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国際科学技術博覧会 (こくさいかがくぎじゅつはくらんかい、英文表記 : The International Exposition, Tsukuba, Japan, 1985 、通称・略称: 科学万博 、つくば万博 、つくば科学万博 、つくば '85 、Tsukuba Expo '85 など)は、主に筑波研究学園都市 の茨城県 筑波郡 谷田部町 御幸が丘 (現在のつくば市 御幸が丘 )をメイン会場として、1985年(昭和60年) 3月17日 から同年9月16日 までの184日間にわたって行われた国際博覧会 (特別博)。
概要 国際科学技術博覧会 The International Exposition, Tsukuba, Japan, 1985, イベントの種類 ...
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国際科学技術博覧会の会場(つくば市提供画像)
開催前年の1984年撮影の会場周辺の空中写真。パビリオン等の施設の多くが確認できる。 1984年撮影の2枚を合成作成。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス の空中写真を基に作成 。
上記画像とほぼ同じ範囲を撮影した1990年の空中写真。パビリオン等の施設は撤去され再開発が進んでいる。 1990年撮影の4枚を合成作成。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス の空中写真を基に作成 。
1978年(昭和53年)に科学技術庁 がエネルギー問題を中心とした科学技術博覧会構想を立案し、9月22日にコンセプトプランを発表。1981年(昭和56年)1月にテーマや基本構想原案がまとまり4月22日に『「国際博覧会に関する条約」に基づく特別博覧会』として登録され開催が決定し、財団法人国際科学技術博覧会協会が主催となって行われた。
「人間・居住・環境と科学技術 (Dwellings and Surroundings - Science and Techonology for Man at Home )」を博覧会統一主題(いわゆる「テーマ」)とし、日本 を含む48ヵ国と37の国際機関 が参加した。総入場者数は、2033万4727人であった。首都圏 で行われた万博という開催場所の地の利も手伝って、この総入場者数は当時の特別博覧会史上最高入場者記録となった。会場面積は101.6ヘクタール 。
シンボルマーク
「宇宙」「地球」「人間」「科学」「芸術」などの未来像をイメージして作られたという。形は、青地の三角形の中に白丸と2個の輪が描いたものが使用された。三角形の頂点は「筑波の山々」を表し、みっつの角は、「人間」「居住」「環境」を、白丸は「太陽」を、ふたつの輪は「人間」と「科学」を表す。田中一光 作。
マスコット
マスコット キャラクターは「コスモ星丸 (ほしまる)」。1981年から1982年にかけて、日本全国の小中学生から公募され、当時愛知県 一宮市 に住んでいた中学1年生の女子生徒がUFO をイメージして描いたものに、選考委員だった和田誠 が仕上げを加えたものであるという[1] 。なお当初は「ピコちゃん」という仮称が付けられていたが、アンケート調査などを経て正式名が決定した[1] 。
CM や宣伝番組出演時の声優は富田耕生 。
入場料
当日発売入場券
大人:2700円
中人:1400円
小人:700円
前売入場券(2割引)
大人:2160円
中人:1120円
小人:560円
夜間入場券(午後4時以降)
回数券(5回分)
大人:12000円
中人:6000円
小人:3000円
閉会式
閉会式は、最終日の9月16日にエキスポプラザで行われ、皇太子夫妻が臨場の下、開催された。参加48の国旗・国際機関・28のパビリオンの入場行進の後、博覧会協会会長 土光敏夫、首相 中曽根康弘、皇太子らが式辞を述べ、国旗・BIE旗・科学万博旗・国際機関旗が一斉に降ろされ、BIE旗が1986年のバンクーバー国際交通博覧会 パトリック・リード(カナダ政府代表)に引き継がれた。その後、ブルガリア人民共和国・オーストラリア・カナダで開催される万博の成功を祈願して記念品が贈呈された。最後に、万博に参加した関係者に子供たちから花束が手渡され、蛍の光 が流れる中、閉会式が終了した。
筑波科学博・送電鉄塔「エキスポール」は、スリムな外観と力学的構造の簡潔な線の流れが近寄るにつれてダイナミックな印象を人々に与えるとともに、見る位置によって四本の支柱が二本あるいは三本に見え、景観に変化をもたらしている。特に、アームの付け根部分を円盤状にすることで、日本古来の方形の和室と円窓の調和美にも通じる美しさを表現している。現在でも6基が科学万博跡地にそびえたつ。諸元として、高さは45メートル、15万ボルトの電流を流している。1984年に完成。東京電力 の設計で、黒川紀章 がデザインコンサルティングを務めた[17] 。会期中夜間の人々の移動を考慮して、エキスポールにも屋外照明が設けられている[18] 。
会期終了後、メイン会場跡地は工業団地 (筑波西部工業団地)に転用され、Dブロック跡地には「科学万博記念公園 」が設立された。旧桜村 (現つくば市)吾妻の第二会場は、翌1986年 4月17日 にメモリアル施設である「つくばエキスポセンター 」として整備・開設され、現在に至っている。
博覧会終了後のパビリオン
筑波研究学園専門学校 2号館(万博記念館) 科学万博のソ連 館を移築したもの
「ソビエト連邦館」は、筑波研究学園専門学校 の2号館校舎「科学万博記念館」として再利用された。
テクノコスモスの大観覧車は、大阪府吹田市 のエキスポランド に移設され、名を「テクノスター」に変え2007年の閉園まで活躍、2009年11月に解体された。また、ビスタライナーもほぼ同時期にエキスポランドに移設された。
「国際連合 平和館」は、博覧会終了後の1986年3月、爆破解体 により取り壊された。
「エキスポプラザ」は博覧会終了後も残す予定だったが、解体業者が誤って屋根を支える柱を1本破壊してしまったため、やむを得ず予定を変更して解体された。
「ジャンボトロン」はサウジアラビア 、ニューヨーク 、中国 のいずれかに移設する案があったが、移設費の問題で解体された[19] 。
ポストカプセル2001
郵政省 は「ポストカプセル2001」というサービスを行った。これは、科学万博郵便局内に設置した専用ポストへ投函した、またはポストカプセル郵便であることを明記した手紙が、16年後の21世紀 最初の元日 である2001年 (平成 13年)1月1日 に届くというもの。配達当日には、郵政省が消滅し総務省 (郵政事業庁 )に再編されており、当時の郵便はがき 一葉の値段より値上がりし、郵便番号 も3桁から7桁化されていたが、326万636通の郵便物が差額無しで投函時の値段40円で郵便配達された。配達までは筑波学園郵便局 で保管されていた。
記念発行物
記念貨幣
記念切手
記念貨幣
記念入場券・乗車券
国鉄 水戸鉄道管理局 で発行されたもので、当時としては珍しい初歩的な立体フォログラフを表紙にあしらっていた。
硬券本体はニューセラミクス 製。
オルゴール付き乗車券、香りの出る乗車券なども発売された。
記念スタンプ
各パビリオンに設置されたシヤチハタ 製の大型スタンプ。パビリオンごとに建物やキャラクターなどがデザインされ、「無料で持ち帰れるおみやげ」として好評だった。
テレホンカード
つくば博関連の曲
公式のテーマ曲
各パビリオンのテーマ曲
「We will be one someday」(「日本政府館」のテーマ曲)
「The Fantasia Of Falls」(「滝の劇場・三井館」のテーマ曲)
「空に会おうよ」(「住友館 3-D ファンタジアム」のテーマ曲・作詞:矢野顕子 ・作曲・編曲:坂本龍一 ・歌:モモ )
「夢の旅人」(「三菱未来館」のテーマ曲・作詞:竜真知子 ・作曲・編曲:徳武弘文・歌:ダ・カーポ )
「君の瞳に恋してる」(「講談社ブレインハウス」のテーマ曲・作詞:康珍化 ・作曲:鈴木キサブロー ・編曲:勝山俊一郎・歌:SALLY )
「Fly to tha future,Spaceship C&C!」(「NEC C&Cシアター」のテーマ曲・作曲・編曲:TPO2(安西史孝))
「Breathe」(「健康・スポーツ館」のテーマ曲・作詞・作曲・編曲・歌:原田真二 )
「Bird Chorus」(「燦鳥館」のテーマ曲・作曲・編曲:冨田勲 )
「すてきなラブ・パワー」(「エレクトロガリバーの冒険・電力館」のテーマ曲・作詞:山川啓介 ・作曲・編曲:冨田勲 ・歌:野宮真貴 )
「ポエジー」(「ダイエー館 詩人の家」のテーマ曲・作詞:清水哲男 ・作曲:村井邦彦 ・編曲:ジョー・ジャクソン ・歌:戸川純 )
その他
「限りなき夢」(歌:三波春夫 )
「科学万博音頭」(作詞:宮本和夫・作曲:宮本英一・編曲:寺内タケシ ・歌:五木ひろし )
「HOSHIMARU音頭」(作詞:阿久悠 ・作曲・編曲:TPO(安西史孝)・歌:池田智子)
「万博音頭」(作詞:長坂嘉明・作曲・編曲:加納弘・歌:村田英雄 )
「つくば万博音頭」(作詞:磯部たけを・作曲:嶋淳平・編曲:白石十四男・歌:大塚文雄 ・比気由美子)
「つくば万博音頭」(作詞・神原一敬・作曲・編曲:山崎洋一・歌:鈴木幸錦・金沢はるみ)
参考:「つくば万博音頭」の2曲は単に同名であり歌詞・曲とも全く異なる。
「青い宇宙(コスモス)」(作詞:三浦徳子 ・作曲:都倉俊一 ・編曲:川村栄二 ・歌:オーロラ(石川晴美・鈴木祥仁))「ドリームキャラバン」キャンペーンソング
「素足のFalling Star」(作詞:友井久美子・作曲:都倉俊一・編曲:つのごうじ ・歌:オーロラ(石川晴美・鈴木祥仁))「サイエンストレイン」キャンペーンソング
「春色のエアメール」(作詞・作曲:EPO ・歌:松本典子 )「ポストカプセル2001」キャンペーンソング
オフィシャル・エアライン
日本航空 が「オフィシャル・エアライン」となり、ほぼ全ての機材に博覧会のロゴマークを入れて運行した他、多くのパッケージツアーを主催した。場内で運行されていたHSST も日本航空と名古屋鉄道 の共同開発によるものだった。
つくば博を舞台とした作品
アニメ
サザエさん - つくば博開催期間中、番組のオープニングで、サザエさんが東芝館に来ていた。当時『サザエさん』は東芝の一社提供 番組だった。
魔法の妖精ペルシャ - 原作が集英社 から刊行されていたことから、第39話『科学博カッパ騒動』はつくば博を舞台としている[28] 。
ミームいろいろ夢の旅 - でんでんINS館を出展していた電電公社→NTTの1社提供番組で、つくば博開幕前から頻繁に取り上げられていた。
漫画
ゴルゴ13 - リイド社 刊SPコミックス第66巻『シーザーの眼』の舞台になっている。広告代理店のAEと警視庁 にいる友人がタッグを組んで、軍事目的に転用される可能性のある精密機器をめぐって機密情報流出や会場でのテロ行為を阻止する描写が見られる。
超人キンタマン - 月刊コロコロコミック 1985年3月号(開幕1か月前に発売)に掲載された回の冒頭からつくば博会場が登場した。
特撮
CM
綜合警備保障 - つくば博でも警備を担当しており、CMでもつくば博会場の様子を見ることができた(閉幕後もしばらく提供番組(『FNNスーパータイム 』など)で流れた)。
その他
入場券のうち第1号「AA000001」は、博覧会名誉総裁 で当時皇太子 であった上皇明仁 に献上された[29] 。
つくば博を協賛した1984年 の「年末ジャンボ宝くじ 」は、売り上げが850億円で、当時の史上最高売上額だった[29] 。
「NEC C&Cパビリオン」内には、画面に映し出された隕石を射撃して打ち落とすというバーチャルコーナーがあった。当時の内閣総理大臣 だった中曽根康弘 は、「僕は昔、海軍 士官 だったからね。」と言い「A判定」を出したと、同パビリオンの館長が語っている[30] 。
『鉄鋼館』の映像ホールの立体映像は、偏光メガネをかけて見るものであったが、昭和天皇 (裕仁)の来場時には、映像による刺激緩和のため、偏光メガネをかけずに見たという逸話がある。
会場内には1700基のトイレ が設置された。
会場内の火災は、ゴミ箱の焼損が5件、倉庫の半焼が1件、電気配線接触部の加熱による建物の部分焼損が1件、演出用モーターの加熱による建物の部分焼損が1件の計8件だった[31] 。
会場内での刑法犯罪発生件数は、222件だった[31] 。
会場内での急病人発生件数は、25705名で、うち博覧会従業員は9975名だった。救急車出動件数は1273件で、1307名が付近の病院に搬送された。
国鉄列車「エキスポドリーム号」は宿泊需要に応える車中泊サービスだったが、通常の寝台列車 として見た場合『わずか2駅しか移動しない寝台列車』であることから鉄道ファン の間からも興味深いものとなっている。
夜になると、シンボルタワーの屋上から赤・緑・青のレーザー 光を夜空に向けて照射していた。
ガスパビリオンのシンボル「炎の樹」はガス供給による燃焼であるが、寒い時期には暖を取る人もいたという逸話がある。
会場内限定のスクラッチ宝くじ が定期的に発売された。これはスクラッチ部分での直接的な当せん以外に、特別賞に当せんすると会場内での「ナンバーズゲーム」(翌年に「グリーンジャンボ宝くじ」の特別賞として設定された「緑のナンバーズゲーム」の前身で、現在の「ナンバーズ3」に近い数字選択式抽せんくじ)に挑戦できるという当時としては画期的な仕組みであった[32] 。
この科学博覧会の仕掛人は、元通商産業省 技官 で当時は科学技術庁 研究調整局長(1983年6月~)で、科学博でも政府館総館長を務めた福島公夫 (のちつくば科学万博記念財団理事長)。
万博に関する貴重な資料が、筑波山神社 の保存専用蔵に保管されていた。通常は一般非公開であったが、2006年(平成18年)に「出没!アド街ック天国 」でつくば市 が特集された直後に、期間限定で一般公開されたことがあった。また、東ゲートにあった「宇宙の卵」が神社敷地内に展示されている。
会場内でスヌーピー をはじめとした漫画『ピーナッツ 』のキャラクターが宇宙服を着たデザインの商品が販売されていた[33] 。
出典
美の日本代表決まる『中日新聞』1985年9月14日22面
ミス・インターナショナル ベネズエラの22歳『中日新聞』1985年9月16日18面
<科学万博用の送電線路>エキスポール送電開始『新電気』38(12)(489)オーム社 [編] (オーム社, 1984年10月号
エキスポ-ルの投光照明 (科学万博--つくば′85の照明<特集>) -- (基幹施設の屋外照明(資料))『照明学会誌』 69(5), p238-240, 1985年5月号
国際科学技術博覧会公式ガイドブック(国際科学技術博覧会協会, 1985.3)
国際科学技術博覧会公式記録(国際科学技術博覧会協会, 1986.6)
国際科学技術博覧会茨城県公式記録(茨城県国際博協力室,1986.3)
国際科学技術博覧会茨城県公式記録写真集(茨城新聞社出版センター.茨城新聞 , 1986.3)
国際科学技術博覧会政府公式記録(科学技術庁 , 1986.3)
EXPO'85日本政府出展施設(国際科学技術博覧会協会, 1985)
BIRDS-I-VISION 自然-造型の秘密(三金会つくば科学博出展委員会, 1985.3)
エレクトロ・ガリバーの冒険・電力館EXPO'85の記録(電気事業連合会 , 1985.11)
「科学万博つくば'85」建築の記録(日本建築学会 , 1985.6)
コンパニオン らくがき帳(日本電気文化センター, 1985.12)
くるま館記録集(日本自動車工業会, 1986.3)
新電気別冊 科学万博ハイテクガイド(オーム社 , 1985.3.15)
毎日グラフ 増刊 科学万博ーつくば'85完全ガイド(毎日新聞社 , 1985.4.6)
学研まんがひみつシリーズスペシャル 徹底ガイド 夏だ飛び出せ科学万博つくば'85(学習研究社 , 1985.6.20)
Tsukuba Expo'85公式記録写真集(国際科学技術博覧会協会, 1986.6)
Tsukuba EXPO'85催事写真集(国際科学技術博覧会協会催事部, 1985.10)
昭和ニッポン 第23巻(昭和59-61年・1984-1986)(講談社 , 2005.6)DVD book
つくば科学万博クロニクル(洋泉社 ,2005.1)
Narita, Tatsushi (成田興史). 'Tsukuba 1985.' In Encyclopedia of World's Fairs and Expositions , ed. John E. Findling and Kimberly D. Pelle. Jefferson, NC and London:McFarland, 2008.