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火による災害 ウィキペディアから
火災(かさい)は、火による災害。消防統計上は「人の意図に反して発生拡大または放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの、又は人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象」と定義される[1]。火事(かじ)と呼ばれることもあるが、火災と火事は区別される[2]。また、火難(かなん)などともいわれ、小規模な内に消し止められたものは小火(ぼや)、焼失面積が大きく被害が甚大なものは大火(たいか)ともいう。被害は有形財産の焼失はもとより、消火の際に水等に濡れて汚損されて損失となる場合や、怪我人や死者がでることも頻繁にある。山林で起こる林野火災のことを特に山火事という。
火災の多くはタバコの不始末、焚き火などの火の使用、そして放火などの人為的な理由で起こる(#火災原因)。落雷や火山の噴火、乾燥した自然林が倒れる等の自然現象を原因とする場合もある。これらの火災の結果は、火災層として地層に残る場合があり、歴史を知る証拠となる[3]。
小規模な火災のうちに消し止められた場合は「小火」(ぼや)と呼ばれることが多く、この他に被害程度によって「半焼」(はんしょう)や「全焼」(ぜんしょう)と区別されることがある。これに対して街区全体が被害を受けるような大規模な火災では「大火」(たいか)と呼ばれる[注 1]。
住宅火災などの場合は、消防隊の他に被害の拡大を防ぐため、ガス会社・電力会社・水道会社などに連絡して各社が遮断作業を行うよう手配する[5]。
日本の消防庁では「火災報告取扱要領」において、次の3つの要素を満たすものを火災としている。
ただし、人の意図に反して発生(若しくは拡大)した爆発現象の場合は、2および3の有無にかかわらず火災とする。
また、火災となるには燃焼反応が継続する必要がある[6]。
火災損害とは火災による直接的な損害をいい、消火のための経費、焼跡整理費、り災のための休業による損失等の間接的な損害を除いたものをいう[1]。
焼損の程度は以下のようにに分けられる[1]。
火事による損害は、火炎だけでなく放水での水濡れによるものがある。高圧で噴射される大量の水は、屋内の家財のみならず家そのものを破損しうる。 火災保険において、放水による損害がどのように扱われるかは契約内容によるが、一般的にはカバーされている[7][8]。
火災はばい煙を発生させ、周囲の空気を汚染し、呼吸困難を引き起こす。
また、避難経路の確保も重要である。避難経路や非常口には物を置かず幅を広めにとり、視界も確保する。他に配慮する点としては身体的弱者、例えば高齢者や子供は逃げやすい場所を寝室にする、火災警報機や防火戸を設置することなどがある。避難経路、道具については実際の使い勝手を確かめることが肝要である。また、後述のように死因は煙を吸うことによる一酸化中毒が大半を占めるため、それに配慮した避難経路や道具の設置場所かを考える必要がある。
地面に寝転がり、そのまま体を転がして、燃えている部分を押し付ける形にして窒息消火を試みる[15]。
木造家屋が多い日本では江戸時代より大火が多く、明暦の大火など江戸市街の相当部分を焼失する火災がしばしば発生した。近代では函館市の大火(1907年、1934年)や、1923年の関東大震災、1945年の東京大空襲、1995年の阪神・淡路大震災による大火、2016年の糸魚川大火が有名である。地震や空襲による火災は複数箇所で発生し、延焼地域が繋がって大火に至る場合が多い。プロパンガスを使用している場合や燃料など可燃物を設置している場合などは、ボンベの爆発等による危険を伴う。
基本的に火の使用が原因である。消防白書(令和3年)によると上位5つは上から、
であった[16]。その他の原因もバーベキュー[17]、蚊取り線香[18]、薪風呂(薪ボイラー)[19]、薪ストーブ[20][21][22]、あぜ焼き[23]、芝焼き[24]など、火を使うものこと全般が挙げられる。
たばこによる出火は喫煙率の低下に伴い1996年から減少傾向だが、死者の発生した建物火災の出火原因では、タバコが1位となっている[25]。東京消防庁では、喫煙マナーの低下(特に、屋外での吸い殻の処理方法が不適、投げ捨て)が原因とされる。不適な処理方法が火災発生原因となった1,803件の理由のうち、半数以上の1,061件が「無造作に捨てた」である。特に冬場などは、枯草が増加する上に乾燥により延焼拡大の危険性があり、十分な注意が必要であると広報している。[26]
令和3年度の火災のうち、3104件で全火災の8.9%を占めており、中でも「不適当な場所への放置」によるものが6割以上と大半を占める。たばこが原因の火災による損害額は、44億1627万円となっている[27]。
強風に煽られて家屋に燃え移る。3月が突出して多い[28]。
令和3年度のこんろによる火災のうちでは、ガスコンロの消し忘れによるものが2359件と最も多かった[16]。
放火については、刑法上、殺人と同じ刑が定められている[注 5]が、殺人年間件数約1,300件に対して、放火年間件数は約8,000件と数倍にのぼっている。なお、放火(現住建造物等放火)犯を殺人と同様に重く罰するのは木造の長屋が大半だった江戸時代からの流れを継いでいる。江戸時代には江戸でたびたび大火が起きた(江戸の火事)。
日本における放火火災は、かつて農村部に多く[29]、「農村型犯罪」(田舎型犯罪)のように扱われてきた。背景には家族ないし近隣との人間関係の軋轢が存在することが共通条件となっている例が多数を占めた。だが現在では、自分自身が何らかの欲求不満の状態にあり、耐え難い緊張感を解消するために挑戦的な放火にはしる「都市型犯罪」に変化している。
国内における出火原因では、「放火及び放火の疑い」は減少を続けており、令和3年度は上から4番目、前年比9.4%減であった。
農家による作物残渣の焼却が延焼を起こすケースが目立つ。毎年春ごろになると、山火事への注意喚起と合わせて予防運動が行われている[30]。
日本では毎年約5万件前後の火災が発生している[27]。
月別に見てみると、2月・3月に多い。乾燥した気象条件の時に火災が発生しやすいからであり、実効湿度・風速と火災発生件数は相関関係にあることが判っている。そこで、毎年この時期に「春の全国火災予防運動」が実施されている。
火災による死者は、高齢者になるほど多くなる。年齢階層ごとに火災で死亡する確率を求めると、40歳を超えた辺りから、年齢に比例して死亡確率が高くなっている。これは、加齢するに従い、判断力や身体機能が衰えるからだと考えられている。ただし、直近の傾向として無職や独身住まいの男性熟年層(45〜64歳)の死亡者数が急増していることが、消防庁の調査で判明している[31]。
出典:[27]
2013年中の建物火災による死者数は1,254人で、火災による死者の総数に対する比率は77.2%となっている。
建物火災による死者1,254人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下、ことわりのない限り同じ)での死者は1,100人で、建物火災による死者の87.7%を占めている。
2013年中の住宅火災による死者[注 6]を発火源別にみると、たばこによるものが141人(14.1%)で最も多く、次いでストーブ103人(10.3%)、電気器具77人(7.7%)の順[注 7]となっている。
2013年中の住宅火災による死者[注 6]を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類に着火した火災による死者が112人(11.2%)で最も多く、次いで衣類66人(6.6%)、屑類47人(4.7%)の順[注 7]となっている。
2013年中の住宅火災による年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数[注 6]は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に85歳以上の階層では、全年齢階層における平均0.78人に比べ5.2倍となっている。
火災原因の究明と損害の調査(火災調査)は法に基づき消防が行うこととされているが、特に放火など不審火の場合、警察もまた捜査を行う[注 8]。
火災の年表も参照。日付は1582年10月4日まではユリウス暦、1582年10月15日からはグレゴリオ暦で表記。江戸の火災については「江戸の火事」も参照。
17世紀前期のアメリカ合衆国では木造建築が多く、暖房と調理に暖炉、照明に蝋燭や石油ランプが用いられるようになっていたが火災が続発し、特に17世紀中頃のボストンでの大規模火災を機に常設の消防が組織されるようになった[37]。アメリカ合衆国では1979年に連邦危機管理庁が設置され、同庁の連邦消防局が消防行政を所管することになった[37]。
2007年度の火災出動は804,100回で、うち384,600回が実際の火災であった[38]。その76%が車両火災や草原火災などの戸外火災で、14%が住宅火災であった[38]。
韓国では1958年に消防法が制定されるなど自然災害と人為災害に関する個別法が整備された[39]。災害関連の個別法は1990年代後半に自然災害対策法と災難管理法に統合され、2004年には災難及び安全管理基本法が成立した[39]。
中国における火災による年平均損失[注 9]は、急速な工業化に伴い、1950年代には約0.6億元だったが、1960年代には約1.4億元、1970年代には2.4億元、1980年代には約3.2億元、1990年代には約10.6億元となり、2010年代前半には約15.5億元にまで達した[40]。2011年度の火災発生件数は125,417件であった[40]。
2006年の消防隊の出動件数は3,564,191回で、うち火災及び爆発による出動は187,604回であった[41]。出動件数3,564,191回のうち、63.2%が常備消防隊、32.8%が義勇消防隊、4.0%が事業所消防隊の出動であった[41]。
2008年の消防の出動件数は402万7900回で、大半は救急救助出動であり、火災出動は31万2100回 (8%) であった[42]。2008年の火災による消防出動の割合は、住居火災が28%、乗り物火災が20%、公道上火災が17%、林野等火災が15%であった[42]。
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