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乗車カード(じょうしゃカード)とは、鉄道やバスなどの公共交通機関の運賃を支払うために利用できる、カード型の乗車券のこと。
乗車カードには、主に磁気カード、ストアードフェアカード、ICカード(接触型もしくは非接触型)[1]、クレジットカード、デジタルチケットなどの種類がある[2]。
バス専用の乗車カードについては、バスカードを参照。
公共交通機関を利用する際、乗車時・降車時に読取機に情報を読み取らせるだけで運賃の支払いが可能なカードである。通常のプリペイドカードと同様に事前に代金を支払って購入し、残額がゼロになるまで繰り返し利用できる。ICカードの場合はチャージ(積み増し)して繰り返しカードを使用することもできる。
バス・路面電車においては、乗降客が整理券を取る、小銭を両替する、運賃を確認し運賃箱に入れるなどの煩わしさから解放される利点がある。鉄道においては、乗客は出札口や自動券売機に並んで乗車券を購入する必要がなく、事業者側は自動券売機の設置台数を減らせるなどの利点がある。さらに非接触型ICカードの場合、カードを財布などから出し入れする必要すらない。
乗車カードによってはプレミアム(割増)やポイントが付くこともあるほか(後述)、カードを利用して乗車情報を記録しておくことができるので、乗車カード利用者限定の乗り継ぎ割引制度を設けている事業者もある。
読み取り機・自動改札機で直接使用する他に、乗車カードによっては、自動券売機での乗車券・料金券(特急券など)の購入や自動精算機での不足運賃の精算(乗り越し)などにも使用できる場合もある。
乗車カードには支払証明の機能(利用者が支払った料金と利用条件の証明)と情報表示の機能(利用者が区間、経由、日時、有効期限、列車や座席の指定)が搭載されており、デジタルチケットではそれらをモバイル端末のアプリケーションプログラムで処理する[2]。また、ストアードフェアカード(SFカード)では情報表示の機能として、過去の使用履歴も扱うことができる[2]。
磁気カードを使用する方式。紙片やプラスチックカードに磁気インクを塗布し、磁気エンコードされたデータを記録して自動改札機等で読み取る[2]。乗車カード導入当初はこの方式が多かった。
乗降の際、読み取り機あるいは読み取り機能のある自動改札機に挿入する。カードの種類によっては、裏の磁気面に乗車日や乗車時刻、利用区間、支払額などの情報が印字されるものもある。カードは使い捨てで、残額を使い切ったら処分して再び新しいカードを購入する。
ストアードフェアカード(SFカード)は運賃として予め支払われた額を記録しておき、自動改札機で乗車区間に応じて運賃をカード残高から差し引いていく方式である[2]。乗車回数を貯めておくストアードライドシステム (stored ride system) もある。
入場記録が存在することが前提になるので、すべての改札に情報書き込みが可能な自動改札機かそれに準ずる装置が必要とされる。バスの場合は車内に備え付けられたカードリーダーが自動改札機の代わりとなる。
鉄道事業者によっては無人駅でカードの取扱いを行わない場合や、自動改札機のない有人駅で駅係員に申し出て入出場処理を行う場合もある。不正乗車を防ぐため、自動改札機でカードの入場処理と出場処理を交互に行わなければ改札機を通過できなくしている事業者もある。
非接触型ICカード(以下、単に「ICカード」)を用いる方式。CPUを組み込んだ非接触型のカードを用いる方式で無線でデータの授受を行う方式である[2]。
日本のICカード乗車券(後述)が使える交通機関、八達通が使える香港の交通機関、オイスターカードが使えるロンドン交通局など、多くの鉄道駅や路線バス等において、入場の際に駅の自動改札機または簡易ICリーダーにタッチし、出場の際に再びこれらにタッチすることで簡単に使用できる[3][4]。路面電車や路線バスにおいては、駅や停留所にはICリーダーが設置されておらず、車両の乗降ドア付近のICリーダーに乗り降りの際にタッチすることで使用できる[5]。
ICカードでは同じカードを使い続けることが前提で、残額を使い切ったときは駅やバスターミナルなどに設けられた自動券売機やチャージ機によりチャージ(積み増し)して再使用する。利用額にデポジットを加算した額で発売していることが多く、不要になったときはカードを発行元に返却するとデポジットが戻る。
事業者によってはICカードに定期券や一日乗車券などを搭載することができる。クレジットカードと一体となったものやクレジットカードに紐付けできるものもある。紐付けされたクレジットカードを利用すると残高が一定金額を下回った場合にクレジットカードを通じて自動でチャージ(オートチャージ)出来るように設定できるものもある。
カードの発行事業者や種類によっては、利用区間の運賃や利用回数に応じてポイントが加算されるもの、カード利用者に限り利用区間の通常運賃より安い額が引き去られるもの、入金した金額より少し高い額が積み増しされるものもある。
クレジットカード(EMVコンタクトレス決済に対応のもの)を乗車券のように用いる方式。
デジタルチケットはモバイル端末の通信機能を利用して乗車券の購入等を行うもので、乗車券の購入だけでなく列車の座席予約なども行うことができるものもある[2]。IC乗車カードと同等のICチップ(FeliCaやNFCなど)を携帯電話やスマートフォンに搭載して利用し、運賃の支払いが可能になる場合がある。
デジタルチケットの導入により、窓口や券売機での混雑の回避でき、端末をかざすだけで改札を通過することができる[2]。また、モバイル端末を使ってチケット(指定券など)をどこからでも購入できるサービス、ゲート通過時にモバイル端末に駅からの情報(乗車案内等)を提供するサービスなどを行うシステムの導入も可能となる[2]。
日本のモバイルSuica、香港の八達通 (Octopus)、台湾の悠遊カード (悠遊卡、EasyCard)、シンガポールのEZ-link、韓国のTマネーなどでモバイル利用が可能なサービスが存在する[6]。2020年春にモバイルPASMOがサービス開始[7]。
日本ではモバイルサービスはフィーチャーフォン携帯電話およびPHSの一部機種でおサイフケータイ対応としてモバイルSuicaなどが利用可能である[注 1]。スマートフォンが主流となり、iPhoneは一部旧世代端末では利用できなかったが、FeliCa搭載iPhoneの登場によりモバイルSuicaなどが利用可能となった(Apple Pay Suica)。Android端末ではおサイフケータイ対応端末の一部でモバイルSuicaなど、またはGoogle Pay Suicaとして利用可能である。2020年春にAndroid端末に対応したモバイルPASMOがサービス開始[7]。
紙券など従来の乗車券の場合、購入手段の問題、携行の手間の問題、紛失リスクがある[2]。
購入手段は紙券など従来の乗車券の場合、駅や旅行代理店など購入場所が限られる[2]。電話やインターネットでの予約も可能だが換券は駅などで行う必要がある[2]。デジタルチケットの場合、実媒体としての切符は不要で予約券、一回券、期間券、回数券などの乗車券をモバイル端末の通信機能で購入できる[2]。また、デジタルチケットの場合、購入した予約券、一回券、期間券、回数券などの乗車券はモバイル端末に保存されるため、携行の手間や紛失リスクを低減できる[2]。
さらに自動改札機連動情報配信サービスの構想では、モバイル端末に定期券のID番号のほかに利用者の電子メールアドレスや希望する情報を登録できるようにし、広告主は交通機関を利用する利用者の場所や時間に合わせて広告を配信することが可能となり、鉄道会社などの交通機関は運賃だけでなく広告料収入を得ることもできるとしている[2]。
非接触型スマートカードは1995年に韓国・ソウルで電子チケット発行に初めて使用された[8][9]。
交通事業者によるプリペイドカードの例として、1985年に当時の日本国有鉄道(国鉄)がオレンジカードを発売したほか、他の交通事業者でも同様のカードが発売された。これらは乗車カードではなく、自動券売機に投入して乗車券を購入する金券方式のプリペイドカード(間接式)で、カードをそのまま自動改札機に投入することはできなかった。
路線バスにおける磁気バスカードは、1980年代以降、均一運賃制の路線での導入例があったが[どこ?]、本格的かつ大規模な導入例としては、1988年5月9日に神奈川中央交通が導入した「神奈中バスカード」が多区間運賃制では日本初のものである。システムは三陽電機製作所(現:レシップ)との共同開発で、のちのバス共通カードやPASMO・Suicaにおけるバス利用特典サービスにも引き継がれるプレミアム(割引)付きであった。その後、バス共通カードに統合されて発行終了している。これを嚆矢として各地のバス事業者でバスカードの導入が進んだ。
翌1989年10月4日[10]、奈良交通が磁気式バスカードを導入[10]。多区間運賃路線についても導入した。バスカードが利用可能な車両には、神奈川中央交通と同様に丸い「バスカード」のマークを車両前面に装着しており、このマークがある車両のみで利用できた[10]。
1990年には、長崎自動車が磁気式バスカード対応の自動精算式運賃箱を導入[11]。翌1991年1月末までに全車で設置完了した[11]。整理券に印刷されたバーコードを運賃箱で読み取り、バスカードから差し引く方式である[11]。
なお、神奈川中央交通と長崎自動車のバスカード導入にあたっては、運輸省から「昭和63年度バス交通活性化補助」が交付されていた[11]。バスカード導入で補助対象になったのはこれらが日本初の事例である[11]。
鉄道事業者では、名古屋市交通局が1988年3月1日に「リリーカード」を発売、4月1日から名古屋市営地下鉄全線で使用開始した。ただしリリーカードで地下鉄に乗車する際は、カードを直接自動改札機に投入することはできず、自動券売機にリリーカードを投入して切符を購入する方式であった(オレンジカードと同様)。翌1989年9月10日の市営地下鉄桜通線開業と同時に、地下鉄回数券を磁気カード化し「回数券カード」となった。これが名古屋市営地下鉄では初となる、自動改札機に直接投入できる磁気式乗車カードである。リリーカードの利用は名古屋市営バスにも拡大され、1989年10月2日より基幹バス1号系統に試験導入、1991年10月1日には市営バス全線に導入された。バスでは運賃箱の磁気カードリーダーに直接挿入して支払可能であった。翌1992年には名鉄バスと共同運行する基幹バス2号系統で、リリーカードと名古屋鉄道の「パノラマカード」の共通利用が可能となった。その後、1998年5月6日にストアードフェア方式のユリカを発売したため発行終了している。
また1989年12月には、遠州鉄道の磁気式乗車カード「ETカード」がサービス開始した(ETは Entetsu Trafficの略)。ETカードもリリーカードと同様に当初は鉄道のみであったが、1992年2月20日には遠鉄バスにも拡大された。リリーカードと同じく鉄道では自動券売機で切符を購入し、バスでは運賃箱に直接挿入して運賃を支払う方式であった。後述のIC乗車カード「EG1CARD(イージーワンカード)」(2002年試験導入、2003年本格導入)および「ナイスパス」(2004年にEG1CARDから移行する形で本格導入)に伴い廃止されている。
1991年3月1日、東日本旅客鉄道(JR東日本)は、自動改札機に直接投入できるストアードフェア方式のイオカードを山手線内の一部の駅で利用開始し、その後首都圏の各駅に導入を進めていった。
1991年10月には、新潟交通で「バスカード」のサービスが開始された。同社のICカードバス乗車券「りゅーと」利用促進のため、2013年9月30日をもってサービス終了している。
1992年3月16日、福島交通は福島支社管内の路線バスで磁気式バスカードシステムを導入し、福島市中心部の特定路線で運用される専用の中型車で磁気式バスカードの利用が可能となった。2001年に郡山支社管内でバスICカードが導入された後も併存していたが、新バスICカード「NORUCA」に代替され2010年に廃止されている。
バスカードについては、同一地域内での各事業者の乗車カードの共通化が早くから各地で進められ、首都圏1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)におけるバス共通カードのように広域的に共通化されたものもあった。バス共通カードは、1992年3月には横浜市・川崎市内の均一運賃区間で共通利用が始まり(横浜市営バス・川崎市バス・神奈川中央交通・江ノ島電鉄の4社局)、横浜市交通局のマリンカードとの共通利用も図られた。1994年10月には東京都区内均一運賃区間(東京23区・武蔵野市・三鷹市・調布市・狛江市)の各社局にも共通利用の範囲が広がり、その後段階的に東京多摩地域や埼玉県・千葉県の多区間運賃制の地区でも利用可能となった。PASMOへの移行に伴い、バス共通カードは2010年内に各社局での販売・利用が停止されている。
また広島県でも、1993年3月25日に広島電鉄(バスのみ)・広島バス・広島交通・芸陽バス・備北交通・JRバス中国のバス事業者6社で共通利用可能な磁気式乗車カード「6社共通バスカード」を導入。翌1994年8月20日には広島高速交通(アストラムライン)が参入、1997年3月31日には広島電鉄が電車線にも導入し、バスと鉄軌道での共通利用となった。また1996年8月31日には公営事業者である呉市交通局も参入している。
関西の私鉄・公営事業者では、1992年4月1日に阪急電鉄が「ラガールカード」でのストアードフェアシステムを開始。こちらは自社線全駅で使用可能となった日本初のストアードフェアシステムとなった。1994年4月1日、ラガールカードと能勢電鉄の「パストラルカード」が共通利用開始。さらに1996年3月20日、阪神電気鉄道、大阪市交通局、北大阪急行電鉄の3社局がこれに参加し、関西5社局共同で「スルッとKANSAI」を開始した(スルッとKANSAIはシステム名で、カード名称は各社局で異なる)。これは日本初の広域の複数事業者での鉄道・バス共通利用システムであり、のちにポストペイ型ICカードPiTaPaへつながっていく。
関東ではイオカード発売と同年の1991年11月29日、帝都高速度交通営団(現・東京メトロ)から南北線の駒込駅 - 赤羽岩淵駅間の開業時にストアードフェアシステムのNSメトロカードが発売され、将来の共通化を視野にイオカードと同じシステムを採用した。当時は南北線限定のカードであった(NSは「南北=North・South」と「New Service」を掛けている)。また1993年11月1日に東京都交通局のTカードが発売されたが、都電・都営バス用カードは神奈中バスカードと同じシステム、都営地下鉄用カードはイオカードと同じシステムを採用し、互換性はなかった。都電・都バス用カードはバス共通カードの都区内均一区間への利用拡大に伴い廃止されたが、1996年3月26日に都営地下鉄と営団地下鉄が共通ストアードフェアシステムを開始し、営団からはSFメトロカードが発売されている(SFはストアードフェアの略)。これをベースとして2000年10月14日にパスネットがサービス開始し、当初は首都圏17社局が参加した。イオカードベースのシステムであったが、JR東日本はSuicaを開発中としてパスネット協議会に参加しなかった。首都圏の公営・民営事業者は、パスネットとバス共通カードを統合する形でPASMOへ移行することになる。
日本国内では1996年度から1999年度にかけて、ICカードを使用した汎用電子乗車券の開発プロジェクトが官民一体となって行われ、政府(国土交通省)と民間の鉄道事業者や機器メーカーなどにより共同研究が行われた。その結果を踏まえ、旧国鉄の流れを汲む日本鉄道サイバネティクス協議会により、2000年3月に交通系ICカードの共通規格(通称「サイバネ規格」)が制定された。これはソニーが開発した非接触型ICカード規格「FeliCa」(フェリカ、Type-C)を採用した規格であり、翌2001年にはサイバネ規格に準拠した交通系ICカードであるSuicaが登場した。その後はサイバネ規格が日本の交通系ICカードの事実上の標準となり、交通系ICカード全国相互利用サービスへつながっていく[12]。
1997年9月1日、香港の公共交通機関に八達通(オクトパス)が導入された。初のFeliCaを搭載した交通系ICカードであった[13]。
日本でも同1997年10月1日、静岡県磐田郡豊田町(現:磐田市)のコミュニティバス「ユーバス」(廃止、運行は遠鉄バスに委託)で、日本初のICカード乗車券である「ユーバスカード」が導入された[12]。ユーバスカードはFeliCaとは通信方式が異なるフィリップス社提唱の非接触型ICカード「ISO14443 Type-A」を採用していた。これを皮切りに全国各地で交通系ICカードが広まってゆくことになる[12]。またユーバスは遠州地方で初めてのコミュニティバスでもあった。
1998年7月28日、東急バス子会社の東急トランセ代官山循環線の運行開始と同時に、専用のバスICカード乗車券「トランセカード」が導入される。これはFeliCaを搭載した日本初の交通系ICカードであった[12]。
1998年8月28日、スカイレール広島短距離交通瀬野線 みどり口 - みどり中央間が全線開業。同年9月、スカイレールサービスが新交通システムスカイレールにIC定期券「スカイレールICカード」導入(FeliCaを採用)[12]。これは鉄軌道における日本初の非接触式ICカード乗車券であった[14]。
1999年11月、道北バスでICカード乗車券「Doカード」導入(FeliCaを採用)[12][15]。北海道では初の交通系ICカード導入で、磁気カードの「バスカード」も同時にサービス開始している。2014年11月のシステム更新を経て、2015年2月1日より旭川電気軌道の「Asaca CARD」と相互利用を開始した[16]。
2000年2月28日、山梨交通で「バスICカード」導入開始(実証実験は1999年10月から)。FeliCaを採用[12]。当初から全社的に導入したバスICカードとしては日本初となる。また2002年4月1日にはクレジットカード一体型の「バスOMCカードもサービス開始。OMCカードとの提携カードでマスターカードブランドである。山梨交通はこれを「世界初の交通系ICカード一体型クレジットカード」としている(山梨交通#日本初のバスICカード本格導入も参照)。
2001年3月、札幌都市圏において「S.M.A.P.カード」実証実験開始[12]。FeliCaを採用[12]。札幌市交通局(札幌市営地下鉄)のICカード乗車券でもあったが、それにとどまらず地域通貨的な性格を持つものであり、PiTaPaで実装されたポストペイ型電子マネーとしての実験なども行われた。実証実験は2004年3月に終了、2009年1月30日よりSAPICAが導入されたが、ポストペイシステムは採用されなかった。
同2001年4月2日、福島交通で「バスICカード」導入開始。郡山支社管内の郡山駅前発着の一般路線8路線で運用開始、同年10月1日には郡山市内の一般路線全路線へ運用拡大。東北地方では初の交通系ICカード導入であり、ユーバスカードと同じType-Aを採用していた[12]。のちに親会社がみちのりホールディングスに変わったこともあり、FeliCaに規格を統一するため2010年10月30日より新バスICカード「NORUCA」を導入し[17]、ICカードシステムを更新した(福島交通#バスカード(磁気式・IC)も参照)。
同2001年9月、北九州市交通局でひまわりバスカードを導入(FeliCaを採用)[12][18]。九州での交通系ICカード先行導入となる[19]。ICカードシステムは小田原機器製。
2001年11月18日、JR東日本が首都圏424駅で、サイバネ規格準拠の非接触型ICカード乗車券Suicaをサービス開始。
2002年1月21日、共通ICカード「長崎スマートカード」が利用開始[20]。Felicaを採用[20]。紙式のバス共通回数券を電子化する形で移行し、日本初の共通バスICカードとなった[20]。2005年3月までにバス事業者の全車両に順次搭載。のちに路面電車や鉄道にも拡大され、長崎県内の10社局が参加した。導入にあたっては山梨交通の「バスICカード」が参考とされた[20]。また2005年12月には「モバイル長崎スマートカード」もサービス開始、日本初のおサイフケータイ対応共通バスICカードとなった[20]。
同2002年3月1日、遠州鉄道の電車および遠鉄バスで「EG1CARD(イージーワンカード)」の実証実験を開始。サイバネ規格準拠、FeliCaを採用[12]。翌2003年4月1日より遠鉄バスで「EG1CARD」が本格運用開始(本格運用はバスのみ)。2004年8月20日より「ナイスパス」に移行、遠鉄の電車・バス全線で運用開始。鉄道・バス共通の本格的なIC乗車カードとしては日本初となった。またナイスパスでは2009年9月1日、Suica・PASMO・nimocaに続き、日本のIC乗車カードで4番目にオートチャージサービスを開始したが、バス車両でのオートチャージは日本初となっている。
同2002年7月7日、東京急行電鉄世田谷線専用のICカード乗車券「せたまる」サービス開始[21]。FeliCaを採用[12]。「せたまる回数券」「せたまる定期券」の2種類が存在し、ポイントサービスもあり地域通貨としての利用も試みられた。
2003年11月1日、JR西日本のICOCAがアーバンネットワーク圏内でサービス開始、以降順次エリアを拡大する。
2004年8月1日、スルッとKANSAIによるPiTaPaがサービス開始。当初は阪急電鉄・能勢電鉄・京阪電気鉄道の鉄道3社で導入された。ポストペイ方式を採用した点が特徴となっている(PiTaPa#ポストペイ方式の採用も参照)。
2005年8月23日、伊予鉄道が「ICい~カード」とおサイフケータイ対応の「モバイルICい~かーど」を導入。磁気式「い~カード」から移行したものだが、おサイフケータイ対応のIC乗車カードとしては日本初となる[22](モバイル長崎スマートカードは同年12月サービス開始)。伊予鉄道・伊予鉄バスに加え、伊予鉄タクシーでも共通利用できる[23]、電子マネー機能も付加し、伊予鉄髙島屋などグループ企業でのショッピングにも利用可能とした[23]。
2006年1月21日には関西圏でICOCA・PiTaPaの相互利用が開始された。同年2月1日には大阪市交通局・阪神電気鉄道・大阪モノレール・北大阪急行電鉄で追加導入、同時に阪急バス・神姫バスの一部路線にも導入され、バスでの利用が開始された。
同2006年1月28日、JR東日本でおサイフケータイ機能を使用したモバイルSuicaがサービス開始した。
2007年3月18日、パスネットとバス共通カードを統合する形でPASMOがサービス開始。同時に首都圏ICカード相互利用サービスとして、Suicaとの相互利用が開始されている。
2013年3月23日、交通系ICカード全国相互利用サービス開始。Suica・PASMO・ICOCA・PiTaPa・kitaca・TOICA・manaca・SUGOCA・nimoca・はやかけんとの相互利用が可能になる。以降も全国相互利用サービス参加事業者は増加しており、地方の私鉄・バス事業者を含めた多数のICカード乗車券の全国相互利用が進んでいる。
日本のものについては後述する。(→#日本のICカード乗車券一覧、#日本の磁気カード乗車券一覧、#日本のICカード乗車券, 磁気カード乗車券以外の乗車カード一覧)
資金決済法により、1000万円を越える金券(前払式証票)を発行した者(事業者)は、通常は残高の半分以上を法務局に供託しなければならないが、乗車カードの場合は(乗車券と解釈されるので)供託は不要となっている。電子マネー機能付き乗車カードなど、カードに金券的性格がある場合は、供託金の供託義務が発生する場合がある。
乗車カードには有効期限を設定しているものがある。すなわち、SFとしてチャージするなどしても、その後利用せずに一定の期間を経過するとその価値が滅失する場合がある。特に繰り返し使用できるICカードにおいては注意が必要である。
多くの交通系ICカードは、10年間一度も利用がない場合も失効すると規定されているが、実際の取り扱いはカードにより異なる[24]。
乗車カードについて紛失・盗難が起きた場合には、事業者によって対応が異なるが、例としてSuicaやPASMO、その他Suica準拠の乗車カードについては、通常、記名式・定期券については再発行に応じる事が多い(手数料を取られる場合がある)。無記名式の場合には失効(再発行なし)となる事が多い。
破損等の障害(読取不良等)が発生した場合は、事業者により対応が異なる。
大規模災害などによる大規模な停電や通信障害が発生したような場合、乗車カードの電子マネー機能や、IC乗車カードのオートチャージ機能などは、それが復旧するまでは機能せず、その価値を行使できなくなる[28]。もっとも、そのような場合には鉄道や駅設備のほとんどは運休や休止し、バスについてはシステムによるがIC乗車カードでも(オートチャージを除き)対応できる場合がある。磁気カードは原則対応可能である。
自動券売機にて乗車券等と引き換える、単なるプリペイドカード(間接式)タイプとしては、JRグループ各社が取り扱うオレンジカードがある。かつて大手私鉄など各所で発行されたが、近年はSF機能カードへの移行が進んでおり、発行する会社は少なくなっている。SF機能付きの乗車カードにおいても、残高不足や複数人乗車、小児料金などの特殊な場合の運賃等に対応するため[注 3]、プリペイドカード同様に自動券売機で乗車券等と引き換えることができる[注 4]。
又、乗車カードはJR東日本の「タッチでエキナカ」[29] 等の一部のサービスを除いて入場券として利用できないカード・事業者がほとんどである。
日本では1980年代 - 1990年代以降、バスや鉄道などの運賃収受システムとして、日本国内各地で導入されるようになった。また日本では2001年からは非接触型ICカードによる物が普及しつつある。
営団地下鉄とその後身の東京メトロで用いられた乗車カード「SFメトロカード」や改札に表示される「SF」は、このStored Fare(ストアードフェア、カードに運賃を入れる前払い)の頭文字に由来する。以下本項目でもストアードフェアを「SF」と略する。
松浦鉄道など、一部日本のローカル線では駅にICリーダーが設置されておらず、後述のバスや路面電車のように車両の乗降ドア付近のICリーダーに乗り降りの際にタッチすることで使用できる。ただしSuicaエリアである横浜駅でICカードをタッチして入場し、TOICAエリアである静岡駅でICカードをタッチすることは不可能(下車した駅で精算を行うか、ICカード利用エリアの境目となる駅での途中下車が必要)。
また、富山地方鉄道では有人駅で自動改札機や簡易ICリーダーにタッチし、無人駅で車両の乗降ドア付近にあるICリーダーにタッチする併用方式をとっている[30]。TOICAエリアなど一部を除き、入場するためにはカードに少額の残金が残っている必要があり、例えばSuicaやPASMOでは残金に初乗り運賃分が[3]、ICOCAは1円以上、PiTaPa、IruCaでは10円が残っていないと入場できない(出場する前にチャージする必要がある)[4][31]。
バスや路面電車は運賃均一の場合、乗る際または降りる際に一度ICリーダーにタッチするだけで使用できる。距離制など運賃が不均一な場合は、乗る際にICリーダーにタッチし、降りる際にもICリーダーにタッチすることで使用できる[32]。
船舶やその他の交通機関では、電子マネー扱いとなっている場合もあり、ICカードでチケット料金や利用料金を払うという形となる。このため、電子マネー部分の方式が異なるPiTaPaでは全国相互利用ができないケースもある。
磁気カードでは同種のカードを地域内の各事業者が導入することで複数事業者での共通利用を実現した例が多いが、ICカード乗車券の場合はそれだけではなく、ICカード乗車券を別のICカード乗車券のサービス提供エリアで利用できるサービスが実施されている例がある。例えば、カードAを使用しカードBのエリアを、かつカードBを使用しカードAのエリアで相互に利用できる相互利用(Suica・ICOCA・TOICAエリアなど)がほとんどであるが、カードAを使用しカードBのエリアで利用できるが、カードBを使用しカードAのエリアで利用できない、いわゆる片利用(ICOCA→PASPYなど)の場合もある。2013年3月23日からは、Kitaca・Suica・PASMO・TOICA・manaca・ICOCA・PiTaPa・SUGOCA・nimoca・はやかけんの10種類のカードについて、乗車カードとしての相互利用を開始している(交通系ICカード全国相互利用サービス)。
これらは事業者同士の提携によるため、相互利用(以下、片利用を含む)の可否には組み合わせがある。また、乗車券として(交通)・電子マネーとしての相互利用可否にもそれぞれ組み合わせがある(図参照)。カード利用時に受けられるサービスの一部について、相互利用の他のカードではそのサービスを受けられないことがある。
なお、鉄道の場合は多くの事業者で、乗る駅・途中の経路・降りる駅いずれも(ICカード乗車券の)同一サービス提供エリア内にある事を前提としている(前述の相互利用ができる場合であっても、サービス提供エリアをまたぐ利用はできない場合が多い)。そのような場合には、現金等またはICカード乗車券を使用して、通常の乗車券等を購入することになる。
なお、交通系ICカード全国相互利用サービスにおいて、電子マネーサービスについては、PiTaPaを除く9種類のICカード乗車券での相互利用となっている。これは、PiTaPaの決済方法がポストペイ(後払い)であり、店舗のICカードリーダの仕組みが違うためである。そのため、既存のPiTaPa導入店舗にICOCAの導入が、また一部のICOCA導入店舗にPiTaPaの導入が進められている[33]。
ICカードの所有権は発行事業者に帰属しており、事業者・発行者から利用者に対する「貸与」となっている。しかし案内上はICカード乗車券に対しても事業者・発行者自身が「購入」「販売」「発売」などの語を用いる場合が多い。貸与にあたり交通機関の利用に使える利用額のほかにデポジットが収受され、ICカードを事業者に返却するとデポジットが返却される。
2012年3月、一部の交通系ICカード提供会社で、インターネットから乗車履歴を照会できるサービスの一時休止が相次いだ。PASMO[34] とSAPICAでは3月1日、nimoca[35] では3月2日に照会サービスの停止に踏み切った。このうち、PASMOは同年5月18日に照会サービスの終了を発表した[36]。ICカード番号と、カード登録者の個人情報(氏名、電話番号、生年月日など一般的な個人情報)をウェブから入力するだけで、誰でも乗車履歴を照会できる点が問題とされている。
ほとんどの鉄道事業者では1000円単位でのチャージとなっているが、JR西日本及びJR東日本の一部の券売機および乗越精算機では500円単位、京都市営地下鉄と東京メトロ、東急電鉄の券売機および乗越精算機では10円単位でのチャージも受け付けている。また、チャージ残高不足の場合には乗越精算機で不足分のみチャージできる会社もある。
以下に日本のICカード乗車券の一覧を示す。太字[お]のものはおサイフケータイ等[注 5] のSF機能対応、★印のものは「交通系ICカード全国相互利用サービス」による相互利用が可能なカード等(以下単に「全国相互対応カード等」と略す)である[注 6]。乗車カードそのものではないサービス名については「」書きする。
なお、複数の事業者にまたがって運用されているカードの事業者詳細については当該項目を参照されたい。(箇条書きの入れ子について片利用関係等[注 7] を示す)
各新幹線路線で利用可能なIC乗車カードサービスは現状、EX-ICサービスに登録したカード等、モバイルSuica特急券(2020年3月24日以降は「新幹線eチケットサービス」[37])、またはタッチでGo!新幹線に限られる。新幹線各路線での利用条件や新在乗継条件も含め詳細は各々の項目を参照のこと。
新在乗継の在来線部分の運賃自動精算については、取扱可否も含め詳細は該当エリアのカード項目を参照のこと。
上記のエリアでは、いずれも全国相互対応カード等の片利用が可能である。
鹿児島地区では、かごしま共通乗車カードである下記2種のIC乗車カードが相互利用可能である。
商業系電子マネーで利用できる鉄道・バス・船舶を下記に示す。また、全国各地のタクシー事業者(一部事業者、一部車両)で利用可能な場合がある。すべておサイフケータイなど[注 5] の電子マネー機能にも対応する。なお、SF機能ではないため、厳密には乗車カードには該当しない。
試験導入のみのものは含まない。
発行終了後の取り扱いなどの詳細についての項目があるものは、該当項目を参照。
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