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厚切りの肉片、またはその調理法 ウィキペディアから
ステーキ(英: steak)は、牛の上質な部位の精肉で、筋繊維の走行に対して垂直にカットされた比較的厚切りの肉片。日本においては、その肉を使った料理や調理法を意味する用語として用いられることが多く[1][2][3][4][5]、食材としてのステーキについては「ステーキ肉」などと区別して呼ばれる。
なお、細切れや薄切りにされた肉や、ひき肉などをステーキ状に整形したものをステーキと呼ぶ場合もあり、また牛以外の素材に対しても用いられることがある。
ステーキは、もっともシンプルな肉調理であるため、「肉そのものの味」が大きな影響を与える[5]。よって、肉の種類・部位・質の選定が大切となる[5]。
肉質は牛種や血統、牛が育った環境や飼料によって異なり、部位によって味や食感が大きく異なる。また焼き方やその技術、調理に用いる器具や熱源によっても味が変わる。筋切りや熟成といった処理も影響する。また添えられるソースや薬味も重要な要素である。
レストランがステーキ用の牛肉を用意する場合、一般に、数日間から数週間、冷蔵庫などの低温下で組織中の酵素の作用により熟成した肉を使用する(牛肉の表面にカビが生えるまで熟成させ、そのカビが繁殖した場所を切り落として使用する店もあり、これを乾燥熟成肉と呼ぶ。)。家庭でステーキを調理する場合は、一般には、肉屋やスーパーマーケットの「肉売り場」で「ステーキ用」と書いてある肉などを買い、即日か数日のうちに調理することになる。柔らかく良い肉の場合、下拵えは筋切り程度で十分だが、硬い肉を柔らかくしたり、香辛料や調味料で下味をつけたりという工夫も行われる。
牛肉は生食も可能な食材であるため、レストランではあらかじめ食べる人の希望を訊ね、その指示に従って調理する。しっかり火を通す焼き方を「ウェルダン」、表面だけ火を通す焼き方を「レア」、その間の状態を「ミディアム」と呼び、さらに細かい指定もある。
焼く直前、あるいは焼いている最中に塩、胡椒などで下味をつける。にんにくのスライスなどと同時に焼いて香りを付けることもある。仕上げにブランデー・ウイスキー・ワイン等でフランベするとより香りが良くなり風味も増す。焼いた素材の上にレモンの輪切りや香草を練り込んだバターを添えることもある。
フランス人が日常的に食べるステーキはステック・フリットと呼ばれる揚げたじゃがいもを添えたシンプルなものだが、伝統的なフランス料理はソースを非常に重視するため、高級店などでは上質の肉にソースをかけることもある。
質の悪い肉、硬い部位などをそのまま加熱調理すると、噛み切れないほど硬いステーキが出来上がる事がある。欧米では「靴底のようなステーキ」という表現があり、良くないステーキの典型のひとつである。(諸事情により)比較的硬い肉を選んでしまった場合は、そうした事態を避けるため、調理前にビールや赤ワイン、牛乳やパイナップルジュース、キウイの摺り下ろし、玉ねぎや大根、炭酸ドリンクなどの飲料などに数十分から一晩ほど漬け込んで主に果物に含まれる酵素の作用を利用して肉が柔らかくなるようにしたり、筋切器(ミートテンダー)やミートハンマーなどを用いて物理的に肉質を柔らかくしておいてから加熱調理する、ということも行われている。
良質の肉の場合に限られるが、最もシンプルな食べ方として、下味のみで何も加えずに食べるという方法がある。塩やコショウなどのシンプルな調味料だけで、あくまで肉そのものの旨みを楽しむ人も少なくない。一般的にはステーキソースやウスターソース類をかけて食べることが多い。トマトケチャップや醤油といった調味料を好む人もいる。薬味としてホースラディッシュやマスタード、にんにく、からし、わさびなどを用いることもある。
ステーキの付け合わせには、ジャガイモ・ニンジン・豆類・コーンなどの温野菜が盛りつけられることが多い。日本の一部の店舗や台湾夜市などではパスタを添えることもある。通常は肉と付け合せの野菜以外にパンが添えられる。日本人は多くの場合ステーキを「おかず」として認識するため、主食であるライスを選択する。食中酒としては赤ワインを選ぶのが常道である。
ステーキを食する際は左手にフォーク、右手にナイフを持ち、肉の左側から一口大にカットし、そのまま左手のフォークを持ち替えず肉を口に運ぶのがマナーである。しかしアメリカはカジュアルなスタイル、くだけた態度も許されることが多いので、肉全体を一口大にすっかり切り分けてしまってから、右手にフォークを持ち替えて食べる人もいる。和食料理店では箸で食べる都合上、料理人の手で切り分けられてから供されることが多い。
ステーキとしてカットされる肉は、柔らかく味の良い上質な部位に限られる。日本の食肉小売品質基準で規定されている牛肉の名称では、以下の部位が用いられる。
以下は骨付きステーキ。日本の解体法とは異なるため、輸入肉のみに存在するカットである。
これらの精肉以外にも、内臓肉に分類されるサガリ(ハンガーステーキ)、ハラミ(フランクステーキ)、ミスジなどの部位もステーキとして用いられる。
基本として生焼きの「レア」、充分に火の通った「ウェルダン」、その中間の「ミディアム」の3つがある。さらに細かく分けると、レアとミディアムの中間の「ミディアム・レア」、ミディアムとウェルダンの中間の「ミディアム・ウェル」がある[6][7]。
生肉からすっかり火を通し切った状態までの、各段階を細かく網羅的に挙げると以下のとおり。
また、非常に高温に熱した鉄板やグリルで短時間で表面を焦がす「ピッツバーグレア(英:pittsburgh rare)」あるいは「ブラック・アンド・ブルー(英:black and blue)」といった焼き方もある。
成型肉を「ステーキ」「ビーフステーキ」「○○ステーキ」など「ステーキ」と表示することについて、景品表示法上の問題が指摘されている。
消費者庁では、一般消費者は「生鮮食品」の「肉類」に該当する「一枚の牛肉の切り身」を焼いた料理と認識することや、牛の成型肉は「生鮮食品」の「肉類」に該当する牛の生肉の切り身ではないことなどから、「ステーキ」と表示すること自体が景品表示法第4条第1項第1号(優良誤認)に抵触するとの見解を示している[9]。一方、東京都福祉保健局は「牛肉(サイコロステーキ)」「牛肉加工品(サイコロステーキ)」など、「ステーキ」の表示とともにJAS法に基づく適切な名称の記載を推奨している[10]。
魚の場合も肉と同様に、長軸方向に対して垂直な筒切り(輪切り)を「ステーキ」と呼び、背骨に平行に削ぎ取られた「フィレ」(いわゆる三枚おろし)の対義語となっている。ただし一般の日本人にはほとんど周知されておらず、冷凍状態で輸入される切り身の流通時を除き、用語として正確に使用されることは稀である。
以下は本来のステーキの意味からは外れるが、慣用的に呼ばれているものである。
英語における用法では、日本で一般にイメージされる鉄板で焼いた厚めの一枚肉からはかけ離れたものも多い。
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