劍客兵器(けんかくへいき)
鎌倉時代の元寇で活躍した鎌倉武士の一派の末裔を自称する武装集団。元寇以降は次なる侵略に備えるため、時代ごとの権力者の私兵となることを避けるべく北上していき、最終的に蝦夷地(北海道)に陣地を構えた。そして南北朝、戦国、幕末と国内の戦乱には干渉せず、さらに来るべく諸外国との戦争に対して「外国勢力に対する護国の切り札」となるべく長い間、鍛錬を続けてきた。しかし凍座はこのことについて「古すぎてもはや真偽の程は確かめようがない」と言及している。
劍客兵器の部隊将および隊士たちは、各々「〇號(〇ゴウ)」というコードネームを持ち、その者の外見、闘法、その他の特性を反映したものになっている。戦闘能力については各々人間の領域を凌駕した身体能力を持ち、さらに独自の異形の武具、闘法、特殊技能に基づいた「戦型」、劍客兵器固有の身体向上術である「赫力(せきりき)」を操る。その一方、大した鍛錬もなく人を殺傷できる近代の銃火器を忌避する。
組織図としては将君を筆頭に7人の部隊将率いる7つの部隊によって構成される。本格的に実検戦闘を開始するまでの間世界や日本各地で起きた事件・戦争に対する情報収集などは抜かりなくおこなっており、剣心やその関係者の身辺から、志々雄一派や上海マフィアなど、裏社会の動向も詳細に把握していた。さらに技術の淀みを防ぐため、これまでも本陣外の猛者が劍客兵器として勧誘されている。劍客兵器が猛者と認めた者たちは「猛者人別帳」と呼ばれる書に特徴から動向、使う技能まで全て詳細に記録している。
劍客兵器の本陣については、7人の部隊将のみ知る最高機密だが、凍座曰く道奥の山中にあるとのこと。本陣で生まれた子供は7歳になると心身共に壮健な者とそうでない者に振り分けられ、壮健と認められた者は目と耳を塞がれ外の世界へ搬出される。そして北海道各地に点在する修練の組に入り、山岳原野を移動しながら更なる振り分けを受け、結果過酷な修練を耐え抜き劍客兵器と成る者は五分、成れずに諜報工作に従事する間者暗器に就く者が一割、残りの八割五分は死に消えていく。極少数の本陣防衛の任に就くか、部隊将になる以外は生涯本陣の地を踏むことはなく、仮に知った者は誰であろうと例外なく抹殺されるが、於野曰く「陣抜けの男」が知っているかもしれないとのこと。
劍客兵器は開国した日本がいずれ清やロシアをはじめとする欧米列強と必ず戦争をすると予測しており、来るべく戦争に勝利するため、明治政府の掲げる「富国強兵」の考えのもと一騎当千の「猛者」たちの発掘および、唯一自分たちに欠けていた「戦いの場数」を補うために実戦経験を積むべく、北海道の各地にある軍隊・警察の施設を強襲する「実検戦闘」を展開する。斉藤は「実検戦闘」の目的について、猛者発掘に加え自分たちの戦闘能力を知らしめる目的があると推測している。
第二十八幕では全編にわたって劍各兵器と誤植され、単行本でも修正されていない。
- 赫力(せきりき)
- 劍客兵器固有の身体向上術。「赫力」の名は「血の赤」と「肉の赤」に擬えたもので、「血流の人体をも震動させて全身を揺さぶる力」と「筋肉の血流による震動を抑え込み人体を静止させる力」を操ることで、自らの技を一撃必殺にまで昇華させる。ただし、人間本来の身体機能を強引に捻じ曲げる技法であるため、人体にかなり負荷がかかる。更に一定量出血すると、出力が激減してしまう。本陣出身者は赫力の会得が必須だが、外部から勧誘された猛者の場合はこの条件は必要ない。
指導者
- 将君(しょうくん)
- 劍客兵器の首領。本名は不明。本陣での初登場時は御簾で姿が隠れていた。女性のような口調で話し、部隊将たちのことは「○號さん」と呼ぶ。
- すべてが予定通りに進むとは考えておらず、現場の裁量は部下に任せるなど柔軟な思考を持つ。また、凍座は「話は分かる人」「敵対者であっても意見を取り入れ、手を組むことも吝かではない」と評価している。雪深い冬が訪れる前に組織の「宿願」の達成を目論んでいる。
部隊将
劍客兵器の7人の幹部。本陣の在り処や実検戦闘の詳細を知る。「いろはにほへと」に因んだコードネームを持ち、各々が部隊を率いている(雹辺は例外)。
- 凍座白也(イテクラ ビャクヤ)
- 異號(イゴウ)。逆立った頭髪が特徴の大男で、古風かつ大仰な口調で話す。一人称は「儂」。函館における第一の実検戦闘「拠点制圧」を指揮する。
- 自分が認めた猛者には笑顔を交えて友好的に接し、ときに仲間に勧誘する一方で、愚者・凡人は無視するか躊躇なく殺害する残忍さを見せる。また、自分の愉悦を満たすべく独断専行する悪癖があり、一部の同胞たちからは批判の的となっているが、改める気はないと断言している。
- かつては一通りの修練を積み赫力も会得したが、劍客兵器に選ばれなかった落ちこぼれの闘士であり、せめて一人前になろうと、本土の情勢偵察の任務を投げ出し、全国を巡り実戦本位の武者修行に明け暮れ、士農工商問わず手当たり次第に戦っていた。しかし当時は山賊相手に一太刀浴びるほど弱く、さらに地獄を得られないことに嘆いていたが、江戸末期の越後の冬の山奥にて、吹雪のなかに自分自身の闘姿「鎮座する氷塊」を見て、さらにこの際、全身が氷のように固まったことで一時意識を失うも、直後にある剣客に救われ、くわえて「不動凍奴」に繋がる何かを掴んだ。そののち、万を超える戦いにより幾度も死にかけ、敗北と再起を繰り返した末、部隊将にまで上り詰めた。同胞からも高い潜在能力の持ち主と評価されており、年齢を重ねた現在でもその強さはいまだ発展途上にあるという。後述の剣心との戦いで意識を失った際、土居には「目覚めたときが恐ろしい。殺さなかったことが最大の失策」、権宮には「このまま死んだ方が世のため人のため皆のため」と断言される。
- 銃弾や牙突を素手で掴む動体視力と握力、手枷を瞬く間に破壊する膂力、剣心や宗次郎の動きに対応し、追従できる俊敏さ、単発の九頭龍閃にも耐えきる強靱な肉体といった規格外の身体能力を誇る。さらに、数万に上る戦いによる武者修行で精神の平衡を喪失したことで得た固有の特技として、相手の力量を動物などの姿に例えた「闘姿」として把握することができる。取るに足らぬ者は獣畜生の姿に、猛者に足る者は神仏魔物のような異形の姿に見え、対象の闘法、得手、弱点がおぼろげながら判るという。剣心には「静止する龍巻」、左之助には「拳を構えた金剛力士」、斉藤および永倉には「刀を喰わえた大神(狼)」、栄次には「角を隠した小鬼」、宗次郎には「燦然たる閃光」、安慈には「血涙を流す不動明王」、張には「剣の鱗の大邪」、鎌足には「暴れ舞う鎌鼬」、蝙也には「爆煙をまとう化け蝙蝠」、土居には「石化した鬼子母神」、権宮には「嘘の妖 滑瓢(ぬらりひょん)」、天智には「眠る水蛭児」の闘姿をそれぞれ見出す。
- さらに生まれつき血液の量が人並外れて多い特異体質で、大量に流血し調整しなければ赫力を使えない欠点を持ち、土居からも「難儀な体質」と言われているが、本人は血をどうせ流すなら、ついでに戦って相手の力量を測ると共に闘姿も視れることが頗る愉しいと語る。
- 最初は部下たちと共に函館山を占拠し、のちに山頂において対劍客兵器として派遣された斎藤と交戦、この際に斉藤の愛刀を破壊すると共に斉藤の左腕に重傷を負わせる。その直後、自分の身を顧みずに立ち向かって来た栄次の覚悟と垣間見えた闘姿に感心し、本来は権宮に任せるはずだった捕虜の役目を務めるべく、敢えて独断で投降する。
- 投降後は斎藤と同等以上の猛者を連れてくるよう要求し、栄次以外の人間には徹底無視の態度を取り続けていたが、自分との面会を望む剣心の来訪には歓喜し、剣心を客人として迎え入れのち、劍客兵器の由来や行動目的を語る。
- 暫くして土居から実検戦闘の再開が決まったこと、自分の独断専行が原因で、近々本陣に呼び戻されるであろうとの報告を受けるが、手ぶらで帰ることをよしとせず、剣心と手合わせしながらという条件で斎藤の尋問に応じる。この最中、自身の経験談から「地獄こそが真の猛者を育てる」という持論を述べ、元十本刀への復讐心に駆られ成長した闘姿を見せた栄次の姿に歓喜するが、これが剣心の逆鱗に触れ、剣心から二七頭龍閃を食らう。この際剣心の闘姿が「静止する龍巻」という見たこともない自然現象であったことに喜び、称賛を述べつつ倒され、意識を失う直前に、次の実検戦闘が札幌と小樽の2箇所で同時に行われることを告げる。
- そののち、剣心一行が小樽から戻って来た日に意識を取り戻し、土居から自分が意識を失っていた間の状況を聞くと剣心一行の小樽への長旅による疲れを理由に、札幌の決着が着くまで待つことを決める。
- 札幌の決着がついたのち、東京からやってきた山県有朋の影武者の尋問を受けるが、彼の闘姿が「傀儡」であることを知って愛想をつかし、土居から本陣への帰還命令が出たことを聞くと、本陣帰還の前に「劍客兵器とは、また一騎当千が何たるか」を知らしめるべく「置き土産」と称した虐殺を開始、土居や権宮らとともにその場にいた警官らを圧倒する。その後、剣心一行が到着すると、自分は剣心・宗次郎と激突し、自身の戦型と赫力を駆使して二人を圧倒する。
- 武器および戦法
- 日本刀
- 函館山占拠の際に所持。外見は普通の打刀であるが、斎藤との戦闘では牙突を受け止め、刀越しに伝導した衝圧で斎藤の左腕を負傷させる。
- 投降後、刀を没収されて丸腰の状態となった凍座は、剣心との尋問を交えた初戦で張の刀を借り受けるも、二十七頭龍閃を食らった際に叩き折られる。
- 宗次郎戦では、宗次郎が張から借りた別の刀を折り、その切っ先を口にくわえて使用する。
- 衝圧
- 斎藤との戦闘で初使用。刀や自身の肉体を介して対象に得体の知れない衝撃を与え、破壊・殺傷する。
- 戦型・不動凍奴(せんけい・フドウトウド)
- 自らの呼吸、鼓動、脈拍、血流、神経系を赫力による瞬間最大の筋力で完全に止め、氷塊の如く筋肉を固定することで刀刃や弾丸が一切通用しない「破壊不能の肉体」へと変貌させる。この肉体で相手を掴み投げ、叩きつけることで圧殺することが、この戦型の本質。
- なお、実際に凍座の肉体は霜が生じるほど冷えており、過去、命を救われた剣客にも「樹氷と見間違うほどに冷たく固くなっていた」と言及されている。
- 雹辺双(ヒョウベ フタツ) / 雹辺又佐(ヒョウベ マタザ)・雹辺又佑(ヒョウベ マタスケ)
- 髏號(ロゴウ)。髑髏の仮面を被った大男。一人称は「我」。感嘆・感心を示すときに「鳴於(おお)」という口癖を漏らす。札幌における第四の実検戦闘「要人暗殺」を指揮する。
- 「人の真価は生き様ではなく、死に様に顕現する」という考えを持ち、相手が命を懸けて抗うことを「良き死に様」として、これを喜びとしている。
- 札幌では闇乃武や内通者である前野と共謀して役人や官僚のみを狙った暗殺を繰り返す。
- やがて前野が用意した潜伏先で、闇乃武より渡された本陣からの「役人や官僚をできる限り暗殺せよとの『大斬奸』の命」を受けると、役人を7名立て続けに斬殺するなど堂々とした殺戮を敢行、そして警官隊や北征抜刀討伐隊を圧倒して退け、澄州を葬ろうとしたところで斎藤・永倉の二人と激突する。さらに駆けつけた阿部を含め、3人を圧倒していたが、のちに永倉の龍尾三匹を受けて、実は双子の雹辺又佐・雹辺又佑の二人が二人羽織で暗躍していたことが判明する。
- 雹辺又佐は顔の左側に髑髏の刺青がある男で、斉藤や永倉との戦いに気持ちを逸らせるも任務遂行を優先する自制心を持つ(台詞の吹き出しは白色)。雹辺又佑は顔の右側に刺青の入れ墨がある男で、非常に好戦的であり、かつ頭に血が上りやすい性格(台詞の吹き出しは黒色)。又佐曰く「二人で一役ではなく、各々が独立した部隊将」。
- その後、右腕を斬られて戦闘不能になった又佐に代わり、又佑単独で全員を相手にしようとするが、阿部のフィフスピストルと栄次の銃撃により劣勢に立たされ、さらに斎藤の牙突により鎌刃刀を破壊された挙句、警官隊や北征抜刀討伐隊の総攻撃を受け敗北した。又佐はそれを見届けると剣心側への余計な情報漏洩を恐れて自害、又佑は捕縛され函館へと護送される。
- 武器および戦法
- 鎌刃刀(レンジントウ)
- 雹辺の得物。先端が鎌状に曲がった二本一組の刀で、鍔には髑髏があしらわれている。なお、斉藤が又佐のこれを奪い、又佑に牙突を放った際、「切先が奇天烈な上に重心の位置が悪すぎて牙突にはまるで向かなく、この刀では『悪・速・斬』はならない」と使用感に不満を漏らされる。
- 戦型・二刃羽織(せんけい・ニジンバオリ)
- 雹辺の得物「鎌刃刀」を使った戦法。実際は二刀流ではなく又佐と又佑が二人羽織をしていたため四刀流であり、永倉はこれが「弾丸の斉射を弾き返し、人も物も粉砕する常軌を逸した技」の正体だとした。
- 鉄紺帷子方形紋付(テッコンカタビラシカクモンツキ)
- 四角・紋付状に鎌刃刀を超高速で動かして敵の攻撃を防ぐ防御の型。警官隊の銃弾をすべて防いだ。
- 緋羅紗無慈悲球形紋付(ヒラシャムジヒマルモンツキ)
- 球形・紋付状に鎌刃刀を超高速で動かして敵を斬り飛ばす攻撃の型。対象を紋付内部に取り込み、鮮血に染まった髑髏になるまで切り刻むこともできる。
- モチーフは、『機械戦士ギルファー』のカ・ドゥが使うヘルフラワー[36]。
- 緋羅紗無慈悲巨球形紋付(ヒラシャムジヒダイマルモンツキ)
- 緋羅紗無慈悲球形紋付を拡張した技。赫力と併用して使用。
- 隠技・透明血裏面死装束(おんぎ・スカシチリメンシニショウゾク)
- 表の二刀の死角に隠すかたちで裏の二刀を瞬間的に繰り出すカウンター技。
- 戦型・孤刃羽織(せんけい・コジンバオリ)
- 双子である正体が露見したあと、又佑が単独で使用。二人分の二刃羽織より破壊力は劣るが、速度と自由度は跳ね上がる。
- 黒鳶刃殺喪渦巻紋付(クロトビハゴロモウズマキモンツキ)
- 鎌刃刀を逆手に構え、渦巻き状に鎌刃刀を繰り出し敵を斬り刻む技。
- 寒郷豪人(カンザト ゴウト)
- 覇號(ハゴウ)。八つ目の仮面をかぶった男。一人称は「私」。素顔は顔からはみ出るほどに長い眉が特徴。樺戸における第二の実検戦闘「強襲破壊」を指揮する。
- 霜門寺から「寒郷のマジ」と呼ばれるほど、将君や組織に対して真面目かつ忠誠心が高く、さらに将君からも「新撰組や十本刀に敗けるあなたではない」と評されるなど信頼も厚い。また、同胞は基本コードネームで呼び、実検戦闘外のことでは私情を詮索することはしない。
- かつて、土方歳三を劍客兵器に勧誘するも断られている。また、於野と共に箱館戦争の行く末を見ており、その有様を見て世界の貪欲なまでに進展する兵力と日本の絶望的な鈍重さを危惧し、「世界は残忍で非情」であると断じた。
- 樺戸集治監を強襲した際は、実検戦闘を終了させるべく、柏手一つで周囲を圧倒する力を見せつける。そこで永倉と安慈を同胞に迎えようとするも、看守から既に二人は前日に函館へ出立していたと聞かされ、空振りに終わる。
- そののち、将君に脱獄した囚人の監視と樺戸集治監再建の監視をすると宣言。そして増員するかたちで隊兵とともに函館に集結する。
- 冬甲斐(フユカイ)
- 仁號(ニゴウ)。戦国時代の甲冑を身に纏った男。
- 将君との謁見中、煩わしく思いながらも霜門寺からの質問に答えていた。
- 霜門寺瑠璃男(シモンジ ルリオ)
- 宝號(ホゴウ)。ヘルメットのような仮面を被った小柄な男。一人称は「俺」。小樽における第三の実検戦闘「治安騒乱」を指揮する。
- 同胞たちを「寒郷のマジ」「凍座のクソ」「権宮のバカ」と呼称したり、将君との謁見中に私語を慎まないなど、礼儀がなっておらず、さらに、敗北した於野と本多を使えない人間として、また情報漏洩防止のために躊躇なく殺害する非情な一面もある。一方、勝者を闇討ちするような真似はしないなど、剣客としての矜持は持っている。
- 小樽において、観柳や本多を使って数打ち刀「万鉄刀」や中古銃器などの武器をばらまき、治安騒乱を目的に動くも剣心たちに阻まれ失敗に終わる。
- 武器および戦法
- 戦型・細々刃金(せんけい・ササハガネ)
- 霜門寺の得物「細々刃金」を使った戦法。
- 細々刃金は先端に針のついた鉄線を射出する金属筒。南米の蜘蛛がはく糸を加工して鉄線とし、広い範囲に鉄線を伸ばして括れば骨を断つことも可能。
- 聴術・千里絲脈(ちょうじゅつ・センリシミャク)
- 細々刃金から伸ばした鉄線を通じて、相手の会話を糸電話の要領で聞き取る技。
- 万鉄刀(ばんてつとう) / 雅桐刀(がとうとう)
- 霜門寺が実検戦闘で小樽中に流通させた数打ち刀(大量生産品)。剣心の見立てによると、固い金属の筒の中に柔らかい鉄を入れて刀剣状に成型するという工程で作られている。つまりは鋳造刀である。本来は熟練を要する製法を簡素化しているため、刀としての性能は鈍らそのもの。樺戸集治監から逃げ出した観柳に委託した際に、箔付けで桐紋を付けて「雅桐刀」と名付けられる。土地のやくざをきっかけとして小樽の住人のほぼ全員に行き渡り、押収品の横流しもあって捨て値でばら撒かれる。
- 冷泉(レイセン)
- 変號(ヘゴウ)。縦烏帽子のような兜をかぶった男。
- 将君との謁見の場で私語をしている冬甲斐と霜門寺を叱責するなど、良識的な性格。
隊兵
7人の部隊将が率いる7つの部隊に所属する構成員。
凍座の部隊
函館占領隊。先鋒として、第一の実検戦闘「拠点制圧」を担当する。函館山を占領し次なる実検戦闘のために築城を行っていたが、凍座が五稜郭で警官たちの虐殺を開始すると伊差川を除く残りの3人も五稜郭に集結し、剣心一行と激突する。
- 土居潜具羅(ドイ モグラ)
- 地號(チゴウ)。岩石のような硬質な外殻を持った巨漢。一人称は「私」。読書を好む。
- 権宮から「世話焼きおかん」と呼ばれるほど面倒見のいい性格だが、その反面、怖じ気づき敵前逃亡する警官たちを容赦なく虐殺したり、安慈が味わった廃仏毀釈を持ち出し彼を挑発するなど、非情な一面もある。
- 自らの戦型による地中潜行技術を活かして、五稜郭に幽閉された凍座との連絡役を担い、そのついでに彼に酒や食料などの生活用品を大量に差し入れたりしている。本人曰く「大地繋がる限り劍客兵器に対して兵糧攻めは効かない」とのこと。
- 凍座が捕虜となった後は函館山で次の準備に勤しんだり、権宮と共に闇乃武に接触して根回しをしていた。
- 凍座が剣心との戦闘で気絶すると、彼に代わり捕虜および尋問相手を務めるが、部隊将ではないため実検戦闘の委細を何も知らず、終始「知らん!」の一言で通していた。
- そののち、目覚めた凍座に実検戦闘再開の旨を伝え、暫くして彼に対する本陣への帰還命令が正式に出された際は、凍座に再度、報告に来ると同時に、凍座と共に警官たちの虐殺を開始する。そして剣心一行が到着した後は、左之助と安慈の相手を務めることになる。
- その際、安慈を廃仏毀釈を持ち出し挑発したことが左之助の逆鱗に触れ、左之助の馬鹿力で投げられたことで両者の二重の極みを同時に受けて一度は倒れるが、内部の本体を保護・秘匿するために着用していた土居一族自慢の具足を犠牲にすることで復活。本体は額に黒子がある長髪の女性であり、生来の剛力と重い鎧を脱ぎ捨てたことで向上した機動力を組み合わせて左之助たちを追い詰める。
- 武器および戦法
- 戦型・土遁暴威蟲(せんけい・グラボイズ)
- 地中に潜って相手を撹乱しつつ、砂・土・石・岩から様々な武器を作って相手を攻撃する戦法。
- 岩槌腕(ガンツイワン)
- 拳にトゲ付きの岩塊を纏わせ威力を増強するほか、二重の極みなどの攻撃の囮にする技。
- 砂蜥蜴(スナトカゲ)
- 足元に砂を撒いて滑走し、相手の攻撃をかわす技。
- 岩蟻塚(イワアリヅカ)
- 足を踏み込んで、鋭い岩を地面から隆起させる技。
- 蜂飛礫(ハチツブテ)
- 拳で岩を砕き、その破片を弾丸のように飛ばす技。同様の方法で口から散弾銃のように岩を飛ばすこともできる。土居いわく銃の真似事。
- 岩破杵(ガンバッショ)
- 土から杵を作り、相手にぶつける技。しかし左之助には通用しなかった。
- 潜具羅具足(モグラグソク)
- 土居一族の自慢とされている岩の鎧。今までの化け物じみた外見の正体。しかし左之助と安慈が同時に放った二重の極みにより破壊される。
- 権宮剛豪(ゴングウ ゴウゴウ)
- 偽號(ギゴウ)。サングラスをした筋骨隆々の大柄な男。一人称は「俺」。罷蘭地(ブランデー)を持ち歩く。
- 相手を「ちゃん」付けで呼ぶ、天智を渾名で呼び可愛がるなど、表向きは馴れ馴れしい口調や親しげな振舞いが多い人物に見えるが、これらはすべて、自身の戦型による偽計であり、本性は敵味方問わず常時の全てを偽り騙す、自他共に認める非情で卑劣な人物。また、土居は「真面目」、天智は「不思議」、伊差川は「勝手な新人」、上司の凍座については「難儀」であると評価していて、実際に五稜郭で剣心に叩き伏せられた凍座を見て、世のため、人のためだとして「このまま死なねぇかな」と漏らしていた。
- 凍座が捕虜となった後は函館山で次の準備に勤しんでいたが、この際、五稜郭における捕虜の役目を凍座に奪われたことについて不満を漏らしていた。
- 暫くして凍座が五稜郭で虐殺を開始すると、天智の進言によって天智と共に五稜郭へ駆けつけ、凍座や土居らと共に警官たちを圧倒する。
- 剣心一行が駆け付けた際は張と鎌足の相手を務め、暫くは天智との連携で2人を圧倒していたが、天智の「神通覚」の難点の露呈を防ぐべく、引き分けにして戦闘を終わらせようと画策するも失敗、直後に張に天智の神通覚の難点を指摘され、さらに張に天智を人質にとられると自らの本性を現し、天智もろとも張を銃撃する。この際、張を「悪党を名乗るにはまだまだ青過ぎだ」と嘲笑する。
- 武器および戦法
- 業火乃大剣(ごうかのたいけん)
- 権宮の得物。敵の攻撃(銃撃)を軽々と防げる盾としても使える鉄塊の如き殺人奇剣。投擲したり、天智との連携で自身へ放たれた銃弾を、正確無比に跳ね返す芸当も可能。しかしその本質は、刀身の側面に大量の砲弾発射機能、内部に銃剣が収納されていることで、これは、劍客兵器が忌避する「銃砲火器」に該当する武装でもある。
- 本来は新井赤空が図案にのみ記した幻の奇剣だったが劍客兵器が図案をもとに改良を加え作刀した。
- 戦型・偽身暗鬼(せんけい・ギシンアンキ)
- 権宮の得物「業火乃大剣」と、自らの振る舞いによる偽計を併せた戦法。権宮曰く「非常時の一手のために常時の全てを偽る」戦型。
- 天智実命(アマチ ミコト)
- 恵號(エゴウ)。寡黙で小柄な少年。友達が欲しい様子。
- 権宮を通じてでしか会話できないためか、権宮と行動を共にすることがおおく、権宮からは「天ちー(アマちー)」の愛称で呼ばれている。また、張からは「不思議小僧」とも呼ばれている。
- その正体は劍客兵器が先祖代々、神通力を極めようとして本陣で先見に長けた者、占術に長けた者たちを長きに渡って掛け合わせた結果、尋常ならざる直感を持ち生まれてきた存在。しかし土居によると戦闘力が皆無で、凍座と土居が五稜郭で虐殺を開始することを察知し、権宮とともに駆けつけた際は、土居から「危険を察知したらすぐ身を引け」と言われていた。
- 張と鎌足との戦闘では、始めは権宮との連携で二人を圧倒するも、神通覚が不安定なものであることが露呈し、さらに張に人質にされると、本性を現した権宮に見限られて銃剣で銃撃され、瀕死の重傷を負う。
- 武器および戦法
- 戦型・神通覚(せんけい・ジンツウカク)
- 相手の場所や攻撃の方向、タイミングを先読みできる尋常ならざる直感。干支陣や1間の単位で相手の場所や攻撃の方向、タイミングを権宮に教えている。
- しかし、権宮いわく能力と呼べるほどの確証はなく、あくまで本人にしか分からない曖昧な感覚とのこと。それ故、飴などで糖分補給しないと連続使用できない不安定な力で、戦術に組み込むには工夫が必要になるなどの難点もある。
- 伊差川糸魚(いさがわ いとい)
- 右目に傷跡がある、隻眼・褐色肌の青年。一人称は「俺」。実検戦闘開始にあたり本陣外から迎えられた3人のうちのひとり。
- 斉藤を「怨敵」と呼ぶほど憎んでおり、函館山にて斉藤と邂逅したときは抑えていたものの、田所から斎藤が札幌に向かったことを聞くと遂に殺意を抑えられなくなり、独断で札幌へ一人旅立つ。そして、闇乃武の協力を得て雹辺を捕縛した斎藤・永倉・栄次のもとに現れて、斉藤と激突、この際に自らが「かつて斎藤が葬った魚沼宇水の弟弟子」であることを明かす。しかし、中々本気を出さない斎藤に苛立ち、その原因が自分に合う刀が見つからないことだと知ると、宇水と黄金玄武の秘密を暴露、万全の状態の斎藤でなければ倒す意味がないと、斎藤に次に会うときまでに万全の刀を用意するよう言い撤退する。
- 武器
- 黄金玄武(クガニゲンブゥ)
- 糸魚が使う黄金色のティンべーとローチン。
- 眼力琉球武術(ガンリュウリュウキュウブジュツ)の最強の使い手に代々受け継がれる宝具であり、本来は宇水が手にするはずだった。
- 糸魚曰く「これがあれば宇水は決して負けなかった」とのこと。
- 宝剣宝玉百花繚乱(ほうけんほうぎょくひゃっかりょうらん)
- ティンベーの刃と球を目にも止まらぬ速さで交互に繰り出す技。
寒郷の部隊
樺戸襲撃隊。次鋒として、第二の実検戦闘「強襲破壊」を担当する。樺戸集治監襲撃後は、脱獄した囚人たちの動向と樺戸集治監再建の監視をしていたが、のちに増員する形で函館に集結する。
- 板バネの刃を四肢とする者
- 本名不明。ギザギザした鋭い歯を持つ長髪の男。
- 囚人を殺そうとした警官に「殺すといった以上、殺される覚悟はあるんだろうな」といい放ち、警官を殺害した。
- 田所が家族を連れていることを良く思っていない様子。
- 棒火矢を操る者
- 飛號(ヒゴウ)。本名不明。ゴーグルとマスクを着用した人物。
- ミサイルのような巨大な棒火矢「劍星(つるぎぼし)」で樺戸集治監を破壊する。
- 田所(タドコロ)
- 愛號(エゴウ)。眼鏡をかけた初老の男。
- 無闇な殺生を嫌う穏やかな性格で、樺戸集治監強襲の際も警官に「急所は外したから、死んだふりをしていてくれ」と助言していた。また、家族連れであり、 函館に行く際も民間人の格好で家族を連れて来ている。このことについて 同胞からは微妙な反応をされるも、寒郷からは実検戦闘外のことだと容認されている。
- 相手に背を向けたまま自らへ放たれたライフル弾の軌道を小刀で反らし、その上狙撃手の急所を外して撃ち返す技を持ち、さらに、瞬時に狙撃手の背後を取る身体能力を持つ実力者。
霜門寺の部隊
小樽にて第三の実検戦闘「治安騒乱」を担当する。小樽中に万鉄刀(雅桐刀)や雅桐銃をばら撒き、治安騒乱を目論むも於野と本多が任務に失敗し、両者霜門寺に始末されたため、事実上壊滅した。今後の対応は検討中とのこと。
- 於野冨鷹(オノ トミタカ)
- 斧號(フゴウ)。筋骨隆々とした大男。一人称は「我」。
- かつて寒郷と共に函館戦争の行く末を見届けており、日本を取り巻く海外の危険さと残酷な現実に危機感を募らせる。
- 霜門寺の命令で用済みとなった観柳を始末しようとするが不殺の誓いを旨とする剣心に止められ、そのまま左之助と激突する。戦いによって、左之助の実力を認めると左之助に劍客兵器になるよう勧誘するが断られ、最後は左の裂斧掌を旋拳ではじかれてガード不能となり、拳打と頭突きで敗北。霜門寺にその責を問われ致命傷を負わされ、左之助に自身の知り得る情報とメッセージを残し、最期に「函館に気をつけろ」と左之助に忠告して死亡。死体は左之助によって丁重に弔われる。
- 武器および戦法
- 戦型・破断戦斧(せんけい・ハダンセンプ)
- 於野が使う斧を模した武器および戦法。実は仕込み槍となっている。
- 護斧の構え・‘断’(ごふのかまえ・‘ダン’)
- 相手に半身だけ向けることで、攻撃可能な面積を2分の1に減らす技。これにより左之助の拳撃をすべて受け流した。
- 戦斧の構え・‘破’(せんぷのかまえ・‘ハ’)
- 破断戦斧を頭上高く掲げ、相手の弱点に向けて撃ち落とす技。これにより左之助の二重の極みの死角・手の甲に一撃を加えようとしたが失敗に終わる。
- 陰技・裂斧掌(おんぎ・レップショウ)
- 手首を折り曲げ、小指以外の四指を小指と等しい長さにして相手に突き出し鋼を断ち割る。於野の奥の手。
- 本多雨読(ホンダ ウドク)
- 記號(キゴウ)。モノクルをしたマッシュルームカットの男。一人称は「私」。
- 霜門寺の命令で雅桐刀のほか、拳銃などの武器を小樽に配布していた。普段は丁寧な口調で話すが、怒ると乱暴な口調になる。観柳の始末を於野一人に請け負わされたものとし、金と引き換えに見逃そうとするなどサディスティックかつ狡猾な性格。劍客兵器の小樽拠点に侵入した阿爛と観柳と遭遇し激突する。最終的には観柳が劍客兵器の本陣で見つけ出した回転式機関砲に敗北。拘束を解いて明日郎たちに襲い掛かるものの、焔霊で応戦しようとした明日郎の目の前に観柳が逃げる際に蹴飛ばした火薬樽が偶然落ちてきて大爆発を起こし、そのどさくさに紛れて逃走。霜門寺と合流するが、銃火器に敗れた「劍客兵器の恥晒し」として始末され死亡する。
- 小樽での任務の前に本陣から陣抜けした男の追跡抹殺任務に就いていたが、任務が予想以上に難航していたので、任務の途中で小樽隊に移動となった。
- 武器および戦法
- 戦型・書・裏・剣(せんけい・ショ・リ・ケン)
- 本多が使う武器および戦法。見た目は手裏剣が描かれた本だが、そのページ1枚1枚が鋭く、飛ばして相手を切り裂くことができる。アルミニウムの膜からできたものを南米産のクモの糸と混ぜて加工した。
- 速読(ソクドク)
- 超高速でページを飛ばす技。
- 乱読(ランドク)
- 書・裏・剣2冊を使い、無作為にページを乱れ飛ばす技。赫力と両立して使用する。