吉野家
日本の牛丼チェーン、および日本の東京都中央区にあるその運営会社 ウィキペディアから
日本の牛丼チェーン、および日本の東京都中央区にあるその運営会社 ウィキペディアから
吉野家(よしのや)[注釈 1] は、東京都中央区に本社のある日本の大手外食チェーンストアである。牛丼を主力商品とする。株式会社吉野家ホールディングス(英: YOSHINOYA HOLDINGS CO., LTD.)の子会社である株式会社吉野家(英: YOSHINOYA CO., LTD.)が運営する。
店舗例 | |
種類 | 株式会社 |
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本社所在地 |
日本 〒103-8517 東京都中央区日本橋箱崎町36番2号 Daiwaリバーゲート18階 北緯35度40分49.3秒 東経139度47分18.6秒 |
設立 |
2013年(平成25年)12月26日 (創業:1899年(明治32年)) |
業種 | 小売業 |
法人番号 | 6011501019200 |
事業内容 | 日本国内における牛丼等のファストフード店経営 |
代表者 | 河村泰貴(代表取締役社長) |
資本金 | 1000万円[1] |
売上高 | 462億2400万円(2019年2月期)[1] |
経常利益 | 134億8400万円(2019年2月期)[1] |
純利益 | 128億4400万円(2019年2月期)[1] |
純資産 |
138億3700万円 (2019年2月28日現在)[1] |
総資産 |
169億1500万円 (2019年2月28日現在)[1] |
従業員数 |
社員: 1,324人 パートタイム: 7,866人 (2021年2月末現在) |
決算期 | 2月末日 |
主要株主 | 株式会社吉野家ホールディングス 100%[1] |
関係する人物 | |
外部リンク |
www |
吉野家は、1899年(明治32年)に東京・日本橋で創業された。創業者・松田栄吉が大阪府西成郡野田村字吉野(現在の大阪市福島区吉野)の出身であったことが由来とされていたが[2]、2019年に社史を作成する過程で松田の親族に確認した際に、松田は東成郡住吉村(現在の住吉区北西部)の出身であり大阪・吉野は由来とはなりえず、この説は完全な間違いであったことが判明した。さらにこの時、吉野の桜(奈良県)を好んでいたことから屋号として採用したことが明らかとなり、以降は公式サイトでも訂正が実施され、そのように記されている[3][4]。2003年(平成15年)までは牛丼のみの単品販売が特徴的ともされ、2001年(平成13年)夏にはコスト削減による体制を整えた上で外食大手の低価格競争に追随し、牛丼並盛一杯280円という低価格と他のファストフード店と比べても一線を画す配給スピード(かつて存在した築地店の盛り付け速度は、1杯あたり15秒[5][6])で人気を集めた。バブル崩壊以降、ミスタードーナツやマクドナルドなどと共に、低価格路線を採った外食産業における代表的なチェーン店のひとつである。
現在は米国以外の国からも牛肉を調達しているが、2003年(平成15年)にワシントン州でBSE(牛海綿状脳症)感染牛が確認された当時は全ての牛肉を米国から輸入していたため、米国からの輸入が停止されると、牛肉の調達が不能になり、一時牛丼販売の休止に追い込まれ、営業の縮小や、牛カレー丼、豚丼などの代替商品の緊急投入を余儀なくされた。以降は多メニュー展開を行い、牛丼販売再開後も継続している。牛丼を休止した理由として、「米国産牛肉でなければ吉野家の牛丼の味が出せない」「米国産牛肉以外だったらタレの構成配分を変えなければいけない」「別の(肉をメインに使用した)牛丼を出したら『これ違う』と客から文句が出るに違いない」「長期的視野で間違いの少ない選択をするため」との見解を示している[7][8]。
米国産牛肉の輸入再開後、牛丼は販売休止以前よりも高い並盛380円で販売を再開したが原材料コスト高や採算性のなどの理由で、当時は牛丼の通常価格は値下げしない方針としていた[注釈 2]。2000年代後期に発生した牛丼低価格競争では、キャンペーンによる牛丼の期間限定値下げや低価格メニューの投入で対応していたが[注釈 2]、2013年になって280円に値下げした[注釈 2]。その後消費税8%増税により、2014年4月1日に300円になり、さらにその後、米国産牛肉が出荷量減少などで価格高騰。加えて急激な円安による輸入価格上昇で、同年12月17日から380円に値上げした。
本社が入居するDaiwaリバーゲート | |
種類 | 株式会社 |
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機関設計 | 監査役会設置会社[10] |
市場情報 | |
略称 | 吉野家HD |
本社所在地 |
日本 〒103-8517 東京都中央区日本橋箱崎町36番2号 Daiwaリバーゲート18階 |
設立 | 1958年(昭和33年)12月27日 |
業種 | 小売業 |
法人番号 | 2011501016151 |
事業内容 | 外食・飲食事業 |
代表者 | 河村泰貴(代表取締役社長) |
資本金 |
102億6500万円 (2019年2月28日現在)[1] |
発行済株式総数 |
6512万9558株 (2019年2月28日現在)[1] |
売上高 |
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営業利益 |
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経常利益 |
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純利益 |
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純資産 |
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総資産 |
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従業員数 |
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決算期 | 2月末日 |
会計監査人 | 有限責任監査法人トーマツ[1] |
主要株主 |
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外部リンク |
www |
株式会社吉野家ホールディングスは、吉野家グループの持株会社。外食産業の競争激化に伴い、従来の牛丼中心から多角的に外食事業を行なうために、持株会社化したものである。2007年(平成19年)10月1日に、会社分割により吉野家事業のみを行なう完全子会社・株式会社吉野家を設立して、従来の株式会社吉野家ディー・アンド・シーが株式会社吉野家ホールディングスに商号変更する形で、持株会社化した[11]。
持株会社制に移行したことで、牛丼事業を主軸としつつM&Aにより他の飲食店事業を積極的に傘下におさめ、グループとして幅広い事業に進出している。そのため、牛丼事業はグループの中心事業ではあるがグループの一事業との位置づけでもある。
今後は少子高齢化による市場の縮小も見込まれ、日本国内の牛丼事業は大きな伸びが期待出来ない事や、牛丼事業に頼り過ぎない収益を目指す事や原材料共同調達等の相乗効果を狙う等の理由から、同社は「総合的な外食産業になりたい」「企業買収を積極的に進める」(安部修仁社長(当時))という方針を出している。これに伴い、吉野家ホールディングスは多角化経営戦略を強く打ち出しM&Aと海外展開を積極的に進めている[12]。しかし、牛丼以外の中核事業と位置付けている子会社が低迷しており[13]、その影響で2008年2月期連結決算は最終利益が前期比91.1%減の大幅減益になったこともあって[13]、今後不採算店舗の閉鎖や運営の効率化、不採算事業の撤退も含めて方針を見直すことも検討している[13][14]。
2010年(平成22年)、本社機能を新宿区から北区赤羽南にある旧カルビー本社ビル(現:PALTAC東京支社)に移転。その後2015年(平成27年)、本社機能を中央区にあるリバーゲートに移転。
具を丼飯の上に盛ったメニューを「○丼」、具のみを皿の上に盛ったメニューを「○皿」と称している。
牛丼・牛皿 - 小盛・並盛・アタマの大盛[70]・大盛・特盛・超特盛[注釈 6]
吉野家の主力商品。注文における構成比は、BSE問題などの影響で減少してはいるものの、6割弱を占める(2008年(平成20年)5月時点)[71]。
牛丼並盛1杯(通常価格380円、対象期間:2008年3月1日 - 2009年2月28日)の内訳は、原材料費が41.0%、人件費が51.3%で残りの7.7%が利益との調査結果がある[72]。2009年(平成21年)にデフレの影響で、同業他社が再度牛丼など一部メニューの通常価格について値下げを行っているが、吉野家は通常価格について「値下げの予定はない」(広報部)と度々表明しており[73][74]、理由として「牛丼の値下げは客数が増えても利益が出ないから」と説明している[52]。ただし、期間限定で値下げを実施することがある[74][75]。
2010年(平成22年)4月13日、新メニューとして牛丼軽盛を開始したが、通常店舗では後に販売終了し、現在はそば処吉野家のみのメニューに変更。同年5月31日までの期間限定メニューで牛丼特大盛を販売した。
2011年(平成23年)5月17日、「次世代牛丼」として牛丼並盛のご飯を従来の260グラムから250グラムに減らし、具は85グラムから90グラムに増やした[76]。
2013年(平成25年)4月18日、米国産牛肉の安定的な供給が見込めるため、牛丼の並の価格を380円から280円に、大盛を480円から440円に、特盛は630円から540円に値下げを行った[77]。なお、4月18日より24日15時までは牛丼、牛丼弁当、牛皿、牛鮭定食、牛鮭サラダ定食、朝定食以外のメニューを一時休止する措置がとられた[78]。
2013年(平成25年)10月10日、築地店限定で販売されていたアタマの大盛(具は大盛、ご飯は並盛)が、大盛と同じ440円から並盛の価格から100円増しの380円に改訂され、通常店舗でも販売されるようになった[70]。
2020年(令和2年)1月8日より、これまで特殊注文として受け付けていた玉ねぎ量増量サービスを終了させる形で「ねぎだく牛丼」の販売を開始[79][80]。また、同年4月2日からは、具材の肉の量を増やした「肉だく牛丼」の販売を開始した[注釈 7][81]。秋には、モンスターボールがデザインされた丼ぶりの牛丼「ポケ盛」が発売され、ピカチュウ及び「ドン」が付くポケモン限定のフィギュアをランダムで1つ貰うことができ、大反響を集めた。2021年には、イーブイなどの人気ポケモンのフィギュアとのコラボレーションが実現した。
牛鮭定食に使用されている魚は鮭ではなく、トラウトである。2013年に日刊ゲンダイが取材した際、吉野家の広報では「トラウトは厳密に言えば“ニジマス”ですが、『サケ属』に属する魚です。弊社で使用しているのは海水養殖モノ。養殖モノでも海で育てば『サケ』、川だと『マス』の名称になると認識している」としている[106]。
専門用語を使ったオーダーも受け付けている[108][109]。
プリペイド型 | 楽天Edy | nanaco | WAON |
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ポストペイ型 | iD | QUICPay | |
交通系ICカード | Suica等 | ||
QR・バーコード決済 | メルペイ | PayPay | LINE Pay |
d払い | 楽天ペイ | au PAY | |
QUOカードPay | Alipay | WeChat Pay | |
クレジットカード | 一部店舗のみ |
代金は基本的にレジによる支払いであり、これは顧客と店員とのコミュニケーションを重視しているため[114][115][116]、伝統的に醸し出してきたひとつの文化[114]、という意味合いがある。
一部では「機会損失防止説」が自動券売機を置かない理由の定説として流布されているが、それは間違いであり逆に「労働生産性を徹底的に追求した場合、券売機は必然の道具」と𠮷野家側も認めているが、前述の理由にて収益が許す限り、レジによる支払いを続ける方針としている[114][116]。
ただし、駅ナカテナントなどの一部店舗においては、自動券売機が導入されている[注釈 9]。また、2010年(平成22年)から通常店舗の一部において、店舗維持・利益確保の対応策として実験的に券売機を導入している[117]。
日本国内の店舗において、一部商品券やジェフグルメカード、株主優待券などで支払いが可能(一部店舗除く)[118]。
電子マネーについては、2018年12月3日よりハウスカード「吉野家プリカ」を発売[119]。通常時は、チャージ金額の2%がボーナスとして追加チャージされる[120]。
WAONは、イオングループ外初の大型導入であり[118]、2009年(平成21年)5月11日より沖縄県全店舗で導入開始[48]、2010年(平成22年)4月28日までに一部店舗を除き全店に導入完了し[121]、吉野家WAONカードも発行している[44]。
Suicaなどの交通系ICカードは2018年12月に全店舗で利用可能になった。
2019年5月7日よりnanaco・QUICPayが利用可能になった。2019年7月4日より楽天Edy[118][注釈 10]、iDが利用可能になり、国内の主要電子マネーは全て利用可能となった。
QR・バーコード決済については、2018年12月3日にOrigami Payを[122]、2019年9月10日にPayPay、LINE Pay、メルペイ、Alipayを導入[123]。
クレジットカードでの決済については、Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、Discoverのクレジットカード・デビットカード・プリペイドカード・タッチ決済[注釈 11]に対応している[124]。なお、商業施設のテナントとして入居している店舗は、利用可能な支払い方法が異なる場合がある。
クーポンについては、CM(後述)を流して全国の店舗にて行う大規模なものから、新聞の折込チラシ、一部店舗による販促キャンペーンなど特定の範囲内で行うもの、特定商品購入時に付帯するもの[125][126]、など各種存在し、特典も店内・持ち帰りの一部商品を無料・値引き、特定条件を満たした時のみ無料・値引き、丼などの景品[127]、などと状況によって異なっている。
国内は1,213店舗、海外は976店舗(2023年7月末現在)[128]。海外は、中国に376店舗、アメリカに103店舗、台湾に58店舗、香港に58店舗、インドネシアに57店舗、タイに15店舗、シンガポールに12店舗、フィリピンに12店舗、マレーシアに9店舗、カンボジアに3店舗である(2017年2月末現在)。
基本は、馬蹄形(U字型)のカウンター席。「牛丼を単品で早く出す」ことに特化した作りである[71]。𠮷野家の利益率の向上に一役買っているが、2008年(平成20年)時点では来客の8割以上が男性一人であり、新たな客層を取り込む側面からはデメリットである。そのため、ファミリー層や女性グループなど取り込みたい客層に応じて、後述のテーブル型を増やすといった出店戦略を採るようになった[71]。飲食業として日本で初めて24時間営業を行ったのは吉野家である[129]。
一方で、1996年に韓国に進出したが、短期間で撤退を余儀なくされた。上記のような一人客に最適化されたカウンター席が、現地の食文化にマッチしなかったためと言われている(韓国では、食事は大人数でするものであり、日本のような一人飯文化がなく、周りから友達がいない寂しい人と思われる)[130]。
市場調査の為、実験的店舗を開設することがある。いずれも1990年代後半頃に通常型店舗に改装、または閉店した。
「オレンジドリーム号」と称するキッチンカーを3台保有している(東北/関東、中京、関西各1台)[158][159]。主に店舗改装時に使用されるが稼動スケジュールに余裕があり約300食以上が見込める場合は外部イベントでも活用されるほか、災害被災地(2011年の東日本大震災や、16年の熊本地震)への炊き出しにも活用されている[160]。牛丼弁当のみ提供される。
2021年6月、神奈川県横須賀市で実施。産業用ドローン開発のエアロネクスト社の開発したドローンを利用して、5km先の横須賀市立市民病院まで牛丼を配送するサービスの実証実験が行われた[162]。
吉野家は、牛丼屋であることから 「吉牛」(よしぎゅう)と省略した愛称で呼ばれることも多い。しかし、一連のBSE問題の影響で牛丼の販売が出来なくなっている間については、主力商品を豚丼にシフトしていたことから、自然発生的に 「吉ぶー (よしぶぅ)」 という愛称でも呼ばれるようになった。吉野家側もその愛称を公認し、2004年(平成16年)3月よりマスコットキャラクター「吉ブー (よしぶー)」別称:BOOちゃん(ぶーちゃん)、「吉ギュー(よしぎゅー)」別称:GYUちゃん(ぎゅーちゃん) を登場させて広報活動を行っていたが、2006年(平成18年)10月31日に一旦終了した。2012年(平成24年)6月よりこれらに代わるキャラクターとして「よっぴー」が誕生したがこちらも2024年(令和6年)7月以降より新キャラクター「吉野家ドンどん丼ぶりーズ」(吉ギュー・吉ブー・吉コッコ)[171]に取って代わられる形でそのまま採用終了となった。なお、先代マスコットキャラクターの「よっぴー」に関しては主に同社のモバイルサイトを中心に広報活動を行っていた。
吉野家は「吉」の字に「𠮷」(「土」の下に「口」、つちよし、「𠮷」も参照)の字体を用いている。しかしながら、そのメジャーさとは裏腹に日本の文字コード規格でこの字体は包摂の対象になっており、表示できない環境もある[注釈 13]。
本文中では「吉野家」と表記する(公式ウェブサイトでの社名の表記には画像が用いられているが、一般では、「吉」(「士」の下に「口」)で代替表記される)。
また、「吉野屋」と誤表記されることが多い。過去には吉野家の家を強調する新聞広告を出したこともあった[172]。
2010年(平成22年)8月23日から吉野家はTwitter公式アカウント「@yoshinoyagyudon」で情報発信を開始した[173]。文体の特徴として「ぎゅう」を多用する独自のスタイルが定着している[173][174]。
新日本プロレスのスポンサーでもあり、コラボ企画として所属選手である真壁刀義や中邑真輔を起用した限定CMや、冠スポンサー大会となった「吉野家 Presents KIZUNA ROAD 2013」では新日本プロレスとのコラボどんぶりが制作され抽選でプレゼントされた。
2021年7月から2022年3月にかけて実施された、漫画『魁!!男塾』とのコラボキャンペーンの賞品として、一定のポイントで獲得できる「お名前入りオリジナル丼」に関して、キャンペーン規則上の名前に関する事項が後になって変更されたことにより、SNS上で批判が起こる事になった[184][185][186]。
キャンペーン開始当初吉野家側はオリジナル丼に記載できる名前について細かな規則を設けてなかったが、埼玉県のトランポリン場の運営者がオリジナル丼に記載するために屋号を丼に記載できないか問い合わせたところ、吉野家側は「家族、友人等第三者、キャラクター、タレント、ニックネームなどは使用できません」と回答、規則にはこのような事項が無かったと指摘すると「どう考えても実名であるとは考えられません」「問題はないと判断してますので、訴訟されるとのことでしたら、弊社弁護士が真摯に対応させていただきます」と返答があった。このことを運営者がSNS上で明らかにしたことで批判が起こった。
吉野家側は公式サイトおよびTwitterで一連の事態に対し謝罪するとともに、条件付きで本名以外の名前を入れることを認める措置を執った。なお、吉野家側は条件の変更理由に関して、「著作権侵害など第三者の権利侵害のリスクのある名前を入れるべきではないと判断した」、周知の不十分さについては「本名の名入れを前提と考えていた」と各社の取材に対し回答している。
2022年4月16日に早稲田大学で行われた講座[注釈 14] の中で、吉野家HD執行役員で吉野家常務取締役企画本部長(当時)の伊東正明[187] による不適切発言があったことが、受講生のSNS投稿により判明した[188]。吉野家は18歳から25歳までの若い女性の集客に苦戦しており、こうした女性たちを取り込む施策を考えて欲しいと説明する過程で以下のように話した[189]。
…… 田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢・生娘な内に牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば、(牛丼は)絶対に食べない。 — 2022年4月16日、早稲田大学の講義内での発言
伊東はこれを「生娘をシャブ漬け戦略」とし、笑いながら複数回発言[189]。投稿した受講生は「企業の社会的価値が求められる時代に、顧客を中傷する発言をすることに強い怒りを覚えた」と語り、「本心は分かりませんが教室にいた受講生の中には笑っている人もいて、温度差を感じました」とも語った[189]。当時、教室には早稲田大学の教授をはじめ「デジタル時代のマーケティング総合講座」の講師陣、運営スタッフが数名同席していたが、その場で注意する人物はいなかったという[189]。
同月18日、吉野家は公式ホームページにおいて、伊東の不適切発言について「人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません」とし、「講座受講者と主催者の皆様、𠮷野家をご愛用いただいているお客様に対して多大なるご迷惑とご不快な思いをさせたことに対し、深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした」と謝罪し、伊東の処分を含め厳正に対応するとした[190]。 吉野家HDは18日付で「人権・ジェンダー問題の観点から到底容認することの出来ない職務上著しく不適切な言動があった」として伊東を、吉野家HD執行役員および吉野家常務から解任したことを19日午前に発表した[191]。さらに、吉野家HDと同グループ役員に対するコンプライアンス研修を5月に開催することや、河村泰貴社長の月額報酬を4月から3か月の間3割減とすることを明らかにした[191][192]。
伊東と社外アドバイザー契約を結んでいたアクセンチュアも「不適切な発言は誠に遺憾であり、到底許容できるものではない」として、19日付で契約解除したことを発表[193]。同様にM-Forceも19日付で伊東とのパートナー契約を解除した[194]。
早稲田大学社会人教育事業室も18日、「性差別・人権侵害にあたる不適切な発言」として謝罪し、伊東を講師から解任したことを明らかにした[195][196]。なお、この発言は計29回・受講料38万5000円の講座の第1回目であった。当該講義終了後、早稲田大学社会人教育事業室の責任者は、受講者に対し、講義の中で不適切な表現があったことに対する詫びを伝えたという[197]。
吉野家は今回の不祥事を受け、同月19日に予定していた新商品(親子丼)のCM発表会を急遽中止した[198]。この商品は、不祥事が起こる前に「箸やレンゲが止まらない」という中毒性を匂わせるコンセプトが明らかになっていた[199]。新商品はテレビCMや店頭広告看板が無いまま、19日から販売を開始した[199]。
弁護士の伊藤和子は、「マーケティング戦略について語った言葉で、これほどの女性蔑視が含まれているということは極めて深刻で、女性差別や誤ったジェンダー意識が経営やマーケティングの根底に深く埋め込まれていたのではないか」「経営体質を刷新する取り組みが必要」と論じた[200]。
経営評論家の坂口孝則は、『高い食事を知ると、牛丼を食べなくなる』という発言について、「これは逆に言えば、価格以外の優位性がないと自ら表明していることになる。これはマーケティングの講義として逆効果ではないだろうか」と指摘し、講義内容の確認体制について、「講義スライドには問題発言は盛り込まれていなかったとしても、通常ならば説明内容がどれだけ炎上するかは周囲の社員や秘書の方々だったら理解できたはずだ。もしかすると、この手の発言が社内で容認されていたのではないかと想像させる。こうした想像をさせるのが企業にとっては問題だ」と論じた[201]。
米・イェール大学助教授[注釈 15] で実業家の成田悠輔は、「こうした問題について語る時、すぐに『炎上をどうやったら避けられるか』とか『どの言葉遣いを避ければいいのか』といった処世術、小手先の戦略論になりがちだ。しかし根本的な問題は背景であるステレオタイプや価値観のゆがみであって、言葉はその一つの現れでしかない。だから言葉をどうアップデートすればいい?みたいな議論は本質から目を逸らしていると思う。」と論じた[202]。
2022年5月、就職活動をしていた日本国籍の大学生が𠮷野家の採用説明会の参加予約を行ったところ、採用担当者が国籍の確認作業を怠り、当該学生を外国籍と勝手に判断したうえで「就労ビザの取得が非常に困難」と説明して、当該学生の採用説明会参加予約を取り消した旨のメールを送信した。このことが当該学生によりTwitterに投稿されて拡散し、𠮷野家の対応に批判が集まった。𠮷野家は採用サイトに「組織の活性化を目的に、外国籍社員の積極的な登用を続けています」と明記しており、今回の対応に関して採用サイトの記載との齟齬が指摘されるほか、厚生労働省による「外国籍であることのみを理由に、企業などが採用面接などの応募を拒否することは、公正な採用選考の観点から適切ではない」との指針からも逸脱した対応が問題になっている[203][204]。
吉野家の広報担当者は今回の事例に関しては「国籍については、いつもは確認を取っていますが、今回は、漏れてしまっていました。なぜ確認を取らなかったかの理由については、現時点では分かっていません。参加申込情報から外国籍と思われる方へは本来、先ず連絡をすべきところ、連絡の過程において不備がございました」と不手際を認めた上で、「外国人の就労ビザの取得は非常に困難であり、内定取り消しをせざるを得なくなったことが一定程度ございました。ビザの取得をできず内定を取り消された方の心象を慮るあまり、外国籍の方は新卒の会社説明会のご応募をいただいても参加をやむなくお断りしておりました」と外国籍の説明会参加取消となった事例を挙げたうえで釈明している[204]。その後、5月9日に吉野家ホールディングスは、今後は採用説明会の参加希望者へ事前に国籍を確認することをやめて全員が参加できるものとし、内定後に就労ビザを取得できないリスクについては説明会で周知する運用に改めた[205]。
日本経済団体連合会(経団連)会長の十倉雅和は5月9日の定例記者会見において、「人権や多様性は世界の常識。そういうことが起きたのは残念。就労ビザが取れなければ就職させられないが、それは面接の時に説明すればいいこと」とコメントし、吉野家の対応を批判した[206]。
2021年10月に、同社本社に勤務していた男性社員が提出した人事評価の自己評価欄について、上司が評価を低くする形で改竄していたことが、東京管理職ユニオンによって明らかにされた。この男性は他にも、声を荒げての叱責を受けたり、背を叩かれるなどし、休業を余儀なくされたという。同社側は男性に謝罪し、解決金を支払ったという[207]。
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