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カキノキ科の落葉樹 ウィキペディアから
カキノキ(柿の木[2]、学名:Diospyros kaki)は、カキノキ科 (Ebenaceae) カキノキ属[3] の1種の落葉小高木である。東アジア原産[3] の同地域固有種。日本や韓国、中国に多くの在来品種があり[3]、特に中国・長江流域に自生している。属名のDiospyrosとはギリシャ語でdios(「神の」)+pyros (「穀物、あるいは小麦」)から成る造語であり、「神の食物」という意味である[4]。
カキノキ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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柿の実(カキノキの果実) | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Diospyros kaki Thunb. (1780)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
カキノキ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Kaki Persimmon Persimmon |
熟した果実(柿)は食用とされ、日本では果樹として、北海道以外で広く栽培されている[3]。果実はビタミン類や食物繊維を多く含むことから、現代では東アジア以外の地域でも栽培・消費されている。ヨーロッパ産(2018年時点で54万トン)ではスペインが9割を占め、中国に次ぐ世界第2位の生産国である[5]。
幹は家具材として用いられる。葉は茶の代わり(茶外茶)として加工され飲まれることがある。果実はタンニンを多く含み、柿渋は防腐剤として用いられる。現在では世界中の温暖な地域(渋柿は寒冷地)で栽培されている。
学術上の植物名はカキノキ、果実はカキ、あるいは一般的に両方を含めてカキ(柿)と呼んでいる[6]。野生状のカキノキは、「ヤマガキ」(学名: Diospyros kaki var. sylvestris[7])ともよばれている[8]。
和名カキノキの語源は、赤木(あかき)、暁(あかつき)の略語説、あるいは「輝き」の転訛説など諸説あるが、正確にははっきりしない[9]。一説には、赤色に熟した実から「赤き実がなる木」が転訛したものともいわれている[10]。原産である中国の植物名(漢名)は柿(し)である[11]。学名は、ディオスピロス・カキ(Diospyros kaki)といい[12]、日本から1789年にヨーロッパへ、1870年に北アメリカへ伝わったことから、学名にも和名の発音と同じ kaki の名が使われている。果実は日本で食用として親しまれた果物で、英語でもカキ・フルーツ(kaki fruit)、ドイツ語やフランス語など英語圏外の大抵の地域でもカキ(kaki)の名で通っている[12][6][13]。
英語で柿を表すパーシモン(persimmon)の語源は、アメリカ合衆国東部の先住民(インディアン)の言語であるポウハタン語で「干し果物」を意味する名詞「ペッサミン」(putchamin, pasiminan, pessamin) であり、先住民がアメリカガキ Diospyros virginiana の実を干して保存食としていたことに基づく。
近年、欧米ではイスラエル産の柿である「シャロン・フルーツ」(sharon fruit) が流通しており、この名で呼ばれることも多い。これは当地のシャロン平野に因む名である。
東アジアの日本・中国の揚子江沿岸の原産といわれている[11][9][13]。日本特産で、日本で果樹として改良され[11][9]、営農作物としては北海道を除いた青森県以南の本州・四国・九州までの各地で栽培されている[14][12]。北海道では伊達市に柿並木があって、札幌市でも育つことが確認されている。日本国外では、中国、朝鮮半島、済州島に分布する[15][16]。暖地には野性があり、ヤマガキとよんでいる[14]。カキノキは、野生種のヤマガキから作出されたという説と、古来から在来種として存在したという説とがある[12]。
16世紀にポルトガル人によりヨーロッパに渡り、その後アメリカ大陸にも広まった。現在、世界各地で栽培されているカキノキの品種の多くは甘柿であるが、原産地である東アジア地域では未だに渋柿も栽培されている。日本では昔から人里の民家近くに植えられていることが多く、よく手入れが行き届いて実もよくなることもあって、俗に「柿の木は竈(かまど)の煙の当たるところを好む」「根元を踏むと実がよくなる」などと言われている[17]。
落葉の小高木で、高さは4 - 10メートルになる[14][8]。一年目の若枝には毛があり、基部には前年の芽鱗が残る[14][18]。樹皮は灰褐色で、網目状に裂ける[16][18]。枝は人の手が加えられないまま放って置かれると、自重で折れてしまうこともあり、折れやすい木として認知されている。葉は互生し[16]、長さ8 - 15センチメートルの楕円形から卵形をしていて先が尖り、表面にややつやがある[19]。葉縁に鋸歯はない[14]。葉柄は長さ1センチメートル前後で、太くて短い[8]。秋には鮮やかな橙色から赤色に紅葉するが[2]、一斉に色づくわけではなく、実が色づくのに前後して、葉も1枚2枚と少しずつ色づいて落葉していく[10]。紅葉した葉の中には、しばし緑色の斑点が混じっているものがあるが、これは病気や虫食いによるものである[2][10]。
花期は初夏(5 - 6月)[16]。本年生枝の基部近くの葉腋に花がつく[14]。花弁は白色から淡黄色で4枚ある[6]。雌雄同株であり、雌雄雑居性で雌花は点々と離れて1か所に1つ黄白色のものが咲き、柱頭が4つに分かれた雌しべがあり、周辺には痕跡的な雄蕊がある。雄花はたくさん集まって付き、雌花よりも小さい[20]。萼は4裂し、花冠は鐘形をしている[14]。日本では5月の終わり頃から6月にかけて[21] 白黄色の地味な花をつける。
果期は秋から初冬にかけて(9 - 12月)[16]。果実は柿(かき)と呼ばれ、品種によって大小様々な形があり[14]、秋に橙色に熟す。萼(がく)は「ヘタ」とよばれ、後まで残っている[14]。ヤマガキは枝、葉に毛が多く、果実は小さい[14]。柿の果実は、年によりなり方の差が大きい[6]。果樹を叩いたり、傷つけたりすると、花芽形成が促進されて実がなることが知られ、樹木の採種園でも樹皮を円周状に傷つける環状剥皮が行われる[16]。果実は、タヌキやサル、カラスなどにも食べられて、種子が人里近い山林に運ばれて芽を出すこともある[22]。
冬芽は互生し、丸みがある三角形で短毛がある[18]。枝の先端に仮頂芽、その下には側芽がつき、芽鱗は4 - 5枚ある[18]。葉痕は仮頂芽の背後と、側芽のすぐ下にあり、半円形で維管束痕は1個ある[18]。
国際連合食糧農業機関 (FAO) の統計データ(2005年)によると、カキの世界生産量は256万1732トン (t) である。このうち、72%を中国が、99.8%を日本を含めた上位6国が生産している。
中国 | 1,837,000 トン |
韓国 | 250,000 トン |
日本 | 230,000 トン |
ブラジル | 150,000 トン |
イタリア | 51,000 トン |
イスラエル | 40,000 トン |
ニュージーランド | 1,300 トン |
イラン | 1,000 トン |
オーストラリア | 650 トン |
メキシコ | 450 トン |
柿は沖縄県を除く日本の全都道府県で栽培・出荷されている(ただし北東北と北海道はカキノキの生育には寒冷すぎるため、渋柿がごく少数出荷されているに過ぎない)。柿の栽培面積が多い県は和歌山県、福岡県、奈良県の順で、都道府県別収穫量の日本一も和歌山県、市町村別では、奈良県五條市である[23]。また、甘柿は温暖な気候でないと甘く育たないため、産地は温暖な地方に限られている。
2017年度 [24]
農村の過疎化や高齢化などで、取られないまま放置される柿の実が増え、それらがニホンザルやニホンジカなどの野生動物の餌になっているという指摘がある。特にツキノワグマは柿の実にひきつけられて人里に出没するという[48]。
一般に実が渋い「渋柿」と、実が甘い「甘柿」に大別され、さらに渋の多寡、種子の有無、渋の抜け方でさらに完全甘柿と不完全甘柿、不完全渋柿と完全渋柿に分けられる[49]。甘柿よりも渋柿の方が原種に近く、病虫害に強い[6]。また、甘柿であっても接ぎ木の台木に渋柿を使う[6]。現在栽培されている品種の多くは18世紀中期にはすでにあったといわれ[13]、地方品種を含めると1,000を超える[49]。品種により果実の大きさも大小あり、形状も角張っているもの、丸いもの、長いもの、平たいものなど多様である[12]。
食用の栽培品種のほとんどが 2n = 90 の6倍体であるが、一部の種なし品種(平核無(ひらたねなし)や宮崎無核(みやざきたねなし))は 2n = 135 の9倍体である。播種から結実までの期間は長く、諺では「桃栗三年、柿八年」[50] とも言われるが、接ぎ木の技術を併用すると実際は4年程度で結実する。品種改良に際して甘渋は重要な要素で甘柿同士を交配しても渋柿となる場合もあり、品種選抜の効率化の観点から播種後1年で甘渋を判定する方法が考案されている[51][52]。
甘柿は渋柿の突然変異種と考えられている。1214年に現在の神奈川県川崎市麻生区にある王禅寺で偶然発見された禅寺丸が、日本初の甘柿と位置づけられている。なお、中国の羅田県周囲にも羅田甜柿という甘柿が生育しており、京都大学の調査によると、日本産甘柿の形質発現は劣性遺伝であるのに対し、羅田甜柿は優性遺伝で、タンニンの制御方法も全く異なっていると分かった。
日本の突然変異種が知られているが、アフリカのジャッカルベリーも甘く、食用や飲用への利用、薬用、皮加工のタンニングに利用される[53]。
渋が元々少ない品種で樹になった状態で成熟とともに渋が抜けていくものを完全甘柿という[49]。完全甘柿の代表的な品種は、富有と次郎、御所。富有は岐阜県瑞穂市居倉が発祥で原木がある。次郎は静岡県森町に住んでいた松本次郎吉に由来する。御所は奈良県御所市が発祥で、突然変異で生まれた最も古い完全甘柿である。
種子が多く入ると渋が抜けるものを不完全甘柿という[49]。不完全甘柿の代表的な品種は、上記の禅寺丸や愛知県が発祥の筆柿などがある。太秋は1995年に品種登録された中生種で熊本県が中心となって栽培しており、全国で急速に人気を高めている。
渋柿は、実が熟しても果肉が固いうちは渋が残る柿である。代表的な品種は、平核無と刀根早生である。平核無は新潟県が発祥である。刀根早生は奈良県天理市の刀根淑民の農園で栽培されていた平核無から1959年に枝変わりとして見出され、1980年に品種登録された。
種子が入っても渋が一部に残るものを不完全渋柿という[49]。
柿は弥生時代以降に桃や梅、杏子などとともに栽培種が大陸から伝来したものと考えられている。鎌倉時代の考古遺跡からは立木の検出事例があり、この頃には甘柿が作られ[15]、果実収穫を目的とした植栽が行われていたと考えられている。カキの実の食材としての旬は、9 - 11月ごろとされる[13]。
カキの実は甘柿と渋柿があり、カキの未熟な若い実は甘柿にも渋柿にも果肉にタンニン細胞があり、渋みの原因になるタンニンが含まれている[13][49]。品種によりタンニン細胞の数や形状は異なる[49]。完全甘柿のように渋がもともと少ない品種もある[49]。渋柿には1 - 2%のカキタンニンを含む[49]。カキタンニンは緑茶タンニンとは異なり分子量が大きく、特にたんぱく結合力が強く唾液たんぱくと結合して不溶物を生成して渋味になると考えられている[49]。
果実中のカキタンニンは、水に溶ける可溶性の間は味覚が渋く感じ、果実が成熟する過程で水に溶けない不溶性に変わる褐斑(かっぱん:いわゆるゴマ)になると、渋味を感じなくなって「甘柿」になる[56][13]。具体的には成熟によりアセトアルデヒドが増えて水溶性のタンニンの間に架橋が起こりタンニンが不溶性となることで渋みを感じなくなる[49]。甘柿の中でも、種子に関係なく甘くなるものを「完全甘柿」といい、種子が数個以上できないと渋みが抜けず甘くならないものを「不完全甘柿」という[13]。実が熟しても甘くならない「渋柿」は、アルコールや炭酸ガスで渋抜き処理をして出荷したり、干し柿にして食べられている[13]。熟柿になると実は軟化するが、熟柿になる前の軟化していない状態でも果実中にアセトアルデヒドを生成させることで渋を抜くことができる[49]。
食べ方は多様で、生食するのが一般的であるが、完熟して崩れんばかりのものを賞味する場合があったり、渋柿は干し柿にしたり、柿羊羹などの菓子材料などに加工したりする[12]。中国の北京では、冬にシャーベット状に凍ったものを食べるという食べ方もある[17]。
カキの実は追熟すれば甘くなるというものではなく、常温でおけば2日ほどでやわらかくなってしまう[13]。生のカキの実を保存するときは、ポリ袋に入れて冷蔵保存し、熟しすぎた場合は冷凍保存する[13]。干し柿は常温で保存できる[13]。
胃切除者や糖尿病患者など胃の働きが弱い者が、柿の果実を大量に食べた場合タンニン(シブオール)が胃酸と反応し固まることで胃石を生じることがある。植物胃石の一種で「柿胃石」として単独で知られるほど原因の割合としては多い。胃石そのものが症状を起こすわけではないものの胃閉塞・腸閉塞を起こすと食欲不振・腹痛・嘔吐などを引き起こす[57]。治療にあたっては胃石を砕く治療が行われるが、症状が軽い場合は市販のコーラが病院で使われることもある。コーラの強い炭酸と強い酸が胃石を砕くとみられる[58][59]。
渋柿の果肉ではタンニンが水溶性で渋味が強いため生食できず、渋柿を食用にするには果肉が軟らかくなった熟柿(じゅくし)になるのを待つか、タンニンを不溶性にする渋抜きの加工をする必要がある。湯やアルコールで渋を抜くことを動詞で「醂(さわ)す」といい、これらの方法で渋抜きを施した柿は「さわし柿」と呼ばれる。ほとんどの場合収穫後に渋抜き処理を行うが、品種によっては収穫前に樹上で渋抜きを行うことも出来る[60]。渋柿のタンニンの性質は品種間で異なっており、適する渋抜き方法は異なる[51]。
なお、加熱により不溶化したカキタンニンが再び水溶性になり渋くなる現象を「渋戻り」という[49]。
生食、干し柿の他に次のような食品に加工されている。
日本料理では風呂吹きの他に膾や和え物に使われる。繰り抜いて器にしたものは柿釜と呼ばれる[64][65]。
このほか朝鮮半島では干し柿、生姜、肉桂からスジョングァという飲み物を作る。また米国には柿プディング(パーシモンプディング)という伝統料理がある。製法はクリスマスプディングと似ており、本来は軟らかく熟したアメリカガキの実を用いる。
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 251 kJ (60 kcal) |
15.9 g | |
食物繊維 | 1.6 g |
0.2 g | |
飽和脂肪酸 | 0.02 g |
一価不飽和 | 0.04 g |
多価不飽和 | 0.03 g |
0.4 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(4%) 35 µg(1%) 160 µg |
チアミン (B1) |
(3%) 0.03 mg |
リボフラビン (B2) |
(2%) 0.02 mg |
ナイアシン (B3) |
(2%) 0.3 mg |
パントテン酸 (B5) |
(6%) 0.28 mg |
ビタミンB6 |
(5%) 0.06 mg |
葉酸 (B9) |
(5%) 18 µg |
ビタミンC |
(84%) 70 mg |
ビタミンE |
(1%) 0.1 mg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 1 mg |
カリウム |
(4%) 170 mg |
カルシウム |
(1%) 9 mg |
マグネシウム |
(2%) 6 mg |
リン |
(2%) 14 mg |
鉄分 |
(2%) 0.2 mg |
亜鉛 |
(1%) 0.1 mg |
銅 |
(2%) 0.03 mg |
他の成分 | |
水分 | 83.1 g |
水溶性食物繊維 | 0.2 g |
不溶性食物繊維 | 1.4 g |
ビオチン (B7 | 2.0 μg |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[67]。廃棄部位: 果皮、種子及びへた | |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
果実に含まれる主な有効成分は、グルコース・マンニットなどの糖質10%、ペクチン、色素のカロチノイド、カキタンニン(柿渋)などがある[68]。栄養素としてはカロテン(体内でビタミンAになる)、ビタミンC、糖質に富み、カリウム、β-クリプトキサンチン、リコピンも多く含んでいる[69][70][13]。ただし、干し柿に加工するとビタミンCはほとんど失われる。カロテンやβ-クリプトキサンチン、リコピンは強い抗酸化作用でがん予防によいとされる[13]。カキタンニンはビタミンPによく似た分子構造で、毛細血管の透過性を高めて、高血圧を防ぐ効果があるといわれている[68]。また、アルコール分解の働きがあり、飲酒前に食べると二日酔い予防になるといわれる[13]。
生の果実は身体を冷やすが、干し柿(柿霜:しそう)はあまり身体を冷やさないという説がある[11]。凍結乾燥したカキの摂取実験では体表温の低下が認められており、拡張期血圧の上昇と表面血流量の減少が起きているとする研究がある[49]。なお、柿に含まれるカリウムには利尿作用もあるが、食べ過ぎに注意すれば問題はないとされる[69][70]。生の果実を薬効目的に用いるときは柿子(かきし)とも称され、生食すれば咳、二日酔いに効果があるともいわれていて[11]、昔から酒の飲み過ぎのときに果実を食べるとよいといわれている[68]。
渋柿の汁を発酵させたものが柿渋である[22]。萼を除いた青い未熟果を砕いてすり潰して水を加え、2 - 3日ほど放置後、布で汁を搾ったものを生渋(きしぶ)という[11][14]。柿渋は、生渋をビンなど密封できる容器に詰めて半年から1年ほど冷暗所に置いて保存・熟成して作られるが[11][56]、古いものほど珍重される[14]。
柿渋は、紙に塗ると耐水性を持たせることができ、和傘や団扇の紙に塗られた。柿渋の塗られた紙を渋紙と呼ぶ。また、防腐用の塗料としても用いられた[22]。石鹸の原料ともなる(柿渋石鹸)。民間療法では柿渋を柿漆(ししつ)と称して、高血圧症予防に1日量で柿渋10 ccに水100 ccを加えて薄めて飲んだり、猪口1杯をそのまま飲んだりする利用法が知られる[11][14]。また湿疹、かぶれのときには、柿渋を水で3倍ほど薄めてガーゼに含ませ、患部に湿布する用法が知られている[56]。
果実のヘタを乾燥したものは柿蒂(してい、「柿蔕」とも書く)という生薬で、夏から秋にかけて未熟果の萼(ヘタ)を採って天日乾燥して調製したものである[14]。柿蒂はしゃっくり止めに用いられ、1日量8 - 10グラムを水300 - 600 ccで煎じて3回に分けて服用する用法が知られる[11][14]。
ヘタには、ヘミセルロースやオレイン酸、ウルソール酸などの成分が含まれ、ヘミセルロース質が胃の中で凝固することから、しゃっくり止めに使われたと考えられている[68]。
若葉にビタミンC、KやB類、ケンフェロール、クエルセチン、カキタンニンといったミネラル分フラボノイドなどを多く含み[68]、血管を強化する作用や止血作用を持つとされるため、飲用する(柿葉茶)などで民間療法に古くから用いられてきた。また近年では花粉症予防に有効とされ、従来の茶葉としてだけではなく成分をサプリメント等に加工され商品化されたものも流通している。
5月ころの若葉を採集して日干ししたものを「柿の葉茶」とよんでいる[68]。咳、出血、高血圧症予防の薬効目的で茶料として飲用する方法としては、夏に採取した成葉をきざみ天日で乾燥させた葉を柿葉(しよう)と称して[11]、炒って急須に入れてお茶代わりに飲み、常用するのがよいとされる[14]。薬草としての葉は身体を冷やす作用があることから、冷え症の人への服用は禁忌とされる[11]。
またその殺菌効果から押し寿司を葉で巻いた柿の葉寿司や[12]、柿の葉餅を包むために使われる[71]。柿の葉の抗菌物質としてポリフェノール、アスコルビン酸、タンニンが知られている[71]。
柔らかい初春の若葉は天ぷらにして食用にできる。
木質は緻密で堅く、家具[16]や茶道具、桶や和傘など器具の材料として利用される[10]。芯材が黒いものは、特に珍重される[16]。ただし、加工がやや難しく割れやすいため、建築材としては装飾用以外には使われない。
また、かつてのゴルフクラブ(ウッド)のヘッドには柿材(特にアメリカガキ)を使った物が多くパーシモンの名で呼ばれていたが、現在ではカーボンやメタルなど金属製のウッドが普及したためにあまり使われなくなった。
柿木は堅い樹であるが枝が突然に折れる性質があり、昔から柿の樹に登る行為は極めて危険とされている[22]。
黒色の縞や柄が生じ、部分的に黒色となった材はクロガキと呼ばれて珍重され[疑問点]、産出量が極めて少ない銘木中の銘木である[72]。
柿の季語は“秋(晩秋)”であり、多くの人物に詠まれている。他に柿若葉(夏)、青柿(柿青む、夏)、渋取(秋)などがある。
柿の毎年の豊作を祈願して「成木責め(なりきぜめ)」という行事が、小正月の1月15日に愛知県などの各地で行われる[6]。二人1組で、一人がナタの背などで樹皮をたたいたり、傷をつけて、その傷に小豆粥をすり込む。このとき「なるか、ならぬか、ならぬとちょん切るぞ」と脅すと、果樹の裏に隠れていたもう一人がカキノキに成り済まして「なります、なります」と答える[6]。
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