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日本の新語・流行語に関する賞 ウィキペディアから
新語・流行語大賞(しんご・りゅうこうごたいしょう)は、自由国民社がその年1年間に発生した「ことば」のなかから選考し、その「ことば」に関わった人物、団体を顕彰するとされている賞。2004年(平成16年)より、ユーキャン新語・流行語大賞に改称している。
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1984年(昭和59年)に創始された。毎年12月1日に発表される。なお、同日が土曜日・日曜日の場合は次の平日に発表となる。
候補となる言葉は『現代用語の基礎知識』(自由国民社・刊)の読者アンケートの結果から編集部によって選出された30語から50語が候補としてノミネートされ、その中から新語・流行語大賞選考委員会(選考委員7名)によってトップテンと年間大賞が選定される。
創始当初は、新語部門と流行語部門に分かれて、それぞれ金賞を筆頭として各賞が選ばれていたが、8回目の1991年(平成3年)からは年間大賞が設けられ、11回目の1994年(平成6年)からは両部門を合わせて選定されるようになった。
創始以来、実際に授与される賞で流行語大賞は存在した事がないが【あくまでも、表彰式イベントを指す名称である】、各種報道などにより「流行語大賞が発表される」という表現で記述される為、【発表されているものがすべて流行語大賞として授与される】と誤解し、【トップテンや年間大賞で分かれていることを認識していない】人も少なくない。ただ、これはトップテンに選ばれた言葉も授賞式で紹介されるため、【授賞式で紹介される言語=流行語大賞】という誤解を生む一因もある。その他にも「流行語大賞が発表される」という表現から【表彰式イベントの名称の一部である『新語』を除外して記述している】、その年に新しく生まれた『新語』のノミネート候補入りを(流行っていないから)との理由で批判する人も少なからずいる[独自研究?]。
2003年(平成15年)には通信教育大手の株式会社ユーキャンと提携し、翌2004年(平成16年)より現代用語の基礎知識選「ユーキャン新語・流行語大賞」に改称された。受賞式典の司会は元TBSアナウンサーの生島ヒロシが担当していた。2017年は元NHKアナウンサーの宮本隆治が担当した。
日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」、第一生命の「サラリーマン川柳」、住友生命の「創作四字熟語」、東洋大学の「現代学生百人一首」と並んで、現代の世相を反映する一つの指標として取り上げられている。
だが、詳細は後述の項目に譲るものの、ノミネートされる流行語のなかには、選考委員の恣意的な判断で選ばれた文言(例:2019年)、2014年の選定を筆頭に、時の選考委員の思想や嗜好などの偏見が反映されたことを示唆する言葉(政権批判や選考委員の思想に基づいた政治的プロパガンダなど)、世論の流行語と選考された流行語の乖離(例:2015年)など、選考方法や中立性について問われること[1] や「新語・流行語大賞」という目的との乖離が起きたと思われる年(例:2016年)は激しい批判にされされることも少なくない。 また、(多忙などを理由にしたケースもあるが)受賞を依頼された人物が辞退するなど影響力の低下が指摘されている[2]。
受賞者の役職は当時のもの。
1984年(昭和59年)から1990年(平成2年)までの受賞者一覧[3]。
回 | 年度 | 部門 | 金賞 | 受賞者 |
---|---|---|---|---|
1 | 1984年 | 新語 | オシンドローム | ジェーン・コンドン(『タイム』フリー記者) |
流行語 | ○金・○ビ(まるきん・まるび) | 渡辺和博(『ガロ』元編集長・イラストレーター) | ||
2 | 1985年 | 新語 | 分衆 | 近藤道生(博報堂生活総合研究所社長) |
流行語 | イッキ!イッキ! | 慶應義塾大学体育会 | ||
3 | 1986年 | 新語 | 究極 | 雁屋哲(漫画原作者) |
流行語 | 新人類 | 清原和博、工藤公康、渡辺久信(いずれも西武ライオンズ) | ||
4 | 1987年 | 新語 | マルサ | 伊丹十三、宮本信子 |
流行語 | 懲りない○○ | 安部譲二(小説家) | ||
5 | 1988年 | 新語 | ペレストロイカ | ソロビエフ・ニコラエビッチ(駐日ソビエト連邦特命全権大使) |
流行語 | 今宵はここまでに(いたしとうござりまする) | 若尾文子 | ||
6 | 1989年 | 新語 | セクシャルハラスメント | 河本和子(弁護士) |
流行語 | オバタリアン | 堀田かつひこ、土井たか子 | ||
7 | 1990年 | 新語 | ファジィ | 三上遵太郎(松下電器産業電化研究所所長) |
流行語 | ちびまる子ちゃん(現象) | トーマス・リード(『ワシントン・ポスト』東京支局記者) | ||
回 | 年度 | 部門 | 賞 | 受賞語 | 受賞者 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1984年 | 新語 | 銀賞 | 鈴虫発言 | 中曽根康弘(第72代内閣総理大臣) |
銅賞 | スキゾ・パラノ | 浅田彰(京都大学助手) | |||
特別賞 | 特殊浴場 | イルハン・オウス(トルコ大使館参事官) | |||
流行語 | 銀賞 | くれない族 | TBS金曜ドラマ『くれない族の反乱』スタッフ | ||
銅賞 | 疑惑 | 文藝春秋『週刊文春』編集部 | |||
特別賞 | 千円パック | 森永製菓 | |||
大衆賞 | す・ご・い・で・す・ネッ | 所ジョージ | |||
教官! | 堀ちえみ | ||||
2 | 1985年 | 新語 | 銀賞 | パフォーマンス | 石橋政嗣(第9代日本社会党中央執行委員長) |
銅賞 | NTT | 真藤恒(初代日本電信電話代表取締役社長) | |||
表現賞 | キャバクラ | 新富宏(レジャラース社長) | |||
言語戦略 | 鈴木孝夫(慶應義塾大学教授) | ||||
ネバカ | 諸井薫(エッセイスト) | ||||
流行語 | 銀賞 | トラキチ | 松林豊(阪神タイガース私設応援団長) | ||
銅賞 | 角抜き | 山岸一平(日本経済新聞東京本社政治部長) | |||
大衆賞 | 私はコレで会社をやめました | 三好重恭(アルマン代表取締役) | |||
投げたらアカン | 鈴木啓示(NHK野球解説者・元近鉄バファローズ投手) | ||||
特別賞 | 100ドルショッピング | 中曽根康弘(内閣総理大臣) | |||
特別語録賞 | 愛しているからチラいのよ | 生島治郎夫妻(作家) | |||
特別功労賞 | テレビ番組『オレたちひょうきん族』から発する各種流行語 | 横澤彪(フジテレビジョン編成局第2制作部プロデューサー・当時『ひょうきん族』『笑っていいとも!』担当) | |||
3 | 1986年 | 新語 | 銀賞 | 激辛 | 鈴木昭(神田淡平店主) |
銅賞 | ファミコン | 山内溥(任天堂社長) | |||
表現賞 | 川の手 | 山崎榮治郎(墨田区長) | |||
家庭内離婚 | 林郁(作家) | ||||
アークヒルズ | 森泰吉郎(森ビル社長) | ||||
流行語 | 銀賞 | 知的水準 | マイケル・サラモン(ロイター通信社支局長) | ||
銅賞 | 亭主元気で留守がいい | 上山英介(大日本除虫菊社長) | |||
大衆賞 | おニャン子 | おニャン子クラブ | |||
プッツン | 片岡鶴太郎 | ||||
特別賞 | やるしかない | 土井たか子(第10代日本社会党中央執行委員長) | |||
150円台 | 加藤隆一(東海銀行=現・三菱UFJ銀行頭取) | ||||
語録賞 | バクハツだ! なんだかわからない | 岡本太郎 | |||
不快語追放応援賞 | 地揚げ・底地買い | 馬渕晴子 | |||
4 | 1987年 | 新語 | 銀賞 | JR | 杉浦喬也(第10代日本国有鉄道総裁→初代日本国有鉄道清算事業団理事長) |
銅賞 | 第二電電 | 森山信吾(第二電電=現・KDDI社長) | |||
表現賞 | サラダ記念日 | 俵万智 | |||
朝シャン (モーニング・シャンプー) | 資生堂商事セールス商品事業部 | ||||
ノリサメ | 高田純次、兵藤ゆき | ||||
流行語 | 銀賞 | なんぎやなぁ | 辛坊治郎 森たけし(当時共によみうりテレビアナウンサー、『ズームイン!!朝!』関西地区担当) | ||
銅賞 | ゴクミ | 後藤久美子 | |||
大衆賞 | マンガ日本経済入門 | 石ノ森章太郎 | |||
ワンフィンガー ツーフィンガー | 村松友視 | ||||
サンキューセット | 藤田田(日本マクドナルド創業者・初代社長) | ||||
特別賞 | 特別功労賞 | “国際”国家 | 中曽根康弘 | ||
特別賞 | 鉄人 | 衣笠祥雄(広島東洋カープ選手) | |||
5 | 1988年 | 新語 | 銀賞 | ハナモク | 松屋 |
銅賞 | トマト銀行 | 吉田憲治(山陽相互銀行=現・トマト銀行社長) | |||
表現賞 | 遠赤(効果) | 遠赤外線国際研究会 | |||
カイワレ族 | 村崎芙蓉子 | ||||
流行語 | 銀賞 | ドライ戦争 | 樋口廣太郎(朝日麦酒社長) | ||
銅賞 | シーマ(現象) | 久米豊(日産自動車社長) | |||
大衆賞 | アグネス論争 | アグネス・チャン | |||
5時から(男) | 高田純次 | ||||
しょうゆ顔・ソース顔 | 東山紀之 錦織一清(当時共に少年隊メンバー) | ||||
特別賞 | 特別功労賞 | 一村一品/ヒューマン・ブランド | 平松守彦(大分県知事) | ||
人語一体傑作賞 | ユンケルンバ ガンバルンバ | 森田一義 | |||
報道傑作賞 | ふつうは“汚職”と申します | 山本泰夫、藤田実(産経新聞東京本社政治部記者) | |||
6 | 1989年 | 新語 | 銀賞 | Hanako | 木滑良久(マガジンハウス社長) |
銅賞 | DODA/デューダ(する) | 井上美悠紀(学生援護会=現・パーソルホールディングス社長) | |||
表現賞 | まじめ×ゆかい | 八木靖浩(川崎製鉄=現・JFEスチール社長) | |||
濡れ落葉 | 樋口恵子 | ||||
流行語 | 銀賞 | ケジメ | 久米宏(テレビ朝日『ニュースステーション』初代キャスター) | ||
銅賞 | 24時間タタカエマスカ | 時任三郎 | |||
大衆賞 | イカ天 | 三宅裕司(TBS『三宅裕司のいかすバンド天国』司会) | |||
こんなん出ましたけど〜 | 泉アツノ | ||||
特別 | 特別賞 | 『壁』解放 | シュミット・マンフレット(在東京東ドイツ特命全権大使) | ||
平成 | 平成元年1月8日午前0時0分10秒生まれの男児 | ||||
「NO」と言える日本 | 石原慎太郎 | ||||
7 | 1990年 | 新語 | 銀賞 | “ブッシュ”ホン | 岡崎守恭(日本経済新聞東京本社政治部記者) |
銅賞 | オヤジギャル | 中尊寺ゆつこ | |||
表現賞 | アッシーくん | 自称「アッシーくん」たち | |||
流行語 | 銀賞 | バブル経済 | 該当者なし | ||
銅賞 | 一番搾り | 本山英世(麒麟麦酒社長) | |||
パスポートサイズ | 出井伸之(ソニー取締役、後に社長) 浅野温子 | ||||
大衆賞 | 愛される理由 | 二谷友里恵 | |||
特別 | 人語一体/語録賞 | 昭和生まれの明治男 | 村田兆治(NHK野球解説者、元プロ野球ロッテオリオンズ投手)夫妻 | ||
年間多発語句賞 | 気象観測史上(はじめての…) | テレビ各局のお天気キャスター | |||
特別賞 | スペシャルゲスト | ラシード・ムハンマド・サイード・アッ=リファーイー(在東京イラク共和国特命全権大使) | |||
回 | 年度 | 部門 | 賞 | 受賞語 | 受賞者 |
---|---|---|---|---|---|
8 | 1991年 | 新語 | 金賞 | 火砕流 | 花田簡輔ほか(気象庁雲仙岳測候所) |
銀賞 | ひとめぼれ | 伊藤亘 | |||
銅賞 | 八月革命 | 該当者なし | |||
表現 | 金賞 | 川崎劇場 | 金田正一(元ロッテオリオンズ監督) | ||
銀賞 | 地球にやさしい | 田代忠之(講談社学芸局局長) | |||
紺ブレ | 自称紺ブレ着こなし自慢代表 | ||||
流行語 | 金賞 | 若貴 | 花田憲子 | ||
銀賞 | 重大な決意 | 石破茂、簗瀬進、今津寛、佐藤謙一郎 | |||
銅賞 | 損失補填 | 武井共夫(全国証券問題研究会) | |||
大衆 | 金賞 | 僕は死にましぇ〜ん | 武田鉄矢 | ||
銀賞 | ダダーン ボヨヨン ボヨヨン | 松浦義二(ピップフジモト代表取締役社長) | |||
銅賞 | ダンス甲子園 | 日本テレビ『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』 | |||
特別 | 特別賞 | チャネリング | 大川隆法(幸福の科学総裁) | ||
連鎖語賞 | 雅美さん、雅子さん、たぬき顔 | 梨元勝 | |||
9 | 1992年 | 新語 | 金賞 | ほめ殺し | 小林泰一郎(毎日新聞社『サンデー毎日』編集部員) |
銀賞 | カード破産 | 宇都宮健児(弁護士) | |||
銅賞 | もつ鍋 | 井上修一(もつ鍋「元気」主人) | |||
表現 | 金賞 | 複合不況 | 宮崎義一(『複合不況』著者) | ||
銀賞 | 9K | 江尻尚子 | |||
銅賞 | 謝長悔長 | 浦上由子(主婦) | |||
流行語 | 金賞 | 冬彦さん | 佐野史郎、野際陽子 | ||
銀賞 | ねェ、チューして | 唐沢寿明 | |||
銅賞 | 上申書 | 小林正(建設会社社長) | |||
大衆語 | 金賞 | 宇宙授業 | 毛利衛(宇宙飛行士) | ||
銀賞 | 歌手の小金沢クン | 小金沢昇司 | |||
銅賞 | ツイン・ピークス | ツインピークス・ファンクラブ | |||
特別語 | 特別賞 | Time for Change | 駐日アメリカ合衆国大使館(特命全権大使ウォルター・モンデール) | ||
10 | 1993年 | 新語 | 金賞 | サポーター | 設楽りさ子 |
銀賞 | 新・○○ | 坂本一生 | |||
銅賞 | FA(フリーエージェント) | 落合博満(野球選手) | |||
流行語 | 金賞 | 規制緩和 | 青木定雄(MKタクシー会長) | ||
銀賞 | 清貧 | 中野孝次(作家) | |||
銅賞 | 天の声 | 対象者が拘留中のため保留 | |||
大衆語 | 金賞 | 親分 | 大沢啓二(日本ハムファイターズ監督) | ||
銀賞 | 聞いてないよォ | ダチョウ倶楽部 | |||
銅賞 | お立ち台 | 古宇田敬子、小川敬子(お立ち台ギャルNo.1) | |||
表現 | 金賞 | 2500円スーツ | 洋服の青山東京銀座店 | ||
銀賞 | ウゴウゴルーガ | 田嶋秀任、小出由華 | |||
銅賞 | たま・ひよ(族) | 綿引出、森久美子(たま・ひよママ代表) | |||
特別賞 | 年間傑作語録賞 | 悪妻は夫をのばす | 落合信子(落合博満夫人) | ||
流行語大賞は、その年に流行った言葉などから選ばれるが、世間を騒がせた事件・事故などの事案や著名人の不祥事・スキャンダルに絡んだ言葉が選ばれることもあり、マイナス面で流行った言葉を選定・受賞対象にすることは不適切であるとする批判が在る(後述の例のように、除外される場合も多い)。[要出典]ただし、今年の漢字でも2007年の『偽』のような縁起の悪い言葉が選ばれたり、トップ20という全体で見れば、マイナス面のある言葉も候補入りするため[19]、流行語大賞特有の問題というわけではない。ただ、今年の漢字や東洋大学現代学生百人一首などは、一般公募なため、広く意見が集まることや候補の漢字が得票数に左右されるという要因がある。それに対し、こちらは#概要の項目にも書かれているように読者アンケートに基づく選出という点では他と大きな差があるわけではないが、こちらは選考委員会が話し合いなどで絞り込むという仕組みとなっており、後述の2014年の「ありのまま」の一件のようにそのアンケート内に世間が認識する流行語の有無次第で結果が変わることや最終決定が得票数より選考委員の議論の結果で判断されるため、世論と選考委員の認識の乖離が発生することがある。
それに対する第三者からのコメントとしては、プチ鹿島は、流行語大賞がインターネットを中心に「そんなの流行ったのか?」というツッコミの対象になっているものの、スポーツ新聞にとっては重要なイベントであるとしている。鹿島は「流行語大賞とは『今年はこんな言葉が流行ったよね』という、おじさんによるおじさんのためのプレゼンだと思えばいい。で、そのあと『そんなの流行ってねーよ』とSNSからツッコミが発生するまでが流行語大賞なのである。そう考えると流行語大賞は『紙媒体』と『ネット』の温度差を確認できる貴重なセレモニーだともいえる」と述べている[20]。また、伊集院光も自身のラジオ番組にて「もはやさ、炎上商法。しかも高度なテクニックを使った炎上商法にちょっと近いぞ」と論評している[21]。能町みね子はノミネートを見ると「毎年『現政権に反対し、スポーツ観戦(特にプロ野球)が大好きで、若者の流行に疎い50代くらいのおじさん』の像が浮かんでくる」と述べている[22]。斎藤美奈子は「新語・流行語大賞とは表彰式のためにある賞であって主催者である自由国民社は言葉の風俗的資料価値などには何の興味もない(のだろう)」(要約)としている[23]。
室井佑月が2009年の授賞式後に述べた「きっと、表彰式に出て来れる人の中から、大賞を選んでいるに違いない」[24]は、後に鳥越が事実上認める発言をするに至った(後述)。
本賞は、最初の審査会が毎年10月上旬に行われ、そこに選考委員が持ち寄った言葉のみが選考の対象となる関係上、審査会開催以後に流行した言葉はノミネートすら出来ない、議論にも上がることのないまま流行が終わってしまう(2023年時点)[25]。
年間大賞・トップテンの選定が始まる以前の1989年(平成元年)にベルリンの壁崩壊を意味する「『壁』解放」が特別賞を授与された例はある[注釈 20]が、1990年代以降、ノミネート公表とほぼ同時期に流行していた言葉は登場しなくなった。2010年代より後だけでも2011年10月期の日テレ系水曜ドラマ『家政婦のミタ』(「承知しました」や「それは業務命令でしょうか」等)[25]、2016年10月期のTBS系火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(略称・『逃げ恥』や恋ダンス)、2022年のサッカーワールドカップカタール大会に関連した言葉(「ドーハの歓喜」「ブラボー!」「三苫の1ミリ」など)[注釈 21][26][27]などがノミネートに挙がらなかった。自由国民社はそれらノミネートから洩れた言葉を救済する機会を与えない姿勢を貫いており、翌年に改めてノミネートされたり、新聞協会賞のように追加ノミネート、追加受賞が認められたりしたケースは1990年代以降一度もない。
やくは「10月以降の言葉を選ぶ猶予がなかった」と弁明したことがあるものの[25]、あいまいな選考基準や追加枠を一切設けない姿勢については疑念を残す形となっている。
選考委員の一人であるやくみつるはその発言や姿勢が批判の対象になることが多い。
例えば、2019年のノミネートが発表された際に、惑星探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウに作った「おむすびころりんクレーター」を「はやぶさ2の話題は偉業としてもてはやされたが、その後の言葉が定着してない。ここに入れることによって、そういう言葉もあったんだねと認知してもらう効果もある」と、流行した言葉でないのを分かった上で「新語」として自らが候補に「ねじこんだ」ことを明かした[28][29] 際、「全く流行っていない言葉」「やくによる私物化」と、選考基準を疑問視する声ややくを始め選考委員への批判が起きている[30]。2020年のノミネートに関しても、「うちで流行った」という理由でぼる塾のネタ「まぁねぇ〜」をねじ込んだことを明かしている[31]。
2022年のノミネートではプロ野球関連の言葉が全体(30語)の2割となる6語も占めていたことから、大のプロ野球ファンとしても知られているやくが野球用語をねじ込んだのではという指摘もインターネット上において上がったが、やくはノミネート発表後に出演したTBSラジオ『ナイツのちゃきちゃき大放送』において、「野球用語が多すぎる。もっといろんなジャンルから選んだ方がいいんじゃないか?」と寧ろ野球関連の用語を削減しようと選考委員に提案していたとして、反論している[32]。
一般的に流行した用語が賞の候補から削除される例として代表的なものを挙げる。
2000年代後半頃からでは「流行語」を最初に広めた人物・団体が表彰されず、その言葉を象徴する(と判断された)人物・団体が表彰されるケースが多く見られるようになってきた。
2013年、経済評論家の浜矩子が安倍政権の経済政策「アベノミクス」を揶揄したネガティブな造語「アホノミクス」がノミネートされたが、11月8日に浜矩子が日本外国特派員協会での記者会見で「アベノミクスはアホノミクスである」と痛烈に批判したこと以外にメディアなどで使用された形跡がなく、「政治関連が多すぎる」「政治的に偏りがあるのではないか」などの問い合わせを受けた[50]。このころから、選考委員会(姜尚中、俵万智、鳥越俊太郎、室井滋、やくみつる、箭内道彦、清水均)の政治的嗜好(安倍政権批判)による選定が指摘されるようになった[51]。
2014年度の年間大賞に選ばれた「集団的自衛権」と「ダメよ〜ダメダメ」は「集団的自衛権(は)ダメよ〜ダメダメ」とつなげることで、集団的自衛権、ひいては安倍政権に反対する姿勢を示すという左派系で構成される選考委員たちの政治的な思惑が働いたのではないかとの疑念が一部メディアにより指摘され、同月に行われる衆議院選挙の直前の時期でもあったことから物議を醸した[52][53]。
授賞式にて、大賞の「集団的自衛権」については「集団的自衛権という用語は30数年前の『現代用語の基礎知識』からすでに収録されており、ずっとそれは現憲法下では『違憲』だと紹介されてきた。それが今年、安倍政権の下でいきなり解釈を変更されて、限定容認だが、その行使が可能となったのだから、これは大事件だ」などと紹介され、同じく大賞の日本エレキテル連合の「ダメよ〜ダメダメ」の受賞理由コメントでも「『壊憲』と言われる7月の閣議決定。『ダメよ〜ダメダメ』と高まる声を前にして、『いいじゃ〜ないの〜』とするすると受け流して、気がついたら憲法が解釈だけで変更されてしまったのだが、この国では、争点をしっかり掲げて投票でハッキリさせようなんて決定方法がありえないんじゃないかと思えて、こりゃあ『号泣』もしたくなる。そんな日本の不条理な現実を、最高にシュールなコントで『大爆笑』に変えてくれたのが『細貝さんと朱美ちゃん』こと、今年一番の人気コンビ、日本エレキテル連合であった」と紹介された[54]。
選考委員の鳥越俊太郎は「特定秘密保護法から始まってアベノミクス、集団的自衛権、原発再稼働も、国民が反対しているにもかかわらず政府は少しずつ推し進めた。それに対して国民の気持ちを最もよく表すのが『ダメよ〜ダメダメ』」とコメントしている[55]。また、選考委員のやくみつるは、授賞式の挨拶で「審査は中立的な立場で行ったが、大賞となった2つの言葉が並ぶと一定の意味をなす。興味深い」[56] と述べていたが、選考委員会では集団的自衛権に反対する政治的な立場から「ダメよ〜ダメダメ」と「集団的自衛権」が見出しで並ぶことを意識して大賞に選んだことを後日談で明かしている[36]。
この政治的な思惑に応じる形で集団的自衛権に反対する立場の政治家たちはTwitterで流行語大賞に賞賛を行った。社民党の福島瑞穂はTwitterで「今年の流行語大賞に『ダメよ〜ダメダメ』『集団的自衛権』。これを合わせて『ダメよ〜ダメダメ、集団的自衛権』。どう考えてもダメです。ダメなものはダメ」とツイートし、民主党の有田芳生も「(ニュース番組で新語・流行語大賞を報じた)NHK。この並べ方がサイコー!『集団的自衛権』『ダメよ〜ダメダメ』が大賞」などと書き込んだ。しかし、自民党の佐藤正久は「一部のメディアや政治家が意図を持って、その2つの言葉を並べたり、くっつけた見出しを使うと思われ、特に選挙戦での利用の可能性も否定できない。その場合、エレキテル連合が『政治利用』されて気の毒だ。皆さん、どう思いますか?」とツイートし、流行語大賞の政治利用を批判した。ネットでも「左翼がやりたい放題で政治的な言葉を選んでいると、賞のイメージが悪くなる」などの苦言が相次いだ[52]。
また、2014年12月の時点で選考委員のやくみつるは、2015年の流行語大賞に『総選挙で安倍政権が大勝して、いろいろな分野でむちゃな政策が始まる。それを、総括する言葉を定義付けして「アベハラスメント」。通称「アベハラ」を流行らせようと画策している』と『週刊朝日』の座談会で明かしている[57]。
2015年度の新語・流行語大賞では、ノミネートされた50語中15語が政権与党批判の言葉で占められていた。その中でも「自民党、感じ悪いよね」「とりま、廃案」「戦争法案」「アベ政治を許さない」「早く質問しろよ」「I am not ABE」「SEALDs」「国民の理解が深まっていない」などの政治用語について、ネット上からは「流行」という位置づけにふさわしいのか疑問をもつ声や、政治色への強い傾向を指摘する声が相次いだ[58]。大賞事務局にも「政治関連が多い」などの意見が約10件寄せられたという[59]。
トップテンには、選考委員長である鳥越俊太郎自身が参加した安保反対運動から生まれたスローガンである「アベ政治を許さない」が選定された。鳥越は選定理由について、「新語・流行語大賞は日本の社会の現実を映す鏡。日本の社会がトップ10の中から見えてくる。選考委員は、歪みのない現実を映す鏡を作ったつもりだ」と説明した。その一方で「『アベ政治を許さない!』国民の一斉行動デー」と題した平和安全法制抗議運動を呼びかけた一人であり、賞を主催している『現代用語の基礎知識2016』のインタビュー記事の中でも運動の経緯などを説明しつつ、安倍政権の対応を批判しており、賞を私物化しているという指摘や政治批判を意識した言葉を選んだのではという疑念を抱かせる一因となった。
選考委員を務めるやくみつるは選評文で「そりゃ選考委員のそれぞれには、日頃の政治的スタンスというものがある。しかし、流行語の選考はそれに立脚したものではない」と賞の私有化を否定した上で、「(選ばれた言葉が)己れ(原文のまま)の意にそぐわぬからといって、それに目クジラ立てているようじゃあ、自由主義国家の名が廃る。『アベ政治を許さない』にしたって、解釈を変えれば『アベ政治をゆるしてやってもよくね?』ともとれる。それくらいの遊び心がなくてどうするよ」と反論[60]。 他にも新語・流行語大賞の世間の認識について、話題になることは期待しつつも、「それが転じて、これはけしからん、あれはけしからんと主催者側におっしゃる方がいると伺いました。そういうのはややもすると圧力になったり、狂気にもなりかねない世知辛い世の中です。皆さんの中でわいわいやっていただく分には結構なんですが、直接持ってこないでねと申し上げたい」[61] と呼びかけた。
なお、選考委による「アベ政治を許さない」の紹介コメントでは、「このフレーズは、要求ではない、追求でもない、つぶやきだ。強要しないつぶやきが、これまでのイデオロギー対立では現れてこない層に共有された」と紹介され、表彰式に登場した反安保運動の中心人物である澤地久枝は「『アベ政治を許さない』(に関する活動)を毎月3日にやる。皆さんもご参加ください」などと報道陣に向かって呼びかけた[62]。産経新聞は、“身内びいき”“自画自賛”と受け止められかねない受賞結果になったと評した[63]。
ちなみに、2016年にリクルートのR25が行った新語・流行語大賞に関する調査で、全国の20〜30代221人を対象に、過去5年(2011年〜2016年)にトップテンに選ばれた50語のうち「あまりピンとこない」言葉は何かを尋ねたところ、『アベ政治を許さない』が2位にランクインした[64]。また、独自の政治的信条を語ることもある太田光(爆笑問題)が、ノミネート内容が発表された日にラジオ放送を行っていた際、「安倍さん関連が多すぎるんだよ、安保関連とか。『早く質問しろよ』なんて別に流行語にしなくていい」とコメント[51]し苦言を呈した。
2016年は、この年鳥越が東京都知事選挙に出馬(結果は落選)したことに伴い選考委員から外れたせいか、政治的な言葉のノミネートが少なくなり、東京都内の30代とされる女性が待機児童問題についてブログに投稿した記事「保育園落ちた日本死ね」[65] が国政関係で唯一トップ10に入った[66]。この言葉が選出された理由は「待機児童問題の深刻さを投げかけ、世の中を動かした。」というものである。
当該ブログ記事は深刻な待機児童問題に対し東京都在住の女性が執筆したとされるものだが、駒崎弘樹が投稿の2日後に取り上げ[67]、民進党の山尾志桜里衆院議員も国会で取り上げた[68]。授賞式には当該ブログの筆者ではなく山尾が受賞者として出席し、「年の締めにもう1度スポットライトが当たり、うれしい」「今は新語・流行語でも、早く『死語』にできるよう頑張りたい」と述べた。翌日、タレントのつるの剛士が、「きっともっと選ばれるべき言葉や、神ってる流行あったよね。皆さんは如何ですか?」「こんな汚い言葉に国会議員が満面の笑みで登壇、授与って。なんだか日本人としても親としても僕はとても悲しい気持ちになりました」とTwitterで発言したことが、[69][70] 前年に流行語大賞を受賞したSEALDsなどから激しく非難され、つるのは謝罪に追い込まれた[71][72]。
この言葉を選出したことについても批判があがり、賞を主催しているユーキャンのウィキペディア日本語版のページが「株式会社ユーキャン死ね」と書き換えられ、ページが半保護状態になるまで編集合戦が繰り返されるなどネットの各地で炎上した[73]。さらに、選考委員の詩人の俵万智のTwitterにも批判が寄せられた[74][75]
評論家らによる批判や、それに対する選考委員たちからの反論も相次いだ。
批判は以下のとおり。
反論は以下のとおり。
また、騒動は保坂展人世田谷区長に飛び火し、Twitterで『日本死ね』が受賞したという記事をツイートすると「国の対応って仰いますけど、そもそも保育園は地方自治体の管轄なんでは?『死ね』って言われるべきは本来は区長だと思うんですけど」「だとしたら一番死ななきゃならないのは『待機児童が1200人を超えてて一向に改善できない保育行政に責任を持つ無能な世田谷区長』っすよね。何他人事かましてんの?」「待機児童全然解消していない世田谷区死ねと言われてるようなもんだぜ。分かってる?」と批判コメントが殺到。ジャーナリストの石井孝明も「山尾衆議院議員に、死ねとののしられるべき1人は保坂さんのような気がします。どう思うのか、罵られたら感想ください」と、東京都の待機児童数で世田谷区が飛び抜けてワースト1位である表を添えたリプライを送って応戦した[86]。
さらに、同月12日に発表された日本漢字能力検定協会主催の『今年の漢字』では、『保育園落ちた日本死ね』の『死』はトップ20にすら入っていなかった。しかも、こちらは全国から一般募集され、得票数で大賞が決まるため、ネットでは再びユーキャンへの非難が噴出した[19]。
ジャーナリストの井上トシユキはこの騒動について「政治色が強いのは余計な混乱を避けるために選ばないのが常套なのに、ユーキャンの場合はガッツリ選んでくる。『日本死ね』は非常に強い言葉で、ネット右翼と左翼で非難の応酬になっている」と指摘。「清水寺の『今年の漢字』(日本漢字能力検定協会)と並んで、年末の風物詩みたいな扱いになっていますが、ユーキャンの流行語大賞は宣伝のための商業的側面があり、ピントがずれ始めてきているところもある。『今年の漢字』で『死』を選びますかという話。選考過程がハッキリしていない点の反発が多く、オープンの場で選んだ方がいいのではないか」と述べた[77]。
『白熱ライブ ビビット』(TBS)が調査したアンケートでは、『日本死ね』を流行語大賞のトップテンに選んだことに『賛成』23%、『反対』77%[82]。J-CASTニュースが行ったネット調査では、『問題提起としては有効だったが、言葉が汚すぎる。受賞は不適切』52.8%、『問題提起としても意味があったとは思えない。単に不愉快になるだけ』31.2%、『この言葉をきっかけに待機児童問題に焦点が当たった。受賞は妥当』15.2%、という結果だった[87]。衆議院議員の足立康史は度重なる暴言騒動の際「『日本死ね』発言を社会が許容している」といった趣旨の釈明を2度行っている[88][89]。
また、選考委員に対しては、政治信条の偏り以前に、2015年の大賞に「トリプルスリー」、2016年の大賞に「神ってる」を選出してきたことに対して、「そもそも彼らに現代のことがわかっていると言えるのだろうか。」と疑問を呈されるようになり[90]、2017年以降も政権批判のキャッチコピーが取り上げられているが、それに対する批判は減っていった。
お笑いタレントは、新語・流行語大賞を受賞すると翌年から人気が落ち、一発屋やテレビメディアへの露出が少なくなるというジンクスがある[91]。テツandトモ(2003年年間大賞)[92][93][94]、波田陽区(2004年年間トップテン)[92][94]、レイザーラモンHG(2005年年間トップテン)[92][93][94]、エド・はるみ(2008年年間大賞)[95]、楽しんご(2011年年間トップテン)[93]、スギちゃん(2012年年間大賞)[96]、日本エレキテル連合(2014年年間大賞)[97] などが当てはまる。
しかし、テレビへの出演が減っただけで地方の営業の仕事は増えることもあるため仕事がなくなったというわけではない[98][99]。また、小島よしお(2007年年間トップテン)のように低迷期を経てしばらく後に復活の兆しを見せる[100] ケース、とにかく明るい安村(2015年トップテン)のように海外でのブレイクを経て8年後の2023年に選考委員特別賞で再度受賞を果たす[101][102]ケースもある。
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