しなの鉄道SR1系電車
しなの鉄道の直流一般形電車 ウィキペディアから
しなの鉄道SR1系電車(しなのてつどうSR1けいでんしゃ)は、しなの鉄道の一般形電車[1]。
しなの鉄道SR1系電車 | |
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基本情報 | |
運用者 | しなの鉄道 |
製造所 |
総合車両製作所横浜事業所 総合車両製作所新津事業所 |
製造年 | 2020年 - |
製造数 | 23編成46両(予定) |
運用開始 | 2020年7月4日[1] |
投入先 |
しなの鉄道線 北しなの線 信越本線(篠ノ井駅 - 長野駅間) |
主要諸元 | |
編成 | 2両(全車0.5M電動車) |
軌間 | 1,067 mm[2] |
電気方式 | 直流 1,500 V (架空電車線方式)[2] |
最高運転速度 | 100 km/h[2] |
設計最高速度 | 120 km/h |
起動加速度 | 2.0 km/h/s[3] |
減速度 | 3.6 km/h/s[3] |
全長 | 20,000 mm[2][注 1] |
車体長 | 19,570 mm[2] |
車体幅 | 2,950 mm[2] |
車体高 |
3,620 mm[2] (パンタグラフの折りたたみ時:3,985 mm)[2] |
車体 | 軽量ステンレス(sustina) |
台車 |
軸梁式ボルスタレス台車
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主電動機 | かご形三相誘導電動機TDK6325-B型主電動機 |
主電動機出力 | 140 kW[3] |
駆動方式 | TD平行カルダン駆動方式 |
歯車比 | 97:16=1:6.06[3] |
編成出力 |
|
制御方式 | IGBT素子VVVFインバータ制御 |
制御装置 | 東洋電機製造 RG6047-A-M(1C2M) |
制動装置 | 電気指令式(発電・回生〔純電気式〕・抑速・耐雪ブレーキ付き)[3] |
保安装置 |
概要
しなの鉄道では開業時より、JR東日本から譲受した115系電車を運用してきたが、2018年時点で製造から40年近くが経過し、老朽化が進行している同形式の置き換えに加え、運用車両の省電力化やライナー列車の再有料化による収益向上などを目的に、しなの鉄道では初となる自社発注の新製車として導入した[4]。車両デザインは6社が参加したコンペにより選定された[5]。
2020年に導入された100番台と、2021年から導入されている200番台および300番台が存在し、それぞれで車内の構造が大きく異なっている[5]。本項では両番台の共通部分について述べ、双方の独自構造についても概説する。
共通事項
→「JR東日本E129系電車 § 構造」も参照
東日本旅客鉄道(JR東日本)のE129系電車と同じ「sustina」S23シリーズの拡幅車体を採用しており、車体構造はほとんどE129系と同一である[5][6]。機器の面でもほぼ同型となっていることから、この節では主にE129系からの変更点について記述する。
形式
主要機器
集電装置は、中央本線狭小トンネル通過対応のPS33GパンタグラフをクモハSR111形に搭載している。100・200番台は霜取り用パンタグラフを含め2基装備しているが、300番台は霜取り用パンタグラフが省略され1基のみ装備されている[7][8]。
屋根上に冷房装置とブレーキ抵抗器のほか、列車無線アンテナ・ホイッスル・信号炎管を装備しており、配置もE129系と同様だが、S307編成以降の増備車は信号炎管の装備が省略されている。[要検証]
- VVVFインバータ制御装置
- 静止型インバータ補助電源装置
- PS33Gパンタグラフ
- DT71系動力台車
- TR255系付随台車
- 真空式汚物処理装置
- 信号炎管が省略された編成の屋根上
内外装
「sustina」S23シリーズの軽量ステンレス3扉車で、旅客用の半自動ドアボタンが車内外ドア横に設けられている[5][7]。
フルカラーLEDによる行先表示器や、車内に千鳥状に配置された車内案内表示器といった旅客案内装置も基本的にE129系のものを踏襲しているが、115系やE129系のドア上部に設置される車内LCDの搭載は見送られているが、乗務員室背面に27インチワイドの広告用モニターが設置されている[9]。壁はホワイトをベースとしており、一部が薄い木目調となっている[5]。吊り革はE129系のブラックからホワイトに変更された。[要検証]
長野県の県歌である「信濃の国」をアレンジした乗降促進用メロディと、オリジナルのミュージックホーンを搭載している(作曲・編曲は福嶋尚哉)[10][11]。
- 前面行先表示
- 側面行先表示
- 運転台
- 車端部(運転室側)
- バリアフリートイレ
- ドア上表示器
- 広告用モニター
番台別概説
要約
視点
ライナー車両
100番台

(2022年2月 古間駅 - 黒姫駅間)
2020年4月に3編成6両が納入された[12]番台区分で、しなの鉄道の形式名発表では「ライナー車両」と区分されている[5]。編成番号はS100番台で付与される。
デザインは「沿線に爽やかな新風を」をコンセプトに、長野市内に本社を置く総合広告代理店「アサヒエージェンシー」の案が採用された[5]。外装は高原の風をイメージしたロイヤルブルーをベースとし、側面には信州の山並みと千曲川の清流をイメージした緑と水色のラインと、115系のデザインを踏襲したシャンパンゴールドの4本線が引かれている[13]。
本番台のためのシンボルマークも制定され、しなの鉄道のロゴを沿線の11市町[14]と長野県を象徴した12枚のリーフが取り囲んだものとされた(金単色のゴールドバージョンとカラーバージョンの二種類があり、カラーバージョンでは信州の四季の移り変わりを表現している)[15][5]。
ライナー運用、普通運用問わずフリーWi-Fiサービスを提供している[16]。なお、フリーWi-Fiと電源コンセントは本番台のみの特別装備である[17]。
編成表
- >:シングルアームパンタグラフ
- VVVF:VVVFインバータ装置
- CP:空気圧縮機
- SIV:補助電源装置(静止型インバータ)
内装(ライナー車両)
ライナー列車のほか間合いの普通列車での運用も考慮し、すべての座席がデュアルシートで構成される[15]。クロスシート時は座席が転換可能で、座席背面には電源コンセントとカップホルダーが設けられている(ロングシート時は使用不可)[18]。シートは転換可能だが、「軽井沢リゾート号」では軽食付きプランのために一部座席を向かい合わせに固定したうえで進行方向反対側の座席にテーブルを設置する形をとっているため、当該プランでは座席転換はできない。
座席は赤を基調とし、沿線の特産品であるリンゴをデザインしている。床は落ち着いた木目調のブラウンとした[15]。
- 車内(クロスモード)
- 車内(ロングモード)
- 優先席
- 軽食付きプラン用テーブル席
- コンセント
一般車両
200番台

(2022年2月 古間駅 - 黒姫駅間)
2021年1月および2月に4編成8両が納入された番台区分で[17]、しなの鉄道の形式名発表では「一般車両」と区分されている[5]。編成番号はS200番台で付与されている。
デザインは長野市内に本社を置く印刷会社「カシヨ」の案が採用された[5]。外装はしなの鉄道のコーポレートカラーでもある「情熱」と「温かさ」を表現した赤をベースとしており、側面の乗務員室側には「地域の未来へ挑戦していく姿勢」を表現した金色のラインが配されている[5]。両端の塗色は曲線的にすることで、利用客や地域を包み込む「やさしさ」を表現している[5]。また、腰部には沿線地域を一つに「つなぐ」・「力をあわせる」ことを表現した赤の二本線が引かれている[5]。
300番台

(2022年5月 川中島 - 安茂里間)
2021年11月に3編成6両が納入されたことにより登場した番台区分で[19]、編成番号はS300番台で付与されている。内外装とも200番台とほぼ同一であるが、200番台に装備されている霜取り用パンタグラフが当番台では省略されている。[要検証]
編成表
← 妙高高原 軽井沢 →
| ||
(>) > |
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形式 | クモハSR111 -200・300 (Mc) |
クモハSR112 -200・300 (M'c) |
搭載機器 | VVVF | SIV・CP |
定員 | 138名 | 132名 |
車両重量[3] (t) |
37.6(200番台) 37.1(300番台) | 37.0 |
- >:シングルアームパンタグラフ
- (>):霜取り用パンタグラフ(200番台のみ搭載)
- VVVF:VVVFインバータ装置
- CP:空気圧縮機
- SIV:補助電源装置(静止型インバータ)
内装(一般車両)
座席配置および座席形状はE129系と同様であり、前位側をロングシート、後位側をセミクロスシートとしている。座席背面は赤とネイビーとし、座面は濃いグレーとした[5]。
- クロスシート全景
- クロスシート
- ロングシート全景
- ロングシート
- 優先席
車歴表
特記ない限りは2024年(令和6年)4月1日時点の情報を示す[20]。
製造…総合新津:総合車両製作所新津事業所、総合横浜:総合車両製作所横浜事業所
編成 | クモハ SR111 (Mc) |
クモハ SR112 (M'c) |
製造 | 新製日 | 備考 |
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S101 | 101 | 101 | 総合新津 | 2020年4月1日 | |
S102 | 102 | 102 | 2020年4月3日 | ||
S103 | 103 | 103 | 2020年4月7日 |
車歴表(SR1系100番台)
編成 | クモハ SR111 (Mc) |
クモハ SR112 (M'c) |
製造 | 新製日 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
S201 | 201 | 201 | 総合横浜 | 2021年2月19日 | |
S202 | 202 | 202 | 脱線事故の損傷により運用離脱中[要検証] | ||
S203 | 203 | 203 | 2021年3月12日 | ||
S204 | 204 | 204 |
車歴表(SR1系200番台)
編成 | クモハ SR111 (Mc) |
クモハ SR112 (M'c) |
製造 | 新製日 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
S301 | 301 | 301 | 総合横浜 | 2021年12月2日 | |
S302 | 302 | 302 | |||
S303 | 303 | 303 | |||
S304 | 304 | 304 | 総合新津 | 2023年1月27日 | |
S305 | 305 | 305 | 2023年2月17日 | ||
S306 | 306 | 306 | |||
S307 | 307 | 307 | 2024年3月16日 | ||
S308 | 308 | 308 | |||
S309 | 309 | 309 |
車歴表(SR1系300番台)
運用
しなの鉄道線・北しなの線の全線、および直通運転先の信越本線(篠ノ井駅 - 長野駅間)で運用される。2両編成の単独運用が基本だが、通勤時間帯などは複数編成を連結した4両編成、または6両編成で運用される。ライナー車両と一般車両を併結した定期運用は行われていない。[要検証]
100番台は2020年7月の運用開始以降、特別快速列車「しなのサンライズ号・しなのサンセット号」および「軽井沢リゾート号」の全列車で運用されるほか、しなの鉄道線の普通列車でも運用される[21]。一般車両の運用に充当される日はライナー運用には充当されない。
200番台は2021年3月改正で運用を開始した。同年時点では38本の列車に使用され、100番台と合わせると全列車の約30%が本形式での運用となった[22]。
300番台はS301 - 303編成が2021年12月から27本の列車で運用を開始した[23]。その後も、2022年3月のダイヤ改正より運用を拡大し、全体の約40%[24]、2023年3月より全体の過半数、2024年3月より全体の約70%[25]、2025年3月からは全体の約80%[26]が本形式の運用になっている。
沿革
要約
視点
導入までの経緯
→「しなの鉄道 § SR1系以前の車両導入計画・構想」も参照
しなの鉄道では開業時より通勤時間帯において、有料ホームライナー列車「しなのサンライズ号」および「しなのサンセット号」を運行(当初は「しなのサンライナー」の名称)していた。しかし、使用車両は譲渡時点で車齢が30年近い169系電車であり、しなの鉄道はイメージアップも兼ねて2003年以降に新型のライナー用車両を導入する計画を複数回公表した[27][28]。だがいずれも実現しなかったばかりか、保安装置の課題により169系をライナー列車に充当出来なくなる事態となる。その後はJR東日本の189系電車での運行となったが、2015年以降は近郊型電車である115系電車での運行となり同列車の乗車整理券販売も廃止となった。
この頃になると115系自体も老朽化による置き換え時期が迫っており、中長期的な新型車両の導入や、リクライニングシート車の購入によるライナー列車の再有料化が模索されるようになっていた[29][30]。2018年には「第四次中期経営計画」に基づき[31][32]、115系の老朽置き換え用として新型車両の新製を発表。2019年2月28日には車両デザインと形式名が公表され[5]、足がけ約20年の新型車両導入が結実した。
年譜
今後の予定
当初は2026年までに26編成52両の導入が計画されていたが、2020年に導入計画が縮小されており、この時点で2027年までに最大23編成46両の導入に見直されている。ただし当初の計画時点で「毎年の補助金や利用状況により車両数や更新年数を必要に応じ見直し」としており[4]、今後も財政や利用状況によって導入計画に変動が生じる可能性がある。
脚注
参考文献
外部リンク
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