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日本の漫画、メディアミックス作品 ウィキペディアから
『鬼滅の刃』(きめつのやいば、英: Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba[3])は、吾峠呼世晴による日本の漫画作品。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて2016年11号から2020年24号まで連載された[4]。略称は「鬼滅」[5]。
日本の大正時代を舞台に、主人公の少年が鬼と化した妹を人間に戻すために鬼たちと戦う姿を描く[6]、和風の剣戟奇譚[7]。
単行本の累計発行部数は、2021年2月時点で1億5000万部を突破している[注釈 1][8]。第23巻の初週売上は、限定版を含めて国内出版史上最高記録となる343.1万部を記録[9]。2020年オリコン年間コミックランキング作品別の期間内売上で8,234.5万部を記録し、作品別歴代年間最高売上を獲得した[10]。また、連載開始から4年と22巻での1億部到達は、それまで『ONE PIECE』が保持していた7年と36巻を大幅に塗り替える「史上最速の1億部突破」である[11]。
2019年にはufotable制作でテレビアニメ化され、物語の序章を描く第一期『竈門炭治郎 立志編』が放送された[12]。2021年10月から2022年2月まで、テレビアニメ第二期として『無限列車編』の再編集版とその続編となる『遊郭編』が[13]、2023年4月から6月まで、テレビアニメ第三期として『刀鍛冶の里編』が放送された[14]。2024年5月から6月まで、続編となる『柱稽古編』が放送された[15]。続編となる劇場アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』が三部作で制作されることが決定している[15][16]。
2020年には物語の中盤を描く劇場アニメ『無限列車編』が公開された。同作品の日本国内での興行収入は404.3億円に達し、それまで『千と千尋の神隠し』が保持していた316億8,000万円を塗り替え、日本歴代興行収入第1位となった[13]。全世界の興行収入は517億円に上り、全世界で観客4135万人を動員し、「世界最高の興行収入の日本アニメ映画」としてギネス世界記録に認定されている[17]。
その他、舞台化やゲーム化、玩具化、企業やテーマパークとのコラボレーションなど、メディアミックスが多様に展開されており、本作の経済規模は1兆円を超えている[18]。
本作の源流は、吾峠呼世晴が2013年までに初めて描いた読み切り作品『過狩り狩り』であった[19][20]。
同作は明治から大正ごろの日本を舞台とし、海外から来た吸血鬼、日本の鬼と『鬼狩り』との戦いを描く作品であり[20]、その一部の登場人物や技が本作『鬼滅の刃』に引き継がれている。
吾峠は同作について「どうせ評価されないだろう」と考えていたが、家族に「どうせなら一番好きな雑誌に投稿すればいい」と促され、後述の自身がファンでもあった『銀魂』が連載されている、週刊少年ジャンプへ投稿した[19]。
同作はその扉絵で主人公の顔が隠されているなどの特異な構成によって、ジャンプ編集部では「1ページ目から気になる漫画が来た」と話題になった[20][21]。その結果、同作は第70回JUMPトレジャー新人漫画賞(2013年4月期、審査員:篠原健太)で佳作を受賞した[19]。
吾峠の初代担当編集者である大西恒平は「ジャンプ志望の作家の中では珍しいタイプ。センスは感じたが、基本的な漫画づくりの基礎がまだできておらず、今後この才能をどう開花させられるか」と評した[22]。
のちに本作の初代担当編集者となる片山達彦は「初見では分かりにくかったが、2度読んだときに構成や振りの巧みさに気づいた」、「圧倒的な才能は周りも認めていたし、私も感じていた」と評価した[19]。
さらに吾峠は2015年、『呼吸』や『鬼殺隊』の設定を追加した連載作品『鬼殺の流』のネームを作成した。これが本作の前身である。しかし、「世界観のシビアさと主人公の寡黙さ」を理由に、編集部による連載会議で落選して雑誌掲載へは至らなかった[19]。
同作の主人公は盲目、隻腕、両足が義足であった。世界設定は「読みやすくなった」という評価を得たが、主人公のキャラクター性が課題とされた[19]。
そこで、片山の先輩編集者が「『HUNTER×HUNTER』のように、主人公を普通の人物とし、その周囲に異常性のある人物を配置したほうが、読者が感情移入しやすく、また他の人物が引き立つのではないか」と提案した[19]。
片山が吾峠へ「この物語にもっと普通の人物はいないか」と訪ねたところ、吾峠は脇役の構想として「炭売りの少年がいる。彼は家族全員を鬼に殺され、さらに妹が鬼になる。妹を人間へ戻すために『鬼狩り』になる」と考えていたことを明かした。片山はその人物こそ主人公にふさわしいと考え、「宿命を背負ったキャラクターは、物語を動かす推進力になる」として、主人公を変更することを提案した。吾峠はその提案を受け入れた[19]。
そして吾峠は『鬼滅の刃』の連載へ向けたネームを執筆した。前作までと比べて主人公が親しみやすく、物語がわかりやすく調整されており、また第一話で主人公を兄貴分が叱責する場面などの台詞の力に片山は圧倒されたという[19]。
そのネームは紙面掲載時の内容とほぼ同じで、完成されたものであったが、ある人物が和装であったことに対して片山は「大正らしさがほしい」と提案したところ、吾峠は「詰め襟に羽織り」という現行のデザインを考案した。他の片山からの意見としては「目に留まるデザインは読者に受けるので、何かしらチャームポイントがあるといい」、「主人公の同期に、仲の悪い人物がいると面白い」という程度のみだった[19]。その結果、『鬼滅の刃』は編集部から承認され、連載が開始された[19]。
吾峠と担当編集者との打ち合わせでは、編集者による意見・提案に対して、吾峠は自身の信念を譲らずに構想通りに描くこともあれば、意見を柔軟に取り入れて原稿を修正することもあった[19]。これについて、「吾峠は『物語として成立しているかどうか』を最も大切にしている」と、初代担当編集者の片山達彦が推測している[19]。
例えば、作中序盤における主人公が修行を重ねる場面について、片山は「序盤に置くには引きが弱い」と指摘したが、吾峠は「普通の人間がすぐに強くなることはない」という持論を譲らず、構想どおりに描いた。また、その後に主人公が試練を受ける際にも、片山は「兄貴分が主人公を見守る描写を追加してはどうか」と提案したが、吾峠は「兄貴分はそのような立場ではない」として断った[19]。
一方で、主人公の師匠役の容姿について片山が「インパクトがない」と指摘したところ、吾峠はそれを受けて容姿を修正した。また、主人公が憎むべき仇敵を殺したあとに哀れんで優しく手を握る場面について、吾峠は描いたものの「少年誌らしくないから削除しようかな」と言っていたが、片山が感動して「ここだけは絶対に入れるべきだ。こんな主人公は見たことがない」と熱弁し、存続されたという[19]。
本作が影響を受けている作品として、吾峠がファンだと公言する『ジョジョの奇妙な冒険』における「不死身の吸血鬼」や「波紋の呼吸」というモチーフとの関連を、編集者の片山達彦が指摘している[19]。また、吾峠は『銀魂』も大好きであることから、コメディ要素を好んで描くという[19]。
ほか、上述のとおり『HUNTER×HUNTER』における「主人公は普通の人物で、周囲に異常性のある人物を置く」という要素を取り入れている[19]。
本作は『週刊少年ジャンプ』2016年11号から2020年24号まで連載された[4]。
連載途中まで他の並み居るジャンプ作品と比べて人気は控えめで[23]、一部噂では「初期は不人気で打ち切り寸前であった」とする声があるが、実際にはそのような懸念はなかった[19]。
人気が確立された時期は、序盤で主人公が試練を終えたところ、また主人公の同期二人が出揃ったところだったという[19]。
その後、2019年にテレビアニメ化されたことで、さらに爆発的に人気が高まった[19]。
過去の人気作品は連載最初から最後まで高い人気が続く例が多かったが、本作は右肩上がりでどんどん人気が加速していくという異例な存在だった。片山が入社して以来の10年間でもこのような例は見たことがなかったという。また、これほどの人気作品になることも片山は全く予想していなかった[19]。
人気を獲得できた理由として、「小中学生でも理解できるわかりやすさと、作家性の両方を兼ね備えた作品であること。吾峠が連載を獲得するまでに何度も葛藤しながら培ったものと、もともと吾峠が備えていた才覚が重なり合った結果」と片山は分析している[19]。
連載誌にはミニコーナー「鬼殺隊報」が掲載されている。ジャンプ公認ツイキャス「スクールオブジャンプ」では、本作の主要登場人物の年齢や裏エピソードなどが発表され、公式設定とされている。
2019年に週刊少年ジャンプ連載の電子版だけの特典としてJネットワークスの着色による当該話のカラー版が掲載されている。連載終了後の『週刊少年ジャンプ』2020年44号には炎柱・煉󠄁獄杏寿郎の初任務を描いた特別読切が掲載された。
タイトルの「鬼滅」が「鬼を滅する」を意味する場合、漢文法的には「滅鬼」が正確であるが、日本では古来から漢字を語順通りに並べる用法があり不自然ではないとされる[24]。日本語の専門家からは和製漢語という説が提唱されているが、集英社ではタイトルについての取材を拒否している[24]。
※以下のあらすじの見出しについては、原則としてアニメ版のものを使用している。
炭治郎たちは、ヒノカミ神楽の手掛かりを求め、炎柱・煉󠄁獄杏寿郎を訪ねて無限列車に乗り込む。杏寿郎とは会えたもののヒノカミ神楽の情報は得られず、しかも列車は鬼絡みの事件の渦中にあるという。3人と杏寿郎は、「下弦の壱」眠り鬼・魘夢の術に嵌り、夢の中に閉じ込められる。何とか覚醒に成功し、乗客を守りつつ、魘夢を倒す。
だが直後に現れた「上弦の参」猗窩座との戦いで、杏寿郎が殉職する。死に際に杏寿郎は炭治郎と禰󠄀豆子を認め、また猗窩座は炭治郎を標的視するようになる。
無限列車の事件から四か月後、音柱・宇髄天元の嫁が、遊郭「吉原」への潜入捜査中に消息を絶つ。天元は救出のために隊を組み、炭治郎・善逸・伊之助を女装させて潜入させる。炭治郎は「上弦の陸」堕姫と対峙し、潜入調査は一転して上弦の討伐任務となる。堕姫との実力差と自分に合わない水の呼吸・ヒノカミ神楽の技に、苦戦を強いられる。天元たちが合流し、なんとか堕姫の頸を落としたものの、死なないばかりかその体内からもう一匹の鬼・妓夫太郎が現れる。「上弦の陸」の正体はお互いの命を共有する兄妹鬼だった。毒を操る妓夫太郎と堕姫の連携攻撃に、全滅必至の負傷を負わされた剣士たちだったが、限界を超えた闘志でこれを打ち破る。
鬼殺隊にとって百年ぶりの上弦の鬼の打倒に、病身の耀哉は歓喜する。無惨は上弦の五鬼を集め、次の作戦を指示する。
幾度の強敵との戦いの度に刀を折ってくる炭治郎に、刀鍛冶・鋼鐵塚蛍は堪忍袋の緒が切れ刀を作らないと宣告する。鋼鐵塚に直談判するため炭治郎は秘匿されている刀鍛冶の里に足を延ばす。そこでたびたび夢に出てくる「耳飾りの剣士」についての足跡に触れる。 また、炭治郎は里を訪れていた恋柱・甘露寺蜜璃と霞柱・時透無一郎の二人の柱と、最後の同期にして風柱の弟である不死川玄弥と再会を果たす。
平穏だった刀鍛冶の里だが、無惨の命を受けて「上弦の伍」玉壺と「上弦の肆」半天狗が襲撃してくる。玉壺は刀鍛冶を狙い、半天狗は剣士を襲う。無一郎は玉壺の血鬼術に苦戦し、死を覚悟するも自身の過去を思い出し、激闘の末に玉壺を撃破。炭治郎は分身を使う半天狗と対戦し、玄弥や甘露寺、禰󠄀豆子との協力で勝利する。
この戦いのさなか、禰󠄀豆子は太陽を克服する。それを知るや無惨は歓喜し、標的を「青い彼岸花」から「禰󠄀豆子」に変える。彼女を食らうことで、自らも太陽を克服するというのである。無惨は鬼たちを退き、禰󠄀豆子を巡る総力戦へと備える。
刀鍛冶の里での戦い後、それまで多かった鬼の出現数は激減する。やがて開かれた柱合会議にで、おそらく鬼たちは禰󠄀豆子を狙うために本拠地に集結していること、かつて無惨をあと一歩のところまで追い詰めた剣士たちには、ことごとく鬼の文様に似た「痣」が現れていたと産屋敷耀哉の妻・産屋敷あまねは語る。無一郎は、自分の体験から「痣」を出す条件を具体的に把握していた。これを受け岩柱・悲鳴嶼行冥は、全ての柱を動員した合同強化訓練「柱稽古」を提案する。隊員たちは能力の強化を、柱たちは「痣」の発現をそれぞれ目指す。
しかし、水柱である義勇だけは、稽古に参加する姿勢を見せない。他の柱との溝が深まる中、病床の耀哉は炭治郎に、彼の本心を聞き出すように頼む。炭治郎の説得の末に義勇は、錆兎が自分の同期の剣士であったこと、彼は自分を守るために戦って死んだこと、そして自分はその経験から自分は鬼殺隊の一員であると思えないと語る。しかし炭治郎の何気ない一言から、義勇は錆兎の言葉を思い出し、自分の過去と向き合い稽古に参加することを決意する。
怪我が全快した炭治郎は、仲間たちと共に7人の柱との稽古に励み、来たるべき決戦に備えていく。しかしそんな彼らにも、鬼の探索の手が迫ってきていた。
無惨は産屋敷邸を突き止め、耀哉の命を奪うべく、深夜に来訪する。死病を気力で生き永らえていた耀哉は、自らを罠にして屋敷を爆破。未知の血鬼術を持つ伏兵の支援のもと、珠世が無惨に「鬼を人間に戻す薬」を吸収させる。さらに悲鳴嶼が追い打ちをかけるも、無惨は絶命しない。お館様の緊急事態に、炭治郎や柱たちも続々と集結し、弱体化中の無惨へと総攻撃を仕掛ける。夜明けまでの持久戦に持ち込めるかという状況で、鳴女によって鬼殺隊全員が無限城へと落とされ、鬼殺隊と鬼たちの総力戦が始まる。鬼殺隊は禰󠄀豆子を隠し、愈史郎が通信網を張り、お館様を継承した産屋敷輝利哉が指揮を取る。無惨は戦いを鬼たちに任せ、肉繭に籠り解毒を試みる。
声はアニメ版の声優。演は舞台版の俳優。登場人物の名前は創作のほか、「奇抜に見えるが実在する」姓名が多用された。
それぞれが母・父・兄・姉役を演じているが、累に恭順を示した鬼たちが、言われるままに容姿を作り変えただけで血縁はない。全員が蜘蛛や糸にちなんだ術を使用するが、元々は累から蜘蛛の形にした力を飲み込む形で与えられたもので、自身で獲得した血鬼術ではない。因みに顔は累によって皮を剥がれて作り変えられている。家族は他にも居たが累にそぐわない者や逆らう者、演じられなかった者が日光で妬かれたり切り刻まれたりして処分されたため、那田蜘蛛山編の時点では4人しかいない。アニメ版のみ作中過去で「姉」の姉を演じていた鬼(声 - 伊藤かな恵)が出ている。
ジャーナリストの数土直志は、作品の人気が沸騰した理由として以下の4点をあげた[23]。1点目はアニメ化で、緻密な作画や残酷描写など、万人受けする作風ではなかった原作に対し、シンプルな作画で躍動感を出したアニメが、作品へのハードルを下げてヒットに貢献したこと。2点目は読者層の厚さで、電子コミックの決済手段を持たない小学生がコミックスを買い集める一方、キャラクターの魅力がヤングアダルト層(13〜19歳)の男女を惹きつけたこと。3点目は物語の魅力である。鬼と鬼殺隊の対立関係という単純明快な構図に加え、複数の隊に分かれた鬼殺隊は、柱と隊員の間で友情やライバル、先輩後輩などの関係により色々な設定を作ることが可能で、これは『聖闘士星矢』や宝塚歌劇団にも共通するシステムであると述べている。4点目はコミックスの品切れで、2019年秋以降、急速に売り上げが伸びたためにコミックスの供給が追い付かない、という事態がインターネット上で話題となり、それまで関心を持たなかった層の興味を引いたことである[194]。
創価大講師の森下達は「和風」の要素に着目し、作品の掲載紙である週刊少年ジャンプでは、『るろうに剣心』『銀魂』などの人気作に先例があったことを指摘した。さらに時代設定を大正としたことにより、大正デモクラシーやモダニズムといったハイカラな雰囲気の魅力と、戦争や動乱といった史実に振り回されることのない時代が、ファンタジーものの舞台に向いていたとしている。その上で、鬼殺隊も鬼もそれぞれに事情を抱えていること、しかし人を食うことを選んだ鬼に対しては、理解を示しつつも悪と断じる健全性があり、主人公の姿勢がぶれないことに安心感があると分析した。また、女性人気という視点においてはゲーム『刀剣乱舞』に通じる洋服と刀の組み合わせというファッションの魅力、主人公の炭治郎とヒロイン禰󠄀豆子が恋人ではなく兄妹であるため、二人ながら安心して応援できる存在である点をあげている[195]。
ホットリンクのTwitter上のデータ調査ではアニメ1期終了後から少年ジャンプ+の定期購読促進のための舞台版のチケット情報、スピンオフ、画集、プレゼント企画など関連コンテンツ展開によりライト層、コア層ともに心をつかんだと分析した[196]。
2017年3月、本作の主人公「竈門炭治郎」を名乗る人物から、養護施設への寄付として愛知県豊田市役所に菓子や緑茶飲料が届けられた[197]。
芸能人や著名人の間では鬼滅の刃のキャラクターのコスプレがインスタグラムなどのSNSにアップされ、話題を集めている[198]。
国会においても、2020年11月2日の衆議院予算委員会で、江田憲司の質問に対して総理大臣・菅義偉は「『全集中の呼吸』で答弁させていただきます」と発言した[199]。また、11月4日の同委員会でも辻元清美が無惨のセリフ[200]を引用して政権の姿勢を批判した[201]。
2020年11月、香港の警察が炭治郎の格好をした警察のマスコットキャラクターをフェイスブック上に登場させたことに対して、主に香港市民から「警察が著作権を侵害している」として批判を浴びた[202]。
週刊少年ジャンプで掲載されていたことなどから読者の裾野が広いこともあり、本作やそのファンに否定的な者も一部では存在する。例えば、作者の吾峠が女性であると報じられる[203][注釈 8]と波紋を呼び、「幻滅」「ガッカリした」といった声が挙がった[204]。こうした「軽口」は「女性蔑視」や「ミソジニー」がSNSによって表出されたものではないかと指摘されており[204]、特に一昔前は、作者が女性というだけで拒絶する者も存在したため、ペンネームを男性名にする女性漫画家も多かったという[205][注釈 9]。また、本作の鑑賞を押し付けるような行為や批判しづらい空気が存在すると主張する者もおり、「『鬼滅の刃』ハラスメント」を略して「キメハラ」という言葉が存在するという[206]。
ウェブ上で流行した言葉を決めるドワンゴ・ピクシブによる2019年度の「ネット流行語100」では、本作に関する言葉が多くノミネートした。pixivに投稿された作品に付けられたタグのうち、2018年と比較して最も多かった単語を選出するpixiv賞に「鬼滅の刃」が選出され、トップ20単語賞にも「我妻善逸」(2位)、「鬼滅の刃」(4位)、「竈門炭治郎」(8位)、「柱(鬼滅の刃)」(9位)、「十二鬼月」(13位)、「胡蝶しのぶ」(17位)がランクインした[207]。2020年度もノミネート100単語中19単語が本作関連の言葉という多さで、「鬼舞辻󠄀無惨」が年間大賞を受賞した。ほか、トップ20単語賞に「煉󠄁獄杏寿郎」(3位)、「鬼の王」(4位)、「竈門禰󠄀豆子」(9位)、「継国縁壱」(11位)、「上弦の鬼」(14位)がランクインした[208]。
2020年11月に野間出版文化賞を受賞。同年12月1日発表の2020ユーキャン新語・流行語大賞で「鬼滅の刃」がトップ10に選出された[209]。同日発表のガジェット通信によるネット流行語大賞2020では「鬼滅の刃」が金賞に輝き、アニメ流行語大賞2020では金賞「◯◯の呼吸」、銀賞「全集中」、銅賞「煉獄さん200億の男」と上位3ワード全て本作関連のワードが席捲する事態となった[210]。同年12月9日に発表されたYahoo!JAPAN「Yahoo!検索大賞2020」ではアニメ部門に「鬼滅の刃」、映画部門に「劇場版「鬼滅の刃」無限列車篇」、声優部門に主人公・竈門炭治郎役の「花江夏樹」が選出された。「鬼滅の刃」は2019年に続き2年連続の授賞となり、検索数も前年以上となった[211]。
2021年3月には、芸術選奨文部科学大臣新人賞(2020年度、メディア芸術部門)を受賞、同年4月に25回手塚治虫文化賞の特別賞を受賞し、7月には第50回日本漫画家協会賞コミック部門で大賞を受賞した[212]。
那田蜘蛛山編に登場し、下弦の伍・累に刻まれた剣士について、原作では4ページ、テレビアニメでは約40秒という短い登場でありながら、SNS上では「サイコロステーキ先輩」という呼称で話題となり[213]、2020年10月17日・2021年9月19日にフジテレビ系にて那田蜘蛛山編の特別編集版が放送された際にはTwitterのトレンド上位となっていた[214]。また人気キャラクター投票では第1回投票では10票で46位だったが[215]、第2回投票では223票を集め35位に入った[213]。また前述の「ネット流行語100 2020」では「サイコロステーキ先輩」が13位にランクインした[208]。
単行本初版発行部数 | |
---|---|
18巻 | 100万部[216] |
19巻 | 150万部[217] |
20巻 | 280万部[218] |
21巻 | 300万部[219] |
22巻 | 370万部[220] |
23巻 | 395万部[221] |
単行本週間売上 | |
19巻 | 137.8万部[222] |
20巻 | 199万部(限定版込み)[223] |
21巻 | 204.1万部(限定版込み)[224] |
22巻 | 220.5万部(限定版込み)[225] |
23巻 | 343.1万部(限定版込み)[226] |
オリコン年間売上 | |
2019年 | 1205.8万部[227] |
2020年 | 8234.5万部[228] |
2021年 | 2951.1万部[229] |
国内累計発行部数の推移 | |
2019年2月 | 350万部[230] |
2019年9月 | 1000万部[231] |
2019年9月 | 1200万部[232] |
2019年10月 | 1600万部[233] |
2019年11月 | 2000万部[234] |
2019年11月 | 2500万部[235] |
2020年1月 | 4000万部[230] |
2020年5月 | 6000万部[236] |
2020年6月 | 8000万部[219] |
2020年9月 | 1億部[220] |
2020年11月 | 1億2000万部[221] |
2021年2月 | 1億5000万部[237] |
漫画の単行本はアニメ放送前の2019年3月の第14巻の時点で累計発行部数は450万部を突破していたが、アニメ放送終了直後の同年9月29日の第16巻の時点で1200万部を超え、アニメ放送期間中に累計発行部数を750万部伸ばし[238]、12月23日時点で既刊18巻すべての売上が100万部を突破しており、テレビアニメの相乗効果により短期間で売上を伸ばした[239]。
2020年2月10日付の週間オリコンランキングでは1位から10位を本作が独占する史上初の記録を達成している[240]。また、『オリコン年間コミックランキング 2019』では期間内の売上が1205.8万部を記録し第1位となり[227]、『2019年集英社本ランキング』では期間内の売上が1270万部を記録した『ONE PIECE』が第1位に、1080万部を記録した本作が第2位となった[241]。
第22巻では初版で370万部を刷り上げ、これにより累計発行部数は1億部の大台を突破することとなった[220]。最終巻である第23巻の初版発行部数は395万部になることが決定し、シリーズ累計発行部数は1億2000万部(電子版含む)を突破した[221]。さらに、2021年2月にはシリーズ累計発行発行部数が1億5000万部(電子版含む)を超え、最終巻発売から約2カ月で3000万部増を達成している[237]。
小説版『しあわせの花』『片羽の蝶』は2020年2月19日の重版を以て累計発行部数は116万部を記録し、レーベル史上最速の100万部突破となった[242]。人気の理由は本編で描かれていない話が吾峠によるイラスト付きで読めるからだという[242]。2020年7月時点で小説版シリーズの累計発行部数は280万部を突破している[243]。
2021年10月に発売された『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』は、2024年12月時点で全世界累計出荷本数400万本を突破している[249]。
2020年頃に本作の人気が爆発的に高まっていたとき、ゲーム業界にも本作は旋風を巻き起こしており、2020年に『鬼滅の刃』とコラボした『モンスターストライク』、『白猫プロジェクト』、『パズル&ドラゴンズ』、『グランブルーファンタジー』などのアプリゲームは日間平均利用者数が急拡大している[250]。
ファンには小中学生の男女も多いが[251]、ブームを牽引したのは10代から40代の女性であり、TSUTAYAではアニメ放送前は男性の購入者が多かったが放送中から女性が急増、理由として日経MJの調査では過去のジャンプ作品と違い男女ともに強く戦いの場に出ることや、そこで一見弱く思えるような人に助けてもらえるシーンの熱さが社会人に身につまされたり、鬼舞辻󠄀無惨が十二鬼月の下弦を粛清するシーンが「パワハラ会議」の通称で話題になったが反面教師として学びがあったなど、王道もありながら現代のビジネスパーソンたる女性の心をとらえた[252]。
批評家の石岡良治は、近年人気の『進撃の巨人』『東京喰種トーキョーグール』『亜人』のような人間を喰らう敵との戦いだが、やや残虐さもあるものの、敵側の事情を描くことにより女性や子供が苦手なグロテスクさは抑えられている。必殺技の描写はジャンプの王道であるバトル作品に通じ、外連味溢れる大ゴマが魅力の1つとなっている。洋と和の雰囲気を合わせて近代の闇を描いたことや、泉鏡花の作品を思わせる幻想的な近代日本の舞台設定での、華麗なビジュアルによる展開で人気が出た、とみており[253]、昔のジャンプ作品のように展開が早く、キャラがよく死んでいくのも若年層に新鮮に映った可能性をあげた[254]。
アニメコラムニストの小新井涼は、魅力的なキャラやアニメの豪華声優陣といった要素もあるが、それが刺さらない層にも家族愛、泥臭い修行や成長、迫力の剣劇や無慈悲な命のやり取りといった万人受けする魅力がある。そのため年齢性別、漫画やアニメへの興味など関係なしに勧めることができ、勧められた側も手を出しやすい。こうして興味を持ってくれそうな普遍的な要素をとっかかりとして"布教"され、人気が広まったと考えている[255]。
正確な関係性は吾峠や集英社側から明かされおらず、また作中にも描かれてはいないが、主人公の竈門炭治郎の姓と同じなどの共通点から次の三つの「竈門神社」を中心に全国の「竈門神社(竈神社)」が鬼滅の刃の聖地と話題を集め、参拝者が急増している。
全国で、登場人物の名前や見た目、動物や世界観などが関連付けられている場所が話題となっている[278]。
この他、宮城県塩竈市の公式サイト内で「竈」の書き順を解説している「『竈』の字について」のページへのアクセス数が、主人公・竈門炭治郎にも使われている難字であることから劇場版公開時より急増している[313][314]。同市の市民安全課では「塩竈市の竈の字の書き方」という印刷物も配布しており、こちらも俄かに注目を集めた[315]。
JR九州では、劇場版『無限列車編』の公開に合わせ、特急「かもめ」・「ソニック」にて同作品のラッピング列車[注釈 10]の運行を実施[316][317]。また、「SL人吉」の蒸気機関車・客車を使用した特別仕様の臨時列車「SL鬼滅の刃」を熊本 - 博多間で運行された[318][319][320][321]。
同じく劇場版公開に合わせ、JR東日本と荻野屋とのコラボとして「鬼滅の刃×SLぐんま〜無限列車大作戦〜」が企画され[322]、無限列車特別仕様の「SLぐんま よこかわ」の運行や「無限列車駅弁〜峠の釜めし 〜」[323][324][325]の発売などが行われた。
京都鉄道博物館、東映太秦映画村、嵐電とのコラボでは、「鬼滅の刃 京ノ御仕事」としてコラボ食品が発売された他[326][327]、「無限」と記したプレートを装着した蒸気機関車が京都鉄道博物館で運行された[328]。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは期間限定で「鬼滅の刃 XRライド[329][330]」や「鬼滅の刃×ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド[331]」が運行された。
全日本空輸とのコラボでは、ボーイング767-300ERやボーイング777-200ERの機体に炭治郎らキャラクターがデザインされた「鬼滅の刃じぇっと」が就航し、成田空港発着の遊覧飛行も行われた[332][333][334]。
ベネッセコーポレーション「進研ゼミ小学講座」とのコラボでは、特製の漢字計算ドリルが全国の小学生を対象に無償提供された[335]。
その他、トミカ[336]やプラレール[337]などの玩具、ダイドーブレンド「鬼滅缶」[338][339]や「鬼シゲキックス」[340][341]やビックリマン「鬼滅の刃マンチョコ」[342]などの飲料・菓子、ユニクロ「UT」やGUなどの衣類[343][344][345][346][347][348]といった、様々な企業とのコラボが展開されている。
各地でTVアニメ「鬼滅の刃」"竈門炭治郎 立志編"と劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の展覧会[349]。
2020年11月6日-11月23日、京都・南座でキャラクター13人が歌舞伎の登場人物の衣装をまとったパネルを設置[350]。
アニメ「無限列車編」、「遊郭編」の展覧会[353]。
アニメ「刀鍛冶の里編」、「柱稽古編」の展覧会[354]。
登場人物の「柱」にフォーカスした展覧会[355]。
コミックスには本編に加えて、おまけラフ「大正コソコソ」、ジャンプGIGA掲載の出張4コマ漫画、巻末のおまけ「中高一貫!!キメツ学園物語」などが収録されている。
副題 | 発行日(発売日) | ISBN | |
---|---|---|---|
1. | 2016年6月8日(6月3日[集 1]) | 978-4-08-880723-2 | |
2. | お | 2016年8月9日(8月4日[集 2]) | 978-4-08-880755-3 |
3. | 2016年10月9日(10月4日[集 3]) | 978-4-08-880795-9 | |
4. | 2016年12月7日(12月2日[集 4]) | 978-4-08-880826-0 | |
5. | 2017年3月8日(3月3日[集 5]) | 978-4-08-881026-3 | |
6. | 2017年5月7日(5月2日[集 6]) | 978-4-08-881076-8 | |
7. | 2017年8月9日(8月4日[集 7]) | 978-4-08-881193-2 | |
8. | 2017年10月9日(10月4日[集 8]) | 978-4-08-881212-0 | |
9. | 2017年12月9日(12月4日[集 9]) | 978-4-08-881283-0 | |
10. | 2018年3月7日(3月2日[集 10]) | 978-4-08-881355-4 | |
11. | 2018年6月9日(6月4日[集 11]) | 978-4-08-881399-8 | |
12. | 2018年8月8日(8月3日[集 12]) | 978-4-08-881540-4 | |
13. | 2018年11月7日(11月2日[集 13]) | 978-4-08-881626-5 | |
14. | 2019年1月9日(1月4日[集 14]) | 978-4-08-881695-1 | |
15. | 2019年4月9日(4月4日[集 15]) | 978-4-08-881799-6 | |
16. | 2019年7月9日(7月4日[集 16]) | 978-4-08-881867-2 | |
17. | 2019年10月9日(10月4日[集 17]) | 978-4-08-882080-4 | |
18. | 2019年12月9日(12月4日[集 18]) | 978-4-08-882141-2 | |
19. | 2020年2月9日(2月4日[集 19]) | 978-4-08-882204-4 | |
20. | 2020年5月18日(5月13日[集 20][集 21]) | 978-4-08-882282-2 978-4-08-882306-5(特装版) |
|
21. | 2020年7月8日(7月3日[集 22][集 23]) | 978-4-08-882349-2 978-4-08-882363-8(特装版) |
|
22. | 2020年10月7日(10月2日[集 24][集 25]) | 978-4-08-882424-6 978-4-08-908381-9(特装版) |
|
23. | 2020年12月9日(12月4日[集 26][集 27]) | 978-4-08-882495-6 978-4-08-908379-6(特装版) |
外伝2編に加えて、「きめつのあいま!」も収録されている。
原作コミックス第1巻から第7巻の冒頭までの物語を映像化した第1期『竈門炭治郎 立志編』が、2019年4月から9月まで放送された[358][359]。
テレビアニメ第1期『竈門炭治郎 立志編』の続編として原作コミックス第7巻および第8巻までの物語を映像化した劇場アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が2020年10月16日に劇場公開された[360][361]。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』で語られることがなかった「煉獄杏寿郎が無限列車へ乗り込むまでの道程」や未公開シーン、新規の次回予告が追加された『テレビアニメーション「鬼滅の刃」無限列車編』が2021年10月10日より全7話で放送された。
劇場アニメの続編として、第2期『遊郭編』が2021年12月5日より2022年2月13日まで、フジテレビ系列・TOKYO MXほかにて放送された。
第3期『刀鍛冶の里編』は2023年4月9日より6月18日まで、フジテレビ系列にて放送された[362]。
さらに続編となる『柱稽古編』の放送は2024年5月に放送された。そこで劇場版3部作が製作されることが発表された。
舞台『鬼滅の刃』シリーズ | |
---|---|
イベントの種類 | 舞台芸術、演劇(2.5次元ミュージカル) |
通称・略称 | キメステ |
初回開催 | 2020年(初演) |
主催 | 舞台「鬼滅の刃」製作委員会 |
共催 | 集英社(監修) |
協賛 | ローソンチケット |
企画制作 | ネルケプランニング |
協力 | 一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会 |
運営 | 舞台「鬼滅の刃」製作委員会 |
公式サイト |
2019年9月30日に舞台化を発表[363]、2023年までに4作品が上演された[364]。脚本・演出は末満健一[365]、音楽は和田俊輔[366]。初日や楽日を中心に全国の映画館でライブビューイング、DMM.comでライブ配信も実施される[367][368]。
タイトル | 発売日 | 規格品番 | |
---|---|---|---|
BD | DVD | ||
舞台『鬼滅の刃』 | 2020年7月22日 | ANZX-10175 - 10176 | ANZB-10175 - 10176 |
舞台『鬼滅の刃』其ノ弐 絆 | 2022年3月23日 | ANZX-10218 - 10219 | ANZB-10218 - 10219 |
舞台『鬼滅の刃』其ノ参 無限夢列車 | 2023年3月8日 | ANZX-10248 - 10249 | ANZB-10248 - 10249 |
この節は、発売前あるいは配信・稼働開始前のコンピュータゲームを扱っています。 情報が解禁されていくに従い、この項目の内容も大きく変化することがありますのでご注意ください。 |
能 狂言 『鬼滅の刃』(のう きょうげん きめつのやいば)として、2022年に初演、2023年に追加公演を開催[381]。演出・出演は野村萬斎[382]。
2024年2月・3月に東京・新橋演舞場にて、「スーパー歌舞伎II(セカンド)『鬼滅の刃』」として上演することが予定されていたが[383]、2023年8月2日、公演見合わせとなることが発表された[384]。
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