発信を行い、利用の拡大及び利用者・沿線住民とのコミュニケーションの強化を目指すことを趣旨として、2002年(平成14年)からファンクラブ制度を導入している。
2002年、しなの鉄道が経営改革の一環として公表した「20の改革メニュー」に、車両の維持費や保線費用を、沿線や県内のみならず全国に支援を求める策として「しなの鉄道レール&トレインサポーター」の制度導入が盛り込まれ、同年7月に発足、翌8月から運営を開始した。レールの保守費を支援する「レールサポーター」と車両の保守費を支援する「トレインサポーター」の2種類が設けられ、会員登録者には会員証を送付するだけでなく、会員の氏名を駅構内の枕木や車両内に掲示するサービスを実施した。これがファンクラブ制度の前身である。
2006年(平成18年)、前掲のサポーター制度を発展統合する形で「しなの鉄道ファンクラブ」が創設された。年会費は10,000円(一般・子供とも同額)で、会員登録者には会員証の送付をはじめ、期間限定フリーきっぷの進呈、ビアトレインなどイベント列車ツアーへの招待などが特典として付与された。
だが会員は鉄道ファンが中心で入会者数も100人程度と伸び悩んだことから、しなの鉄道社長の藤井武晴は2013年(平成25年)6月18日の株主総会後の記者会見でファンクラブ制度のリニューアルを実施する方針を明らかにし、より多くの人が入会できるよう会費を引き下げるのをはじめ、各種割引の付与や、しなの鉄道の取り組みを知らせる会報の発行など、特典内容を見直す意向を示した[76]。
このリニューアルは同年10月1日付で実施し、組織名称も「しなてつファンクラブ」に改称した。年会費が一般会員1000円・子供会員500円(入会時小学生以下で保護者の入会も必要)に引き下げられたのに加え、新たにポイント制度が導入された。会員登録者は、しなの鉄道の窓口等で定期券・フリーきっぷ・企画乗車券・オリジナルグッズを購入したり、ファンクラブイベントへ参加したりする際、会員証を兼ねるポイントカードを提示するとポイントが付与され、貯まったポイント数に応じてノベルティグッズや、しなの鉄道の利用券と交換できる。会員にはその他、しなの鉄道が主催する旅行商品を割引価格で利用できるほか、春休み・夏休みに開催する車両基地無料見学など会員限定イベントへの参加、年2回のファンクラブ会報の送付などの特典がある[16]。
しなの鉄道のSR1系添乗員兼駅係員という設定の鉄道むすめ「上田れむ」が2021年1月にデビューした(姓は上田駅、名前は牟礼駅の逆さ読み)[77]。
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