Loading AI tools
2018年7月に日本で発生した豪雨災害 ウィキペディアから
平成30年7月豪雨(へいせい30ねん7がつごうう)は、2018年(平成30年)6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で発生した、台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨[2]。同年7月9日に気象庁が命名した[2][3]。別称、西日本豪雨[4]。
6月29日に発生した台風7号は、太平洋高気圧の外側を回り込むように7月4日にかけて東シナ海を北上し、九州地方では台風の影響による雨が7月3日ごろから降り続いた[5]。台風は対馬海峡付近で進路を北東に変えて日本海上に抜けた[1] が、太平洋高気圧が張り出した影響で梅雨前線が7月2日からワールドカップの日本対ベルギーを挟んだ4日頃に北海道に停滞し、北海道の広範囲で雨量が7月の月降水量の平年値を超えた[6]。その後、太平洋高気圧が南東に移動したことで梅雨前線が南下。7月5日から8日にかけて梅雨前線が西日本付近に停滞し、そこに台風8号などから大量の湿った空気が流れ込んだため、西日本から東海にかけて大雨が連日続いた[7]。梅雨前線は9日に北上して活動を弱めるまで日本上空に停滞。西日本から東日本にかけて広い範囲で記録的な大雨となった[8]。
7月6日17時10分に長崎・福岡・佐賀の3県に大雨特別警報が発表され、続いて19時40分に広島・岡山・鳥取、22時50分に京都・兵庫と、1日で8府県に大雨特別警報が発表された[9][10]。さらに翌7日12時50分には岐阜県[10][11]、翌8日5時50分には高知、愛媛の2県にも大雨特別警報が発表され[12]、最終的に運用を開始して以来最多となる計11府県で大雨特別警報が発表された[注 1]。
この豪雨により、西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、死者数が200人を超える[13] 甚大な災害となった。また、全国で上水道や通信といったライフラインに被害が及んだほか、交通障害が広域的に発生している[1]。平成に入ってからの豪雨災害としては初めて死者数が100人を超え[14][15]、「平成最悪の水害」と報道された[16]。さらに、昭和にさかのぼっても1982年に300人近い死者・行方不明者を出した長崎大水害(昭和57年7月豪雨)以降、最悪の被害となった[17][18]。
気象庁による分析によると、7月5日以降の豪雨の原因は次に掲げることが考えられる。
二つの高気圧が強まったのには、寒帯前線ジェット気流と亜熱帯ジェット気流が大きく蛇行していたことが影響しており、この気流の蛇行はその後の日本付近の記録的高温にも影響した。また、九州から東海にかけて15箇所で線状降水帯が発生し、それによって局地的にさらに雨量が多くなった地域があった[7][19]。
一連の豪雨について、2018年7月9日に気象庁が「平成30年7月豪雨」と命名している[2][3]。西日本を中心に北海道や中部地方など被害が広範囲となったため、地域名を入れない形での命名となった[20]。気象庁が豪雨で名称をつけるのは、2017年の「平成29年7月九州北部豪雨」以来である[3]。
一方、報道機関等では気象庁による命名前から、単に「西日本豪雨」と称している事例が多く[14][21]、気象庁の命名後も「西日本豪雨」の名称を継続して用いている報道機関が多い[22][23][24]。マスメディアが当該豪雨に関して事実上の命名をするのは極めて異例である。
とりわけ、NHKは豪雨発生の早い時期から一貫して「西日本豪雨」の名称を使用している。これは、正式名称の「平成30年7月豪雨」では甚大な被害を受けた地域が分からないためである。
気象庁により暫定公表された観測データによれば、6月28日0時から7月8日9時までの総降水量はところにより四国地方で1,800ミリ、中部地方で1,200ミリ、九州地方で900ミリ、近畿地方で600ミリ、中国地方で500ミリを超えた[25]。これまでの豪雨の事例に比べ、広い地域で2日間あるいは3日間の雨量が多いのが特徴で、西日本から東海地方にかけての地域を中心に、多くの地点で48時間、72時間雨量の観測史上最大値を更新した[19][25]。
7月上旬(1日〜10日)に全国のアメダスで観測された降水量は、1地点あたり216.8ミリで、比較可能な1982年以降の旬ごとの降水量で最大であった[19]。3日間の降水量でも、7月5日から7日までで、全国で平均145.5ミリ、中国地方(山口県を除く)で平均292.2ミリで、どちらも1982年以降最大であった[7]。気象庁は「今回の豪雨が過去の豪雨災害と比べて、極めて大きなものであった」とコメントしている[19]。
府県 | 総降雨量 |
---|---|
長野県王滝村御嶽山 | 1,111.5 mm |
岐阜県郡上市ひるがの | 1,214.5 mm |
京都府福知山市坂浦 | 594.5 mm |
兵庫県篠山市後川 | 617.0 mm |
鳥取県八頭郡智頭町智頭 | 537.0 mm |
岡山県苫田郡鏡野町恩原 | 565.5 mm |
広島県山県郡安芸太田町内黒山 | 570.5 mm |
徳島県那賀町木頭 | 1,365.5 mm |
愛媛県西条市成就社 | 965.5 mm |
高知県安芸郡馬路村魚梁瀬 | 1,852.5 mm |
福岡県福岡市早良区早良脇山 | 859.0 mm |
佐賀県佐賀市北山 | 904.5 mm |
長崎県雲仙市雲仙岳 | 697.5 mm |
宮崎県えびの市えびの | 995.5 mm |
観測地点 | 雨量 (mm) | 時刻 | それまでの 観測史上最大 | |
---|---|---|---|---|
雨量 | 日付(時刻省略) | |||
岐阜県高山市 | 490 | 7月7日17時00分 | 384 | 2014年8月18日 |
滋賀県彦根市 | 274 | 7月8日0時40分 | 249 | 1976年9月11日 |
京都府舞鶴市 | 438.5 | 7月8日7時50分 | 337.5 | 2017年10月25日 |
兵庫県神戸市 | 435 | 7月8日0時40分 | 300.5 | 2015年7月19日 |
岡山県津山市 | 428.5 | 7月8日05時10分 | 389 | 1976年9月12日 |
広島県福山市 | 392.5 | 7月8日9時20分 | 305 | 1976年9月13日 |
広島県広島市 | 444 | 7月8日9時20分 | 340 | 1985年6月25日 |
広島県呉市 | 465 | 7月8日8時50分 | 281 | 1983年9月28日 |
愛媛県松山市 | 360.5 | 7月8日8時00分 | 329 | 1979年6月30日 |
高知県宿毛市 | 493.5 | 7月8日15時20分 | 488 | 2011年7月20日 |
西日本を中心に、河川の氾濫や洪水、土砂災害などの被害が発生している。以下は2019年8月20日13時現在の消防庁による被害状況の集計である(7月下旬の台風12号による被害を含む)[26]。
(以下、年・月を省略した日付は、2018年(平成30年)・7月のものとする)
広島県では、土砂崩れや浸水による被害が相次いだ。県の南部では土石流・土砂崩れが5,000箇所以上で発生(16日)。通常は崩落しにくい山頂部の崩壊も多発し、豪雨の凄まじさを裏付けた[28]。県の住宅被害は浸水も含めると19日までに、38,000棟に及んでいる[29]。
安芸郡熊野町川角では、住宅の裏山が崩れて斜面沿いの住宅に押し寄せ、12人が死亡した[30][31]。
広島市では、23人が死亡、2人が行方不明となっている[32]。安芸区矢野東では、土砂崩れにより約20棟の住宅が倒壊[30] ほか、矢野川では土石流により死者も出た[33]。安佐北区でも土砂崩れにより3人が死亡した[34] ほか、東区馬木でも土砂災害が発生し、1人が死亡した。広島市の被災現場では花崗岩が風化した真砂土を含む土砂が多く見られ、京都大学防災研究所准教授の竹林洋史によれば、2014年に広島市で発生した土砂災害と同様に真砂土が被害を拡大させる一因になったという[30]。
安芸郡坂町小屋浦地区の天地川では土石流が砂防堰堤を破壊し、大量の土砂が住宅を襲い15人が死亡、1人が行方不明[34][35]。また坂町中心部の坂駅付近が冠水した[36]。
呉市では土砂崩れなどにより24人が死亡。呉市と広島市や東広島市がつながる道路が寸断され、JR呉線も不通となったため、人口21万人の全市域が陸路を失って孤立状態となり、呉港と広島港を結ぶ海路の利用が増えた[37]。安浦町では約58haにわたって浸水し、760戸の住宅で被害が出た。野呂川上流の野呂川ダムにおける緊急放流操作が被害に影響を及ぼした可能性が指摘されていて、検証が進められている[38]。呉署員2人が住民に避難するよう誘導する最中、濁流に呑まれ殉職した[39]。
東広島市河内町で、土石流が砂防ダムを超えて集落を襲った[30]。同市西条町下三永では裏山が崩れて住宅が数十メートル流された[36]。同市安芸津町木谷でも住宅が土砂に埋まった[36]。東広島市では12人が死亡した[34]。東広島署警部補が災害対応応召の中途、土砂崩れに遭い殉職した[40]。
三原市では土砂崩れで住宅が押し潰されたほか、本郷町で沼田川とその支流が氾濫し約700ヘクタールが浸水するなど8人が死亡した[34][41]。
竹原市では東野町と新庄町、港町の土砂崩れなど6人が死亡、4人が負傷した。市内を流れる賀茂川の氾濫もあり全壊35件、建物床上浸水35件、床下浸水232件の被害が出た[42]。呉市同様、呉線や東広島市や呉市、三原市とつながる道路も寸断されたため一時孤立状態になった。
福山市では駅家町で農業用ため池が決壊し土砂崩れに巻き込まれるなど2人が死亡した[43][44]。芦田川や手城川の支流では内水氾濫が発生したとみられ、市内の約20平方キロメートルが浸水した[45]。
安芸郡府中町では晴天下の10日11時頃、榎川が氾濫し町内の10ヘクタールが浸水、川沿いの幼稚園で園児180人が一時取り残されるなど、緊急の救助活動が行われた。堤防が決壊した形跡はなく、上流にある砂防ダムから水があふれ、川の水量が増え、大雨で上流から流れ着いた流木や土砂が、流れが蛇行する場所や橋げたに滞留して川がせき止められ、水があふれ出したとみられる[46][47]。
以上のほか18日までに、府中市、安芸高田市、尾道市の各市町で各2人、安芸郡海田町で1人の死亡が確認されている[48]。
被害規模の大きい広島県では川に流される犠牲者が相次ぎ、海上保安庁広島海上保安部は18日までに海上で6人の遺体を収容。広島市安芸区から流されたと見られる2名を捜索しているがまだ発見されておらず、ほか行方不明者が残っている[49]。
岡山県では河川の氾濫や堤防の決壊による浸水、土砂災害が相次いだ。全半壊・浸水家屋の数は19日時点で少なくとも14,000棟にのぼり、県内の風水害による被害としては戦後最悪となった[50]。
倉敷市真備町では7日朝までに小田川と支流の高馬川などの堤防が決壊し、広範囲が冠水[51]。真備町だけで51人が死亡し、ほとんどが水死とみられる[52][53]。死者のうち43人は屋内で発見され、うち42人は住宅の1階で発見された[54]。土木学会の調査によると、浸水の深さは南北1km・東西3.5kmの範囲で5メートルを超え、最大で5.4メートルに達したとみられる[55]。浸水範囲は真備町の4分の1にあたる1,200ヘクタールに及んだ[51]。国の調査委員会の見解によると、小田川では合流先の高梁川の増水に伴い水がせき止められるバックウォーター現象が発生し、越水により堤防の外側が削られ決壊したとみられる[56]。真備町における堤防の決壊箇所は小田川で2箇所、支流の高馬川で2箇所、末政川で3箇所、真谷川で1箇所が確認され、小田川では他にも6箇所で法面の崩落が確認されている[57]。
以下は、倉敷市真備町での洪水における行政対応の経過である[51][58]。
倉敷市では真備町以外の地域でも1人が死亡するなど浸水や土砂災害が相次ぎ、このうち同市広江では団地の裏山が崩れて約20棟が全半壊した[60][61]。
島根県の江の川流域で200棟以上が床上浸水した。島根県は11日、江津市、川本町、美郷町に職員を派遣し、復旧などを手伝った。また川本町では浄水場の冠水により280戸が断水状態となった[68]。
愛媛県では、西予市野村町で7日朝、野村ダムが満水に近づいたため緊急放流を行なったところ肱川が氾濫し、逃げ遅れた5人が死亡した[69]。西予市によると、7日5時10分に防災行政無線で住民に避難指示を周知したという[69]。国土交通省四国地方整備局によると、6時20分からダムへの流入量と同じ量の放出を開始し、6時20分時点で毎秒439立方メートルで放流していたのが7時50分には毎秒1797立方メートルに達した[69]。またその下流にある鹿野川ダムでも、7時35分から流入量とほぼ同じ水量を放流する措置を取り、大洲市で川が氾濫した[70]。大洲市では8日、概算で4600世帯の家屋浸水に及ぶ見通しを示し、二宮隆久市長は「今回の被災はかなり大きい」と述べ、平成以降最大規模との認識を強調した[71]。
宇和島市吉田町では7日、多数の土砂崩れが発生し11人が死亡した[72][73]。松山市の怒和島では7日0時50分頃、住宅の裏山が崩れて1棟が倒壊し、3人が死亡した[74]。
高知県では、香南市で6日朝、1人が香宗川で流され西に約100キロ離れた四万十市の海岸で遺体で発見された[75]。大月町では2人が亡くなり、県内で計3人が死亡した[76]。 安芸市では、6日未明に市内を流れる安芸川が栃ノ木地区で氾濫し、川沿いの東地の集落では約10棟が浸水被害に遭い、21人が一時孤立した[77]。
山口県では7日までに、岩国市周東町で家の中に土砂が入り1人が死亡、また土石流に家ごと流されて1人が死亡、同県周南市では土砂で家が倒壊し1人が死亡[78]。
福岡県では、6日朝に北九州市門司区で崖崩れが発生し住宅が全壊し2人が死亡[34]。また7日までに、同県糟屋郡宇美町在住の1人が山中にあった老健介護施設から避難中に土石流に巻き込まれ死亡、筑紫野市原田の水路で発見された[34][78][79]。6日には、北九州市小倉北区の板櫃川や久留米市北野町の大刀洗川など複数の河川が氾濫し[10]、うち久留米市では広範囲が浸水、7日までに約1000棟(うち久留米市北野町地区で約500棟)が浸水被害を受け、ボートによる救助活動が行われた[10][78]。北九州市では9日までに土砂崩れなどにより約680棟が被害を受けた[80]。
佐賀県では12日までに、佐賀市大和町で嘉瀬川に流された1人が死亡[81]、伊万里市で1人が死亡した[79]。伊万里市の1人は長崎県松浦市の海岸まで約6km流され発見された[82]。
宮崎県では12日までに、1人の遺体が発見され、豪雨との関連を調べている[79]。
兵庫県の猪名川町で5日、物流センターの工事現場で作業員3人が排水管に流され、うち1人が死亡し2人が重傷を負った[83]。宍粟市では土砂崩れにより住宅が押しつぶされ1人が死亡した[84]。丹波市では市内各地で浸水被害が多発した[85]。
京都府では、綾部市で土砂崩れで住宅が倒壊し3人が亡くなった[34]。亀岡市では、川に車が流され1人が死亡[86][87]。舞鶴市では自宅で土砂の除去作業中に行方不明になった男性が舞鶴湾で遺体で見つかった[88]。福知山市大江町公庄では9日、土砂崩れにより谷河川がせき止められて天然ダムができていることが分かった[89]。府内では舞鶴市や福知山市など、計2000棟以上で浸水被害が出た。舞鶴市の由良川流域では雨水などの内水が由良川へ流せずに浸水被害が発生[90]。道路の冠水により舞鶴市加佐地域全域の1828世帯が一時孤立した[91][92]。また道路の寸断も相次ぎ、伊根町全域が孤立したほか、6市町13地区が孤立状態となった[93]。 日吉ダムでは運用以来初めて緊急放水ゲートを開いて放水した。他、京都市伏見区の大岩山では、大量に不法投棄された建設残土が、豪雨の際に崩れる被害があった[94]。 宮津市海洋つり場は歩道が崩れたため休止していたが2020年4月21日にオープンする[95]。
岐阜県でも、関市をはじめ郡上市、下呂市などの中山間部で降り始めからの雨量が1000ミリを超える地点もあり、各地で土砂流出や道路の冠水、河川の護岸崩壊などの被害が相次いだ。関市では1人が死亡、3人が重軽傷を負った。
関市では8日未明に津保川が氾濫[96]、東部の旧上之保村・武儀町域を中心に225棟が床上浸水、270棟が床下浸水した。また用水路に車が横転し男性が死亡した。郡上市でも和良町の和良川沿いに建つ和良振興事務所周辺では、護岸が幅約200メートルにわたり崩れた。[97] また下呂市でも6世帯15人が孤立。関市を中心に岐阜県内のJR高山線や東海北陸自動車道、中部縦貫自動車道などが寸断された(後述)[98]。岐阜県において、この豪雨は、1968年の飛騨川バス転落事故発生時と類似した気圧配置(台風が東シナ海から日本海に入って温帯低気圧化、その前線南下で豪雨発生)となっている。
長野県では8日朝に王滝村で王滝川が増水し、幅約5メートルの村道が60メートルに渡り崩落した。外国人観光客含め19人が一時孤立した[99]。
北海道では堤防の決壊や内水氾濫に伴う床上・床下浸水、崖崩れ等の被害が出た[100][101]。旭川市でぺーパン川が2回氾濫した[101] ほか、旭川市と深川市で石狩川が、沼田町と深川市で雨竜川が3日、氾濫した[102]。オホーツク管内遠軽町では湧別川にかかる「いわね大橋」で橋脚に異常が発生し橋が折れ、上川管内東川町の天人峡温泉では道道の一部崩落で3日から宿泊客等130人が孤立。旭川市を中心に道内で132棟の建物に被害が出た[103][104][105]。
中国電力では8日、管内の延べ18万8000戸で停電が発生した[106]。中国電力は、7月13日には停電が解消したと発表した[107]。 四国電力では7日、管内の延べ1万6615戸で停電が発生したが、7月11日に最後に残った土砂崩れや道路損壊で立ち入りできなかった約100戸に対しヘリコプターでポータブル発電機を運搬して解消した[108]。
NTT西日本では7日から8日にかけて、ケーブルの故障や通信ビルの水没により兵庫、岡山、広島、愛媛、高知の5県で約12万4000回線が一時利用不可能となった[109][110]。
携帯電話の大手3社であるNTTドコモ、au、ソフトバンクは被災地の一部で携帯電話が利用できない、もしくは利用しづらい状況になっていると発表した[111][112][113]。
上水道の断水は、11日正午で広島県21万1008戸、愛媛県2万2757戸、岡山県9696戸、他の9府県でも1154戸が断水しており、全国の水道事業体が加盟する日本水道協会(東京都)から、11日時点で、近畿や四国など約90の自治体から給水車計117台を派遣し、広島、岡山、愛媛の3県の支援に入っている[114]。8月1日10時00分時点で 広島、愛媛の2県で8,292戸が断水となっている[115]。
西日本高速道路(NEXCO西日本)管内では、以下の49箇所で災害が発生し、最大で2,299kmが一時通行止めとなった[116]。
上記区間のうち、8月8日まで(発災後おおむね1ヶ月以内)に47箇所は応急対策が完了したが、以下の2区間で発生した災害は通行再開までに時間の掛かる重篤被災箇所とされている[116]。
また、北九州高速道路(都市高速)でも災害のため一時全線で通行止めとなった[123] が、7月10日に全ての通行止めが解除された[124]。
その他の国道、主要地方道、都道府県道、主要な市町村道などの被害は各道路記事を参照。
鉄道では、最大で7月7日に32事業者115路線で運転休止が生じた[125]。以下は7月9日18時時点で国土交通省がとりまとめた、施設が被災した路線[125]。
これらに伴う運休は順次運行を再開し(復旧状況については各路線記事参照)、2019年10月23日には全線復旧した。2018年8月7日時点では、特に被害の大きい以下の区間では9月末までに運行が再開できない見通しと発表された[126]。
7月11日:笠岡~海田市、岩国~徳山
7月14日:福山~海田市、岩国~徳山
7月17日:福山~海田市、柳井~徳山
7月18日:三原~海田市、柳井~徳山
8月1日:三原~海田市、柳井~下松
8月18日:三原~瀬野、柳井~下松
8月21日:三原~白市、八本松~瀬野、柳井~下松
9月9日:三原~白市
9月29日:三原〜白市(三原 - 本郷間で土砂流入[130]、本郷駅 - 河内駅間で盛土崩壊[131]。この区間は9月30日運転再開[132])。
9月30日:柳井~下松(台風24号被災による)
10月13日までに順次全線の運転を再開した[133][134]が、不通期間中は山陽新幹線や代行バスなどによる代行輸送が実施された。
広島空港は直接の被災は免れたものの、山陽自動車道などの空港アクセス手段が寸断されたことにより、3日間で合計1500人がターミナルビル内で足止めされた[152]。7月8日からは山陽新幹線が運転を再開したことで空港と東広島駅を結ぶ臨時シャトルバスが運転を開始し[152]、10日からは芸陽バスが有料で同臨時バスの運行を開始した[152]。また、沼田川の本郷貯水場が水没したことで、空港ターミナルビルなどで水不足が発生した。これに伴い、7月10日から飲食店や物販店などの営業縮小を余儀なくされた[152]。
インフラ・ライフライン関係を除く。
文科省調べによると17日までに、18道府県の270の小・中学校で浸水や損壊などの被害が出た。被災数の大半を岡山県・広島県・京都府・愛媛県の学校が占めた。広島県三原市では続く断水により25の小・中学校・高等学校・大学・特別支援学校で再開の目処が立っていない。愛媛県西予市立明浜中学校では裏山の土砂崩れ、土砂流入により校舎が使用できない。岡山県などでは被災後、授業再開の見通しが立たないため、前倒しで夏休みに入った[153]。
厚生労働省によると、断水や浸水、停電の被害を受けた医療機関(精神科病院を除く)は京都から長崎にかけての6府県で94施設。うち71施設は7月14日正午時点で、給水などの支援を必要としている[154]。まび記念病院(岡山県倉敷市真備町)は1階が水没し、患者や逃げ込んだ周辺住民ら約340人がヘリコプターやボートで上部から脱出した。水が引いた後は2階の会議室なども使って診療を続け、2019年2月1日に全面再開した[155]。
農林水産省が2019年6月24日に発表した資料によると、この台風による農林水産関係の被害額の合計は3409.1億円にのぼる。特に被害額が大きいのは、林地の荒廃や農地の破損、ため池などの農業用施設への被害。また、林道施設でも32府県で9500を超える箇所に破損が発生するなど、広範囲に被害が出た[158]。
また、主要な卸売市場での野菜の価格は、豪雨や暑さの影響で一部品目が一時高値となったが、9月以降には概ね平年並みとなり、大きな影響は見られなかった。桃、ぶどうといった果物については、特に大きな変化は無かった。牛肉、豚肉の卸売価格に関しても、豪雨の影響による変化はほとんど無かった[158]。
道路寸断により商品や食材の配達が停滞し、店舗浸水などにより影響が出た。
集配地の被災、高速道路の通行止めや鉄道貨物の寸断によって西日本を中心に広範囲に影響が及んだ。特に東日本地域と山陽地区や九州との間で運ばれる宅配便と通信販売に大きな影響が出た[175][176]。鉄道輸送(JR貨物)については別項参照。
豪雨による風評被害が各地で発生し、岡山、広島、愛媛各県の主な観光、温泉地は豪雨による直接の被害がほぼないものの、宿泊などのキャンセルが相次いだ[178]。そこで政府は8月3日、西日本豪雨からの復旧復興に向け総額1058億円の「生活・生業再建支援パッケージ」を閣議決定した。観光面では風評被害対策などで35億9600万円を充てた。[179]
観光産業の復興を支援するため、岐阜県から福岡県にかけての11府県を周遊した場合に宿泊費用が割引される「ふっこう周遊割」が8月31日から11月30日にかけて実施される[180]。
この節の加筆が望まれています。 |
内閣は7月14日、特定非常災害特別措置法[注 4] の規定に基づき、政令[注 5] で、平成30年7月豪雨による災害を特定非常災害として指定するとともに、これに対し適用すべき措置を指定(同日から施行)[216]。具体的には、運転免許証の更新時期をすぎても有効期間を延長できる、債務超過に陥った場合に一定期間、破産手続きが開始されない、などの特例措置が含まれる[217]。この指定は5例目で、地震災害以外では初めて[217][注 6]。
また内閣は7月24日、激甚災害法[注 7] の規定に基づき、政令[注 8] で、平成30年7月豪雨など同年5月20日から7月10日までの間に全国各地で発生した豪雨及び暴風雨による災害を激甚災害(本激)として指定するとともに、これに対し適用すべき措置を指定(7月27日から施行)[218]。具体的には、自治体による復旧事業に対する国庫補助率の嵩上げ、中小企業の資金繰りや被災により休業している人への支援などの措置が含まれる[219]。
要請日時 | 要請元 | 要請先 | 要請内容 | 撤収日時 |
---|---|---|---|---|
7月6日1時10分 | 京都府知事 | 陸上自衛隊第7普通科連隊長 | 水防活動 | 7月6日7時05分 |
7月6日3時30分 | 高知県知事 | 陸上自衛隊第50普通科連隊長 | 孤立者の救助等 | 7月16日9時07分 |
7月6日9時56分 | 福岡県知事 | 陸上自衛隊第4師団長 | 人命救助 | 7月9日8時34分 |
7月6日18時35分 | 京都府知事 | 陸上自衛隊第7普通科連隊長 | 水防活動(再要請) | 7月6日23時30分 |
7月6日21時00分 | 広島県知事 | 陸上自衛隊第13旅団長 | 人命救助 | 8月14日10時30分 |
7月6日23時11分 | 岡山県知事 | 陸上自衛隊第13旅団長 | 人命救助等 | 8月18日12時00分 |
7月7日6時10分 | 京都府知事 | 陸上自衛隊第7普通科連隊長 | 人命救助 | 7月8日17時05分 |
愛媛県知事 | 陸上自衛隊中部方面特科隊長 | 8月15日21時00分 | ||
7月7日7時35分 | 山口県知事 | 陸上自衛隊第17普通科連隊長 | 7月7日14時55分 | |
7月7日9時42分 | 京都府知事 | 海上自衛隊舞鶴地方総監 | 7月12日10時02分 | |
7月8日5時00分 | 兵庫県知事 | 陸上自衛隊第3特科隊長 | 7月8日17時45分 | |
通信事業大手三社のKDDI・ソフトバンク・NTTドコモは7月7日に岡山県・広島県内において、さらに8日午後には愛媛県内でも災害時公衆無線LAN「00000JAPAN」を開放した。なお、災害用伝言板は同年6月18日に発生した大阪府北部地震に伴い、既に開設されている状況であった[254]。
神戸市に事務局を置く一般社団法人神戸国際支縁機構 (KISO) は、7月8日午後から、岡山県倉敷市の倉敷市立第二福田小学校にて炊き出しや傾聴ボランティアを行っている[255][256]。
日本赤十字社では7月9日に、翌10日より豪雨被災地への義援金の寄付の受付を開始することを発表した[257]。日本財団も同日9日に日本財団ビル2階に位置する大会議室で緊急記者会見を開催し、その席上で各種の支援策を発表し、当日の記者会見終了と同時に寄付金の受付を開始している[258]。
日本航空では7月10日から7月31日までの間、被災者に対する支援として災害支援者への搭乗協力(復興支援者の無償搭乗)、救援物資の輸送協力(支援物資の無償輸送)、義援金500万円の寄付及びJALチャリティ・マイルによるマイル寄付の募集を行う[259]。
7月11日、ニッポン放送と山陽放送(RSK)は岡山県の被災者支援のため携帯ラジオ200台を無償で提供する[260]。これは同日開かれたニッポン放送の社長定例会見の中で発表され、ニッポン放送側が用意したラジオを、RSKを通じて被災地に提供することとしている。
ジャパネットホールディングスは7月13日にテレビ・ラジオ・インターネット通販で防災グッズを販売し、売上全てを西日本豪雨と大阪府北部地震の被災地に寄付すると発表した[261][262]。最終的な寄付金額は約1億5500万円[263]。
AKB48グループは7月13日に、東日本大震災をきっかけに2011年3月24日から行っている『「誰かのために」プロジェクト』の被災地支援の対象に加え、義援金を寄付することを発表した[264]。
7月14日には、当時開催期間中であったボートレースの第23回オーシャンカップ競走に出場していた全52名のボートレーサーが、1レーサー当たり1万円=総額52万円を、その出場者の1人である平田忠則が代表して集めた上で北九州市公営競技局を通して日本財団に寄付した[265]。
ジャニーズ事務所所属のアイドルグループ・嵐も2011年の東日本大震災以降毎年開催しているイベント「嵐のワクワク学校」の収益から、広島・愛媛・岡山の3県に対し義援金1億5000万円(各県5000万円)を寄付した[266]。7月21日に松本潤が広島と愛媛を、7月23日に二宮和也が岡山を、それぞれ訪問し被災者を慰問したほか、それぞれの知事に義援金ならびに救援物資を寄付した[267][268]。なお、ジャニーズ事務所は今回の災害における支援のため『Smile Up!Project』を立ち上げ、所属するタレントやアイドルを現地に派遣する活動を開始[269]。
奥田民生は弾き語りライブ「カンタンヒキガタビレ」の開催を急遽決定し、イベントの収益と会場で募る予定の樽募金の全額を寄付することを発表した[270]。
ゆずも「うたエール」の弾き語りバージョンを急遽録音し音楽配信サイトで配信、収益金を全額被災地の支援金として寄付する[271]。
上方落語協会は8月にチャリティー落語会を開催し、収益を全額寄付すると発表した[272]。
読売ジャイアンツは、高橋由伸監督以下、選手32人が昨季の「橙魂2017」で着用したオレンジユニホームに各々の直筆サインを入れたものを同月17日からオークションサイト「ヤフオク!」に出品。その落札額を全額、被災地で救援・復旧活動を行っているボランティアグループやNPOを支援する基金に寄付するチャリティオークションを開催[273]。
YOSHIKI[274]、加山雄三[275]、黒田博樹[276]、前田健太[277] が1000万円の寄付を行った。
認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンは災害発生直後から現地に入り、岡山県・広島県でレスキュー活動、避難所支援、物資支援、医療支援などを2019年2月現在に至るまで続けている[要出典]。
広島県庁ではサンフレッチェ広島協力の元、『広島県「復興支援PR動画」』を制作し8月31日-12月31日の期間限定でYouTubeの広島県観光課アカウントにて公開した。サンフレッチェ広島のホーム戦や広島県観光WEBサイトの関連箇所で活用する。また、8月20日からは「行ける広島県」のサイトを開設し、広島県内のアクセス・観光が可能なことのアピールに努めている[278]。
サザンオールスターズも2018年8月に発売するベスト・アルバム『海のOh, Yeah!!』の利益の一部を義援金として寄付している[279]。
西日本豪雨復興応援アート展を広島県の被災地出身クリエーター、東きゆう、むかいあぐるが呼びかける。賛同した漫画などのクリエーターが集まり2019年1月より大和ミュージアム(呉市宝町)で行われ、巡回展が開催されている。被災地への応援、観光アピールとともに募金を募り全額寄付などの活動を続けている。のむらしんぼ、東風孝広、エサカマサミ、那波マオ、田中光、原明日美、森チャック、葉月かなえ、今井大輔、御茶漬海苔、丘上あい、フクシマハルカ、夏目義徳など多数の著名作家が参加している。 [280] [281] [282] [283] [284]
呉線代行バス運行に際し、応援として近畿エリアの貸切バス事業者が多数参加したほか、九州エリアからも昭和自動車や堀川観光バス等の事業者が代行バス輸送に加わった。8月からは、追加としてJR西日本の要請を受けたジェイ・アール北海道バスが貸切車2台を派遣した。
その他、以下の企業・団体及び個人が義援金を寄付している。
被災地では、犠牲者の慰霊・追悼が行われている[330]。
被災したインフラの復旧に続いて、自治体や日本政府が堤防のかさ上げなどの対策を検討・実施している[331]。
豪雨とその被害の分析・研究も進められており、国土交通省中国地方整備局は広島大学と「防災・減災対策に関する覚書」を2019年1月10日に結んだ[332]。また氾濫が起きた肱川(愛媛県)でダム放流情報が下流の自治体・住民に伝わらなかった問題への検証が行われた[333]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.