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古代の植物が腐敗分解する前に地中に埋もれ、長い期間地熱や地圧を受けて変質したことにより生成した物質 ウィキペディアから
石炭(せきたん、英語: coal)とは、太古(数千万年~数億年前)の植物が完全に腐敗分解する前に地中に埋もれ、そこで地熱や地圧を長期間受けて変質(石炭化)したことにより生成した物質の総称。見方を変えれば植物化石でもある[1]。
堆積岩 | |
無煙炭 | |
構成物 | |
---|---|
主要構成物 | 炭素 |
他構成物 |
硫黄 水素 酸素 窒素 |
プロジェクト:地球科学/Portal:地球科学 |
化石燃料の一つとして火力発電や製鉄などに使われるが、燃焼時に温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)を大量に排出する。このため地球温暖化抑制のため石炭の使用削減が求められている一方で、2021年時点で74億トンの世界需要があり(国際エネルギー機関の推計)、炭鉱の新規開発計画も多い[2]。
石炭は「黒いダイヤモンド」と称されたこともある[3]。特に産業革命以後20世紀初頭まで最重要の燃料として、また化学工業や都市ガスの原料として使われてきた。しかし、第一次世界大戦前後から、艦船の燃料が石炭の2倍のエネルギーを持つ石油に切り替わり始めた。戦間期から中東での油田開発が進み、第二次世界大戦後に大量の石油が採掘されて1バレル1ドルの時代を迎えると産業分野でも石油の導入が進み(エネルギー革命)、西側先進国で採掘条件の悪い坑内掘り炭鉱は廃れた。
1970年代に二度の石油危機で石油がバレルあたり12ドルになると、産業燃料や発電燃料は再び石炭に戻ったが、日本国内で炭鉱が復活することは無かった。豪州の露天掘りなど、採掘条件の良い海外鉱山で機械化採炭された、安価な海外炭に切り替わっていたからである。海上荷動きも原油に次いで石炭と鉄鉱石が多く、30万トンの大型石炭船も就役している。
他の化石燃料である石油や天然ガス等と比べても、燃焼した際のCO2や硫黄酸化物(SOx)などの有害物質の排出量が多く、地球温暖化、大気汚染の主な原因の一つとなっている。
日本では、一般的に石炭(せきたん)と呼ばれるようになったのは、明治初年に西欧の採炭技術が入って、特にドイツ語Steinkohleを和訳したものとされる[4]。それ以前は地方によって、五平太(ごへいだ)、石炭(いしずみ)、岩木(いわき)、燃石(もえいし)、烏丹(うに)、烏朱(うし)などと様々に呼称されていた[4]。
石炭は数千万年前~数億年前の植物が湖底や海底に層状に堆積し、地殻変動や造山活動等による地圧や地熱の影響により変化し、濃集して石炭化したものである[5][3]。特に石炭の成因植物となっているのは、石炭紀時代(2億4千万年前~3億年前)の湿地帯で森林を形成していた巨大なシダ類と、第三紀時代(2千5百万年前~6千万年前)の針葉樹類などと考えられている[5]。
古生代においては、菌類等の分解者がまだ出現していなかったり少数派であったりしたため、大量の植物群が分解前に埋没していた。植物の遺体が分解されずに堆積する場所として湿原や湿地帯が挙げられる。これらの場所においては、植物の死体は酸素の少ない水中に沈むことによって生物による分解が十分進まず、分解されずに残った組織が泥炭となって堆積する。泥炭は植物が石炭になる入り口とされている。他の成因として大規模な洪水で大量の樹木が湖底等の低地に流れ込んで土砂に埋まることも考えられる。地中に埋まった植物は年代を経るに従って 泥炭→褐炭→歴青炭→無煙炭 に変わってゆく。この変化を石炭化と呼ぶ[6]。
石炭化は多様な化学反応を伴った変化である。セルロースやリグニンを構成する元素は炭素、酸素、水素であるが、石炭化が進むに従って酸素や水素が減って炭素濃度が上がってゆき、外観は褐色から黒色に変わり、固くなってゆく。炭素の含有量は泥炭の70%以下から順次上昇して無煙炭の炭素濃度は90%以上に達する。化学的には植物生体由来の脂肪族炭化水素が脱水反応により泥炭・褐炭になり、次に脱炭酸反応により瀝青炭となり、最後に脱メタン反応により芳香族炭化水素主体の無煙炭に変わってゆく。植物が石炭化する速度は地中での圧力や温度の影響を受ける。日本は環太平洋造山帯に位置し地殻変動が盛んなため、諸外国の産地よりも高温・高圧にさらされて石炭化の進行が早いとする説もある[7]。
石炭は元となった植物が繁茂していた時代に相当する地層から産出される。古生代の地層は石炭が産出する地層としては最も古く、産出は無煙炭が主体。古生代に繁茂していた植物は現在のシダ類やトクサ類の祖先に相当するが、当時の代表的な植物であるリンボクは高さ30メートルになる大木で、大森林を形成していたと考えられている。
中生代はソテツやイチョウなどの裸子植物が優勢となった。この時代の地層から産出する石炭は海外ではほとんど瀝青炭だが、日本で産出するのは無煙炭が主体である。
新生代第三紀(7~2千万年前)の植物は、現在に近い樹種が主体。産出する石炭は、外国では石炭化の低い褐炭が主体だが、日本の炭鉱では瀝青炭が産出される。
植物の体はセルロース、リグニン、タンパク質、樹脂などなどで構成されている。このうち古生代に繁茂したシダ類ではセルロースが40~50%リグニンが20~30%であり、中生代以後に主体となる針葉樹類ではセルロースが50%以上リグニンが30%である(何れも現生種のデータ)。これらの生体物質を元にして石炭が形成された。
シルル紀後期にリグニンを有した植物が登場した。歴史上上陸した植物が立ち上がるためにはセルロース、ヘミセルロースを固めるためのリグニンが必要であった。リグニンを分解できる微生物がその当時はいなかったので植物は腐りにくいまま地表に蓄えられていった。これが石炭の由来となる。石炭紀に石炭になった植物はフウインボク、リンボク、ロボクなどであり、大量の植物が腐らないまま積み重なり、良質の無煙炭となった。石炭紀以降も石炭が生成されたが時代を下るに従って生成される石炭の量も質も低下することとなった[8]。白色腐朽菌は、地球上で唯一リグニンを含む木材を完全分解できる生物で、リグニン分解能を獲得したのは古生代石炭紀末期頃(約2億9千万年前)であると分子時計から推定された。石炭紀からペルム紀にかけて起こった有機炭素貯蔵量の急激な減少は白色腐朽菌のリグニン分解能力の獲得によるものと考えられている[9][10]。
石炭は炭素の濃集度合(炭素の濃縮の程度) により石炭化度の高い方から、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭に分類される[5][3]。日本で一般に石炭と呼ばれているものは、このうち無煙炭から褐炭までである[5]。なお、石炭化度は発熱量と燃料比(固定炭素÷揮発分、通常では無煙炭:4以上、瀝青炭:1~4、褐炭:1以下)を用いているが、国際的には一般に揮発分が用いられている[5]。
(石炭化度の高い順に)
分類 | 発熱量 補正無水無灰基 kJ/kg (kcal/kg) |
燃料比 | 粘結性 | 主な用途 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|
炭質 | 区分 | |||||
無煙炭 (A) Anthracite |
A1 | --- | 4.0 以上 | 非粘結 | 一般炭 原料炭 |
|
A2 | 火山岩の作用で生じたせん石 | |||||
瀝青炭 (B, C) Bituminous |
B1 | 35,160 以上 (8,400 以上) |
1.5 以上 | 強粘結 | 一般炭 原料炭 |
|
B2 | 1.5 未満 | |||||
C | 33,910 以上 35,160 未満 (8,100 以上 8,400 未満) |
- | 粘結 | 一般炭 原料炭 |
||
亜瀝青炭 (D, E) Sub-Bituminous |
D | 32,650 以上 33,910 未満 (7,800 以上 8,100 未満) |
- | 弱粘結 | 一般炭 | |
E | 30,560 以上 32,650 未満 (7,300 以上 7,800 未満) |
--- | 非粘結 | 一般炭 | ||
褐炭 (F) Lignite |
F1 | 29,470 以上 30,560 未満 (6,800 以上 7,300 未満) |
--- | 非粘結 | (一般炭) | |
F2 | 24,280 以上 29,470 未満 (5,800 以上 6,800 未満) |
--- |
原料として製鉄用コークス、石炭化学工業、都市ガスなどに使用されるものを原料炭、燃料として火力発電や一般産業用ボイラー、セメント回転炉燃料などに使われる石炭を一般炭という[5][3]。
石炭は形状または粒度から、大きい順に切込炭、塊炭、中塊炭、小塊炭、粉炭、微粉炭に分類される[5]。
石炭は太古の植物の遺体が堆積したものであるため、地中には地層の形で存在する。石炭の鉱山を特に炭鉱と呼び、炭鉱が集中している地域を炭田と呼ぶ。
石炭の層(炭層という)が地表または地表に近いところに存在する場合、地面から直接ドラッグラインという巨大なパワーショベル等で掘り進む露天掘りが行われる。アメリカやオーストラリアの大規模な炭鉱で多く見られる。中国の撫順炭鉱は、700年ほど前から露天掘りがなされたと言われており、当時は陶器製造のための燃料として用いられたとされる。その後、清朝は「風水に害あり」との理由から採掘禁止としていたが、1901年、政府許可のもとで民族資本により採掘が始まった。その後、ロシア資本が進出、さらに日露戦争後は東清鉄道及びその付属地は日本の手に渡ることとなり、1907年には南満州鉄道の管理下に移って、鞍山の鉄鋼業の発展に寄与した。
20世紀初頭、英国のウェールズには600以上もの炭鉱があり、約20万人が働いて経済を支えていた。1911年には石炭は重量で輸出の9割を占めていた。
一方で地下深いところに石炭がある場合、日本の在来採炭法では炭層まで縦坑を掘り、その後炭層に沿って水平または斜め(斜坑)に掘り進む。石炭は層状に存在するので採掘は広い面積で行われるため、放置すれば採掘現場の天井が崩れ落ちる危険性が非常に高い。石炭を採掘する際には、天井が崩れないように支柱を組むなど様々な対処を行いながら掘り進む。従来採炭法では手持ち削岩機とダイナマイトの併用が多かったが、採掘も手間がかかり、崩した石炭をトロッコに積むのも手作業で、掘ったあとに支柱を組むので能率が悪かった。
オーストラリアやアメリカ合衆国などでは日本に比べ坑内掘りでも炭層が水平で厚く、厚さ数メートルにも及ぶ場合があり、ロングウォールという一種のシールドマシンによって機械採炭を行っている。これはコの字断面のシールドを横に長く並べ、コの字の内側を機織機のシャトルのようにドリルが往復して炭層を削り取ってゆくもので、ベルトコンベアで石炭は機械的にトロッコに積まれてゆく。省人員で生産能率が露天掘りに次いで高く、低コストである。ロングウォール炭鉱の場合、上層から採炭して採炭後の空間は支柱を立てずに崩す場合もある。(ただし、上層が高硫黄炭で下層が低硫黄炭で、保証スペックにあわせるため上層炭と下層炭ブレンドしたい場合なども多く、必ず支柱を省けるわけでもない) 最近は中国などでもロングウォールを取り入れている炭鉱もあるが、人件費が安いので依然従来採炭法の鉱山も多い。旧ソ連などでは石炭を地層内で不完全燃焼させガス化して取り出して採炭を簡略化するという、かなり乱暴な手法も研究されていたようである。
比較的埋蔵量の多い国はアメリカ合衆国、ロシア連邦、中華人民共和国。古期造山帯で多く産出される。炭層が厚く、広範囲に分布することから、露天掘りが多い。輸出向けの実績はオーストラリア、インドネシアが堅調に推移。インドネシアは良質な瀝青炭の埋蔵量が減少傾向にあり、今後は亜瀝青炭の生産量が増加していくものと見られる。
( )内は2017年の埋蔵量(億トン、BP統計)[13]。
( )内は上位5国の2018年の産出量の割合(%)。年合計は約78.13億トン[14]。
平成29年(2017年)の主要消費国上位6ヶ国は中国(48.2%)、インド(12.4%)、アメリカ(8.4%)、ロシア(3.0%)、ドイツ(2.9%)、日本(2.5%)である[15]。
日本は、オーストラリア、インドネシア、中国、ロシアなどから年間約1億8千万トンもの石炭を輸入している。
石炭が他の鉱石と著しく異なる点は「良く燃える」ことであり、それによる大規模な炭鉱災害が度々発生している。炭層内に含まれるメタンガスが突然噴出し引火して爆発したり、炭鉱内に飛散した石炭の粉塵(炭塵)に引火して炭塵爆発を起こしたりして多数の犠牲者が出た事故が過去何度も発生している。犠牲者が最も多かったのは日本統治下の満州の本渓湖炭鉱で1943年に発生した炭塵爆発事故で、死者の数は1,527名に達した。日本国内の事故では1914年に方城炭鉱でのガス爆発事故が死者687名を出している。1910年頃までヨーロッパでも死者300人を超える事故があったが、1913年のイギリスのセングヘニス炭鉱事故(死者439名)以後、欧米では犠牲者300名以上の爆発事故は発生していない。それに対して日本では1963年の三池炭鉱(盆踊りの炭坑節で有名)炭塵爆発事故で458名の死者を出している。アメリカにある炭鉱都市のセントラリアは、1962年に発生した坑内火災で町全体に退去命令が出てゴーストタウンと化した。現在も地下では火災が続いており、地上では煙が上がっている。
石炭は一般家庭や産業分野で利用されているが、産業分野では電力分野、製鉄分野、コークス製造分野、土壌改良分野などで利用されている[5]。また、石炭からは各種の誘導品が製造される[5]。
古代ギリシアのテオプラストスの記録(紀元前315年)に石炭が鍛冶屋の燃料として使われたと書かれている[16]。ほぼ同年代の中国戦国時代でも石炭を使用した遺跡が見つかっている。かつて中国華北で宋代に用いられたとされ、同時代の江南では木炭、四川では竹炭を利用していた。 日本での工業使用は、江戸時代で筑豊炭田の石炭が瀬戸内海の製塩に用いられた記録がある。元禄年間に貝原益軒が著した『筑前国続風土記』によれば、日本の筑前では山野に露出した石炭を「燃石」と称して、庶民が薪の代用燃料としていたようで、風呂や煮炊き用に火持ちの良い燃石を用いたと著されている。イギリスは国内に豊富な石炭資源を有し、一部は地表に露出していたため700年以上前から燃料として使われていた。
18世紀にイギリスで産業革命が始まり、製鉄業をはじめとした工業が大規模化した。燃料消費量が増え、従来の薪や木炭を使用した工業システムでは森林資源の回復が追いつかなくなる問題が持ち上がり、工業用燃料として石炭が注目され始めた。ジェームズ・ワットによって蒸気機関が実用化され、燃料として石炭が大量に使用されるようになった。また同じ頃に石炭を乾留したコークスによる製鉄法が確立され、良質な鉄が安価に大量に生産できるようになり、産業革命を大きく推進させた。
19世紀末になるとコークスを製造する際の副産物として出てきたドロドロの液体コールタールを原料として石炭化学工業が始まり、染料のインディゴ、薬品のアスピリン、ナフタリンなどが作られるようになった。石炭と石灰岩を高温(2,000℃)で反応させてできた炭化カルシウムからアセチレンが作られ、有機化学工業の主原料となった(現在この地位は石油起源のナフサ/エチレンに替わっている)。燃料としての石炭は工場の動力のほか、鉄道や船の蒸気機関の燃料として使われた。
都市の照明や暖房・調理用に石炭由来の合成ガスが使われた。これは石炭の熱分解から得られたガスで、最初はコークスを作る際に発生するメタンや水素を主成分とするコークス炉ガスがロンドンのガス灯などに使われた。次にもっと大量に生産できる都市ガスが開発された。灼熱したコークスに水をかけて得られる一酸化炭素と水素からなるガスで、大都市で1970年代まで使用されたが、便利ではあるが毒性が強いものであったため現在では毒性の少ない天然ガスに切り替わりつつある。19世紀末から20世紀中旬にかけて、先進各国の都市では工場や家庭で使用する石炭から出る煤煙による公害問題が大きくなっていった。
20世紀にはいると石油の採掘技術が発展し、アメリカ国内、中東、インドネシアで大規模な油田が開発されて、大量に安価に入手できるようになった。石油は液体なので貯蔵・移送が便利な上、発熱量が大きく、煤煙が少ないので石炭に代わる燃料として使われるようになった。1910年代まで世界の海軍の主要艦艇の燃料は石炭であったが、イギリスでは1914年に竣工した軽巡洋艦アリシューザ級と1915年竣工の戦艦クイーン・エリザベス級以後の艦は、燃料を重油に切り替えた。日本などの国々でも1920年代以後に建造された艦の燃料はほとんど全て石油に切り替わった。他の分野では石油への切り替えは少し遅れた。鉄道分野では当初動力車として蒸気機関車のみしかなかったが、1940年代にはアメリカで高出力ディーゼル機関車の本格運用が始まった。ドイツは第二次世界大戦中に、輸入が途絶した石油の代替として石炭液化技術を実用化した。これは高温(500℃以上)高圧(数十気圧以上)の条件下で石炭と水素を反応させて炭化水素を合成する方法であった。
第二次世界大戦で敗戦した日本は疲弊した国内産業の建て直しのために国策として石炭の増産を実施し(傾斜生産方式)、戦後の復興を遂げた。当時火力発電はほとんど石炭を燃料としていた。しかし1960年から発電用燃料として石油の使用量が増大し、1970年代には石炭のみを使う火力発電所は新設されなくなった時期があった。また既設の石炭火力発電所も石油使用に改造された。
また、前述のアセチレン等に代わって現在の化学工業の基本となっているのは、石油の低沸点部分のナフサを原料としたエチレンである。
二度の石油危機以降、原油価格が上昇し、発電・工業用ボイラ燃料・セメント焼成燃料は1980年代に再び石炭に戻った。一方で石油代替燃料のライバルとして天然ガスが登場した。日本の発電は1980年以降原子力発電、石炭火力発電と天然ガスを用いたコンバインドサイクル発電を組み合わせバランスよく使用するように方針転換されている(電源ベストミックス)。東京電力・中部電力・関西電力のような大都市圏の電力会社では比較的天然ガスの比率が高いものの、地方の電力会社では、沖縄電力が2015年の統計で発送電電力量構成比で石炭火力発電が62%をしめるのを筆頭に、中国電力でも56%、北陸電力でも64%を占めるなど石炭火力発電が発電の柱となっている会社も多い[17][18]。
近年中国での経済成長による需要急拡大などを背景に2000年ごろには約50億トンであった石炭の消費量は急増しており2010年以降は約80億トンとなっている[14]。
2010年代には地球温暖化対策の視点などから、火力発電所で使用される石炭は天然ガスと比べて二酸化炭素の排出量が多いことが問題視されるようになった。2016年に行われた第22回気候変動枠組条約締約国会議(COP22)に合わせ、フランスは2023年、イギリスは2025年、カナダは2030年までに石炭火力を廃止する方針を打ち出している[19]。また、アメリカではメキシコ湾岸油田などの開発から、コスト的に天然ガスが優位となり、石炭火力発電所が次々に閉鎖される出来事もあった[20]。
石炭を燃料として使用すると、健康障害や死亡の原因になる。1952年12月5日から9日にかけてロンドンで発生した「ロンドンスモッグ」は、主に石炭の大量使用によって引き起こされ、合計1万2000人の犠牲者を出し大気汚染としては史上最悪規模の公害となった[28]。世界的に石炭は、毎年80万人の早死を引き起こすと推定されている[29]。
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