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日本のタクシー(にほんのタクシー)は、日本におけるタクシー事情について記述する。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
日本におけるタクシー事業の法的位置づけとしては、道路運送法(昭和26年法律第183号)第3条第1号ハで定義される『一般乗用旅客自動車運送事業』の類型の一つで、具体的には「一個の契約により国土交通省令で定める乗車定員未満の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業」とされている。乗車定員の上限については国土交通省令である道路運送法施行規則(昭和26年運輸省令第75号)第3条の2で「11人(未満)」とされていることから、「一個の契約により乗車定員10人以下の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業」と読み替えることができる[注 1]。道路運送法においてタクシー事業とハイヤー事業は明確な区分がないが、タクシー業務適正化特別措置法(昭和45年法律第75号)第2条第2項において、ハイヤーを「運送の引受けが営業所のみにおいて行なわれるもの」と定義づけており、それ以外をタクシーと称している。
タクシーに係わる法令として、道路運送法、タクシー業務適正化特別措置法の他、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(タクシー事業適正化・活性化特別措置法)、旅客自動車運送事業運輸規則、一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款などがある。
事業用自動車を示す緑地に白字(軽自動車のタクシーは黒地に黄字)、基本的に、3ナンバー又は5・7ナンバー(乗用登録)のナンバープレートがつけられるが、一部のタクシーでは、1ナンバーまたは4ナンバー(いずれも貨物登録)の車両をベースとする事業者もある[注 2]。
自家用自動車を用い、タクシー営業に必要な許可を取らずに行われるタクシー営業(自家用自動車のナンバープレートが白地であることから『白タク』(しろタク)と呼ばれる)は「自家用自動車は有償で運送の用に供してはならない」と定めた道路運送法第78条に違反する行為である[注 3]が、インバウンド需要に対応できるタクシードライバー不足もあって、訪日外国人旅行客を狙った在日外国人による白タク行為が顕在化するようになってきた[1]。こうしたことから、2024年には近年のタクシードライバー不足の解消策の一つとして、タクシー事業者の管理の下で地域の自家用自動車や一般ドライバーによって有償で運送役務を提供することを可能とする制度(自家用車活用事業、通称『日本版ライドシェア』)が創設された[2]。
全国の市場規模は2009(平成21)年度でおよそ1兆8000億円、2010(平成22)年度で1兆7279億円。最大であった1991(平成3)年度の6割程度まで落ち込んでいる[3]。
規制緩和によって大都市圏を中心に多くの地域でタクシー台数が過剰となり、2009年(平成21年)10月にはタクシーの減車を促すタクシー事業適正化・活性化特別措置法が施行された[3]。この結果、全国に先がけて減車が進められた東京地区ではタクシー台数が最大時から約2割減少、2010年(平成22年)7月以降には一台あたりの売上高が増加に転じ、翌年3月の東日本大震災発生まで8か月連続で増加した[3]。
1912年(明治45年)7月10日、東京市麹町区有楽町(現東京都千代田区有楽町)にタクシー自働車株式会社が設立され[4]、同年8月15日から本社前でT型フォードを6台使用して旅客営業を開始した。これが日本における、自動車を使用したタクシーの最初の営業であった[5]。
このタクシーは料金メーターを搭載して「辻待ち自動車」と呼ばれており、上野駅と新橋駅を拠点に営業していた。料金は最初の1マイルが60銭、以後0.5マイル毎に10銭増しであり、人力車に倣って夜間・雨雪時の割増運賃も設定されていた[5]。その後、1914年(大正3年)には東京駅が開業したことにより、同社によって東京駅でも営業が行われた。その後タクシーは全国に普及するが、当初は料金体系がバラバラで苦情が多かったことから、1924年(大正13年)大阪市内を1円均一で走るタクシーが登場した。これを円タクと称する。円タクは、2年後、東京市にも登場した。実際は範囲内短距離であれば運転手と交渉し、80 - 90銭にまけさせた事例も見られた。業務で頻繁に乗る常連には20銭から50銭といった極端に安い料金で運行する例も見られた[6]。
1930年代のタクシーの乗務員には、運転手のほか助手が存在していた。助手の本来の役割は乗客の乗降を手助けするサービスを行うことが目的であったが、タクシー事業者にとっては客の勧誘や料金の誤魔化し防止、用心棒の役割も果たす存在であった。この頃、都内に昼間見られる流しのタクシーの例では、1/3の程度割合で助手が乗車していたが、利用者にとっては運転には関係のない助手は雲助を連想させる存在であり、時には不快感を抱かせることもあった。1936年(昭和11年)、警視庁とタクシー事業者による帝都交通統制委員会では助手の廃止が議題とされた。業者や交通課が廃止に賛成する意見を出す一方、刑事部は自動車強盗に対する防犯の立場から反対を採った[7]。
満州事変から第一次上海事変へと日中関係が混迷を深める中、石油会社が値上げを発表するなど、東京市内のタクシーは混乱を深めていき、1938年(昭和13年)には車両、部品、燃料など物資統制の重圧から、警視庁は全てのタクシー営業を法人格を持つ者に限ること(最低基準車両50両)とし、175社へ集約統合を行った。その後、メーター制も復活し、初乗り2キロ30銭、1キロごとに10銭となった。
戦時体制が整うにつれ、1937年(昭和12年)には、石油資源の確保のため、タクシーの流し営業が禁じられた。 ガソリンの節約を目的に代用燃料への転換も進められ、ついには1941年(昭和16年)9月11日からタクシーの営業許可は代用燃料車にのみに出されることとなった[8]。この頃にはガソリンも自由に購入できなくなっていたこと[9]、同日からは代用燃料車の料金をメーター表示額の倍とすることが決定した[10] ことから、石炭(コークスを含む)や木炭を使用した自動車への改装が加速した[11]。
第二次世界大戦の戦況が厳しくなった1944年(昭和19年)には、決戦非常措置要綱に基づき重要用務に対する緊急配車以外禁止となり、一般人が利用する従来の円タクは廃止された[12]。 終戦後、東京都内で焼け残ったタクシーは、1,565台だけであった[13]。
1950年代後半以降、モータリゼーションの発達により、大都市圏を中心に「神風タクシー」と呼ばれる粗暴運転、乗車拒否、不当運賃請求(雲助タクシー)などが問題となり、交通事故も多発し、白タクも横行した[14]。それらを抑制する目的で個人タクシー制度が生まれ、1959年(昭和34年)に東京で初認可、1960年(昭和35年)には関西でも個人タクシーが認可されると、法人タクシーと個人タクシーが競合した[14]。1970年(昭和45年)には、タクシー業務適正化臨時措置法が施行され、東京圏・大阪圏ではタクシー運転手を登録制とし、東京・大阪タクシー近代化センターが設置された。
1992年(平成4年)6月19日に、第3次臨時行政改革推進審議会が「国際化対応・国民生活重視の行政改革に関する第3次答申」により、国民生活に関連の深い分野での経済的規制の緩和を求めたことを受け、運輸政策審議会は、「今後のタクシー事業のあり方について」(平成5年5月11日答申第14号)を答申した。これを受けて、運輸省では、運賃・料金の多様化、需給調整の運用の緩和等に取り組むこととし、1995年(平成7年)3月に実施された東京地区の運賃改定は、遠距離割引運賃、ワゴン配車・時間指定予約料金、時間制運賃などが、1995年12月に実施された大阪地区の運賃改定は、定額運賃前払割引、ノーマイカーデー割引などが設定され、需要の喚起、利用者ニーズに即したメニューの多様化が図られた。
規制緩和推進計画で、運賃・料金の多様化、需給調整の運用の緩和、事業区域の段階的拡大等が盛り込まれたことを受け、運賃・料金の多様化については、タクシー事業の特性に応じ、一層の経営効率化インセンティブ付与、サービス向上、利用者の利益保護等の観点から、設定方式のあり方等について検討を行うこととした。
需給調整については、1993年(平成5年)10月より、東京地区において一定幅の中で増減車を弾力的に認める制度が導入されていたが、需給調整の透明化を図るとともに、当該事業区域の需給状況が、あらかじめ示された一定範囲を超える供給過剰である場合を除き、免許等の処分を行うよう、より弾力的な処分を行うこととした。事業区域については、事業の効率化を図る観点から、地域の実情を踏まえ、段階的に統合・拡大を図ることとした[15][16]。
1996年(平成8年)12月16日に行政改革委員会より「規制緩和の推進に関する意見(第2次)-創意で造る新たな日本」が公表され、
今後は、量的規制である需給調整規制を廃止し、これと併せて、タクシー運転手の資格要件の規制、事業者の資質の確保・向上のための具体的方策を講ずることとし、そのための体制の整備を図るべきである。このような方向への転換のためのスケジュールを明確にすべきである。これらの措置については、サービス改善効果を見守りつつ、段階的に進めることとし、当面は、需給調整規制の基準の客観化、数値化、透明化を徹底して図るべきである。また、その際、あらかじめ需給の計算結果を明示した上で、あらかじめ示された一定範囲を超える供給過剰である場合を除き、申請に応じて増車、参入を認めるシステムを確立して、それにより運営を行うべきである。また、事業区域規制については、当面、事業区域数をほぼ半減させることを目標として統合を進め、最低車両台数規制については、最大60両となっている車両数を最大10両に縮減する規制緩和措置を、内容に応じ速やかに行うべきである。 さらに、価格規制については、利用者にとって選択しやすい内容とするとともに、できる限り事業者の自主性が尊重される多様な運賃水準の設定が可能となるようにすべきであり、当面はゾーン制により緩和を図ることとし、将来的には上限価格制に移行すべきである。
との意見がなされた。
運輸省では、これを受けて「タクシー運賃制度研究会」を設置し、当該研究会での結論を踏まえて、1997年(平成9年)度から10 %の幅の中であれば、自由に運賃の設定を認める「ゾーン制運賃」を導入するとともに、初乗距離を短縮(2 kmを1 km)する運賃を認めることとした。事業区域の拡大は、1996年時点で1911あった事業区域を統合し、3年間でほぼ半減させる措置を講じたほか、最低保有車両数の基準については、例えば東京で60両の基準を10両に引き下げる等の見直しを行った。
需給調整規制の廃止については運輸政策審議会自動車部会で審議することとした。こうした状況を踏まえつつ、1997年(平成9年)12月4日に行政改革会議最終意見が公表され、「運輸政策審議会の審議については、迅速化を図り、委員会意見の趣旨に沿った結論をできるだけ早期に得ることを求める。また、需給調整基準やゾーン運賃幅のさらなる緩和を検討すべきである。」との意見がなされた。
1999年(平成11年)4月9日に運輸政策審議会自動車部会は、「タクシーの活性化と発展を目指して ~タクシーの需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について~」(平成11年4月9日答申第16号)を答申し[17]、参入に関しては、これまでの需給調整規制を前提とした免許制に代え、輸送の安全の確保、安定的なサービス提供及び利用者保護に関し一定以上の能力を有するか否かを審査し、これらの要件を満たす者には、参入を認める許可制とすることとされた。
この答申を受けて、2002年(平成14年)2月1日に道路運送法・タクシー業務適正化臨時措置法の一部が改正施行され、事業はこれまでの免許制から許可制とし、事業者の車両数増減も届出のみで自由に可能になった(いわゆる「タクシー規制緩和」とはこれらの法改正を指す)。これにより大都市では新規参入事業者が増加している反面、既存の中小事業者は地方・大都市の別を問わず、マイカーの普及や公共交通網の拡充、社会事情の変化などによる乗客の減少に加え、業務の性質そのものが収入を増やせず支出を減らせないため、構造的な業績不良に陥り、経営の苦しいところが多い。売り上げを上げるため労働者に過大な負担がかかるようになってきていることも問題視されている。同時に「タクシー業務適正化臨時措置法」は恒久法化され『タクシー業務適正化特別措置法』となり、タクシー近代化センターも「タクシーセンター」に改称された。
2008年(平成20年)5月2日にタクシー業務適正化特別措置法施行令が改正され(2002年の規制緩和に対して再規制と俗称する)、東京・大阪地区のほか、全国11の大都市が指定地域となっている。
2024年(令和6年)秋、タクシー無線の一般社団法人の全国自動車無線連合会が解散する[18]。IP無線などの普及により、基地局が4分の1に減少していた。
駅、空港、港、百貨店、観光地、繁華街、病院などにはタクシー乗り場が設けられており[注 8]、順番に並んで乗車する(東京駅などでは「先着順にお乗り下さい」と記されている、乗り場誘導係員も基本的にそれを遵守している)。タクシー車両を選ぶのは基本的に客の自由であり、最近では車両や後述の支払方法の多様化により、ワゴンタクシーの希望や現金以外での支払い(チケットやカード、電子マネーやQRコード決済等)を希望すると、順番の変更が受け入れられる場合がある[注 9]。一部のビルや病院などには、タクシーセンターが選定した優良ランク事業者の乗務員、タクシーセンター発行の優良証を持つ乗務員が入構出来る優良乗り場(東京都の場合、東京駅丸の内側や渋谷駅西口など)や特定事業者だけが入構可能な専用の乗り場がある。特定事業者の専用のタクシー乗り場の中には、入構するタクシー事業者がその施設所有者へ施設使用料を支払い構内権を購入している場合がある。特定事業者の専用の乗り場の場合でもその事業者の車両が待機していない時に客が乗り場に来た場合や客の呼び出しで迎えに来た場合は他の事業者の車両が入構することがある。
東京都内においては、新丸の内ビルディングや東京スカイツリータウンに「EV・HVタクシー乗り場」が存在し、ここには電気自動車とハイブリッドカーのみが待機できる。但し、前者は21:00〜翌9:00と日祭日は通常のタクシーも待機可能で、後者は待機車両が無い場合は通常のタクシーも入庫が可能となる。利用者は他の待機場同様、先頭から順番に乗車することが基本であるが、予約又は無線配車の場合はその限りではない。
走行中のタクシーが空車表示で走行中の場合は停めて乗車することができる。それ以外の表示の場合は通過。
主要都市の市街地では、フロントガラスから見えるように「空車」のプレートをダッシュボードに掲げて、あるいは実空車表示器に「空車」を表示して走っている(流し)タクシーに対して手をあげたら停車するので乗車すればよい。夜間の場合はプレートが見づらいことから、プレートの代わりに車上の社名表示灯が点灯しているか否かで区別できる地域もある。以前はタクシーメーターから出た腕に赤地に白文字の空車表示板が取り付けられており、実車時にこの腕を倒していたことから、運賃計算のことを「メーターを倒す」と表現した。最近はほとんどの車両で電光式の「空車」「迎車」「予約車」「賃走」「割増」「支払」「回送」などの表示がされており、プレート式や幕式の表示は減って来ている。ただし、表示器で表示できないものを表示するためや、表示器の故障時に使用する目的でプレートを車載する車両もある。
営業所・専用コールセンターに電話をすることで呼び出す、もしくは近年においてはスマートフォン・タブレット端末用のタクシー呼出アプリ(一部のタクシー会社で採用)を用いて、迎えに来てもらうこともできるが、その場合は迎車料金がかかる(無料の場合もある)。地方においては、過疎化やモータリーゼーションの進行もあり、流し営業では利益を見込めないため、ほとんどが呼び出しまたはタクシー乗り場で乗車する地域も多い。走行しているタクシーが空車であった場合、手を上げれば乗り込めることは都市部と変わらない。
タクシーは自動で後方左側のドアを開ける場合が多いので、客は自分で開ける必要はない。後方左側以外のドアは自動では開かないので客が開ける。タクシー乗り場にが左回り一方通行の場合に後方右側から乗降する。自動ドアのタクシーは諸外国で見られず、日本のタクシー仕様車が輸出されている香港や台湾などで散見される。
タクシーに乗り込んだら行き先を告げる。走り出すときに乗務員が運賃メーターをスタートさせることにより料金が発生する。ただし、電話などで呼び出し迎車で進行してきた場合、基本料金分のメーターが作動しているか迎車料金がかかる。いずれの場合も、一定の走行距離又は乗車時間(但し途中でタクシーを待たせて車から離れても時間メーターがカウントされる)、もしくはその双方で運賃料金が表示される。目的地につくと乗務員が運賃メーターを止めるので、そのときに表示された金額に従って料金を払う。基本となるメーターの他に、料金ユニットといわれる支払額を示すメーターがついており、これに従って運賃料金を精算する。これは、遠距離割引や障害者割引(割引を受ける場合は障害者手帳の顔写真面の提示が必要)、迎車料金、予約料金等の、通常のメーター以外の割引や加算分を示すものである。契約として、あらかじめ定められた定額運賃によるものもある(羽田空港定額運賃・成田空港定額運賃)。この場合、メーターによる運賃の収受ではなく、あらかじめ決められた運賃を支払えばよい。有料道路を利用した場合の通行料や、観光で利用するなどの際に有料駐車場を使用したときの駐車料金は、乗客が負担するものなので、メーター額のほかに支払わねばならない。
精算方法としては、現金の他、チケット(タクシー会社発行のもの、クレジットカード会社発行のものなどがあり、利用限度額や使用期限が定められていることもある)、クーポン(偽造防止で新規発行は廃止、すでに発行された分であれば使用可能である場合はある)、クレジットカード、デビットカード、交通系ICカード(Suica等) / ID / QUICPayの非接触ICカード決済、PayPayほかのバーコード・QRコード決済などがある。現金以外の場合は、使えるタクシー(事業者)が限られているので、乗車時によく確認する必要がある。
降車時も左後方のドアが自動で開く。客が降りるとドアが閉まるので客は閉める必要はない。これは乗務員が客の動作や周囲の交通状況を確認し操作するものであり、一般的な意味での自動ドアとは違う。近年では、負圧式(エンジンの吸気の力)や空気式(圧縮空気を利用)、電動式で強く腕力を要しないものも増えてきた。降車時に客がドアを閉めると、ワイヤー式やてこを利用したレバー式の場合、乗務員側のレバーも連動して動くため、乗務員の腕や足等がレバーに挟まれる場合もあるので、ドアの開閉は乗務員に任せるべきである。但し、助手席に乗る場合旅客自ら開閉することが必要でその事は普通の車と変わらない。後方右側のドアは乗り逃げ防止のためと旅客がドアを勝手に開閉させることで起こりうる事故を未然に防ぐ意味でチャイルドロックが掛けられていることが多い。
運賃はかつて、同一地域同一運賃制度に従い、原則として同じ地域では会社を問わず同じ運賃であったが、1993年(平成5年)にこの制度が廃止されている。現在では、地域ごとに定められた金額を上限とする一定の範囲内であれば、各社の裁量により運賃を自由に決めることができる。たとえば、2017年(平成29年)2月現在、東京都区部における一般的な普通車初乗り運賃は410円であるが、400円や300円とする会社も見られる。1997年(平成9年)には初乗距離短縮運賃制が一部会社で導入された。これは、初乗り運賃を安くする代わりに初乗り運賃が適用される距離を短くするもので、一定距離を走行すると通常の運賃と同額になるが、初乗り運賃の高さから敬遠されがちな短距離利用の促進を狙っている。
個人タクシーでは消費税法に基づく事業者免税点制度が適用されることから(売り上げが規定値以下のため)消費税の納税義務を免除されており、その分、法人タクシーよりも運賃が安くなっている地域もある。
通常のタクシーの運賃・料金は以下で構成される。
以上の運賃体系のほか、タクシーの車両は車種によりクラス分けがされており、クラスによって運賃が異なっている。初乗り運賃だけでなく、運賃が加算される走行距離なども異なる。
概ね以下の4種類に分類されているが、この分類は必ずしも全国共通ではなく、特に大型車と特定大型車の区別がない地域や、これらと中型車を同一とする地域は多い。分類方法が道路交通法と異なる事に注意。東京23区武三地区、京都市域地区など一部では車種別運賃が廃止され「普通車」区分に統合されている。中型車と小型車のみ統一した地域でもその区分名を「普通車」としている場合が多い。
コンフォート生産中止以降はプレミオやカローラアクシオ、グレイスなどセダン型でもさまざまな車種が採用されている。
乗車定員には乗務員も含まれるため(研修等で助手席に添乗員がいなければ)、実際に乗車できる乗客の数は乗車定員より1名少ない数となる。
地域により中型車の多い地域と、小型車の多い地域、中型車と小型車が半々程度の地域がある。概ね首都圏・近畿圏・中京圏の三大都市圏は中型車が多いが、例外的に京都市や和歌山市では中型車と小型車が半々程度である。北海道・東北・北陸・四国・九州・沖縄では小型車が多い。
営業区域内の7割以上のタクシーが値上げ(値下げ)申請すると、国土交通省はその審議に入る。特に東京地方では、物価安定審議会を開催し、値段の妥当性を審議をする。
乗務員(運転手)として、旅客輸送業に従事する旅客車に乗務する為には、第二種運転免許(普通二種、またはその上位免許である中型二種、大型二種免許)が必要である。AT車のみの乗務であれば、AT車限定の普通二種免許で乗務できる。
養成期間中は、日当が支給される。都道府県公安委員会(運転免許試験場)の学科試験・技能試験の合格を経て、二種免許取得後、自動車事故対策機構(NASVA)の適正診断を受ける[注 10]、二種免許取得後、空車表示灯(スーパーサイン)の裏に立てる乗務員証を取得する為、営業区域の指定する機関で乗務員登録を行う。営業所配属後、1年から2年間の在籍を必要とする拘束期間がある[注 11]。
東京・大阪等地理試験が必要な地区の場合は各タクシーセンターが行う地理試験に合格し、新任研修を経た者が登録乗務員になれる。
さらに、上述したタクシー事業の多角化に対応するため、入社後、ホームヘルパー、警備員検定、救命講習修了、運行管理者等の資格取得を求められる会社もある。
乗務員は男性が多いが、タクシー乗務員については1999年(平成11年)の労働基準法改正以前から、女性の深夜労働(22時 - 翌5時)が認められており、乗務員が働く女性の場合も少なからずいる。しかし、一般的には昼日勤者が多い。乗務員は、一般に正社員(期限の定めの無い雇用契約)が多く、隔日勤務の場合、月に11乗務から13乗務。隔日勤務の場合、一回の乗務を2日分の労働と計算するので、1か月に22日から26日相当の勤務をすることになる。昼日勤(朝から夕方まで)、夜日勤(夜から朝まで)、最大12時間までを毎日乗務する勤務体系もあるが、この場合、1か月に22回から26回の乗務をすることも可能。正社員にこの勤務体制が多い。
運転手の大半が高齢者であることも特徴と言える。自身が高齢になりバスの運転が不安となり、大型2種免許には「上位互換」があるので普通2種免許を改めて取得する必要はなく(上位免許の所持者は取得できない)その制度を活用してタクシーの運転手に転職する人もいる。
定時制乗務員(契約社員・嘱託)は、正社員ではなく、月に隔日勤ベースで8乗務まで(昼・夜日勤の場合、16乗務まで一勤務最大12時間以内まで)。主に、高齢者や兼業者がこういった勤務をする場合が多い。
毎月の給与は月間売り上げに対して、固定給制と歩合給制と混合型と存在する。従って歩合給制の場合、稼働日数が多いときや売上が多いときは給与が増えることもあるが、売り上げが少ない時は給与が下がる。一定額の運送収入に達しない場合、売り上げに対する歩合率が下がる。(一般的に「足切り」と呼ばれる)。賞与は毎月の給与の中から歩合率の一定額を控除し、年間数回に分けて賞与の形で支給される。売上が規定稼働額に達しない場合は支給されないこともある。歩合率は1日の営業運賃収入に対して賃率が決まる場合や月間運賃収入に対して決まる場合もある。売り上げの40%から60%程度、各社各種条件により変動する。
近年の規制緩和によりタクシー台数が急増し、一部地域では過当競争が発生し、乗務員の労働環境を低下させている見方がある。乗務員の平均年収は全労働者の地域別最低賃金の平均年収を大きく下回っている地域もある。最低賃金格差社会問題の一端が表れていると、マスメディアでこのことが取り上げられることもしばしばある。
タクシー運転手の求人広告は、主にスポーツ新聞や夕刊紙、公共職業安定所(ハローワーク)で行われることが多い。一般紙や一般の求人情報誌、求人ウェブサイト(リクルート社のリクナビなど)にタクシー運転手の求人広告が載ることは少ないが、大都市近郊では吊り広告など電車内の広告(特に私鉄系のタクシー会社)やラジオCM等で求人を募集している会社がある。
道路運送法第13条の定めるところにより、運送事業者は次の場合を除いては、運送の引受を拒絶してはならない。
乗務員の安全のため、運転席と後部座席の間に透明な樹脂製の防犯板や、車内を撮影する監視カメラ(ドライブレコーダー)の設置が進んでいる。だが、防犯板は大阪府のタクシー運転手などから、接客面のサービス低下を理由に否定的な意見もあり、監視カメラは、運転手への暴力や無賃乗車などのトラブルが起きた場合には証拠になるが、プライバシーの問題があり、普及していくには記録した映像と音声の管理体制を整えることが求められている[25][26]。防犯板に否定的な事業者を中心に煙幕発生装置を設置している場合もある。ただし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大対策としてビニールカーテンを設置したところ、乗務員と乗客の意思疎通に支障きたす事例が増えたことから、新しい生活様式に対応した乗務員の後方だけでなく側面まで覆うタイプの新型防犯板[注 12]が開発され、都市部を中心に広がりを見せている。
人相や風体が不審な乗客を乗せた運転手が身の危険を感じた場合は、警察への通報や無線局に対する非常信号、同僚のタクシーに知らせる為の暗号を送信する場合もある。
自宅或いは用務地と空港の間を輸送する形態。
地域によっては「空港定額」と呼ばれる制度が存在する。例として東京都区部と武蔵野市・三鷹市(特別区・武三交通圏と呼ばれる)においては、乗車地または降車地が営業区域内で、23区ならびに三鷹市・武蔵野市から、成田国際空港や東京国際空港(羽田空港)間の往路または帰路の送迎を依頼する場合、タクシー各社の配車室に乗車の1時間前(空港着)または2時間前(空港発)までに、電話などで事前予約をすることによって、区や市ごとに定められている「エリア定額運賃」での送迎をおこなう事業者がある[29][30](空港着のみ扱う事業者と、空港発も扱う事業者が存在する)。この制度を利用する場合は、タクシーメーター表示料金額が既定の金額を超えても定額運賃が適用される[注 13]。ただし、事前予約制、首都高速道路を必ず利用する、乗車地と降車地は原則として各一箇所などの条件があり[30]、乗車中の高速料金は利用者の負担となるほか[30]、迎車料金のほかに予約料金が加算される。本交通圏の車両は羽田空港の空港構内発の運行に限り、迎車・予約なしで定額運賃を適用できる。そのため、この場合は迎車・予約の料金は加算されない。この「定額運賃制度」は空港以外への行き先で設定されている場合もあり、首都圏で東京ディズニーリゾートまで定額運賃を設定する地域が存在する。
一方、南関東、愛知県(名古屋市とその周辺部)、京阪神、中国・四国地方では、「空港タクシー」と称した乗合タクシーサービスをおこなっている[注 14]。運行形態上は以下の2つに分けられる。
運賃は単独で(個別に手配して)空港に向かうよりも安価に設定され、多くはサービス提供地域のどこから乗っても定額で利用できるような設定がなされている。
いずれの類型も、24時間運用の空港を、深夜から早朝にかけて発着する場合、鉄道や連絡バスなどの公共交通機関が運行されておらず、旅客の需要がある。
なお、航空会社などの空港関係者が、電車・バスの運行時間外の出勤や退勤、または自宅や宿泊先と空港の間の送迎をおこなうタクシー会社があるが、こちらは予約配車である。
タクシーの利点に「旅客をドア・ツー・ドアで輸送できる」ことがある。1976年、熊本県自動車交通労働組合が春闘の一環として、重度障碍者等の運賃を2割引にし、乗務員が車椅子の折り畳みなどを援助する福祉タクシーの導入を提唱。会社側も導入に同意した記録が残る[31]。その後は、身体障害者や高齢者など、移動に大きな制約を伴う人々を対象にするタクシー事業者が増加した。中には、運転手にホームヘルパー(2級以上のヘルパーは乗降介護が出来る)、救命講習などの公的資格を取得させている事業者もある。車椅子を積載できるタクシーには8ナンバーの特種用途自動車の登録となっているものもある。
本業がタクシーではない介護事業者(特に訪問介護・居宅介護事業者)が、介護サービスの利用者を病院などへ移送することを目的に、一般乗用旅客自動車運送事業(患者等輸送限定)種別の許可を受けることも多くなってきている(「介護タクシー」)。このうち、介護保険や支援費制度を適用しない場合をケア輸送サービス、適用する場合(通院等乗降介助)を介護輸送サービスといい、運賃の収受方法に差がある。
道路運送法第78条による自家用有償旅客運送として(詳細は自家用有償旅客運送参照)、陸運局の認可を受けた白ナンバー車両でタクシー事業を行うことができる。上述の介護・福祉輸送でこの形態をとるものがある。
NPOタクシーも参照。
タクシーには「24時間365日、地域内のあらゆる場所を走行し、無線により連絡手段を確保している」特性がある。この特性を活かして、非常時には警察無線とも連携を取り合う体制を築いている地域もある(犯人が犯行後タクシーを使用して逃走した疑いがある場合は暗号による一斉手配が無線で流れる。)。最近ではコンビニエンスストア等と提携してその敷地の駐車場に止めて旅客、無線待ちをしつつ、店舗の防犯を兼ねている地域もある。東京都では子供の安全の確保を目的として「タクシーこども110番」制度を警視庁や業界団体と共同で展開している。災害の被災現場の生の状況を都の災害対策本部やマスメディアに提供する「防災レポート車」の制度を都の地域防災計画として組み込んでいる。
タクシー事業者が運転代行業を兼業する例は古くから地方で数多く存在するが、タクシー事業の多角化に加えて、2004年(平成16年)の法改正によりタクシー同様普通二種・中型二種・大型二種運転免許のいずれか(中型二種は2007年から施行)を取得した者でなければ代行運転に従事できなくなった(法律自体は2002年に施行されたが、二種免許義務化は2年間の猶予期間が設けられていた)ため、運転代行業に参入するタクシー事業者がさらに急増している。
人ではなく、コンピュータなどの保守用部品、データメディアなど、近距離の小物の輸送を引き受けているタクシー事業者もある。バイク便、あるいは赤帽などと似た使い方であるが、タクシーは旅客運送業であり、貨物だけの輸送は認められていない。貨物だけを輸送する場合、基本的には事業者が有償貨物運送許可を取得する必要があり、荷物等の輸送を引き受けるにあたりこの許可を取得している事業者が後述の特例措置に伴う出前等に参入する例もある。
以上のほかにも、日用品の買い物代行や、子供の幼稚園や小学校への送迎など、様々な種類のユニークな事業があり、最近では同じタクシー事業といえども地域や事業者により、多角化の方向を示しているといえる。
貨物の運送は条件付きで規制緩和が進み、2017年(平成29年)11月1日には、旭川中央ハイヤー(北海道旭川市)と佐川急便が共同で、乗り合いタクシーを利用して戸別配送も行う貨客混載の事業を開始した[32]。
2019年コロナウイルス感染症による特例措置として物資の配送が認められ、特例期間中限定ではあるものの出前に参入する事業者もある。大手等のグループや無線協同組合単位で参入する場合は提携事業者や加盟事業者も必要な認可を得る必要がある。
浜松市天竜区佐久間地区は、タクシー会社の事業所が遠隔地にあり、融通の利く往来に不便をきたしていた。そこで、地域のNPO法人「がんばらまいか佐久間」[33]は、2007年8月に過疎地での有償輸送を目的にNPOタクシーを開始した。以降、過疎地域においてNPO等によるタクシーの自主運行が増加している。
Uberや滴滴出行などのライドシェア事業が世界的に拡大している一方、日本では自家用車を使った客を有償で運ぶ行為は「白タク」として違法とされる。これに対し、孫正義は「既存の業者保護のための出遅れた規制だ」と批判した[34]。
一方で国交省では「自家用車を使って有料で送迎したとしても、支払いが『好意に対する任意の謝礼』である場合は、許可や登録は必要ない」見解を表明しており、料金を設定せず支払額は乗客が決めるライドシェア事業を展開する会社が登場している[35]。
1990年代以降、タクシー向けの排気量2リッター級セダンであるトヨタ自動車のクラウンコンフォート、クラウンセダン、コンフォート、日産自動車のクルー、セドリック営業車が主に使用されているが、日産では2010年にミニバンのNV200のタクシー仕様車を発売してクルーを2009年6月に、セドリック営業車を2014年12月1日にそれぞれ生産終了し、トヨタは2017年にトールワゴンのジャパンタクシーを発売して同年内にクラウンコンフォート・コンフォート・クラウンセダンを生産終了したため、小型・中型タクシー向けセダンがすべて生産・販売終了となった。NV200のタクシー仕様車も2021年3月で生産を終了したため、以降はジャパンタクシーの1車種のみがタクシー専用車として販売されている。
タクシー専用車は法人需要を考慮して、低コストでの販売のために内装装備を簡素かつ凡庸なものにしているため、他社との差別化のためあえて高価な上位グレードであるクラウンセダンやセドリックのクラシックSVなどのハイグレードタクシーを選択する会社もある。
タクシー専用車以外に、市販のセダンやステーションワゴン、ミニバンを改造したタクシーもある。以前は1.5 - 2リッター級FR方式の市販車をベースに若干の設計変更を施した車両を使っていたが、現在ではそのクラスの市販車がFRからFFに切り替えられ、タクシーとしての快適性の追求と合わせて、1990年代にトヨタ・日産がFR駆動のタクシー専用車を開発した。
軽自動車は安全性、耐久性の問題があり介護用以外で使用されることはなかったが、2009年6月より電気軽自動車が認められる[36]。
1980年代までのタクシー車両は、燃費の関係上、AT(オートマチックトランスミッション)車よりも、MT(マニュアルトランスミッション)車が多く用いられていたが、現在では、AT車の改良により燃費も改善されMT車との格差が少なくなってきたことと、ベース車自体がMT車の設定がなくなりAT車のみになりつつあったことと、乗務員の疲労低減および求人における裾野拡大[注 15]のため、タクシー専用車はATのみの設定となっている。特に2000年代後半以降、後述のハイブリッド車が普及するまでは車格の関係もありATの中でもトルクコンバータ式が主流だったが、ハイブリッド車の普及により広義のATであるCVT(無段変速機)車(特に、電力・機械併用式無段階変速機)への移行が進んでいる。
後部座席に旅客を乗せて営業するためそれ相応の安全性・乗降のスムーズさが求められることから、車両が国土交通省の道路運送車両の保安基準(以下、保安基準と略)に適合していなければ運用できないことになっている。例えば、後部座席には必ずヘッドレストが設けられており(価格の安い自家用車には設けられていない場合が多い)、他にも前後の間隔やドアの開口部についても、基準以上の数値を満たすことが義務付けられている[注 16]。
地球温暖化に対する意識の高まりを受けてハイブリッド車 (HV)、プラグインハイブリッド車 (PHV)、電気自動車 (EV)、燃料電池自動車 (FCV) を導入する事業者も見られる 。ハイブリッド車ではトヨタ自動車のプリウスが多く採用されている。しかし、2代目以降のプリウスは空気抵抗軽減重視ボディのため、クラウンコンフォートやクルーに比べて後席の頭上空間やトランクスペースの余裕が少ない。それらの弱点を回避するため、近年は同じプリウスでもワゴンタイプのプリウスαを採用するケースが増えつつある。同じハイブリッド車である本田技研工業のインサイトはドア開口部の幅が道路運送車両法に基づくタクシー車両の保安基準を満たさないため使用できなかったが、2011年4月以降は使用可能となる[37]。平成27年6月12日、タクシー車両の基準緩和が国土交通省より発表された[38]。
電気自動車は三菱自動車工業のi-MiEVや日産自動車のリーフを、プラグインハイブリッド車はプリウスPHVを、燃料電池自動車はトヨタ自動車のMIRAIや本田技研工業のクラリティ フューエル セルを導入する事業者がある。
一方で、積雪地ではFR車は走行しにくいため、アリオン等のFF車をベースにしたタクシーもまれに見られる(かつてはマツダのカペラや三菱自動車のギャランΣにFF・LPGのタクシー専用車が設定されていた)。4WD車は燃費が悪いため、導入している会社は積雪地でも少ない[注 17]。前述のハイブリッド車等の普及により積雪地以外含めFF車へシフトしつつある。
燃料としては、税金の関係でLPG(オートガス)を使用する車両が多いが、LPG仕様がメーカーで設定されている車種はわずか2車種に限られているので、ガソリンエンジンやハイブリッドカーをLPGに改造するケースも個人タクシーや大都市圏のハイヤー、地方の小型タクシーやジャンボタクシーで見られる。2011年に登場したマツダ・アクセラLPGを小型タクシーに採用する動きもあるが、一方で、トヨタがクラウンコンフォート系のLPG車を2016年頃をメドに廃止するとの新聞報道もあったが、その後2017年5月25日を以てクラウンコンフォート系自体が販売終了した。2015年10月26日付けのトヨタの発表によると、2017年に販売を開始したジャパンタクシーにはLPGハイブリッドシステムが新開発され搭載されている 。
LPGスタンドの設置がない地域や、タクシー事業者がガソリンスタンドも経営している場合などでは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの車両を使用しているところもある。24時間営業のLPGスタンドの数が少ないため、閉店間際は混雑しやすい。これを避けるべく、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを使用する個人タクシーも多い。
LPGを充填する場合に法人タクシーの場合は車載されたカードを使って充填するが、基本的には各事業者あるいは所属する無線協同組合等と契約のあるスタンドでの充填となる(ガソリンや軽油と違い、元売りの看板が同じだからといって共用できるわけではない)。法人タクシーでもガソリン車やディーゼル車の場合で掛売カードの場合は給油可能箇所は掛売カードの条件による。
法人タクシーの多くはフェンダーミラーである。近年はセドリックも含めてフェンダーミラーの設定のない車種が多い。理由として、視認時の視線移動が少量で済むこと、ドアミラーと比較して車幅が狭くなるため、狭い路地に出入りし易いなどが挙げられる。ドアミラーでは左のミラーを視認する際に運転手が客の方を向いていると誤解される場合があり、それを避ける意図もある。2010年代以降もフェンダーミラーに根強い需要があり、汎用商用バンのタクシー仕様である日産のNV200とは異なり、純然たるタクシー専用車種であるトヨタのジャパンタクシーは原型となったシエンタと異なりフェンダーミラーを採用した。
タクシーは、停止や方向転換、乗客の乗降車などでのウインカーやハザードランプの点灯を周囲に認知させる必要性が高い。東京や仙台市など、地域によっては屋根の上、社名表示灯両脇への補助ウインカー「ルーフウインカー」の装備が標準化されている(義務化ではないため、装着していない事業者も存在する)。ただし、標準化されている地域でも義務ではないため、例としてハイグレードタクシーに分類される車両である場合やミニバン等車高が高い車両である場合は装着されないことが多い。
ミニバンを使用する場合、保安基準で3列目シート乗客の避難を容易にする目的で、2列目のシートはキャプテンシートの車が多く使われている。2列目がベンチシートの車を使う場合、3列目シートを撤去し5人乗りとして用いる場合が多い。ベース車両に2列シート車と3列シート車の設定がある場合は前者が採用されることが殆どである。
タクシー専用車種向けにタイヤメーカーはタクシーラジアルと呼ばれるタクシー用タイヤを製造している(ブリヂストン:MILEX(マイレックス)シリーズ、住友ゴム工業:SP TX-01(ダンロップブランド)・TAXI-MILER(タクシー マイラー)シリーズ(グッドイヤーブランド)、横浜ゴム:TAXI TOURING(タクシー・ツーリング)シリーズ、TOYO TIRE:LIZA(ライザ)シリーズ、J60等)。タクシーとして用いられる車両の走行距離に対応するため耐摩耗性が高められているが、反面グリップ性能(特にウェットグリップ)は一般タイヤには劣る。タクシー用スタッドレスタイヤも存在するが、降雪地帯でなければ駆動輪のみに装着されることが多い。タクシー専用車種でない場合でもサイズが合えばタクシー用タイヤを装着させている事業者もある[注 18]。降雪地帯でない場合で冬期とそれ以外で履き替える手間やタイヤの保管スペースの消費をなくしたり、履き替えによるタイヤとホイールのセットの収納スペースを削減するためにオールシーズンタイヤを通年利用する事業者もあり、2020年代に入ってタクシー向けニーズの増加からブリヂストンや住友ゴム工業(ダンロップブランド)、横浜ゴム、TOYO TIREからはタクシー用オールシーズンタイヤも発売されている。
かつてはタイヤは仕様上の関係で、スペアタイヤ(応急用タイヤも可)は常備しなければならなかった。パンク修理キットが標準装備の車種の場合、オプション設定のスペアタイヤを選択するか、標準のタイヤと同等品のものを積載する必要があった。
このほか、タクシーの塗装をしておりタクシー会社の名前が入っているが白ナンバーを装着している車両がある。これは営業用としては引退した車両を社内教習用や業務用車両として使用しているものである。タクシー会社が運転代行業を兼業している場合、随伴車として使用するケースもある。この車両はメーターなどの装備品の基本操作の教習を目的に使用され、当然ながら本物の客を乗せることはできない。こちらの車両での教習の後、本物のタクシー車両で教官役の上司と本物の客を乗せて実務教習を行う。どちらかの教習を省略する会社もある。変わった例としては、広島県に拠点を構えるつばめ交通では営業中の自社タクシーの監視用車両が存在する。メーター等も撤去し複数の営業所間の職員の移動用や新人が走って道を覚えるといった用途に用いられる車両もある。
車体のカラーは緑(東京無線など)や朱色(チェッカーキャブなど)、黄色(東京四社など)、水色、白といった明るい色を使うところが首都圏を中心に多いが、逆に京阪神、北関東、北陸、四国のタクシーには少なく、黒や紺の割合が多い。
車両は不特定多数の乗客が乗降し、一日中街中を走行しているため広告媒体としても利用されており、タクシー広告専門の広告代理店も存在する。
一般車に比べ事故が非常に多く、1台あたりの事故件数は全自動車と比べて8倍以上と極めて高い。原因として強引な運転や、疲労運転が挙げられる(いずれも道路交通法違反)。「1台あたりの走行距離が長いから、事故が多くみえるに過ぎない」との主張もあるが、走行距離あたりの事故件数で比較してもタクシーの事故率が突出している。
法人タクシードライバーの賃金は累進歩合制がほとんどであり、これに対して国土交通省は変更を勧告する通達を繰り返している。累進歩合制給与とは、売上高に応じて累進的に給与が加算される能力給制度の一種であるが、ベースとなる固定給が極めて低いのがタクシー業界の一般的特徴である。
モータリーゼーションの進行で国民の多数に自家用車の所有が浸透したことに加え、近年の規制緩和に伴うタクシー台数の増加もあり、限られた乗客を取り合う構図になり、満足な収入を得られるのは一部の優れたドライバーに限られ、ほとんどのドライバーは極めて少ない収入となる[注 29]。
この問題に関連して、大阪府内の法人タクシーの運転手4人が2005年10月に「規制緩和による過度な増車等によって収入が低下し、労働条件の悪化と交通事故の増加を招いた」などとして、増車・運賃値下げの許認可取り消しと、1人当たり約50万円の損害賠償を国に対し求める訴訟を大阪地方裁判所に起こした。2009年3月25日、大阪地裁は「規制緩和があったからといって、供給過多や極端な運転手の給与水準の低下があったとは認められない」として訴えを棄却した[51]。しかしその後、2008年には国土交通省がそれまでの増車により発生した過当競争を緩和する目的で減車を行う新制度を作り、台数が多すぎる地域を「特定地域」と設定して制限する動きも生じた。
一部のタクシー事業者では、その地域の一般的なタクシーの運賃より割安な運賃(ワンコインタクシーなど)を設定していることがあるが、この動きに対し「過当競争につながる」などとして、2014年1月にタクシー適正化・活性化特別措置法が改正され、国土交通省の定めた公定幅運賃での営業が義務付けられた。従わない場合は車両の使用停止などの行政処分が行われる可能性がある。
反発して割安なタクシーを運営する一部の事業者は、公定幅運賃を下回る運賃を申請したり、運賃変更命令や車両使用停止命令などを出さない旨提訴などする[52][53][54][55]。
タクシー事業者の中には、鉄道事業者系などを中心として駅構内での客待ちを独占し、他のタクシー事業者の乗り入れを排除するケースが見られる。2014年10月31日には、神戸電鉄系のタクシー会社である神鉄タクシーが、神戸電鉄の駅に自社以外のタクシー事業者が乗り入れることを排除したことが、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)違反に当たるとの判決が大阪高等裁判所で言い渡されている[56]。ただし、駅の乗り場が鉄道会社の私有地であるのか、自治体等の公有地なのかによっても判断が変わりうる可能性もある。
大都市圏を中心にオフィスビルや病院等とタクシー事業者あるいは無線組合と契約の上で、車寄せを乗り場としている場合もある。この場合は乗り場が私有地であるため契約のない事業者が排除されることに法的な問題はないが、契約があることを理由に待機車がないときの呼び込みを拒否する例もある。乗客からの直接の申し込みではないので乗車拒否にはならない。
乗車拒否とは「駐停車中又は客を認めて一時停止もしくは徐行を行い、運送の申込みを受けてから、正当な理由なくその引き受けを拒否すること」である。[要出典]
乗車前の旅客の態様から想起される乗車拒否の一例として、夜間、酩酊した客に対して、吐瀉物により車内を汚されることや、正常なコミュニケーションが交わせない結果トラブルが発生することを予想した拒否が行われる場合がある。泥酔者に関しては旅客自動車運送事業運輸規則第13条(運送の引受け及び継続の拒絶)において乗車を拒否できる条文がある。
特定地域の政治・経済状況が原因の可能性がある乗車拒否の事例として、原子力発電所が立地する自治体において原発反対論者の代議士に対して配車を断った事例もある。この事例では後に当該会社が謝罪しているほか、国土交通省中部運輸局も再発防止を求めた[57]。
バブル期においては、当時の好景気から長距離利用の乗客が多かったため、短距離利用の乗客に対する乗車拒否が多く見受けられたが、昨今の社会状況において乗務員が意図的に乗車拒否をすることは少なくなってきている。
複数車線のある道路において、第1通行帯以外を通行しているときは、たとえ客を認めて運送の申し込みを受けたとしても、安全を考慮してその引き受けを受諾してはならない。
1969年頃の日本では、タクシー乗務員が女性客を車内に閉じ込めて暴行に及ぶ事件が続発し「オオカミタクシー」と呼ばれる時代があった[58]。 1996年には車内で女性4人が乗務員に相次いで殺害される広島タクシー運転手連続殺人事件が発生した。
もっとも日本国外では珍しいことではなく、2017年から2018年の間にアメリカの配車サービス「Uber」で発生した性的暴行被害は5,981件に達している[59]。
乗車中は密室となることもあり、乗客による暴行事件、客を装った者による強盗傷害事件はしばしば発生する。2016年度に日本国内で発生したタクシー強盗の発生件数は97件で、うち88件が逮捕されている[60]。
中国人による日本への海外旅行が非常に盛んな中で生まれたのが、中国式白タクである。中国人旅行客にとって中国語が使える安心さと、ガイドも行ってくれる便利さ、運賃が破格に安いことなどから人気が高く、主要な日本の空港を中心に爆発的に広がっている。この中国式白タクは、在日中国人や中国人留学生などが自家用車を用いて行うもので、中国の配車アプリを使って利用する。報道によれば2017年8月現在、配車アプリには運転手として数千人が登録していることが確認されており、今後もますます増えることが予想される[61]。
金銭授受を現地で行わず、日本入国前・乗車前にインターネットを介したAlipay(アリペイ)などでネット決済を行い日本の銀行口座を用いず、領収書なども使用しないため、金銭授受の証拠を掴みにくいことから、警察による取締りに対して「友人の送迎」と主張をして言い逃れ、違法な白タク行為と認定することが困難であった。
中国式白タクは二種免許を持たず、旅客運送事業許可も受けていない違法行為であるため、事故時には任意保険未加入の扱いを受け、乗客・被害者に対する補償等の救済措置は無い。任意保険の制度すら知らない可能性も高く、違法と認定されなくても補償がない可能性もある[62]。民事的な賠償請求をしても運転手に支払い能力は無く、帰国されるので被害者は泣き寝入りの可能性が高い。海外のネット決済を使用した脱税行為である。
中国人団体客の多くは中国式白タクの他に、中国人が違法に運営する民泊を利用し、訪れる免税店は中国系資本の店を使い、その全てを中国企業のネット決済で営業していることから、中国人によるインバウンド収益は減少の一途を辿り、大きな社会問題になっている[63][64]。
警察は複数回の出入りがある乗用車をマークして厳しく捜査しており、逮捕者も増加している。逮捕者は、道路運送法第九十六条により「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされている。
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