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日本の音楽家 (1963-) ウィキペディアから
菅野 よう子(かんの ようこ、Yoko Kanno、1963年[1]3月18日[2] - )は、日本の作曲家・編曲家・演奏家・音楽プロデューサー。宮城県仙台市出身[1]。主にアニメ、ゲーム、CM、ドラマ、映画の音楽を手掛けている。Meow on the Bridge(音楽事務所)、Captain Duckling Records(音楽レーベル)所属。本名は菅野 洋子(読みは同じ)。チェリストの溝口肇は元夫にあたる。
即興ピアニスト・作曲家の菅野洋子[4]とは同姓同名であるうえ宮城県出身、早稲田大学出身という経歴も似ているが別人である。
音楽との出会いは2歳のころ、親戚の家にあったピアノの前から離れない娘を見て、親がピアノを買った[1]。幼いころから言葉で話すよりも音で表現するほうが楽だったといい[5]、頭に浮かぶことをメロディにして遊んでいた。小学校時代は数々のコンクールで優勝し、1974年にヤマハ・ジュニア・オリジナル・コンサート(JOC)全国大会で川上賞を受賞する[6]。ヤマハ・ジュニア・オリジナル・コンサートの作曲コンクールの審査員をしていた芥川也寸志からアドバイスをもらう[7]。また、知遇を得て芥川也寸志、安川加寿子にごく短い一時期作曲、ピアノを師事[要出典]。ただし、音楽理論については先生について学んだというよりは、ほぼスタジオ現場で独学で身に付けた[8]。
中学校から仙台向山高校[9]にかけては吹奏楽部に所属し、いろいろな楽器の編曲を楽しむ[5]。当時は文学少女で、小説家になろうと早稲田大学第一文学部に進学するが[10]、入部した軽音楽サークルのOBの伝手で音楽業界の仕事に関わり始める。
1985年に光栄(現コーエーテクモゲームス)の歴史シミュレーションゲーム『三國志』の音楽を手がけて作曲家デビュー[1]。以後、光栄のゲームでは「信長の野望シリーズ」や「大航海時代シリーズ」なども担当する。1986年にはバンド「てつ100%」のキーボード奏者としてレコードデビューし、同時期にはアルバイトでおニャン子クラブのバックバンドにも参加した。バンド解散後は演奏家としてレコーディングやライブに参加し、作曲家として今井美樹、小泉今日子、SMAPなどの歌手への楽曲提供・プロデュースを行う。
1991年より広告業界で多数のCMソングを作曲。手がけた作品は1000曲を超え「CMソングの女王」という呼び名もある[1]。1998年にはCM音楽賞の最高峰ともいえる三木鶏郎広告音楽賞を受賞した[11]。映画監督の中島哲也や石川寛とはこの分野で知り合い、テレビドラマや映画の音楽を担当している。
1994年の『マクロスプラス』よりアニメのサウンドトラック(劇伴)制作を担当。アニメ監督の河森正治や渡辺信一郎とは以後の作品でもコンビを組むことになる。日本ゴールドディスク大賞(アニメアルバム部門)を受賞した『カウボーイビバップ』ほか『∀ガンダム』、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』などの音楽を担当し、『創聖のアクエリオン』『マクロスF』などのシングル・アルバムヒットも生む。また、声優の坂本真綾を9年間にわたり、音楽面でプロデュースした。
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では出身地の宮城県が被災地となったが、発生翌日に応援ソング「きみでいて ぶじでいて」をYouTube上で公開し反響を呼んだ[12]。同年の第62回NHK紅白歌合戦ではオープニングテーマ「1231」を担当[13]。2012年にはNHK東日本大震災プロジェクトのテーマソング「花は咲く」を作曲、同年の第63回NHK紅白歌合戦ではコーラス指揮と審査員を担当[14]。その後もNHK関連の仕事が続き、連続テレビ小説『ごちそうさん』、大河ドラマ『おんな城主 直虎』の音楽を担当する[注 1]。
クラシックから民族音楽、ロック、テクノ、アイドルポップまで、古今東西の多様な音楽ジャンルの要素を巧みに取り入れる。渡辺信一郎は初めてデモテープを聴いたとき「本当にひとりの人が作ってるの?」と驚き[24]、初対面での愛らしい印象とのギャップから、ゴーストライターがいるのではないかといぶかしがった[25]。本人にはジャンルや自分の音楽性という意識はなく、「作品が最初から持っている音を掘り出しているみたいな感覚です」と語っている[26]。器用貧乏と言われ傷ついた事もあるというが、「器用貧乏も10年続けるとゴールデン器用(または金の小手先)に変わる」と語っている[27]。尊敬する音楽家として、現代音楽からポップスまで作曲した武満徹の名を挙げている[28][29][注 2]。
嗜好として、ジャズやテクノのような「曲調が長くて段取りやリズムが決まっているように聴こえるもの」は途中で飽きてしまうので性に合わない[31][32]。作曲する時には聴く人を飽きさせないよう工夫を盛りこむため、楽曲に濃い(高カロリー、ファットな)傾向があると自己分析している[33]。クラブミュージックに見られる繰り返しの多いミニマルな展開や、キックの4つ打ちもあまり好きではなく、『Cowboy Bebop remixes music for freelance』のリミキサーの選定をしていた渡辺や佐藤大に対して「これは音楽じゃない」「マシンが鳴っているだけで気持ち悪い」と言い、2人から大量のクラブミュージックのレコードを聞かされたという[34]。その後、佐藤も参加した『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』では作品世界を意識した結果4つ打ちを取り入れている。好きではないジャンルの一番輝くところを掴み出す力について、佐藤は「音楽的ツンデレ」と評している[34]。
オーケストラの譜面を緻密に構成する一方、途中でいいアイデアが出たら、それまでの作業をあっさり捨てられるような自由自在さを持っている[35]。『WOLF'S RAIN』のサントラでは、東京で録音し完成していたバンド編成のオケを、アメリカのスタジオ作業中にふと聞いた印象で、ボーカルとアコースティック・ギター一本の弾き語りに差し替えた、とボーカルのスティーブ・コンテが語っている[36]。コンテ自身、ジャズギターの学校を卒業しているとはいえ、すでに完成したオケを破棄し、弾き語りに差し替えたことに相当驚いたという。
曲ができる時はテープを再生するように完成した形で頭の中に流れてくるといい、それを「カセットテープが落ちてくる」と表現する[35]。打ち合わせ中に、関係者から話を聞きながらその場で作ってしまうことが多い[37]。また、完成した曲を耳で確認しながら、別の曲の譜面を同時に書けるという[35]。
クライアントとの打ち合わせでは、具体的な作品内容よりも依頼者の人物像から「その人が何をして欲しいのか」を感じ取るという[38]。監督との作業について「言葉で言えない"違いの綾"を探りながら、こういうことが言いたかったんだと音で探していくのが好きなんです。翻訳に近い作業だと思います」と語っている[39]。時には発注されていない曲を作って送る事もある。
職業作曲家としてのサウンドトラック制作を表現活動のメインに据えるスタンスのため、多作でありながら個人名義のオリジナルアルバムのリリースには積極的ではない[40]。本人名義だった『Song to fly』も、音楽を担当した簡易フライトシミュレーションゲーム『アースウインズ』のサウンドトラックを同コンセプトの元で肉付けした構成であり、本人も「あれはゲーム音楽」と述べている[28]。他には、代表的なCM音楽をまとめたアルバム『CMようこ』『CMようこ2』をリリースしている。
『ブレンパワード』の作曲を担当した際、総監督の富野由悠季から「男性と女性の裏に秘められた、そのレズとかホモとか、そういう危うさも含んだところでの、あの遺伝子の暗躍する感じ」[41]という曲を作るよう注文され、どういうことなのか非常に悩んだというエピソードがある。
作曲以外にも、『カウボーイビバップ』の「3.14」や『オーバン・スターレーサーズ』の主題歌「Chance To Shine」(岩里祐穂との共作)、『おんな城主 直虎』の劇中歌「わたしが竜宮小僧だったとき」(森下佳子との共作)など、少数ではあるが作詞も手掛けている。
菅野の作品には、作詞家・ボーカルとしてGabriela Robin(ガブリエラ・ロビン)という名がしばしばクレジットされている。曲によっては、この歌手の声が明らかに菅野のものであることから、「Gabriela Robinは菅野の変名なのではないか」という推測がなされてきた。作詞者としては比較的文法などから自由な日本語、英語などを駆使して詞を綴る。変わったところではあたかも仏語であるかのように書かれた日本語詞があり(多田葵「Wo qui non coin」)、菅野はこれをハナモゲラと呼んでいる。
通常、コンサートでは坂本真綾やOrigaが代役を務めていたが、2009年7月7日のコンサート「超時空七夕ソニック」において、初めてGabriela Robinが聴衆の前で歌うことが事前に告知された。コンサートパンフレット『超時空七夕ソニック』の「Interview with Gabriela Robin」の項では、Gabriela Robinの写真として菅野の扮装姿が掲載され、コンサートのラストではRobinの歌唱曲「Moon」(『∀ガンダム』挿入歌)を、菅野自身が歌いあげた。
名前の由来は『マクロスプラス』のサントラ制作でイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団と初めて海外録音した際、当時のイスラエル首相がイツハク・ラビンだったため[42]。「超時空七夕ソニック」で公表した理由は「深い意味なかったのに隠してることに疲れたから(笑)」とのこと[42]。
なお、シェリル・ノーム starring May'nの配信シングル「ゴ〜〜ジャス」(2017年)は、作詞がROBIN ROBINSON(ロビン・ロビンソン)、作編曲が菅野よう子とクレジットされている[43](両者の関係は不明)。
菅野のレコーディングに参加する常連ミュージシャンである今堀恒雄(ギター)、渡辺等(ベース)、佐野康夫(ドラム)、三沢またろう(パーカッション)、本田雅人(サックス)らと菅野(キーボード・ピアノ)により編成されたブルース/ジャズバンド。メンバーには「てつ100%」時代からの仲間もいる。「シートベルツ(SEATBELTS)」という名前はタクシーの「シートベルトをお締めください」という注意書きから思いついた[44]。
『カウボーイ・ビバップ』ではTHE SEATBELTS名義でOPテーマ「Tank!」やサウンドトラックを演奏。2度のライブを行い、ライブDVD『FUTURE BLUES』(2001年)も発売された。「美人プロデューサー『Y.K』に率いられ宇宙をツアー中」という劇中設定もある。
2009年には「来地球記念盤」と銘打った『スペース バイオチャージ』を発表し、ワルシャワフィルや国内外アーティストを交えて7月7日にさいたまスーパーアリーナで「超時空七夕ソニック 次回公演は22世紀を予定しております」を開催した。
2020年7月7日午後7時7分(日本時間)より有料配信イベント「YOKO KANNO SEATBELTS オンライン七夕まつり」を開催[45]。SEATBELTSのメンバーが11年ぶりに集結し、「Tank!」「ライオン」などのスタジオセッションを行った。
所属するCM音楽制作会社GRAND FUNKのクリエーターとともに使用する別名義。商品別にCM曲とリミックス集を収録した4枚のシングル(資生堂PERFECT ROUGE、久光製薬温熱用具、サントリーカルピスウォーター、ホンダ・プレリュード)をリリースしている。
賞歴については後述の「受賞」を参照。
『マクロスプラス』での菅野の仕事を境に、アニメサントラの潮流が変わったとしばしば指摘されている[46]。Elements Garden代表の上松範康は高校生時代に『マクロスプラス』の音楽に出会い、アニメ業界を志したと語っている[47]。日本のアニメソングをカヴァーしているハウスミュージシャン/プロデューサーのラスマス・フェイバーは、10代のころ『マクロスプラス』を知って以来、菅野の大ファンだと述べている[48]。
アニメ音楽家の先輩である田中公平も「彼女の出現以降、日本のアニメがより一層世界中の注目を集めた」と語り、菅野に対して感謝を述べている[49]。田中は菅野の音楽の変遷について、デビューから1990年代までを「センスの時代」、2005年ごろまでを「サウンドの時代」、それ以降を「洗練された下世話の時代」と表現する[49]。後輩の神前暁は「同じアニメ作品にかかわるコンポーザーとして、遥か遠くに見える超えたい壁」と評している[50]。
劇伴作曲家の澤野弘之は、菅野については「いちばん最後に影響を受けたと言える」「こんなにもいろいろなアプローチができる音楽家がいることに衝撃を受ける」などと敬意を示している[51]。
俳優の小栗旬は『カウボーイ・ビバップ』の音楽のファンで菅野のCDをすべて持っており、監督としての初作品『シュアリー・サムデイ』の音楽を菅野に直接依頼した[52]。
女優の長澤まさみは実写映画『ハチミツとクローバー』から菅野を知り、『海街diary』の撮影の始まりに是枝裕和監督に菅野を推薦したこともある[53]。長澤は「五感で作品を記憶させてくれるような菅野さんの映画音楽が大好きで、いつか彼女の音楽が付いた映画に出てみたかったんです」と語っている[54]。
LUNA SEA、X JAPANなどのギタリストSUGIZOは菅野の「10年来の大ファン」と称し、菅野との仕事に関しては「(彼女の)ヴィジョンが常にはっきりしてる」「一緒にやっているとこっちも引っ張られて全てのリスポンスが速くなる」と語っている[55]。Perfumeの大本彩乃はアニメ『坂道のアポロン』が好きで、音楽担当の菅野については他の代表作の名を挙げて好感を示し、「菅野よう子とジャズに恋してます」などとコメントしている[56]。
現代ジャズ/フュージョン界の第一人者で、グラミー受賞アーティストのパット・メセニーは自身のアルバムのプロモーションのインタビュー中、前後の脈絡無く唐突に菅野の楽曲に好意的なメッセージを残している[57]。
(音楽を担当した作品を除く)
500本以上の楽曲を手がけており、現在でも多くの作品が放映されている。菅野本人は1000本以上とも語っている。ただし数えた事は無いという。採用企業の中で代表的なものを以下に挙げる。
コスモ石油、日本石油、東京電力、東京メトロ、シャープ、マイクロソフト、カシオ、パイオニア、日立製作所、富士通、富士ゼロックス、富士フイルム、キヤノン、インテル、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、富士重工、ヤマハ発動機、ダイムラー・クライスラー、日本IBM、アサヒビール、キリンビール、キリンビバレッジ、サッポロビール、サントリー、コカコーラ、資生堂、ポーラ化粧品、カネボウ、コーセー、みずほ銀行、UFJ銀行、森永製菓、明治製菓、グリコ、J-PHONE→ボーダフォン、NTT DoCoMo、KDDI、ほっともっと、ミヤギテレビ、JR東海、JR東日本、ユニクロ、Google、DeNA、小田急電鉄、パナソニック、ペプシコーラ、アンファー、JT、JTB、八十二銀行、積水ハウス、ソニー
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