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メディアを通じての商業用の情報全般および、その情報自体 ウィキペディアから
コマーシャルメッセージ(英: Commercial Message)とは、メディアを通じての商業用の情報全般および、その情報自体。この項目では特に放送における広告について記述する。
もとはマスメディアに限った語ではなかったが、ラジオ・テレビ放送のうち、放送番組の前後や番組の途中に本編を中断して流される広告放送のことを、やがてはテレビ・映画・インターネットなどの動画広告全般を指すことが一般的になった。
日本語ではコマーシャル[1]、CM[1]、CF(commercial filmの略)[2]とも略される。その他、お知らせという言葉が(特にラジオ番組で)使用されることもある。
英語圏ではCMを含む広告全般自体(看板・ダイレクトメール・出版・放送・インターネットなど)を総じてアドヴァタイジング (advertising)、略してアド (ad) と呼ぶのが一般的であり[注釈 1]、辞書によっては「commercial message」は和製英語であると指摘している[3]。
テレビで流される広告は、英語では主にテレビジョン・アドヴァタイズメント (television advertisement) といい、特にアメリカ英語ではテレビジョン・コマーシャル (television commercial)、略する場合はコマーシャル (commercial)。イギリス英語の略称ではアドヴァート (advert) ともいう。
CMは、一般的には民間放送局が広告料収入を得るための手段となっている。
制作者は、CMが聴取者・視聴者の印象に残るべく、音楽、ドラマ仕立てのシナリオ、ナレーション、突飛なキャッチフレーズなどを用いて、さまざまな工夫をこらす。インターネットの普及以降、ナレーションの最後に「○○(商品名や企業名など)で検索!」とインターネット検索をうながす一言を加えるものも出てきている。各手法は後述。
あらゆる創造性や芸能が不可欠となったCMの制作現場は、作詞家・作曲家、歌手、コピーライター、映像監督、俳優、放送タレントなど、あらゆるクリエイターの登竜門となった。
CMはスポンサー自身が制作する場合、放送局やその系列のプロダクションが制作する場合、専門のプロダクションが制作する場合がある。それらを広告代理店が仲介する。制作に関わる体制や技術は後述。
広告宣伝業界では、限られた秒数内で企業や商品のイメージ、購買意欲などをそそる効果をはかるため、CMにおいてBeauty(=美女)、Beast(=動物)、Baby(=乳幼児)の「3B」と呼ばれるモチーフを用いることが伝統的な手法として定着している。これら「3B」は、人間の心理上、漠然と物を見ているときにも目に留まりやすい事物であり、CM以外にも広告宣伝全般で応用されている。
CMには様々な分類法がある。以下の事例は日本を例に取る。
多くの欧米諸国では視聴料金を支払ってテレビを見ることが一般的である[7]ため、テレビCMを流さない放送局もある。多くの欧米諸国とは異なりイギリスでは有料放送を主体とする衛星放送やケーブルテレビに対して無料の地上波放送の存在感が大きいことが特徴となっている[7]。イギリスには主要なテレビ局として英国放送協会(BBC)やITV、Channel4、Channel5などのテレビ局がある[7]。
このうち英国放送協会(BBC)は免許料(NHKの受信料に相当)収入を軸とする公共放送である[7]。また、Channel4は公共放送局であるがCM収入で運営されている[7]。アメリカの公共テレビ局PBSなど、地上波民間放送局であってもテレビCMを流さないもの、ケーブルテレビの一部のコミュニティチャンネルなど、広告収入も契約料収入もないものなどがある。
海外は、国営放送局などの公共放送局であってもテレビCMを流し、広告収入を得ている場合がある。
世界的に見て5 - 30秒の短いテレビCMが主流なのは、日本と一部の周辺国のみである。
アメリカやヨーロッパのCM1本あたりの時間は分単位が多い。ヨーロッパ各国の深夜番組でのアダルト電話音声の広告は5秒広告も決して少なくない。
日本は、1つのテレビCMが終わると、すぐ次のテレビCMが流れることがほとんどだが、欧米はテレビCMとテレビCMの間、テレビCMと番組の間に黒バックのフェード効果が挿入されている場合が多い。
アジアでも大韓民国は日本と同様、CM同士の間にフェード効果は挿入されていないが、番組とCMの間にクロスフェードあるいは黒バックのフェード効果が挿入されることが多い。タイのテレビは、かつてはCMから次のCMに切り替わる際、フェード効果を挟まずに0.5秒程度黒バック画面が挿入されていたが、2015年時点でさらに短く0.1秒程度の黒バック画面が、挿入されたり挿入されなかったりすることもある。
欧米では子供向け番組のテレビコマーシャルの規制が厳しく、同一番組中に同一CMを2度流すことやコマーシャルの本数に関する規制がある[8]。
フランスなど一部の国は、CM枠開始時と終了時にアイキャッチが入る。フランスは、法律で番組本編とCMの間にCMの告知を挟むことを義務づけている。香港、台湾などの中華圏の国でもフランス同様CM枠開始時、終了時にアイキャッチが挿入される。
韓国は番組本編中のテレビCMは、同国の放送法施行令により禁止されている。スポンサー名を出すのは構わないが、スポーツ中継を除き、会社ロゴも、宣伝となりうる看板や商品にあるロゴすらも、取り決めで規制しているので、放送中の広告に関わった企業に関しては、本編終了後に企業名をロゴタイプで表記する必要がある。
テレビCMは番組の本編開始前と本編終了後にまとめて放送する。その代わり、30分以上の一部の番組で一定の時間になると画面右下に現在放送中の番組のタイトルロゴが数秒表示される。かつては全ての番組において一定の時間になると画面下に表示されていた。
朝のニュース情報番組や選挙開票特番や映画など、番組が2時間を超える場合は、番組を第1部、第2部に区切って別番組扱いとし、30分 - 1時間ごとにCMを放送している。2018年から2020年までに製作された企業CMの放送自体が無いKBS第1TVを除いた韓国ドラマの新作は、1話2部構成を採っており、1部あたり35分での編成となっていた。テレビショッピングはそれ自体が宣伝なので例外である。
中国は、かつてはCM前後にアイキャッチが挿入されていたが2012年から韓国同様に本編中にテレビCMを流すことを禁止にした。番組のタイトルロゴは画面右下に常時表示される。ただし韓国とは違い、2時間を超える番組で第1部、第2部と区切って別番組扱いすることはなく、開始から終了までストレートに放送する。
アメリカ合衆国にはテレビCMの音量を規制する法律として商業広告音量軽減法(英語: Commercial Advertisement Loudness Mitigation Act;CALM法)がある[9]。この法律ではテレビCMの音量がそのCMが放送される番組の平均音量を超えないことを義務化している[10][11]。
CMは放送法において「広告放送」の語で呼ばれる。放送法83条・90条において、日本放送協会(NHK)および放送大学は通常の意味でのCMを放映することを禁止されている。
ただし、83条の2・90条の2において「他人の営業に関する広告のためにするものでないと認められる場合において、著作者又は営業者の氏名又は名称等を放送することを妨げるものではない」との規定もあり、NHKでもトーク番組でゲストのタレントが過去に出演したCMを紹介する形で放映したことがあったほか、一部の公共広告や社会的なキャンペーンの告知が放映されることは禁じられていない[注釈 2]。NHKではこの他にも、NHK出版のテキストやNHKが主催する美術展やコンサートの告知、受信料支払いの啓発、NHKオンデマンド・NHKプラスの紹介、番宣などが行われている。
地上波放送局、地上民放系BSデジタル局、ラジオ放送局を含む日本の民間放送局は、CMを放送することを通じ、広告主(スポンサー)から広告料および番組の製作費を「提供」されることで利益を得ている。広告収入は、番組の制作・購入費の主要な財源でもある。インターネット普及以降、インターネットで番組コンテンツを配信(インターネットラジオ・インターネットテレビ)する事業者も、番組内でCMを流していることがある。
視聴に際して視聴者が料金を支払う必要があるケーブル放送や、衛星放送(スカパー!、WOWOWなど)の一部では、契約料収入で費用をまかなうため、テレビCMを放映しない場合もある[注釈 3]。
CMは、いくつかを連続させた「CM枠」単位で放送される。
通常、タイムCMは、番組の放送枠内において、番組本編を中断して放送することが慣例となっている。これは番組を放送するための必要経費をスポンサーを通じて回収するという商業取引上の目的があるためである。
CMを挟まずに番組本編が放送されることは、とりわけ地上波の民間放送では極めてまれで、番組の制作経緯によってスポンサーの理解が得られた場合(下記#CMが放送されなかった番組参照)や、重大な災害などが発生して長時間の報道特別番組が組まれた場合(下記#CMが放送されなかった日参照)などに限られる[注釈 4]。
日本民間放送連盟(民放連)では、放送基準148条において、週ごとの総放送時間中におけるテレビCMの放送量の基準を、比率にして「18%以内」に設定している[4]。この総量規制は「限度」として1975年10月1日の改正によって設けられた[12]が、2016年の放送基準改正で「限度」の表現は「標準」に改められている[13]。
テレビCMにおいて、ニュース速報などの字幕スーパーや、放送局名を示すウォーターマーク[注釈 5]をCM中に表示することは基本的にない。ただし、朝の時間帯や00分のカウキャッチャーCMにおいて、時刻表示のスーパーが表示される場合がある。
テレビ放送において、災害時の関連情報(台風・土砂災害・地震など)に用いられるL字型画面や常時表示のスーパーを表示している時は、CM中は挿入を一旦停止する。ただし、警報レベルの災害情報のうち、
に該当する場合はCM中でもその情報を入れることがある。この運用態勢はあくまで各放送局の基準にのっとったものであり、地域や各放送局によって運用に差がある。
CM1本あたりの放送時間の変遷について述べる。日本で民間放送が開始された当初は生コマーシャルが主流であり、その特性上記録が残っていないものの、すべて1分から2分の長尺であったと考えられている[14]。後述の黎明期の録音・録画CMは60秒ないし30秒で制作されており、やがてこの60秒枠・30秒枠(ラジオでは20秒枠も)がスポットCMの販売単位として定着する。
30秒が基本であった販売単位がはじめて15秒に切り詰められたのは1961年秋[15]であった。さらに翌年の1962年、テレビにおいて、無音のテロップカード1枚送出に限られていた5秒CMで、音声・動画を伴わせることが認められ、限られた時間の中で突飛なキーワードを発するなどの、これまでになかった型のCMが次々制作され、流行語の源泉となった(後述)。
しかし過激化が進んで視聴者が離れることで広告効果が薄れ、制作側の消耗も激しく、「低俗化」との批判も受け、1965年10月にTBSテレビがAタイム(19時から21時)での5秒枠の販売を停止した[15]のをきっかけに、5秒CMの制作数は急激に減少した。このような経緯を経て、15秒枠が日本のCM時間のスタンダードとなり[15]、長尺として30秒・60秒が用いられるにいたった。
民放連では、放送基準151条においてテレビのスポットCMの標準時間目安を5秒・10秒・15秒・20秒・30秒・60秒と定めている[4]。ラジオのCMについては、民放連放送基準は標準時間の申し合わせ項目を設けていないが、5秒・20秒・40秒・60秒のいずれかであることがほとんどで、そのうち20秒[16]のものが非常に多い。
テレビCMの場合、スポットCMでは15秒単位、タイムCMでは30秒単位での販売となっている(例外もある)。通常、ネットワークセールスのテレビ番組内において、タイムCMのみ、スポットCMのみをそれぞれ流すように枠を分けるようにしているが、TBS製作の一部全国ネットバラエティ番組のように、CM枠の前半にタイムCM、後半にスポットCMを配置している例もある。
60秒で製作したCMは、全国ネット番組のタイムCMでよくみられる。1970年代までは関西ローカルCMのパルナス製菓など、60秒のスポットCMも存在した。
1960年代前半に多数制作された5秒CMは、それ以降も地方局で細々と見られていたが、2011年以降からやはり地方局で本数が増えるようになり、スポットCMにおける15秒単位での契約枠で3本に分散させて放送している。百貨店・ショッピングセンター・スーパーマーケットなどの大型量販店(デパートメントストア)における割引セールやポイントアップキャンペーンの広告活動が殆どである。5秒CMの方が製作費を削減できることから、それらの一環で中小店舗を中心とした一般企業のCMもそれなりにある。これら全てが製作地域のローカルCMとして製作されており、5秒CMが民放3局以下の地域などを中心に禁止されている事への配慮により、全国放送の5秒CMは存在していない。
テレビCMは、市場シェアの大きな全国規模の大手消費者向け製造業(食品、医薬品、自動車、化粧品、家電製品、時計、衣料品など)、大手小売業(大手スーパーマーケット、大型家電量販店チェーンなど)の物が多い。ローカル局は、より地元の企業のコマーシャルも流れる。ラジオCMは、テレビの業種に加え、より狭い地域に展開する小売店、食品メーカー、大学など、知名度の低い企業の物もある。
商品や企業の宣伝広告ではなく、開催予定のイベントの実施あるいは中止などの情報を伝えるCMもある。
災害に際し、民間事業者が商品でなく、被災者に役立つ情報を緊急に流す例が見られる。東日本大震災に際し、電機メーカー各社が電力不足を受けて節電方法を紹介する内容の、トヨタ自動車など自動車メーカー各社が災害発生時の安全運転や省燃費のための運転方法を紹介する内容の、移動通信各社が災害伝言ダイヤルの利用法を伝える内容の、社告形式のCMをそれぞれ放映した。住宅メーカー各社や、生命保険・損害保険各社は、被災者へのお見舞いと顧客対応窓口のフリーダイヤルを案内するCMを放映した。
企業CMのほか、政府・官庁による政府広報、地方自治体のPR、ACジャパンなどの公共広告団体によるキャンペーンCMもある。
衆議院・参議院の選挙開催期間中に政党・政治団体のCMがスポットで頻繁に放送されるが、比例代表選出選挙の政見放送はNHKでしか行われないことが多い(地域によっては30分程度放送される民放テレビ局もある)ため、事実上その代わりとして行われていると見なせる。
CM枠において、放送局自身による番組プログラムのPR(番組宣伝。「番宣」と略)がある。広義的にはコマーシャルの一種だが、商取引が発生していないため、実態としてはフィラーである。
日本は、ラジオ放送の開始に際し、逓信省の省議決定「放送用私設無線電話ニ関スル議案」によって、あらかじめ広告放送を禁止された[17]ほか、1920年代の黎明期から1951年まで、民間企業でなく、公共事業体であるNHKによる運営のみ認可され、そのNHKが聴取料収入によって運営されていた事情もあり、ラジオCMが試みられたことはなかった。
このため、広告放送は本土以外で試みられた。第二次世界大戦終結まで日本の統治下にあり、別組織の台湾放送協会がラジオ放送を独占していた台湾では、1932年6月14日または15日[18]から数か月間、演芸番組の制作費を調達するため、試験的に「間接広告放送」を実施したことがある[19]。これは放送本編と別にCMを製作せず、番組冒頭および終了時にスポンサー名をアナウンスするという形であったと考えられている[18]。スポンサー第一号は丸美屋食料品研究所または味の素本舗だったとされている[18]。実施後まもなく、広告メディアとしての競合を危惧した日本新聞協会[20]が6月27日に広告放送反対を決議[18]した上で、当時の拓務大臣を通じて広告放送の中止を台湾総督府へ訴えた[19]ことで、台湾放送協会では7月19日[18]に新規広告契約の停止と年内での広告放送中止が決定されて、「間接広告放送」の放送は12月2日[18]が最後となった。
また、日本の政財界の影響下にあった満州国の満洲電信電話でも、1936年11月1日から約3年半にわたって、日本語および満語での広告放送が実施された[18]。このときは台湾で実施された「間接広告」に加え、「直接広告」と呼ばれる、アナウンサーが広告コピーを読み上げる生コマーシャルの形式でも行われた[18]。この「直接広告」は、番組本編を中断する形でなく、広告をまとめて放送するための専用の番組枠を設けての実施だった[18]。1940年4月、日中戦争の激化にともなう経済統制のため、広告で扱う品目が大幅に制限され、やがて放送の自粛にいたった[18]。この満洲電信電話で放送広告にたずさわった人材の多くが戦後の引き揚げ後、新興の民間放送局や広告代理店に移り、CMの契約および制作に関するノウハウを伝えたと考えられている[18]。
戦後、民間放送が解禁された。民間放送の開始日、1951年9月1日には、スポンサー・広告に関わるさまざまな日本(本土)初が続いた。上記にかんがみ、広告主の名称を読み上げるアナウンスを広義のCMに含んだ場合、最初にアナウンスされたスポンサーは中部日本放送が開局アナウンス25分後の6時55分から放送した「服飾講座」における、毛織物店「五金洋品」[21]である。音声記録は残っていない(CBCは、五金洋品は「提供のみで、コマーシャルは流さなかった」としている[22])が、当然、提供スポンサーを示すアナウンスを行ったはずであり、民間放送における公表スポンサー第一号ではある。CBCラジオは、同日の朝7時には精工舎によるスポンサー付き時報の第一号放送も行っている。時計のリズミカルな音による予報音に続き通知音とともに「精工舎の時計が、ただ今、7時をお知らせしました」と報ずるものである[23](CBCでは、この時報を「コマーシャル第1号[22]」としている)。同日正午には、開局アナウンスを行ったばかりの新日本放送でも精工舎の時報が放送された[23]。
最初に放送されたスポットCMは、同日の12時15分過ぎに新日本放送(CBC同様、開局日である)で60秒間放送された「スモカ歯磨」のラジオCMとされる[21]。このCMは、ほかのCMが単なる広告コピーの読み上げであったのに比べ、ドラマ仕立ての演出がされていて耳を引いたとされ[24]、まとまった作品としてのCMと認められることから第一号とみなされている。
日本最初の(放送における)コマーシャルソングは、同年9月7日にCBCラジオで初放送された小西六のCMにおける『ボクはアマチュア・カメラマン』である[24](異説もある。コマーシャルソング#歴史を参照)。
日本最初のテレビCMは日本テレビの開局日・1953年8月28日正午直前に放映された、精工舎の時報CMである[25][26][27]。これはあらかじめフィルムに録画したアニメーションと実写の組み合わせによるCMであったが、スタッフが放送機材の操作に慣れていなかったため、フィルムを裏返しにした状態で放送してしまった。このため時計の画像は左右逆、かつフィルムの場合、映像の左側に音を再生するためのサウンドトラックがあり、フィルムが逆向きになると音が再生されなかったので、音なしの状態で放送された(時報音はフィルムと関係なく挿入されたため正確に出た)[28]。3秒ほどで放送中止となった[26]という定説が長く信じられたが、当時の関係者の証言によりそのまま30秒間放送されたことが明らかになった[28]。同日19時の時報は無事に放映された。この19時の時報CMは現存する日本最古のテレビCM映像であり、インターネットで公開されている[29][30]。
精工舎の1950~60年代のCMはフィルム原版は廃棄されたが、テックとセイコーが共同で1987年に制作した「服部セイコーCM集」という10枚組のレーザーディスクにかなりのCMが収録されている[30]。
テレビ普及期に至る間に、広告主の専属出演者を用いたCMが主流になった時期(生コマーシャル#テレビ生CMの沿革参照)を経て、1970年代の始め頃には、俳優・歌手などの別に本業を持つ芸能人によるCM出演歴が、人気の度合いを測る指標になるという認識が業界内外でなされるようになり、『週刊現代』1972年2月3日号の記事[31]では「CM出演が、タレントのもっとも有利な副業であることは、いまや常識」と書かれるに至った。やがて、ニホンモニターの「タレントCM起用社数ランキング」、ビデオリサーチの「タレント別テレビCM出稿量上位10人[32]」といった、調査会社による人物単位のCM露出量に関するデータが一般公表されるようになった。
なお、新技術が採用された記念碑的CMについては下記の「#日本のCM技術」節で述べる。
テレビ広告費は1990年代半ばで成長を止め、リモコンや録画機器の普及によるCM回避手段の増加、インターネット広告の台頭、リーマンショックなどと相まって、下落の時代に突入した。テレビ局側はCMを見させるため様々な工夫をしたが、逆に反感が集まり、CMを出稿したスポンサー自体への反感にまで至ってしまうなど難しいものとなっている[33]。
映像や音声の形式は放送波における規格に準じる。ステレオ放送が可能な放送では当然ステレオ音声によるCMが多くなっており、2000年代から5.1サラウンドステレオ音声収録のCMもわずかだが登場した。原則モノラル放送であるAMラジオ局においては、全局ステレオ放送を実施しているradikoやFM補完中継局の導入後、ステレオで制作されたCMを放送している。
テレビ放送が開始された当初は生コマーシャル、静止画、そしてフィルムが主流であり、やがてそれに加えてVTRが導入された(後述)。
アナログ放送から地上デジタル放送への過渡期である2000年代後半頃から、アスペクト比16:9のハイビジョンによる制作が多くなった。予算などの都合からハイビジョン画質の実現以降もそのまま4:3の標準画質の映像を継続して放送するため、地上デジタルテレビ放送の画面比に合わせて左右に黒帯(サイドパネル)をつける場合がある。上下左右に黒帯が入る額縁放送となる場合もある。
日本で最初にカラーで放映されたテレビCMは、1959年4月10日の20時より、日本テレビの皇太子明仁親王成婚の様子を放送した特番『このよき日』内で放映されたもの(CMの詳細は不明)だとされる。同番組はカラー放送の実用化へ向けた実験放送の一環で全編カラー制作として放映されたもので、放送の2日前の4月8日に当時の郵政省が番組内でのカラーCM放送を認可し放映が可能になった[34]。しかし、本放送開始前のカラーテレビ試験放送中に放送されたものであったことから、一般には1962年に放映された「トヨタ・トヨペットコロナ」が砂塵を上げながらドラム缶を蹴散らして走行する「スタント・ドライブシリーズ」が初とされる[35]。カラー放送を意識して、赤・青・黄色のドラム缶が登場する。
日本で最初にステレオ音声で放映されたテレビCMは、1978年11月の「住友スリーエム・スコッチ・メタルカセットテープ『METAFINE』」 で、開始からおよそ1秒間画面下中央に“(放映局のステレオ放送のロゴ)ステレオCM”と表示された。関東は当時日本テレビとTBSが音声多重放送を開始していた。
日本で最初に二ヶ国語で放映されたテレビCMは、1979年のNECの音声多重放送対応テレビ「語学友」である。このテレビは二ヶ国語放送受信に重点を置いてスピーカーを一つしか持たないモノラルテレビのスタイルで音声多重放送が受信できるというものだった。植木等をキャラクターに起用。主音声の日本語で「これで日本も安心だ!」などという節をつけたりしていたが、副音声の英語は純粋に男声での商品説明であり、完全な対訳でなかった。このCMは前述のステレオCMの時と違い特に二ヶ国語放送の旨は表示されなかった。しかし当時は音声多重放送を利用したCMはほとんどなかったので、このCMが組み込まれているゾーンは最初から二重音声放送に切り替わっていた(TBSの『兼高かおる世界の旅』は全篇二ヶ国語放送を実施し、スポンサークレジットも二ヶ国語だった)。
日本で2012年現在、3D立体映像で放送されたテレビCMは1988年に放送されたキリンのソフトドリンク「メッツ」が唯一である。全編CGで作られ、赤と青のセロハンメガネで見ると立体として浮き上がる手法が取られており、放送期間中に専用メガネのプレゼントもあった。放送された番組は『ザ・ベストテン』(TBS) などの人気番組内であり、それ以外の時間帯は同一映像で3D用でないCMが放送されていた。
2010年以降は、本編中のCMで「字幕放送」を行うことがある(花王、ライオン、パナソニック など)。その場合はCM中、画面右上[注釈 6]に「字幕」と表示される[36]。
放送局において、CM送出に際し、CM枠に合わせて、複数のCM素材をまとめるという作業が不可欠だった。素材が磁気テープないしフィルムだった時代は、当然手作業であった。
とりわけテレビCMは、初期から1990年代初頭まで、大半、やがて一部が35ミリメートルまたは16ミリメートルの映画フィルムを用いて撮影されていた[37]。放送局は納品された素材をつなげ、枠分の素材を完成させ、テレビの映像信号(NTSC)に合わせてテレシネして送出していた。
1970年代後半は技術的にVTRとの過渡期であり、ビデオ編集機材・CM送出設備の進歩や充実に合わせ、フィルム撮影した素材をテレシネしたうえでVTRに録画し、それを放送局へ納品する流れになった。代理店やプロダクションによっては、在京キー局の分をテープ納品に切り替え、関東エリア内の独立UHF局や大阪・名古屋の準キー局を含むその他の地方局へは従来通りのフィルム納品を続けるという方式を取っていた。このような過渡期においても、環境によっては依然フィルム編集のほうが容易であったので、VTRで撮影された素材でもキネコによる複写を長く行っていた(35ミリ素材の16ミリへの縮小変換にも用いられた)。このため同じCMでも放送局や時間枠によっては、画質・音質が大きく異なる場合があった。フィルム納品は1990年代に終了し、すべてテープ納品に切り替わった。
その後CMバンクシステムと呼ばれるシステムが実用化され、現在はほとんどのテレビCMがCMバンクから送出されている。
民放連放送基準は、放送基準13章から17章にかけ、CMの内容、表現方法、入稿自体の取り扱い、事業者の責任について細かい規制を設けている[4]。
その基準をもとに、各放送局のCM担当部署が内容に関する「考査基準」を定めている(例→[38][39])。
なお、インターネットCMについては、以下の規制の限りではない。
以下のスポンサーについては原則として扱わないことを取り決めている。
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民放連放送基準では、上記のような全業種共通の表現規制ルールを設けているほか、特に「医療・医薬品・化粧品(第16章)」「金融・不動産(第17章)」のCMについては厳格な条文を設けている。
かつて金利自由化される以前、銀行など個々の金融機関のCMは、業界により「広告による競争原理は馴染まない」という理由で自主規制され、テレビ・ラジオでの広告が行われなかった。代わりにボーナス支給時等に全国銀行協会等業界団体としてテレビ・ラジオで広告をしていた。1985年(昭和60年)からの金利自由化で、個々の金融機関の間でのサービス格差が生じ、1990年6月1日よりラジオのスポット広告から解禁が始まった後、1991年元日より、テレビのスポット広告が解禁された。
当初は、放映時間数に制限を設けたり、番組提供扱い=提供クレジット表示を行わずパーティシペーション扱いとするなどの自主規制が行われていたが、1993年3月に番組提供扱いが可能となり、放映時間数の制限も廃止された[45]。
ただし銀行であっても無担保カードローン商品のCMである場合は、消費者金融や信販会社、クレジットカード会社と同様の、放送時間等に関する厳しい規制がある(後述)。
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ラジオは音声だけのため、通常はテレビCMとは別にラジオCM向けのものが製作される。ラジオCMではテレビCMとは異なり20秒・40秒・60秒と20秒単位のものがほとんどで、特にスポットCMでは20秒が基本である。ただ、先述の通り標準時間の申し合わせ項目はないため、数は多くないが5秒や、稀にキリンビバレッジ「JIVE」ショートバージョンやイトキン(5秒バージョンもあった)など僅か数秒で終わるものも過去には存在した。
ラジオCMの中には、稀にテレビCMと同一内容のものを音声だけ流すケースもある。川商ハウス(鹿児島県民の間で一番知られている方の標準CM)や太平建設工業、タケモトピアノなどは、最初の15秒間でテレビCMのものをそのまま音声で流したあと、更にそのあとの5秒間で問い合わせ先の電話番号か宣伝する企業の詳しい内容のナレーションを加えて、20秒CMに仕立て上げている。
著名タレントを起用したラジオCMの場合、冒頭でナレーターのタレントが自ら「○○(名前)です」などと自己紹介することが多い(最後に自己紹介するケースもある)。
テレビCMにおいて、ウェブサイトのURLを最後に表示するものに代わって、2006年ごろから、CM末尾に商品名などが書かれたインターネット検索エンジンを模した窓を表示して、検索用のキーワードを出すという手法が増えた[62]。
日本で最初の「続きはウェブで」CMは、電通広告統計の検索で確認できる範囲で2004年のネスレコンフェクショナリーのチョコレート菓子「エアロ」とされている[63]。
この手法は放送だけでなく、各種媒体に広がった。本方式はURLを覚えるより簡易であり、商品や内容などを詳しく知らせることができる反面、覚えやすさから一般的かつ無関係なキーワードを表示し、不適切な検索結果やサジェストが表示されるケースや、検索結果にフィッシングサイトが表示される可能性もあることから、産業技術総合研究所は特にフィッシングの対象となりやすい企業に対し、本方式による広告を控えることを呼びかけている[64]。
他国では、いち早くこの手法が行われていた韓国を除いて、ほとんど使われていないが、欧米ではハッシュタグを表示させる手法がある。
大量のリコールなど、メーカーが製品に関する不祥事を起こした場合、通常はそのメーカーのCM自体が自粛され、公共広告などに差し替えられる。ただし、死亡事故が発生するなどの重大なケースは事故の発生を謝罪し、該当製品の使用中止と修理・取り替え・回収・廃棄(長期利用機種に限る)などを視聴者に要請するCMを流すことがあり、これがお詫びCMである。テレビ局も、不祥事の謝罪や、視聴者に呼び掛ける警告でもしばしばCMを流すこともある。
トーク番組やバラエティー番組などでゲスト出演する俳優やタレントらが出演するCMを「ACC CM情報センター提供」という形で流すことがある。
公共放送であるNHKでCMの映像を資料映像として流す例がある。
本編全体がCMによって中断されなかった事例として、以下の番組がある。
この節ではいずれも日本の事例を挙げる。
番組中にCMへ切り替わる際、それを一区切りと捉え、視聴者によってはCMを見ずにトイレへ行くなど別の用事を済ましたり、またCM中に他のチャンネルに変える(ザッピング)事で視聴率が低下する傾向がある。またCMにより番組の流れが断ち切られることを不快に思う視聴者も見られる[75]。一方、民放テレビ・ラジオ局にとっては広告媒体費は高額で、スポンサーからの広告媒体費が収入の多くを占めるため、視聴者にCMを見てもらう様々な工夫の他、CMの否定に対し非常に過敏になっている。
1997年8月26日にテレビ朝日の深夜番組「トゥナイト2」で、出演したタレント、乱一世がCMの直前に視聴者に向け「トイレに行かれる方はトイレへ」と、CMやスポンサーを否定する発言をしたため、テレビ朝日は放送の翌日に懲罰委員会を開き、関係者4人を処分するような事例があった[75]。日本放送協会(NHK)でも2010年6月17日放送のFIFAワールドカップ中継において、翌々日(同月19日)に同局の衛星第1テレビ(現・NHK BS1)にて生中継する日本代表戦を告知する際に同局アナウンサー(当時)の神田愛花が「(NHKでは)コマーシャルはありませんからね」とCMや民放テレビ局を否定する発言をしたため、日本民間放送連盟(民放連)が問題視し[注釈 14]、後日の放送で「配慮に欠ける発言があった」と謝罪した事例がある[76][77][78]。芸能人では徳光和夫(フリーアナウンサー)、井ノ原快彦(20th Century)たちも、過去に同様の発言を行った。
放送業界は(たとえ冗談でも)CMを否定する発言はタブー視されている。これらの発言は一種のギャグのネタとして扱われる作品があり、例としてPlayStation 2専用コンピューターゲームソフトの『ラチェット&クランク4th ギリギリ銀河のギガバトル』内で「視聴者の皆さん、コマーシャルまで漏らさないで我慢してくださいね」といった発言が挙げられる。
バラエティ番組を中心に、話題の流れの最中にCMを持って行き、視聴者がザッピングで本編を見逃すと話題の流れを見失う可能性を高くしたり、CM後に1分程度の短い本編を放送し、視聴者の注目を集めてからすぐにCMに突入することによって、結果的にCMを見る機会を増やそうとする「CMまたぎ」「山場CM」と呼ばれる手法を用いる番組も見られる[75]。以前はCM突入前に「○秒後に衝撃の結末が!」とCMの放送時間を事前に告知することもある。これは、視聴者に都合のよいザッピングの機会を与えてしまうことや、遅れネットでCM本数の異なる別時間帯に放送する地域にも配慮してか、後にあまり用いられないようになり、「CMの後に衝撃の結末が!」とCMの秒数がわからない工夫が用いられる。
かつては、音声認識や映像認識などによりテレビCMを識別し、自動的にスキップやカットをして録画する機能を持つ録画機器が発売されていたことがある。たとえば、番組自体がモノラルまたは2ヶ国語放送でテレビCMはステレオ放送の場合、音声フォーマットの違いから番組とテレビCMの区切りがわかる。番組とテレビCM共にステレオなど、音声フォーマットが同じ場合は、映像や音声レベルの変化によってテレビCMを判別する。この機能を使ってCMだけを収集することも可能である。
CMが視聴されない状態はスポンサーを失い、放送業界の収入減に直結する。このことから、民放連元会長でフジテレビ前会長の日枝久は、「テレビ番組はCMも含めて著作物で、CMを飛ばして再生・録画することは著作権の侵害に当たる」と主張していたが、再生・録画は「個人として楽しむための複製」であり、法律上は合法である。2005年5月に野村総合研究所が約540億円の経済損失と試算したが、電通はこれらの機器の購買層はコマーシャルにも関心が高く、今のところ損失につながらないと分析している。
テレビCMは注目を集めるために番組本編よりも音量が大きく設定されることが多く、視聴者の苦情もある。アメリカは2009年12月に「テレビCMの音量を、番組と同程度に規制する」法案が下院で可決した[79]。法案は、米連邦通信委員会(FCC)に対し、「過度に大音量な広告を規制する」内容となっている。法案が成立した場合は、技術的に対応するため1年の猶予期間が設けられている。同様の法案はフランスでも可決され、違反した企業は売り上げの3%相当の罰金が課せられる。
日本は、2012年10月1日からラウドネス値を用いた『NAB技術規準T032 テレビ放送における音声レベルの運用規準』が行われる[80][81]。
ここでは、日本において実際に流行したことが資料で確認できる、または新語・流行語大賞等の全国規模による賞に選出された流行語のみ記述する。
一部の記述されている流行語は、放送が終了して以降も商品パッケージなどに使用されている場合がある。
この節に雑多な内容が羅列されています。 |
テレビのCMは、視聴者にインパクトを与えるべく、台詞(キャッチコピー)や映像作りに腐心しているが、時として表現について問題視される作品が出現することがある。内容的に問題が無くても
と言った事情で問題となるCMの例もある。
背景にあるのは「コマーシャル(広告)は『好きでない人』はいても良いが、『嫌いな人』がいてはならない」という、広告業界全体の潮流であり、広告、放送、コンテンツなど、コマーシャルに関わる各業界が直面している現状を垣間見ることができる。
食事時や料理企画の放送時の雑菌や排泄の表現があるCMなど、時間帯や番組内容に配慮されていないCMなどが問題視されることがあり、しばしば放送倫理・番組向上機構(BPO)や日本広告審査機構(JARO)などに意見が寄せられている。
また2017年に放映されたトヨタ・ヴィッツのCMは「作っていたヴィッツのCMが形になってきたタイミング(「髭面のおじさんがヴィッツに乗ってパトカーを振り切ろうとする」という、典型的なカーチェイス)で「お偉いさん」に見せたところアピールポイントの強調、視聴者からのクレーム対策といった要望を次々に出されてしまい、内容の修正によりそれらをすべて実現させたところ本来とはまったく違う荒唐無稽なストーリーになってしまい映像作品としてメチャクチャなものが出来上がってしまう」という、このような問題を露骨に皮肉った内容となっている[182]。
以下、特記を除き日本での事例を記述する。企業の不祥事による放送中止・打ち切りは記載する。出演者の不祥事による放送中止・打ち切りは、企業がイメージダウンに繋がるなどと判断した場合は記載するが、これとは関係ない不祥事の場合は記載しない。
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