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生コマーシャル(なまコマーシャル)は、民間放送におけるコマーシャルメッセージ(CM)のうち、生放送形式で放送されるものの呼称。生CMまたは生コマと略される[1]。
多くの場合、スタジオで1人ないし複数の出演者が、決められた時間枠内で、商品に関する情報をアナウンスする。テレビの場合、小さな画角が保たれたセット内で、商品を手に持つか、かたわらに立つかした出演者がとうとうとアナウンスを述べ、場合によっては実際に使用する、というシンプルな構成の演出方法を取る。
日本の民間放送初期、収録素材(音声録音用磁気テープ、映画フィルム、VTR等)によってCMを放送することはハイコストであったり、環境によって技術的に困難だったりしたため、ほとんどのCMが生CMで放送された[2]。
ラジオ番組の生ワイド番組等では、CM枠でスタジオ音声を降ろさずに、番組のラジオパーソナリティ自身がCMのアナウンスを行う形式が主流であり、21世紀以降も実施されている。スポンサーの代表取締役がパーソナリティを勤める番組[3]も、生コマーシャルの形式を採ることが多い。以下は実例。
日本の民間テレビ放送開始当初は、前述の通り収録素材によるCMを送出しにくい事情があった。特に映像記録手段がフィルムしかなかった時代では、テレビカメラの映像信号を直接放送した方が、フィルムのテレシネ送出よりコマ数が細かく、画質も鮮明であり、宣伝のために好都合だったという事情があった[2]。またフィルム自体の価格も高かったという事情もある[7]。
この時代の代表的な形式として、番組本編中断時に、その番組の出演者にそのままCMを演じさせる、という構成があった。広く知られ、文献に残る例として、舞台コメディの生中継番組『のり平のテレビ千一夜』(早川電機)[2]、生テレビドラマ『日真名氏飛び出す』(三共)[2][8] の事例がある。特に後者は、登場人物が毎回のシーン中にスポンサー企業の商品を必ず用いるというプロダクトプレイスメントの手法であった。当時は番組1本につき1社のスポンサーがつく一社提供番組が主流だったことや、のちの時代ほどステーションブレイク(番組終了から次の番組開始までの時間)に多くの時間を取らず、スポットCMを詰めていなかったことが、この演出形式を容易にした。
なお、日本における生CM第一号は自動車メーカーダイハツがスポンサーとなっていたコメディドラマ「やりくりアパート」(大阪テレビ放送(現・朝日放送テレビ)製作)の中で放送していた大村崑らが出演するダイハツ・ミゼットのものとされている。
番組出演者を用いなかった初期の例として、日本テレビの『日本プロレス中継』では、試合間のインターバルで、スタッフが掃除機を使用してリング上を清掃しているさまを撮影し、実況アナウンサーが三菱電機の商品であることを宣伝するというものがあった。
民放テレビ4年目の1956年頃から、とりわけ家電製品メーカー企業において、生コマーシャルのための専属タレントが固定で用いられる例がみられるようになった。東京芝浦電気の旗和子、三洋電機の林ひな子がその草分けとされ[9]、翌年には松下電器産業の泉大助が人気を博した[10]。このほか、日本教育テレビのアナウンサーから東芝専属に転身した押阪忍、同じくNHKアナウンサーから日立製作所専属となった高橋圭三などが挙げられる。
やがて、生コマーシャルは主として『小川宏ショー』『3時のあなた』など、番組本編も生放送であるワイドショーなどで行われる程度となっていった。また、VTRの普及にともない、生コマーシャルの構成をそのまま生かして収録した「ビデオコマーシャル」と呼ばれる手法と生コマーシャルとを併用するようになった。
収録コマーシャルはテレビ放送局内のCMバンクシステムから再生・送出されている。これに対し生コマーシャルは、上述の「ビデオコマーシャル」の場合も含め、生放送中の番組本編同様、スタジオ副調整室から送出(サブ出し)している。
放送の形態としては2つの例がある。ひとつは番組本編枠の一部として放送されるケースで、放送運行上はCM枠ではなく本編枠の扱いとなるため、ウォーターマークの表示が消えることはなく(主調整室からの任意で表示を止める場合もある)、この場合はビデオレコーダ等のCMスキップ機能でコマーシャルと認識されない。
もうひとつは放送運行上、CM枠の一部として自動番組制御装置にて時間枠を設定。CM枠の送出素材をその枠のみCMバンクではなく放送中の副調整室に設定することで生コマーシャルを送出することがある。この仕組みを応用して、ジャパネットたかたなどの通信販売会社が生コマーシャル形式のテレビショッピングを放送するケースもある(後述)。こちらのケースでは自動番組制御装置によりCM枠として運行されているためウォーターマークの表示を止める。
何度も繰り返し放送される収録コマーシャルと違い、一度しか放送されないので、時間内ですべての情報を認識させるための台本およびフリップボード・字幕スーパーなどの文字情報製作に専門の知識と経験が要求される。
1本あたりの時間は、60秒から120秒前後である。
番組本編のセットや出演者を用いた演出の生コマーシャルを行う場合、民放連放送基準92条[11] に基づき、「これは(○○の)CMです」という表示をするなど、一見してコマーシャルだとわかるような処置をしなければならないことになっている。
番組本編も生放送である場合、生コマーシャルの放送時間は番組の進み具合によって変化することがある。
スポーツ中継番組や、特別番組などでは、サブ出しで番組本編にかぶせるように、協賛スポンサーの生コマーシャルを実施するケースが存在する。これは民放連放送基準150条の、スーパーインポーズをCMに原則用いないための自主規制ルールに設けられた例外規定[11] に基づくもので、多彩な放送手法がみられる。
2024年10月現在
藤田まことによる「俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー」の流行語で知られる『てなもんや三度笠』は収録番組であり、厳密には生コマーシャルの例に含まれない。公開収録形式の撮って出しによる放送であり、上記『のり平のテレビ千一夜』の手法の踏襲である。
また生コマーシャル、ないしはそれに仕立てた現代のインフォマーシャル的な件によるトラブルもあり、泉谷しげるは1972年、日本教育テレビ(NET 現・テレビ朝日)『土曜ショー』において、缶詰メーカー(詳細不明)の焼き鳥の缶詰の説明中に「うまいわけねぇだろう!!くだらねぇ!!やるんじゃねぇ!!」と激怒(これとは別に、放送禁止楽曲も生放送で披露している)し、それ以後NETを出入り禁止にさせられたうえ、左記番組の打ち切りという憂き目を見た。
さらに、この箇所は生放送ではない収録放送であるため、放送ではオフレコとはなったが、ニッポン放送などで放送された『吉田拓郎 バイタリスフォーク・ビレッジ』において、ゲストコーナーに出場したRCサクセションの忌野清志郎は、吉田から「普段整髪料は何を使っていますか?」と問うと、本来は「バイタリス」、あるいは「エメロン」と返さなければならないところを、ライバル他社である資生堂の「MG5」と発言して、スポンサーのライオン歯磨関係者から抗議を受けたという例もある。
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