日本の路面電車一覧(にほんのろめんでんしゃいちらん)では、日本に現存する路面電車の路線および、かつて存在した路面電車、建設が計画されている路面電車について記す。日本以外の例については、「路面電車の走る街の一覧」を参照。
軌道法に基づく路面電車を運行している事業者は下記の通りである。
さらに見る 事業者名, 旅客案内上の名称 ...
事業者名 |
旅客案内上の名称 |
所在地 |
開業年 |
総延長 (km) |
路線数 |
運行 系統数 |
停留場 ・駅数 |
軌間 (mm) |
併用 軌道 |
専用 軌道 |
鉄道線 直通 |
備考 |
札幌市交通事業振興公社 |
札幌市電 |
北海道 |
1918年 |
8.9 |
4 |
1 |
24 |
1,067 |
あり |
なし |
なし |
2020年3月までは札幌市交通局が運行 |
函館市企業局交通部 |
函館市電 |
北海道 |
1913年 |
10.9 |
4 |
2 |
26 |
1,372 |
あり |
なし |
なし |
2011年3月までは函館市交通局が運行 |
宇都宮ライトレール |
ライトライン |
栃木県 |
2023年 |
14.6 |
1 |
1 |
19 |
1,067 |
あり |
あり |
なし |
|
東京都交通局 |
都電 |
東京都 |
1903年 |
12.2 |
1 |
1 |
30 |
1,372 |
あり[* 1] |
あり |
なし |
|
東急電鉄 |
世田谷線 |
東京都 |
1925年 |
5.0 |
1 |
1 |
10 |
1,372 |
なし |
あり |
なし |
東急電鉄の軌道線の開業年は1907年 |
富山地方鉄道 |
富山軌道線 |
富山県 |
1913年 |
8.7 |
7 |
6 |
29 |
1,067 |
あり |
なし |
あり[* 2] |
|
富山港線 |
富山港線の鉄道線区間[* 3]を除く 2020年2月までは富山ライトレールが運行 |
万葉線 |
万葉線 |
富山県 |
1948年 |
8.0 |
1 |
1 |
18 |
1,067 |
あり |
あり |
あり[* 4] |
鉄道線である新湊港線を除く 2002年1月までは加越能鉄道が運行 |
豊橋鉄道 |
市内線 |
愛知県 |
1925年 |
5.4 |
1 |
2 |
14 |
1,067 |
あり |
なし |
なし |
|
福井鉄道 |
福武線 |
福井県 |
1933年 |
3.4 |
1 |
1 |
6 |
1,067 |
あり |
あり[* 5] |
あり[* 6] |
福武線の鉄道線区間[* 7]を除く |
京阪電気鉄道 |
大津線 |
滋賀県 京都府 |
1912年 |
21.6 |
2 |
2 |
27 |
1,435 |
あり |
あり |
あり[* 8] |
京阪電気鉄道の軌道線の開業年は1910年 |
京福電気鉄道 |
嵐電 |
京都府 |
1910年 |
11.0 |
2 |
2 |
22 |
1,435 |
あり |
あり |
なし |
|
阪堺電気軌道 |
阪堺電車 |
大阪府 |
1911年 |
18.3 |
2 |
2 |
40 |
1,435 |
あり |
あり |
なし |
|
岡山電気軌道 |
岡電 |
岡山県 |
1912年 |
4.7 |
2 |
2 |
17 |
1,067 |
あり |
なし |
なし |
停留場数に臨時停留場の京橋停留場を含む |
広島電鉄 |
市内線 |
広島県 |
1912年 |
19.0 |
6 |
8 |
57 |
1,435 |
あり |
あり[* 9] |
あり[* 10] |
鉄道線である宮島線を除く |
とさでん交通 |
とさでん交通 |
高知県 |
1904年 |
25.3 |
4 |
2 |
76 |
1,067 |
あり |
あり |
なし |
2014年9月までは土佐電気鉄道が運行 |
伊予鉄道 |
松山市内線 |
愛媛県 |
1911年 |
6.9 |
5 |
5 |
22 |
1,067 |
あり |
あり[* 11] |
あり[* 12] |
鉄道線である城北線を除く |
長崎電気軌道 |
長崎電気軌道 |
長崎県 |
1915年 |
11.5 |
5 |
5 |
38 |
1,435 |
あり |
あり |
なし |
|
熊本市交通局 |
熊本市電 |
熊本県 |
1924年 |
12.1 |
5 |
2 |
35 |
1,435 |
あり |
あり[* 13] |
なし |
|
鹿児島市交通局 |
鹿児島市電 |
鹿児島県 |
1912年 |
13.1 |
4 |
2 |
35 |
1,435 |
あり |
あり |
なし |
|
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営業中の路線は下記の通りである。
なお、一部の路面電車路線を除き、上記の案内上の名称や事業者の経営形態に関係なく、市営ではない路線についても市街電車・市内電車の略称として「市電」と呼ぶことも多い(「市電#民営路面電車で市電と呼ばれる(呼ばれた)事があるもの」も参照)。その他、北海道や四国など、近年まで鉄道路線の電化が進んでおらず、現在も電化路線が少ない地域や非電化列車が主流となっている地域においては、国鉄→JR(またはそれを継承した第三セクター鉄道)の鉄道路線のことを、電気を動力とするものも含め旧来の名残で「汽車」と呼ぶのに対し、長らく電化路線として運行されていた路面電車路線を指す通称として単に「電車」と呼ぶ例も見られる。
札幌市交通局(当時)
函館市企業局交通部
宇都宮ライトレール
東京都交通局
東急電鉄
富山地方鉄道
万葉線
豊橋鉄道
福井鉄道
京阪電気鉄道
京福電気鉄道
阪堺電気軌道
岡山電気軌道
広島電鉄
とさでん交通
伊予鉄道
長崎電気軌道
熊本市交通局
鹿児島市交通局
鉄道事業法に基づく鉄道路線のうち、路面電車車両により運行される路線、および構造上の併用軌道区間が存在する路線は下記のとおりである。
路面電車路線と直通運転を行う鉄道路線
2001年の国土交通省統合以前は、鉄道線は運輸省、軌道線は建設省と担当省庁が異なっていたため、線路は物理的に連続していても、鉄道線と軌道線の境界に責任の分界を明確に示す標識(鉄軌分界点)が設けられている。現在も鉄道線は鉄道事業法、軌道線は軌道法と根拠法令が異なるため両者の分界は明確化されている。このように法的には鉄道線と軌道線を別の物として管轄しているが、実態としては直通する鉄道線・軌道線ともに一体で運行されていることに加え、運行車両や構造上の併用軌道の有無と、根拠法令の分界点が実態上一致していないこともあり、両者の違いが利用者向けの案内に反映されることはほぼない。
かつて路面電車として建設された名残から、構造上の併用軌道区間が残る鉄道路線
現在の私鉄の大部分が鉄道法制・軌道法制に則って建設された(後節参照)経緯から、過去には本格的な鉄道路線でありながら構造上の併用軌道区間が存在した。大手で比較的後年まで残った例としては、近畿日本鉄道奈良線や名古屋鉄道の犬山橋等が挙げられる。しかし、いずれの場合も高密度ダイヤや高速運転の妨げとなったことから、専用化が行われ、そのほとんどが解消され、現在は中小2社の2例を残すのみとなっている。
江ノ島電鉄
(併用軌道区間)
熊本電気鉄道
(併用軌道区間)
かつて路面電車路線と直通運転していた名残から、路面電車車両により運行される鉄道路線
路面電車路線網の廃止・縮小や軌道線から鉄道線への転換が進み、軌道線と鉄道線の直通運転もその多くが消滅した。これにより、直通運転していた鉄道路線のほとんどが普通鉄道規格の車両による運行に統一されたが、下記の1例のみ、路面電車タイプの車両による運行が継続されている。
- 筑豊電気鉄道 - 筑豊電気鉄道線(北九州市・中間市・直方市)
- 1956年に熊西駅 - 筑豊直方駅間が鉄道線として開業。軌道線である西日本鉄道(西鉄)北九州線と開業当初から直通運転を行っており、開業時から1976年までは自社車両を所有せず、西鉄の路面電車車両を借り入れて運行をしていた。1976年以降も、2000年の西鉄北九州線廃止まで、筑豊電気鉄道線と西鉄北九州線の間で相互に車両の乗り入れが行われていた。2000年に西鉄北九州線の黒崎駅前駅 - 熊西駅間を除く全線が廃止されるに至り、残る黒崎駅前駅 - 熊西駅間は筑豊電気鉄道による運行に移管された。あわせて、当該区間が軌道線から鉄道線に転換された[* 15]。このような経緯から、現在では全線が鉄道線でありながらも、依然として全列車が路面電車タイプの車両により運行されているほか、沿線の交差点名や路線バスの停留所名でも西鉄北九州線に倣って当路線の駅を「電停」と称しており[* 16]、路面電車としての性格を色濃く残している。
日本におけるLRT(Light rail transit)、ライトレールとは、「次世代型路面電車」のこと。
建設中の路線
下記の2路線が軌道法に基づく軌道事業の特許を取得し建設工事中である。
- 岡山電気軌道 - 東山本線(岡山市)
- 東山本線の終端である岡山駅前停留場から延伸し、JR岡山駅前広場内まで乗り入れる計画である。現在の岡山駅前停留場は存続し、そこから駅前広場内に向かって0.1km路線を延伸して、駅前広場内に新たな停留場を新設する計画となっている[7]。2023年度を開業目標としていたが[7]、工事計画の不備により2025年度開業予定に延期されており[8]、総事業費の増加や軌道新設に伴う地下街の補強工事の影響を受け、更に1年程度の開業時期の遅れが発生する可能性が見込まれている[9]。
既存線の延伸計画の中止案件
- 函館市交通局(函館市)
- 2000年以降、五稜郭公園前 - 赤川一丁目間、および湯の川 - 函館空港間の路線の延伸が検討されたが、採算面や民間バス会社との競合の発生を理由に見送られた。
- 相鉄いずみ野線(藤沢市)
- 終点の湘南台駅から慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)付近まで延伸させる計画がある。ライトレールの導入も検討され、神奈川県と藤沢市、相模鉄道、慶応大学の間で協議が行われたが[30]、普通鉄道(単線)による延伸という方針が採択された。
- 土佐電気鉄道(現・とさでん交通)(高知市)
- JR高知駅の高架化に合わせて高知駅周辺土地区画整理事業やJR土讃線高知駅周辺連続立体交差事業などの高知駅周辺都市整備を計画する中で路面電車の北伸が検討されたが、諸事情で事業内での計画を断念、将来北伸が可能なように設計することになった。駅舎設計時にはその旨を踏まえ、西側の自由通路は電車が通れる大きさになっている[31]。
- 長崎電気軌道(長崎市)
- 赤迫支線を北方の滑石まで延長する構想が存在した。しかし、2011年までに長崎市はこの構想の検討を断念している[32][33]。
- 熊本電気鉄道(熊本市)
- 全路線を改軌すると共に藤崎線を延伸して熊本市電と直通運転する、または改軌せずにどちらかを延伸し、接続駅(電停)での対面乗換を可能にするという計画案。元々は熊本電気鉄道が中心部結節強化以外に旅客を増やす方法はなく、また老朽化した設備の更新も現状のままでは不可能との判断から、路線の存続を賭ける最後の手段として熊本市にすがりつく形で浮上した案であったが、行政サイドはこれを一刀両断に拒否、検討委員会を設置して、鉄道を廃止して路盤をバス専用道に転用、連節バスやガイドウェイバスを走らせる新バスシステム導入を軸に検討を進める方針を一旦決定した。しかし、熊本電気鉄道が投資できる環境になく、また九州新幹線の開業にも間に合いそうもないことなどから、まずは熊本電気鉄道自体の経営再建を優先させつつしばらく様子を見ることとなり、都心部結節計画の検討自体が当面凍結されることとなった。
- 熊本市交通局(熊本市)
- 延伸計画もある一方で、熊本市は2006年、鹿児島本線・豊肥本線連続立体交差化事業及びJR熊本駅東口駅前広場整備に合わせ、JRとの乗り換えの利便性を向上させる目的からJR熊本駅新駅舎に市電を引き込む計画を提起し、同年、熊本県など関係機関と合意。2013年9月に東口駅前広場機能配置案を公表した。同案によると熊本市電田崎線の熊本駅前電停から直接二本木口電停方面に向かっている現在のルートから、双方に分岐点を設けて市電が東口駅前広場内を横切り、JR熊本駅新駅舎1階部分に進入、スイッチバック方式で再び東口駅前広場内を横切り本線上に戻るという計画であった。市電の軌道敷は歩行者が自由に往来できるトランジットモール形式を想定していた。ただ歩行者や自転車の往来について安全面の課題があるため、その可否に向けて検討を行い、2014年度中に結論を出すことになった。2015年2月、大西一史熊本市長は熊本市議会本会議において「歩行者・自転車の安全確保や駅前広場の自由な往来が制限されるという課題に解決策が見い出せていない」「(事業計画・日程や今後検討を進める市電そのものの延伸への影響も踏まえ)駅舎乗り入れを諦め、駅前広場計画を見直す」と述べ、計画断念を表明した[34]。今後は市電とバス・タクシーとの乗り換え利便性の向上について検討するという。
LRT新線の構想がある・あった自治体
- 宮城県富谷市
- 市制施行前の富谷町時代から仙台市地下鉄南北線と町内を結ぶ軌道交通の候補として、LRTを導入する構想を、前町長の長男・若生裕俊が2015年2月の町長選挙で掲げ、現職を下して初当選した[35]。ルートの一部が通る仙台市の奥山恵美子市長は2015年3月の会見で、(従来から要望のあった)地下鉄南北線延伸は困難とする一方、LRTについては富谷町側から説明を受けておらず、どのような前提で事業として実現させるのかを示されなければ仙台市としての考えは返答できないとコメントしている[36]。
- 栃木県小山市
- JR小山駅北方の稲葉郷地区にて東北本線より分岐し、北東の中久喜地区に所在する東光高岳小山事業所に至る貨物専用線(高岳製作所専用線。全線単線。約4.8km)にLRTや蓄電池電車を運行し旅客線化する構想が小山市によって提起されている。同専用線は同社の大型製品を運搬する不定期の貨物列車が年10回程度運行されるのみで、通常ほとんど使用されていないことから、市は同専用線の活用を検討している。しかし、2020年3月策定の市総合都市交通計画では重点施策とはされなかった[37]。下野新聞の取材によると、市の調査の結果、採算が厳しいことが判明したとのこと[38]。
- 群馬県前橋市
- 前橋市は正式にLRTの研究を行うことを2015年に公表した。当時の報道では2017年度末をめどに新交通網の概略をまとめ、整備に財政支援が受けられる国土交通相の認定を目指すとされた[39]。この構想と同一のものかは不明であるが、上毛電気鉄道の活性化を目的として前橋市を含む沿線3自治体で構成される「上電沿線市連絡協議会」が同線のLRT化を前提に2017年に実施した調査では事業費が200億円以上という結果となり、「早期導入は困難」と報じられた[40]。2017年から開催されている前橋市地域公共交通再生協議会では、LRTも議題には上がっている[41]。
- 東京都豊島区
- 『池袋副都心・グランドビジョン2008』において池袋駅からサンシャインシティまでを単線で環状運転する構想があった[42]。なお、同様のルートを電気バスで結ぶIKEBUSが2019年11月に運行開始。
- 東京都中央区
- 銀座から築地、晴海を結ぶ路線を検討していた[43]。2014年8月には東京都が虎ノ門ヒルズから晴海方面を結ぶBRT案を示し、東京BRTが設立された。
- 東京都江東区
- 亀戸駅と新木場駅を結ぶルートを検討。採算面に不安があり長期的構想とされた[要出典]。越中島支線を利用する計画もある。
- 東京都西東京市・武蔵野市・三鷹市・調布市
- 地元商工関係者などから多摩南北道路都道調布保谷線にLRT・モノレールなどの新交通システム導入を求める要望があり、保谷駅・西武柳沢駅・東伏見駅・武蔵境駅などを連絡するルートが構想されていた。都道への導入構想であるため主として東京都議会で提起されていた。都議会等でLRT導入についての意見を述べていた都議坂口光治が2005年、西東京市長に就任し、市の将来構想にも部分的に盛り込んだものの、その後事業費等の面から導入は困難な現状であるとの見通しを示した。これを受け、坂口の後市長に就任した丸山浩一もLRT導入については「今後の検討課題とする」という以上の積極的な姿勢は見せていない。三鷹市長の清原慶子は2014年2月の第72回「市長と語り合う会」の席上、調布保谷線への新交通システム導入に関して「LRT導入の話は都議会等で10年くらい前まではあったが今は止まっている」と述べている[44]。都道管理者である東京都の動きも見られないが、そもそも事業化を主導する段階にも至らず自治体関係者、また民間の構想のままであるため、構想が「断念」されたのかも不明である。
- 横浜市
- 横浜都心臨海部の東神奈川臨海部周辺、横浜駅周辺、みなとみらい21、関内・関外、山下ふ頭周辺を結ぶ計画[45]。2015年制定の「横浜市都心臨海部再生マスタープラン」には導入する交通機関の一つとしてLRTが挙げられたが、2016年時点では早期導入は困難という判断から連節バスの導入が先行する方針となり、LRTは「引き続き検討する」という状態にある[46]。
- 東京都八王子市
- 2016年1月に再選された石森孝志市長は、当選後の初会見において多摩ニュータウンと市の中心部の間にLRT導入を検討すると表明した[47][48]。従来より八王子市側は多摩都市モノレール線の延長を望んでいたが、国の交通政策審議会において積極的な答申が得られるか不透明なことから、市単独で事業化できるLRTの検討を進める[47][48]。モノレールの延伸用に確保した土地(道路を含む)への敷設の可能性を検討する予定で、経費面からBRTも対象になるのではないかと報じられている[48]。しかしその後、勾配などの技術上の問題があるとして、LRT導入を事実上見送った[49]。
- 新潟市
- 政令指定都市の中で唯一軌道系交通網がJR線のみのため、2011年5月に「新潟市新たな交通システム導入検討委員会」の作成した報告ではLRT・BRT・小型モノレールの3種類が候補として挙げられている[50]。報告では「優先整備区間」とされた白山駅 - 古町 - 新潟駅 - 鳥屋野潟南部について、当面BRTを早期導入し、環境の変化を踏まえて「次のステップ(LRT への移行等)について判断する」とされている[50]。新潟市商工会議所が1999年11月に作成した「21世紀にふさわしい“水都にいがた”の創造に向けて〜次代に輝く中枢拠点都市「新潟」の街づくりと都市交通〜」[51]ではLRT路線の導入が提言されていた[52]。
- 長野市
- 長野電鉄屋代線の廃線決定を契機に2011年12月、松代、若穂、篠ノ井、更北、川中島5地区の住民自治協議会長の連名で屋代線廃止後の跡地を活用したLRTの導入を求める請願を長野市議会に提出[53]。同月の長野市議会12月定例会にて全会一致の賛成で採択となった。これを受けて長野市は市の交通対策審議会に諮問、新交通システム導入検討部会においてLRT及び長野駅‐松代駅間の新交通システム導入に関する調査検討を行った。LRT導入の可能性が跡地の活用方法と密接に関連することから、優先的に検討を行った。廃止後の2012年7月、同審議会新交通システム導入検討部会は「初期投資に概算で158億円、運行費に年間9億2千万円必要である。沿線の人口密度からの試算した場合、採算をとるために1人当たり平均約1650円の運賃を要する。経営を維持するためには沿線人口及び利用客の大幅な増加が必要だが、駅を増設しても見込まれる利用者数は屋代線時代とほぼ変わらない。旧屋代線並みの運賃に据え置いて運行する場合は年間およそ8億円の赤字を市が補填しなければならず、現時点では導入は困難」との『中間報告』をまとめた[54]。これを受けて同審議会は「事業費や利用者数の見込みを考えると現実的ではない。導入困難との判断はやむを得ない」との結論に至り、その旨市長に答申した。同年8月、鷲沢正一長野市長は「LRTシステムの導入は財政負担が大きく、沿線住民の移動手段を確保する費用としては市民の理解を得られない」との理由からLRTの導入を事実上断念する意向を明らかにした[55]。2013年3月、交通対策審議会は長野市内へのLRTを含めた新交通システムの導入を正式に断念。
- 長野県松本市
- 2015年8月、市は2016年度から向こう10年間の交通政策計画案をまとめ、自動車中心の交通政策を転換し、歩行者や自転車、公共交通機関を優先したまちづくりを進めるという方向性を示した。長期的な取り組みとして、LRT導入に関する研究会を組織しその可否や効果などを検討するといい[56]、令和元年現在も研究されている[57]。なお、市内では1924年から1964年まで、松本駅前駅から浅間温泉駅までの間を結ぶ路面電車(松本電気鉄道浅間線)が営業していた。
- 長野県飯田市
- 2027年開業予定のリニア新幹線長野県駅が開業するのにあわせ、飯田線に新駅を設ける予定であった。しかし、建設には数億円かかる予定から、市長選で当選した新市長は元善光寺駅と長野県駅の間にバスといった従来の公共交通機関のほか、新交通システムを取り入れることも視野に入れており、その中にバッテリー式LRTを取り入れる構想がある[58]。
- 静岡市
- 2008年にLRTを推進する市民団体が静岡市に要望書を提出、2009年度の施政方針にLRTが組み込まれているほか、市民団体に対し、駿河区、葵区、清水区それぞれに路線を通す場合の検討案や交通事情、建設案などが提示されている。現状では清水区を先行した路線新設が有力視されている。葵区では中心市街地の時間を制限した道路の通行規制や車線規制、期間限定トランジットモールの実施を行う等、LRT導入を見越した交通社会実験を2008年頃より、中心街の数箇所で数度に渡って実施している。2011年9月には、静岡市と静岡鉄道、静岡商工会議所の三者によって「LRT導入検討委員会」が正式に発足し、LRT導入に向けた活動を開始している。
- 石川県金沢市
- 道路を2車線封鎖して交通実験を実施。また、ガイドウェイバスと比較検討を行う。財源の問題などにより、短中期的には路線バスを活用した公共交通網の整備の方に重点が置かれることとなった[59][60]。
- 岐阜県大垣市
- 大垣駅とソフトピアジャパンを結ぶ路線を計画[要出典]。
- 京都市
- 7つのルートが検討され(京都市LRT構想)、今出川線については2007年に道路の車線を減らす社会実験が行われるなど、導入を前提とした動きが見られた。しかし、市の財政難や沿線住民の反対意見のためその後は進展せず、2010年4月には、推進団体が実現の目処がないとして解散した。2012年に市が2015年度の導入整備計画の策定をめざして研究会を発足させる予定であることが報じられた[61]ものの、その後の動きはない状況である。
- 奈良市
- 市内中心部への導入が検討された[62]が、建設コストの問題や奈良駅の高架化工事が2010年までかかることなどを理由に、2003年6月に断念[63]。
- 大阪市
- 阿部野橋 - 恵美須町 - 難波 - 梅田 - 新大阪。2012年当時は「阿部野橋 - 難波は先行して2015年度の開業を目指している」とされていたが、期限を超過した2016年5月以降も具体化していない。阪堺電気軌道の乗り入れや事業主体は未定[64]。
- 堺市
- 臨海新都心堺浜 - 堺駅 - 堺東駅 - 堺市駅。早期開業として堺駅 - 堺東駅。運行予定会社は南海電気鉄道および阪堺電気軌道で建設は堺市の公設民営方式。ただし、2009年10月の市長選挙で構想の見直しを掲げた候補が当選し、2010年1月に南海電鉄に対してLRT計画中止を打診、予算を建設検討及び研究費等の300万円程度を残して削減した。その後も阪堺電軌存続支援活動を展開する市民ワーキンググループが堺市に対して提言書の提出等、阪堺線のLRT化を含めた計画の実行を求める活動を行っている。「東西鉄軌道」も参照。
- 和歌山市
- 和歌山市の二つの玄関口である和歌山市駅と和歌山駅との中間部に位置するぶらくり丁など中心市街地の活性化に向けて、尾花正啓市長がLRT導入に意欲を示している。和歌山市は2015年に初めてLRTに言及して以来、プロジェクトチームを結成して、宇都宮市や新潟市など先進地への視察や研究報告などを続けている。2019年度は、LRT導入が既存の交通量に及ぼす影響や、導入可能な区間などを探る調査費への助成を国に要望する方針。2020年度の実施を目指している[65]。
- 神戸市
- 市長の久元喜造が、都心と三宮地区の回遊性向上を目的とした導入の見解を2021年神戸市長選挙での前後より打ち出した[66][67]。想定されているのは三宮から海岸沿いに神戸駅に至るルートとされている[67]。市では有識者による検討座談会を2021年8月に設置し、3回の会合を経て2022年3月31日に報告書が提出された[68]。
- 兵庫県伊丹市
- 兵庫県が大阪国際空港とJR伊丹駅間を結ぶルートを検討(「JR福知山線分岐線構想」も参照)。
- 島根県松江市
- 松江駅と松江しんじ湖温泉駅を軸にして、松江城、市総合体育館、島根大学、県立美術館近くを通る4路線を検討。平成24年度に開業予定と一時は報じられた[69]が、2011年6月の市議会で提唱者でもある松浦正敬市長は、LRT導入の優先順位を下げると述べ、具体的検討は先送りとなった[70]。
- 香川県高松市
- 2008年1月に市長が導入に向けた方針を打ち出し、検討組織を発足させた。ただし、地元の鉄道事業者である高松琴平電気鉄道は、導入に慎重な姿勢を見せている[71]。
- 広島県東広島市
- 商工会議所が西条駅と広島大学を結ぶ路線の構想を提唱したと報じられたことがあった[72]。行政がLRTの導入を明示したことはないが、市が2011年3月に策定した「市街地における公共交通施策基礎調査」においては、公設民営の有利な条件で敷設した場合でも運賃は300円という高い水準になるという試算結果が掲載された[73]。
- 沖縄県那覇市
- 那覇市では、翁長雄志市政の頃からLRT導入が検討されており、後任の城間幹子市長が推進している[74]。2018年3月に「初期段階のLRT導入可能性調査」の報告書がまとめられた[75]。現状ではゆいレールによる南北方向の交通軸しかないが、ゆいレール旭橋駅前の那覇バスターミナルに接続するLRTやBRTを導入して東西方向と環状方向の交通軸を加える計画となっている。「那覇市地域公共交通網形成計画」(2020年3月)では、中心市街地 - 真和志 - 沖縄県立南部医療センター・こども医療センターを結ぶ東西方向軸と那覇新都心 - 真和志 - 真玉橋を結ぶ環状方向軸の2路線の導入を盛り込んでいる[76]。
- 沖縄県豊見城市
- 2017年3月に導入可能性の調査[77]を実施し、那覇バスターミナルから豊見城新市役所、豊崎地区の東、糸満市役所を通るルートや赤嶺駅、奥武山公園駅と糸満市役所を結ぶルートなど3ルートを検討。具体的な検討はされていない。
かつて、都市間鉄道においても軌道として建設された路線が多く存在した。1905年(明治38年)に開業した阪神電気鉄道が最初の例である。これは当時私設鉄道を監督していた逓信省鉄道局(後の鉄道院・鉄道省の前身。私鉄の監督だけでなく現業部門〈国有鉄道〉の運営も行っていた)への免許申請が、国有鉄道並行路線では難しい状況にあり、そのために内務省が監督する軌道として特許申請を行い、建設しようとしたからである。
最初の例となった阪神電鉄の場合、後に本線となる区間は、大阪・芦屋・神戸などの市街地周辺に僅かな併用軌道があった。ところが、多くの区間を専用軌道として建設するというインターアーバン的な路線となり、さらに当時の軌道による制限速度である8マイル/時(12.9km/h)を大幅に無視して違法となる高速運転を行った。この結果、国鉄の客を多く奪うことに成功した。後には、全線を専用軌道化してさらなるスピードアップも行っている。
これに刺激される形で、全国各地に同じような形で都市間鉄道が敷設された。阪急電鉄の前身となる阪神急行電鉄に至っては、昭和初期に軌道線のままで神戸線において、表定速度78.0km/h(阪和電気鉄道に次いで戦前日本の第2位)という高速走行を行う特急電車を運行した。
この時に軌道として敷設された路線の多くは、後に鉄道へ改められている。現在も軌道法に基づいている軌道路線は下記に太字で記す。
前節の路面電車として開業後に鉄道へ変更された路線を除く。
注釈
2000年の鉄道線転換後は、黒崎駅前駅 - 熊西駅間は筑豊電気鉄道が旅客運送を行う第二種鉄道事業者、西日本鉄道が設備を保有する第三種鉄道事業者として運行されていた。2015年に筑豊電気鉄道が設備を継承し、筑豊電気鉄道が旅客運送・保有とも行う第一種鉄道事業者となった。
ただし奈良市には近鉄奈良線はかつては油阪駅(現在は廃止)から近鉄奈良駅までの800mが併用軌道だった。 徳島県は全国47都道府県で唯一、電化区間が全く存在せず、歴史的にも存在したことがない県である。 宮崎県は1974年の日豊本線南宮崎電化まで電化路線が一切存在しなかった。
出典
『相鉄いずみ野線延伸計画で、神奈川県など行政主導で検討会を設立へ』 神奈川新聞10年2月23日 朝刊
新潟市議会インターネット中継 - 2014年12月10日(内山則男市議。質問内容の「1999年新潟商工会議所政策委員会が示したLRTプランに関する見解は」という項目がある。 「長野市、LRT導入を断念 長野電鉄屋代線跡地」2012年8月8日『中日新聞』
「東広島市に次世代路面電車構想」中国新聞2008年1月8日