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2011年開催の歌謡祭 ウィキペディアから
『第62回NHK紅白歌合戦』(だいろくじゅうにかいエヌエイチケイこうはくうたがっせん)は、2011年(平成23年)12月31日(JST、以下同じ)にNHKホールで行われた、通算62回目のNHK紅白歌合戦。
2011年3月11日に東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)が発生し、これによりこの年の紅白は放送自粛の話が出たと言われていた[1](地震発生直後は日本に自粛ムードが漂っていた)が、同年9月8日、実施が告知された。今回は、震災からの復興を後押しするという意識のもとで制作された[1]。
全て2011年。
衛星波の再編によりBSでのサイマル放送が行われないため、日本国内では地上波のみでの放送となった。ラジオ放送では、この年の9月1日からインターネットによる同時配信(インターネットラジオ)サービス『NHKネットラジオ らじる★らじる』がスタートしており、今回の放送から番組史上初となるインターネットでの同時配信が実施される[30]。
ステージ背景のデザインが前回から若干変更され、三角形が多く並べられたものとなっていた。
各歌手の歌唱前のMC時には、視聴者からの出場歌手への応援メッセージ(一部の歌手のみ)と歌手を紹介するテロップが順に表示された。前者は2011年12月1日から31日にかけてインターネットで募集されたものであり[31]、後者は前回に存在したものと同様歌手の出身都道府県、出場回数、見どころが表示されるテロップである。各種テロップの書体は前回同様にフォントワークスのテロップ明朝であった。出演者名を表示するテロップのデザインは、紅組関係の場合赤色背景の白抜き文字、白組関係の場合白色背景の黒文字、その他(総合司会、ゲスト、曲順カウント対象外の出場歌手)は金色背景の白抜き文字でいずれの場合も下に白いラインがあるものとなっており、前回存在した「akagumi」などのローマ字表記は存在しなかった。歌詞のテロップは、前回までは縁取りのある白抜き文字であったが、今回は縁取りの代わりに影を付けたデザインであった。
一部出場歌手のパフォーマンス人数が非常に多いことが事前に伝えられていた。『サンケイスポーツ』はflumpool、藤あや子、細川たかし、夏川りみ・秋川雅史、ゆず、北島三郎のパフォーマンス人数に言及し、本紅白について「人海戦術」と表現している[32]。他にも、NYCおよびAKB48のパフォーマンス人数が200人を超えることが事前に報道されていた(後述)。『MSN産経ニュース』の記事では大人数のステージが多かったことについて、その理由を「『絆』を強調したためか」と推測しており、「肝心の歌手の力量が視聴者に伝わり辛いところもあった」と批判的に記している[33]。
オープニングでは両組司会の井上真央・嵐の登場後に出場歌手が入場し、続いてスペシャルゲストとして「なでしこジャパン」の7人(いずれもINAC神戸レオネッサ所属)が登場した。なでしこジャパンはチームにとって歌がどのような存在であるかについておよび2012年のロンドンオリンピックに向けての抱負を語った(一部メディアは開会宣言として伝えている[34][35])。『デイリースポーツ』によると、なでしこジャパンは当初ボールを蹴る演出などが検討されていたが、この翌日(2012年1月1日)に、所属するINAC神戸レオネッサが全日本女子サッカー選手権大会の決勝戦に出場することが決まっており、そのためそうした演出は「危険を考慮」して行われなかった[35]。
先行は紅組で、トップバッターは4年連続となる浜崎あゆみとNYC。NYCはリハーサルにおいて、登場したジャニーズJr.が244人、これにNYCの3人を加えたステージ上のパフォーマンス人数の合計が247人と伝えられていた[36][37]。しかし当日の番組中では「ジャニーズJr.が247人」という旨の紹介がなされた(『日刊スポーツ』が同じ旨の報道をしている[38]。その一方で、『MSN産経ニュース』はジャニーズJr.が244人登場した旨を報じている[39])。NYCの次はアンジェラ・アキとflumpoolが順に歌唱した。flumpoolの歌唱前には、彼らが東日本大震災の被災地である宮城県にある名取市立閖上中学校を訪れ、彼らの歌唱曲である「証」(2011年のNHK全国学校音楽コンクール中学校の部の課題曲)を歌う生徒たちと触れ合う様子がVTRで流された。VTR後のステージでは豊島岡女子学園中学校コーラス部および町田市立鶴川第二中学校合唱部と共演しともに「証」を合唱した(リハーサル時の報道によると共演した生徒の人数は90人[32]。また、AKB48のメンバーが登場するという報道も同じ時にあった[40]が、実現しなかった)。それに続くAKB48は、リハーサル時にはAKB48自身(研究生を含む)およびその姉妹グループであるSKE48、SDN48、NMB48、HKT48、JKT48のメンバーからなる合計210人(内訳はAKB48が75人、SKE48が48人、SDN48が39人、他3グループが16人ずつ[41])がステージ上に登場していた。これは前回の130人を上回り、AKB48によるパフォーマンス人数としては史上最多である[42]。当日のステージにおける人数も同じであり、歌唱の最後には「がんばろう日本!!」という人文字を披露した。
AKB48の歌唱後、ゲスト審査員の紹介を経て最初の企画「あしたを歌おう。 〜こどもスペシャル〜」が実施された。企画では初めにディズニーのキャラクターであるミッキーマウスとともに芦田愛菜と鈴木福が登場した。その際、階段を下りる途中、芦田が転ぶハプニングがあった。ミッキーマウスは一旦ステージを離れ、芦田と鈴木の2人が東北在住の子供達とともに楽曲「マル・マル・モリ・モリ!」を披露した。芦田と鈴木は個々の歌手として出場しているが、同曲は2人のユニット・薫と友樹、たまにムック。として歌唱した(同曲の冒頭でユニット名がテロップで表示された)。歌唱中は歌詞テロップに加え、ムックのパートに合わせてムックのグラフィックが挿入されていた(ムックはユニットが誕生したフジテレビ系ドラマ『マルモのおきて』に登場する言葉を話す犬であり、同曲に台詞などで参加している)。同曲の終了後、ゲストの井上琳水による次の曲の紹介がなされ、出場歌手の有志がディズニーのキャラクターとともに「星に願いを」、「小さな世界」を披露した。この企画の長さは、『スポーツ報知』によると約8分間[43]、『デイリースポーツ』によると約12分間であったという[44]。
企画後はFUNKY MONKEY BABYSが歌唱した。ステージの後ろでは応援団グループ「我武者羅應援団」が「信じてる」と書かれた旗を振り応援していた。続く西野カナのステージではバックダンサーなどの本人以外のパフォーマーが一切登場せずただ1人で歌唱した。『MSN産経ニュース』の記事はこのことに言及し、大人数のステージが多い中「かえって新鮮に映った」と記している[33]。その後AAAが歌唱(曲紹介時には二宮和也により宇野実彩子が翌年の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』、西島隆弘が大河ドラマ『平清盛』にも出演することに触れた)し、次の川中美幸の歌唱時には年の離れた男女が結婚する「年の差婚」が2011年に話題になったことにちなみ、「パパイヤ鈴木とおやじダンサーズ」の5人とAKB48のメンバー5人が一緒にダンスをする「年の差ダンス」が披露された。歌唱後、ラジオ中継担当者と副音声の「紅白ウラトーク」担当者が紹介された。続く平井堅の曲紹介は平井のファンである井上が行った。
平井の歌唱後、ゲストのサンドウィッチマンが登場し、「東北各地のお祭り衆」を率いてきた旨の発言をした。その「お祭り衆」(花柳糸之社中、秋田市竿燈会、東京花笠連合会、福島わらじまつり実行委員会。藤あや子歌唱中の表示による)は続く藤あや子と細川たかしのパフォーマンスで登場した。2人が行ったパフォーマンスは東北の祭りを再現したものであり、リハーサル時から報道されている[45]。藤が歌唱した楽曲は、秋田のことを歌った楽曲である「あや子のお国自慢だよ」の歌詞を東北6県向けに変えたものであり[46]、歌唱中は福島商工会議所青年部(福島わらじまつり実行委員会に含まれる[47])などの合計108人がパフォーマンスで共演した[48]。パフォーマンスにはTOKIOも混じって参加していた。細川たかしの歌唱時にはねぶたが登場し、パフォーマンスにはサンドウィッチマンとAKB48が参加した。リハーサル時の報道によると、ねぶたは細川がこの年の青森ねぶた祭りの前夜祭でいちど「共演」したものであり[49]、また細川のパフォーマンスで共演した人数は秋田市竿燈会などの合計121人である[32]。細川は歌唱後、先に歌唱を終えた藤と握手を交わした。『MSN産経ニュース』の記事はこのことに言及し、「今年は紅白の『対戦』ではなく、『和平』のムードが高まっているようだ」と記している[50]。
細川に続き、水樹奈々とポルノグラフィティが順に歌唱を終えた。次の猪苗代湖ズの歌唱前のMC時には福島県で行われたライブで猪苗代湖ズと共演した福山雅治が中継先(後述)からエールを送った。彼らの歌唱曲「I love you & I need you ふくしま」は彼らの故郷である福島県を応援する楽曲であり、歌唱は「絶叫交じり」で行われ、最後にはメンバーの4人が「ふくしま!! ふくしま!!」と叫ぶシーンもあった[51]。NHKホールの舞台裏では、猪苗代湖ズの歌唱後に「初めて」大きな拍手がわき起こったと伝えられている[52]。その一方、歌唱後に元NHKスポーツキャスターである東海由紀子が猪苗代湖ズやそのパフォーマンスをTwitterで酷評し、Twitterが炎上するという事件も発生した[53]。
猪苗代湖ズの後は伍代夏子が歌唱し、その次にL'Arc〜en〜Cielが歌唱した。続く水森かおりの歌唱前には、水森の歌唱曲が山形県を歌った楽曲であることから同県出身のゲスト審査員である佐々木則夫がコメントした。水森の次は森進一の歌唱であり、東日本大震災で被災した東北の港町の名前を歌詞に含む「港町ブルース」を歌唱した。続く椎名林檎は、歌唱前に連続テレビ小説『カーネーション』でヒロインの役を務める尾野真千子が登場し、椎名を応援した。歌唱中は椎名がボーカルであった東京事変(2012年2月に解散)のメンバーが演奏に参加した。舞台袖では尾野が椎名の歌声を聞いて感激の涙をこぼすシーンもあったと伝えられている[54]。
椎名が歌唱を終えた時に中間投票に関するアナウンスがあり、続いて2番目の企画「あしたを歌おう。 〜ハッピーバースデイ 3.11〜」が実施された。この企画では初めに井上が宮城県南三陸町を訪れ、東日本大震災が発生した2011年3月11日に子供が生まれた2家族と触れ合う様子がVTRで流された。VTRの後、井上による紹介で夏川りみと秋川雅史がともに「あすという日が」を歌唱した。歌唱中は洗足学園音楽大学の学生とともに合唱し(リハーサル時の報道によると人数は64人[32])、ステージには被災地の赤ちゃんなどの写真が次々に映し出された。歌唱後、拍手を送る井上は目に涙を浮かべていた。
企画が終了すると、中間投票の結果が発表された。票数は紅230,275対白143,551で、紅組が優勢であった。また、サンドウィッチマンが再び登場し、東北への支援に対する感謝のメッセージなどを述べた。
後半の先行トップバッターはKARAであり、スタンバイ後にはMC席に川中美幸、和田アキ子、天童よしみが「浪花KARA」として登場し、KARAをまねたヒップダンスを交えて曲紹介に参加した。浪花KARAについてはリハーサルの段階でメディアに報じられており[55]、披露にあたってはKARAのリーダーであるギュリが、舞台裏で接触した和田にダンスのやり方を聞かれて実際に指導したと伝えられている[56]。KARAの歌唱後、二宮和也と大野智がNHKホールの楽屋ロビーをリポートした。楽屋ロビーにはゲストのコロッケがAKB48とともに登場し、AKB48の楽曲「ヘビーローテーション」を森進一、五木ひろし、北島三郎のものまねで歌うネタを披露した。リポート終了後は徳永英明の歌唱であり、中島みゆきの楽曲「時代」をカバーした。続いてPerfumeとTOKIOが歌唱を終えた。次の少女時代は歌唱中に歌詞の一部を変える演出[57]があった。
少女時代の後は郷ひろみ、aikoが順に歌唱を終えた。aikoの歌唱前には井上が彼女のファンであるということを発言していた。aikoの歌唱後、ゲスト審査員の大竹しのぶに話が振られ、大竹が「隣の席のマー君が私のマイクのコード踏んだ」と発言し、会場に爆笑が起きた。次のゆずのステージでは多数のキャンドルが床に並べられ、合唱隊(番組中ではUZ choirと表示された。人数は事前報道によると100人[32])がゆずとともに歌唱曲「Hey和」を合唱した。ゆずに続き、倖田來未が歌唱した。倖田は本紅白1週間前である24日に予定されていたライブを体調不良のためキャンセルしており、『デイリースポーツ』によると体調に関して心配されていたというが、問題なく歌唱は終わった[58]。また、倖田は紅白の前に結婚したことを発表しており、『オリコン』の記事はそれを踏まえて倖田の歌唱時の衣装に言及し、パフォーマンスについて「胸元や背中が開いたセクシードレスで“人妻”の色香を漂わせながらのパフォーマンス」と記している[59]。倖田の次に東方神起が歌唱を終えると、続く3つ目の企画に入った。
3つ目の企画「あしたを歌おう。 〜ニッポンの嵐『ふるさと』〜」では、嵐のメンバーが東日本大震災で被災した福島県のいわき市立豊間中学校のピアノを紹介した。紹介によるとピアノは3月11日に発生した地震による津波にのまれ、5月上旬に瓦礫から引き上げられたものの正常に演奏できる状態ではなく、地元の楽器店に引き取られ、半年かけて修理が行われた結果蘇った。紹介の後、櫻井翔がそのピアノを演奏し、前回披露された楽曲「ふるさと」が歌唱された。歌唱は嵐のメンバーに加え、出場歌手が集まって行われた(事前報道でこの時歌唱するのが白組歌手のみだとするものがあったが、紅組歌手も参加していた)。ステージには被災地をはじめとする全国各地の人々が「ふるさと」を歌う映像が流された。なお、同曲は本紅白のイメージソングであり、2番の歌詞は2011年になって新たに作られたものである[60]。
企画終了後、連続テレビ小説『おひさま』のVTRが流されて平原綾香の曲紹介に移った。応援ゲストとして同ドラマに出演した5人(高良健吾、寺脇康文、マイコ、田中圭、永山絢斗)が登場し、同作でヒロインを務めた井上を応援した。平原の歌唱中にも、ステージに同ドラマのシーンが流されていた。平原に続いたのは千昌夫であり、歌唱前には出身地である岩手県陸前高田市と中継が繋がり、中継先では千の同級生を初めとする地元の人々が集まって千を応援した。曲紹介は同じく岩手県出身である総合司会の阿部渉が行った。歌唱の最後に千は「東北がんばっぺし、がんばっぺし」と東北を応援した。
千の歌唱後、4番目の企画「あしたを歌おう。 〜世界からのメッセージ〜」が実施された。最初は長谷部誠がステージに登場し、視聴者に向けてメッセージを伝えた。次にジャッキー・チェンがVTRで登場し、日本を応援するメッセージを伝えた。最後にレディー・ガガがVTRで登場し、楽曲2曲を歌唱した。ガガは出演時の衣装に事前から注目が集まっていた[61]。その衣装は黒のブラウスとズボン、無数の真珠からなる眼鏡とネクタイであり、『MSN産経ニュース』は「ファンの期待を裏切らない“超”ユニークな格好」と伝えている[62]。歌唱した楽曲の1曲目は「Yoü and I」で、ガガはピアノを弾き語る形で歌唱したほか、歌詞の一部を日本に関係する言葉に変更していた[63]。2曲目は「Born This Way」で、ガガは眼鏡をはずし、ダンサーと共にダンスパフォーマンスを披露した。『MSN産経ニュース』は同曲中に「歌おう JAPAN」との歌詞が盛り込まれたことに言及し、披露された同曲が「日本の復興への思いを込めたメッセージソングとなった」と記している[62]。番組の放送後にNHKオンデマンドで配信された本紅白の「見逃し配信サービス」においてはレディー・ガガの出演VTRは「許諾が取れなかったこと」を理由にカットされている[64]。
企画終了後は、毎年、豪華衣装での登場が恒例となっている小林幸子が歌唱した。歌唱前の曲紹介時には、小林の衣装を毎年楽しみにしているというSMAPの稲垣吾郎が登場しコメントした。リハーサルの段階から披露された衣装のセットは「メガ獅子」と呼ばれる巨大な獅子をかたどったもので、推定5000万円、長さは8.03m、高さは6m、重さは2.5tにおよぶものである[65](長さを8m[66]または8.3m[67]とする報道や、高さを6.3mとする報道[66]もある)。重さは2009年の「メガ幸子」の3tに次ぐものである[66]。曲の途中には小林がメガ獅子の口に飲み込まれ、その後、獅子の頭の上に再び登場する演出があった。また、小林が着用していたドレスに飾られていた稲穂は、小林の所有する田んぼで収穫し、乾燥させたものである[68]。衣装のテーマは「五穀豊穣」[68]。小林は東日本大震災の発生を受け、本紅白で衣装を大掛かりにすべきかどうか当初は悩んでいたが、訪れた被災地ではむしろ、多くの人から衣装を派手にしてほしいと言われた[69]。その言葉で小林は悩むのをやめ[66]、また「芸能人の使命は人々に笑顔を届けること」だと思い、派手な衣装を披露することに決めたという[67]。衣装の制作はデューク松山が担当しており、2011年10月1日から設計に入り、完成したのは本番前日である12月30日の朝であった[65]。制作に要した期間は過去最短である[66]。
小林に続く西田敏行の歌唱前には、福島県いわき市にあるスパリゾートハワイアンズと中継が繋がり(福島県は西田の出身地でもある)、中継先では同施設のダンシングチームのリーダーであるマルヒア由佳理が登場した。西田は故郷への思いを込めた楽曲「あの街に生まれて」を歌唱し、歌唱中には涙ぐんでいた。その後「この歌を歌うと、故郷を思い出して条件反射みたいに涙が出てきちゃう」と話したことが報じられている[70]。西田の次は、第60回(2009年)の出場を以って無期限の活動休止に入った絢香が、その時に歌唱した楽曲「みんな空の下」を再び歌唱した。
絢香の次は長渕剛の歌唱であり、歌唱前には長渕が東日本大震災の被災地で人々と交流するなどの支援を行う様子を映すVTR(『スポーツ報知』によると46秒間[71])が流された。その後長渕は宮城県にある石巻市立門脇小学校からの中継で登場し、被災地の子供たちなどへ向けたメッセージを述べた後で楽曲「ひとつ」を歌唱した。門脇小学校は長渕自身が石巻市を訪れたうえで中継先として選んだ場所であり[72]、「ひとつ」は本紅白での披露のために書き下ろされた楽曲である[73]。歌の途中では再び長渕が被災地の人々と交流する映像が流されたほか、長渕の周りに円形に並べられたスポットライトが一斉に灯り、空を照らした後で最後には闇に包まれていた街を照らすシーンがあった。『スポーツ報知』、『サンケイスポーツ』によるとスポットライトの数は108個で、後者は除夜の鐘と同じ数だと言及している[71][72]。この光の演出について、『スポーツ報知』は「犠牲者への鎮魂の思いを表すよう」「未来への希望を示すよう」と表現し[71]、『サンケイスポーツ』は「闇に差す希望の光を象徴するよう」と記している。なお、長渕が出演した時間は『スポーツ報知』によると8分56秒(メッセージと歌)で、メッセージは2分44秒と報じる[71]一方、『スポニチアネックス』はメッセージを約4分としている[74]。
長渕に続く和田アキ子の曲紹介は、SMAPの中居正広が行った。ステージでの和田の衣装はゴールドを使用したものであった。これは紅白における和田の衣装としては最も高いものであることが事前に和田本人から明らかにされている[75]。ゴールドを使用したことには「来年は幸せが来るように」との思いをかけている[75]ほか、和田は「震災があったからといって、(派手さを)自粛してはいけない」と考えていることも明らかにしている[76]。和田の次は、北島三郎の応援を受け、白組司会の嵐が歌唱した。嵐の曲紹介は井上が行った。嵐はメドレーで2曲(「果てない空」、「迷宮ラブソング」)を披露し、曲と曲の間にはステージに映る映像と同期したダンスパフォーマンスを披露した。続くいきものがかりの歌唱前に、事前の一般公募で選ばれた井上の衣装が披露された。いきものがかりのステージではバックに1人の女の子が歩き続けるアニメーション映像が流れていた。いきものがかりに続き五木ひろしが歌唱した。歌唱された「ふるさと」はリハーサルの段階から「紅白バージョン」としてアレンジが施されており、途中で原曲にはない半音上への移調がなされた[77]ほか、最終サビが3回繰り返された[78](1コーラス目のサビが1回、2コーラス目のサビが2回繰り返しで合計3回)。
五木の後は松田聖子・神田沙也加親子が、聖子のカウントダウンライブが行われていた東京体育館から中継で歌唱した。2人が歌唱したのは坂本九の楽曲「上を向いて歩こう」であり、この選曲は聖子が選んだものだということを歌唱前に自身が語った。また、歌で親子が共演するのは初だということも神田が語った。2人の歌唱後、氷川きよしと坂本冬美が順に歌唱し、続く福山雅治は自身のカウントダウンライブの会場であるパシフィコ横浜から中継で歌唱した。次の松任谷由実の歌唱時には、曲の終盤で出場歌手の有志並びに洗足学園音楽大学と慶應義塾大学K.O.E.(アカペラサークル)の学生が合唱に参加した。歌い終わった松任谷は目に涙を浮かべた。
松任谷に続いてEXILEが歌唱を終え、次の天童よしみの曲紹介時には2011年が美空ひばりの23回忌であったことに井上が言及し、ひばりの写真も映し出された。天童はひばりの楽曲である「愛燦燦」を歌唱した。続く北島三郎の「帰ろかな」歌唱時は、一橋大学津田塾大学合唱団ユマニテ(事前報道によると人数は117人[32])がともに合唱した。なお、北島は歌詞を間違える場面があった。北島の次は紅組トリの石川さゆりである。石川に続いたSMAPが白組トリおよび大トリを務めた。SMAPはメドレーの2曲目「オリジナル スマイル」の歌唱中にステージを降り、客席で歌唱した。SMAPが紅白において、客席でパフォーマンスをするのは史上初である[79]。また同メンバーの木村拓哉が同曲の「山程ムカつくこと 毎日あるけど」という歌詞を「山程立ち直ること 毎日あるけど」に変えて歌う場面もあった。曲の終盤ではステージに戻ったSMAPとともに出場歌手がステージ上に集まり、最後はSMAPと出場歌手が手を繋いで一礼した。
全ての歌唱が終了すると、最終審査のアナウンスがあり、紅組と白組の勝敗を決める投票が行われた。続いて前回同様、出場歌手の歌唱シーンや企画などがハイライトで表示された。その後結果が発表され、ヘンデル作曲の「ユダス・マカベウス」の中の「見よ、勇者は帰る」をBGMに表彰が行われた(前回は表彰の音楽として紅白テーマソング「歌の力」のインストゥルメンタルが使用されたが、今回からは「見よ、勇者は帰る」に戻っている)。
最後は平尾昌晃の指揮で「蛍の光」が大合唱され、番組は終了した。なおこの時、テレビでは「第○回NHK紅白歌合戦」「終」のテロップが表示されることが恒例だが、今回はこれが表示されずに終了した。
前回までは中間審査を含めた総得票数による審査だったが、若干の変更が行われ最終審査のみの得票数による審査となった。結果343,045対323,767で紅組が7年ぶりに優勝し、白組の連勝記録は6でストップした。ゲスト審査員の三谷幸喜から優勝旗を授与された井上は号泣した。
会場、ケータイ、ワンセグの各審査員は白組が優勢だったが、投票総数の8割近くを占めるデジタルTV審査員の判定が決め手となった。
なお、ゲスト審査員の投票は6対4で紅組が優勢。今回と翌年の第63回はゲスト審査員はウタ♪ウッキーのパペットを出して審査に参加する体制となった(紅組の場合はウー♪、白組の場合はター♪)。
メディアにおける紅組の勝因分析としては、『J-CASTニュース』(2012年1月1日付)による「KARA・少女時代といったK-POP勢の初出場、AKB48のステージ、松田聖子・神田沙也加親子共演、絢香の返り咲き出場が視聴者票を押し上げる要因になった」[80]、『サンケイスポーツ』(2012年1月1日付)による「AKB48や芦田愛菜のパワーによるものが大きい」というものがある。『J-CASTニュース』によると紅組優勝に報道陣から「おおっ!」とどよめきの声が挙がったという。
井上は初司会、嵐は2年連続[81]。原田秀樹によると、井上は当初紅組司会の打診を再三断っていたが、番組側からの粘りの交渉の結果了承したという[82]。井上はこれがテレビ番組初司会である[83]。
阿部は3年連続での総合司会。
司会発表前には、『あさイチ』のキャスターであり、この年の『思い出のメロディー』の司会も務めた有働由美子(東京アナウンス室)・井ノ原快彦(V6)を司会(組司会・総合司会)の最有力候補であると報じたメディアが複数あった[84]。『東京スポーツ』(2011年8月11日付)はSMAPの中居正広が本紅白の司会就任に意欲を示していると報じていた。
井上は放送翌日、自身のブログで本紅白の感想を述べると同時に「この達成感はもう二度と味わえないことでしょう。けど、これからの紅白は、ゆっくりとお家で見させて頂きます」と綴っている[85]。実際井上の司会担当は今回1度限りとなっている[86]。彼女は後のインタビューでも今回の紅組司会での苦労を述べている[87]。
今回を最後に男性の総合司会およびNHKの男性アナウンサーの司会起用は第67回(2016年)まで行われなかった[88]。
特別企画、 初出場、 返り咲き
出場者発表時点では紅組28組、白組27組の計55組とされ、紅白22組ずつであった前回からそれぞれ6組、5組増加、合計出場者数では前回から11組の増加となった。
今回の出場者選考を巡っては、2011年8月23日に起きた島田紳助の暴力団関係者との交際を理由とした芸能界からの引退および同年10月1日に全都道府県で施行が完了した暴力団排除条例にまつわる影響が、選考を左右する重要な要素になると考えられて注目を集めた。紅白では暴力団絡みの事案の発覚によって落選や選考・出場の辞退に追い込まれた事態が過去に何度も発生しており、それは美空ひばりや北島三郎といった大物であっても例外扱いされない厳格さであった。この年NHKは出場歌手決定にあたり、改正した「倫理・行動憲章」に基づき、暴力団との関係がないかなどの事前チェックを念入りに行い、条例違反を起こさないようにした[96]。さらに、契約書に拠らない出演契約者に対するものとして、11月9日に放送総局長・金田新が「指針」という形で同じような基準を発表した[97]。この「指針」も歌手以外を含めた出演者選定のためのルールとなった。
そのようなことから、特に大物歌手・常連歌手の落選が続出し出場者選考が大波瀾になるという事前予想を立てた芸能マスコミも多く、例年にも増して社会的注目を大きく集める話題となったが、実際には「暴力団排除条例の施行を受けてNHKも指針を出しましたが、このことを理由に出演を見合わせる方はいませんでした」と番組側が公表している通り、前回選出で今回不選出の歌手の中に明確にこの指針が影響した結果の“選考除外”と言うべき者は見当たらず[98]、前回と大きく顔ぶれの変わることもない無風の選考というべき結果になった。一方で、この種の闇社会が絡む問題の常ではあるが、数少ない確固たる証拠に頼って判断を行わなければならない一方で、特に常連組として例年出場を続けてきた歌手においては落選が即座にその職業生命を直接に左右しかねず、番組側もその判断次第で様々なリスクを抱えかねないデリケートな問題でもあることから、今回はあえて指針抵触の見極めを表面化させず穏便に済ませて、実際に該当する人物の排除を本格化させるのは翌第63回(2012年)以降からになるとも言われていた[98]。
番組側による出場歌手の正式発表前に芸能マスコミ各社が選出を有力視・確実視する報道を行ったものの、実際には紅組・白組の出場歌手として選出されなかったアーティストが存在する。また番組側が出場候補に挙げたものの選出に至らなかったアーティストも存在する。以下はその事例の一部である。
前回出場者で不選出となった歌手・グループは以下の通り。
今回から第65回(2014年)までジャニーズ事務所所属アーティストが白組トップバッターを務めた。
紅組トリに石川さゆり、白組トリおよび大トリに2年連続でSMAP(この年デビュー20周年)が起用された。
チーフプロデューサーである原田秀樹はトリ選考に関し、前者については「紅組を象徴する歌手であり、日本を代表する歌手でもある。全身全霊で歌の主人公を務めて頂くのに相応しい。辛い別れを経験した女性が再出発するという歌の世界観も今年に相応しいのでは」「(同曲の舞台・青森県も震災で被害を受けたため)震災では東北3県と言われるけれど、全体を通して東北に元気をという思いと全く無関係ではありません」、後者については「今年デビュー20周年を迎え、北京で行った初の海外公演も話題になりました。(震災復興の)チャリティーソングを配信したり、映画やドラマ、舞台と幅広い経験をされた2011年を代表するエンターテイナー(であるため)」とそれぞれ説明した[125]。
SMAPの白組トリおよび大トリ起用は『スポーツニッポン』(2011年12月1日・12月21日付)の報道でかねてより有力視されていた。
実際選出者以外でトリ候補と各メディアで報じられた者について、紅組では松任谷由実[126]、天童よしみ[127]、松田聖子[128]、浜崎あゆみ[129]、白組では北島三郎[130]、千昌夫[131]がいる。
今回の石川を最後に紅組トリおよび「正規トリ」[132]への演歌歌手の起用は第67回 - 第69回(2018年)の石川までなかった。
ゲスト審査員の発表前、『スポーツニッポン』(2011年11月30日付)が「佐々木、松山、堀北真希(翌年上期の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』のヒロイン)、秋山幸二(この年日本一を達成した福岡ソフトバンクホークスの監督)、琴奨菊がゲスト審査員の候補に挙がっている」と報じた[133]。
平均視聴率は関東地区で第1部が35.2%、第2部が41.6%だった。年間視聴率では1位に立ったものの、第1部・第2部いずれも前回を下回った。その反面、仙台地区が47.0%、福島地区が47.5%(いずれも第2部)で、東日本大震災の被災地では例年より高い視聴率を記録した[134]。歌手別視聴率の1位はSMAPの48.2%、瞬間最高視聴率は結果発表前の49.7%だった[135]。
本紅白10日前の12月21日に放送された日本テレビ系ドラマ『家政婦のミタ』最終回の視聴率が40%(関東地区・ビデオリサーチ社調べ)を記録し本紅白前の時点で年間視聴率暫定1位となっていたため、本紅白との年間視聴率1位争いが話題となっていた。『サンケイスポーツ』では2011年12月31日付・2012年1月1日付とこのことを連続して報じており、後者ではNHK会長・松本正之のこれに関するコメントも掲載した(松本は「『家政婦のミタ』は意識していません」としていた。ちなみに、チーフプロデューサーの原田秀樹も「数字もドラマも意識していない」と同様のコメントをしている)。
主な裏番組の視聴率は日本テレビ系列『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!大晦日年越しSP!!絶対に笑ってはいけない空港24時』第1部の18.7%が最高だった。また、同番組の第2部は16.6%で、前年同様唯一の視聴率2桁となった[136]。
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