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家電製品を中心に販売する小売店 ウィキペディアから
家電量販店(かでんりょうはんてん)とは、主にテレビ受像機、パソコン、オーディオ機器などの家電製品を多く仕入れて安く売ることを基本路線とする大型小売店である。
秋葉原(東京)や日本橋(大阪)の電気街を発祥とする電器店やオーディオ店が大型化し、チェーン展開していったのが始まりである。1980年代以降は新宿駅や池袋駅周辺に拠点を置くカメラ販売の量販店が「カメラ店」の枠を超え生活家電をはじめAV機器、パソコン、携帯電話などの販売も手がけるようになった。1990年代以降は電気街に代わってカメラ系の大型量販店が相次いでターミナル駅に店舗を構える一方、郊外では多数の駐車場を併設した店舗網を持つチェーンストアが規模を拡大していった。
量販店では家電メーカーから一度にまとまった数で仕入れる事で安い卸値で仕入れ(「○○オリジナルモデル」と称した特別仕様の商品を開発する場合もある[注 1])、これを大量販売するという形の薄利多売を主な販売戦略とする。このため前に仕入れた商品を売り切らない事には別カテゴリー(例としては白物家電と娯楽家電など)に属する商品でも商品保管スペースの関係から仕入れ難い傾向も見られ、とにかく短期間の内に売り切ろうとする傾向が極めて強い。チェーンストアの特性を生かし、店舗間で商品を融通する場合もある。ある商品について在庫の多い店舗から在庫の少ない店舗に移動して、各店舗の在庫量を平準化するわけである。これは衣料品などのチェーンストアにも見られる。
家電の設置や古い家電の回収など客先での業務は、地元の電気店や電気工事事業者などに委託している。配送も基本的に委託であるが、ヨドバシカメラは差別化のため自社配送を開始している。
店の規模にもよるが、店員は担当部門を限定した複数のグループに分けられることが多い。
大型量販店同士の低価格販売競争が常態化しているため、利益を出すためには家電メーカーから少しでも安く仕入れるとともに、大量販売をコミットすることによるメーカーからのリベートの獲得が必要となる。メーカーに対する価格交渉力の強化と大量販売の実現のため、必然的に大規模化・グループ化が進むことになる。
業界トップのヤマダデンキは、店舗の大型化を進めるとともに業況の悪化した地域量販店を積極的に買収するなどして家電小売業界で初めて連結売上高1兆円、さらに2兆円を達成した。このような規模を背景に、メーカーに対して非常に強い価格交渉力を発揮している。他のグループもバーゲニング・パワーをつけるため買収や統合によって規模を拡大しなければ、激しい価格競争の業界で生き残ることは至難となっている。
業界首位となった企業でも、大型店舗の出店競争に出遅れた各社は、1976年まで首位だった第一家庭電器が倒産、1996年まで首位だったベスト電器がヤマダデンキの連結子会社に、2001年まで首位だったコジマがビックカメラの連結子会社になるなど、業界内での浮き沈みは激しい。
主要な家電量販店の連結決算によると、売上高順位は下記の通りである。なお、ヤマダデンキの本社、ビックカメラの創業地はともに群馬県高崎市、2001年まで業界首位だったコジマの本社は宇都宮市、ケーズデンキの本社は茨城県水戸市と、北関東勢が業界を席捲している。
会社名 | 連結売上高 | 備考 |
---|---|---|
ヤマダデンキ | 1兆5,920億円 (2024年3月期) | 2002年から業界1位 2005年3月期から連結売上高1兆円超 2010年3月期と2011年3月期は連結売上高2兆円超 2013年3月期からベスト電器を連結に算入 |
ビックカメラ | 8,155億円 (2023年8月期) | 2006年8月期からソフマップを連結に算入 2013年8月期からコジマを連結に算入 主に大都市に出店しているが、「コジマ×ビックカメラ」屋号で郊外店も展開 |
ノジマ | 7,613億円 (2024年3月期) | 主に関東地方・東海地方・甲信地方を地盤に出店 |
ヨドバシカメラ | 7,530億円 (2022年3月期) | 非上場。主に大都市の主要駅前に大規模店舗を出店し、1店舗あたりの売上高が大きい |
エディオン | 7,210億円 (2024年3月期) | 2002年にデオデオとエイデンが持株統合して発足 2005年にミドリ電化を完全子会社化 2006年に石丸電気に出資、2008年に完全子会社化 2008年にサンキュー(100満ボルト)に出資、2011年に完全子会社化 デオデオ(旧第一産業)は1977年 - 1979年の業界首位 |
ケーズホールディングス | 7,183億円 (2024年3月期) | 主に郊外に出店している |
上新電機 | 4,036億円 (2024年3月期) | 主に近畿地方を地盤とする |
しかし他店との競争のために「他社のチラシを持ってくればそれより○%安くする」などとして広告していた場合に実際にはこの「○%の値引き」が仕入れ価格を下回り利益を出せない・不当競争で処罰されるからとこれを拒んだケースや、「他店より安くする」としているにもかかわらず実際は他店と比較して高い商品も見受けられるケースも在ったとして広告内容が消費者の誤認を招くとして公正取引委員会から警告を受けた事例もある。
量販店においては、「ポイント制による還元」と称するリピーターの囲い込み手法がよく行われている。
他にもクレジットカード会社と提携したメンバーズカードの発行、店舗内にインターネットサービスプロバイダの出店、その他各種サービス契約の勧誘を通じて、それらサービスを提供する会社から得られるインセンティブによって収益をカバーする戦略が採られている。また、パソコンの初期設定などの有償のサービスで利益を確保することも多く行われている。他の量販店ではサービスを簡素化することで人件費を浮かしていることとは対照的である。
日本電気大型店協会に参加していた、1970年頃より家電量販店を展開していた企業。地域別に出店していた。
一地方の個人商店から始まって、系列店を抜けて、日米構造協議という外圧により大規模小売店舗法の緩和、廃止を背景として、1990年代以降に郊外を中心にチェーン化した企業。とくに北関東(群馬県、栃木県、茨城県)を発祥とするチェーン(北関東YKK)の発展が著しい。日本電気大型店協会には不参加、または脱退。
元来は社名のとおりカメラやフィルム、三脚など写真用品の販売からスタートしたが1990年代以降はAV機器やパソコンを主体とした家電製品の割合が高くなっている。かつてカメラが高級かつすぐには買い換えられないという、家電以上に耐久消費財としての特徴を持っていたことから、早い時期から交通至便なターミナル駅前に集中的に出店し、テレビCMとの相乗効果で店舗への集客力を高め、大量に売りさばく戦略(レールサイド戦略)を得意としていた。1980年代以降、そのノウハウを活かして家電販売に進出していった。こうした経緯から店舗数は少ないが、大都市の主要駅前に広い商圏を持つ超大型店舗を構えており、坪単価の売上高は郊外電器店系家電量販店を遙かにしのぐ。日本電気大型店協会には不参加。
この他、かつては大阪市のナニワ商会(カメラのナニワ)も心斎橋本店に限り同様の業態であったが、21世紀に入ってからは家電販売から撤退し本業のカメラ販売に集中している。また、中古のカメラ販売に特化した店舗[2]も増えてきている。
電気街は狭い立地の高層店舗と狭い商業圏というコストの問題、トレンドの変化などから、1990年代以降の郊外系・カメラ系大型量販店との価格競争に敗れ、競争力が低下していった。しかし、その中のいくつかは全国展開に成功した。
秋葉原や日本橋などの電器卸売・小売店を発祥とする企業と、同地のパソコン販売店を発祥とする企業に大別される。後者は現在でもパソコン販売専業としている場合が多い。電気街の狭い立地を補うため高層の店舗(ペンシルビル)を複数展開することが多い。日本電気大型店協会に参加していた店も多い。
家電量販店の業界団体として、1972年に設立された日本電気大型店協会(NEBA)があったが、業界再編で加盟社が減少し、2005年8月末で解散している。
2007年時点では家電量販店の業界団体は存在せず、主要各社の対抗心が強い業界体質からか日本チェーンストア協会など他の小売系団体に加盟している企業も存在しない。ただし電機メーカーや業界団体、電器店の商業組合などが加入する全国家庭電気製品公正取引協議会があり、ここにはヤマダデンキ、エディオン、コジマ、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ケーズデンキなど主要家電量販店が加盟していたが脱退する販売店もある[3]。
中国では家電量販店は白物家電やAV機器などを取り扱うが、電池やCD-Rといった小さな消耗品は取り扱わない[4]。また販売スペースはメーカーごとに割り振られており、“メーカーへの場所貸し”といった側面が強い[4]。そのため、メーカーが展示法など手を入れないとすぐに悪くなっていくという[5]。損益計算書を見てもメーカーから多くの販売促進費や場所代などを徴収しており、その額は主業の販売業務による利益に匹敵する時期もあった[6]。
商品は、通常はメーカー希望小売価格をそのまま提示する[4]。
アメリカ合衆国では、2007年、コンプUSAは事業撤退し、2008年、サーキット・シティー・ストアーズは破綻。アマゾンなどの通販サイトの台頭により中小の多くも撤退、2015年にラジオシャックが破綻した後は、全国に店舗網を持つのは最大手のベストバイだけとなる[7]。
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