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手榴弾をより遠くに飛ばすための武器 ウィキペディアから
擲弾発射器(てきだんはっしゃき、英語: Grenade launcher)は、擲弾を発射するための火器[1][2]。通常、口径20mm以上の火器は砲として扱われるが、擲弾発射器は運用上・形態上などの問題から小火器として扱われることが多い[3]。
擲弾発射器の歴史は、フリントロック式のマスケット銃の時代まで遡る。当時、手榴弾の投擲を担当する兵科として擲弾兵があったが、攻城戦の場合、人力では投擲距離が足りないことが多かったため、専用の発射器 (Hand mortar) が開発された。これは小銃の口径を拡大し、手榴弾を装填できるようにしたもので、小銃弾よりも遥かに重い手榴弾(擲弾)を発射する圧力に耐えられるように、銃身を思い切って短縮するかわりに火砲並みの分厚いものとなった。この極端に短い銃身により初速はかなり遅くなったが、これにより、擲弾は放物線を描いて飛翔することになり、防壁越しの射撃には適することから、一時期ヨーロッパでは多用された。しかし低初速ゆえの命中精度の低さが問題になり、戦闘形態の近代化が進むにつれて使われなくなっていった[4]。
第一次世界大戦で西部戦線が構築されると、敵の塹壕に手榴弾(擲弾)を投射する必要から、再び擲弾発射器が注目されることになった。このときには、フリントロック式発射器と同様の発想で、小銃の銃口部にカップ型の発射機を装備して、ここに手榴弾を入れて空砲で射出するもののほか、手榴弾に丸棒をつけて銃口に差し込んで空砲で射出するものなどが開発された[4]。ただし、特に小銃を使用して投射する小銃擲弾は、大重量の擲弾を射出する必要から、通常よりも薬室圧力が上昇するため反動が激しく、肩付け射撃ができないため射撃精度が低く、また小銃本体の消耗も激しいという問題があり、戦間期には、ドイツ国防軍の5 cm leGrW 36や旧日本陸軍の八九式重擲弾筒、イギリス陸軍のSBML 2インチ迫撃砲のような専用の小型迫撃砲・コマンド迫撃砲が志向されることになった[5][注 1]。なおこの時期、イタリア王国では特殊部隊用のカルカノM1891/28カービンに装着して使用する38mm口径の擲弾発射器であるMod 28「トロンボンチーノ」が開発されており、後のXM148やM79に影響を与えた可能性が指摘されているが、この時点では普及しなかった[7]。
第二次世界大戦では、小銃擲弾や小型迫撃砲のような対人兵器のほか、対戦車兵器としての擲弾発射器も登場した。これは、従来の徹甲弾であれば高初速が必要だったのに対し、モンロー/ノイマン効果を用いた成形炸薬弾の場合、むしろ低初速の対戦車擲弾のほうが適しているためであった。またベトナム戦争では、視界の悪い熱帯雨林での戦闘に対応して、薬莢に薬室をもたせたハイ・ロー・プレッシャー弾を使用することで、個人携行できる擲弾発射器(いわゆる「擲弾銃」)が開発された[3][4]。
擲弾発射器の方式には、手動式および自動式の2種類の基本方式がある[3]。軍用としては40mmグレネードが一般的である一方[8]、37/38mmグレネード (37 mm flare) は催涙弾やゴム弾など警察用の低致死性弾薬として広く用いられており、アメリカ合衆国では、連邦火器法 (NFA) による取締から特に除外されている[9]。通常、このような低致死性兵器は個人携行火器として用いられるが、例外的に、軍用車両が自衛用として大口径の煙幕弾(発煙弾)を投射するための擲弾発射器(発煙弾発射機)を搭載する場合がある[10]。
手動式は、装填・閉鎖・撃発・排莢など一連の動作をすべて手動で行うものであり、更に下記のように分類される[3]。
自動擲弾銃(英語: Automatic grenade launcher)は、連射できる擲弾銃[2]。自動機構としては、ブローバックやガス圧作動方式、反動利用式があるが、構造が単純なブローバック式が多用されている[3]。なおアメリカ軍では重機関銃のカテゴリに含めて扱っている[11]。
なお、半自動式の擲弾発射器をアサルトライフルと一体化したXM29 OICWの開発が試みられたが、実用化には至らなかった[注 2]。
擲弾発射器の性格上、運動エネルギー弾ではなく成形炸薬弾などの化学エネルギー弾が使用される。装甲貫徹力と命中精度を向上させるため、ロケット推進を導入した対戦車ロケット弾の採用が一般的になっているほか、一部では、発射機に無反動砲の原理を導入しており、擲弾発射器というよりは、ロケットランチャーあるいは無反動砲とも考えられる[3]。
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