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バラ科サクラ属の落葉高木、果実 ウィキペディアから
ウメ(梅、学名: Prunus mume)は、バラ科サクラ属の落葉高木、またはその果実のこと。果実を利用する品種は「実梅」として扱われ、未熟なものは有毒であるものの、梅干などに加工して食用とされる。樹木全体と花は鑑賞の対象にもなり(花梅)、日本には花見や梅まつりが開かれる梅林や梅園が各地にある(月ヶ瀬梅林、偕楽園[16]、吉野梅郷など)。枝や樹皮は染色にも使われる。
日本では6月6日が「梅の日」とされている。天文14年4月17日(旧暦、1545年6月6日)、賀茂神社の例祭に梅が献上された故事に由来する[17]。
中国中部原産の落葉広葉樹の小高木から高木[18][19]。古くから栽培され、野生化もしている[18]。日本でもよく知られる果樹や花木で、多数の園芸品種がある[20][21]。樹皮は紫褐色で縦に不規則に割れ、小枝の先はとげ状になることもある[22]。一年枝は、緑色でほぼ無毛であるが、白い細かな点がある[22]。老木の樹皮にはウメノキゴケなどの地衣類がよくつく[22]。冬芽は互生し、花芽と葉芽がはっきりしている。花芽は赤褐色の広卵形で、11 - 14枚の芽鱗に覆われ、1か所に2、3個つく[23][22]。葉芽は濃褐色の円錐形でごく小さく、多数の芽鱗で覆われ、枝先には仮頂芽がつく[22]。葉痕は半円形で、維管束痕が3個ある[22]。
早春、葉に先だって前年枝の葉腋に1 - 3個の花がつく[21]。毎年1 - 3月ごろに[24]、5枚の花弁のある1センチメートルから3センチメートルほどの花を葉に先立って咲かせる。花の色は白、淡紅、紅色など[20]。花柄は短い[25]。葉は互生で先が尖った卵形で、周囲が鋸歯状。
果実は6 - 7月頃に結実し[20]、形は丸く、片側に浅い溝があり、細かい毛が密生する[21]。果実の中には硬い核が1個あり、中果皮で、表面にくぼみが多い[21]。未熟果に青酸を含むため、生で食べると中毒を起こすと言われている[21]。青ウメの果実は燻製にして漢方で烏梅(うばい)と称して薬用されるほか、民間で梅肉エキス、梅干し、梅酒に果実を用いる[21]。可食部である果肉部分は、子房の壁が膨らんだもので、構成する細胞の遺伝子は母となる雌由来である[19]。中にある種子は、半分は花粉由来なので、種子から発芽した株は母株と同じ性質になるとは限らない[19]。しかし、果肉については母由来のため、雄親である花粉が様々異なっても、同じものができる[19]。
ウメは花・香り・樹形が観賞の対象とされるほか[26]、果実が食用にされる。また、ウメの花の萼(がく)を梅干しの梅肉とともに漬けたものに梅花漬がある[27]。
日本では北海道から沖縄までの各地で栽培されている[18]。あまり土質を選ばない性質で、刈り込みにも強く、樹形の仕立てが容易である[18]。栽培品種の数は300あまりといわれ[28]、自家結実する品種[29]と自家結実しない品種[30]がある。ウメは自家不和合性が強いため、果実を目的とした栽培では、1品種だけの栽培を避けて、花粉親として少しだけ性質が異なる異品種を混植して栽培を行う[21][19]。ウメの果実を植えてて育ててもなかなか開花しないため、もっぱら挿し木あるいは接ぎ木による苗作りが必要となる[28]。
和名ウメは、中国から伝来した薬用の”烏梅(ウバイ・ウメイ)”が語源とされており、中国語の梅(マイ、ムイ、メイ)[31] が日本的に発音してウメになったとされる。
方言に「ウンメ(鹿児島)、ンメ(鹿児島・熊本・高知・秋田・東京)」がある[32][33][34][35][36]。
学名は江戸時代の日本語の発音を由来とする "Prunus mume" であり、英語では "Japanese apricot"(日本の杏)と呼ばれる[37]。ただし、梅の花は英語でplumと呼ばれることが多い[38]。梅干し(pickleplum)[39] などの場合も「plum」というのが一般的である。
原産地は中国で、日本には1500年程前に遣唐使により持ち込まれたとされる[40]。また、当初は薬木として紹介されたと考えられている[19]。 九州に元々自生していたという説もあるが、現在各地で栽培されている梅は、中国からの移入種である。日本では奈良時代から庭木として親しまれ、果実の栽培も江戸時代から行われていた[41]。
梅には500種以上の品種があるといわれている。近縁のアンズ、スモモと複雑に交雑しているため、主に花梅について園芸上は諸説の分類がある。実梅も同じ種であるので同様に分類できる[42]。梅は、野梅系、緋梅(紅梅[43])系、豊後系に大きく3系統に分類できる[44]。
果実は、2センチメートルから3センチメートルのほぼ球形の核果で、実の片側に浅い溝がある。旬の時期は6月ごろで[41]、黄色く熟す。七十二候の芒種末候には「梅子黄」(梅の実が黄ばんで熟す)とある。特定の地域のみで栽培される地方品種が多く、国内どこでも入手可能な品種は比較的限定される。また、品種によっては花粉が無かったり自家受粉しなかったりする品種もあり、その場合は開花時期が重なるように授粉用の品種も必要となる。
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 117 kJ (28 kcal) |
7.9 g | |
食物繊維 | 2.5 g |
0.5 g | |
0.7 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(3%) 20 µg(2%) 220 µg |
チアミン (B1) |
(3%) 0.03 mg |
リボフラビン (B2) |
(4%) 0.05 mg |
ナイアシン (B3) |
(3%) 0.4 mg |
パントテン酸 (B5) |
(7%) 0.35 mg |
ビタミンB6 |
(5%) 0.06 mg |
葉酸 (B9) |
(2%) 8 µg |
ビタミンC |
(7%) 6 mg |
ビタミンE |
(22%) 3.3 mg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 2 mg |
カリウム |
(5%) 240 mg |
カルシウム |
(1%) 12 mg |
マグネシウム |
(2%) 8 mg |
リン |
(2%) 14 mg |
鉄分 |
(5%) 0.6 mg |
亜鉛 |
(1%) 0.1 mg |
銅 |
(3%) 0.05 mg |
他の成分 | |
水分 | 90.4 g |
水溶性食物繊維 | 0.9 g |
不溶性食物繊維 | 1.6 g |
ビオチン (B7 | 0.5 μg |
| |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
未熟な青梅は中毒を起こす可能性がある物質が含まれているので生食してはいけない[47]。熟した果実をそのまま食べることもあるが、普通は熟し切っていない青梅を梅酒に、完熟梅を梅干しなどに加工して食用にする[47][41]。他に、梅酢、梅醤やジャムなどにして食用とする場合もある。また甘露梅やのし梅などの菓子や、梅肉煮などの料理にも用いられる。強い酸味が特徴であり、リンゴ酸やクエン酸、コハク酸などの有機酸を多く含むので健康食品としても販売されている[20]。果実から種を取り出すための専用器具も販売されている。果実の中心にあり、果肉を食べた後に残る種核は、後述する菅原道真信仰との関連で「天神様」と呼ばれる。これは硬いが、食用にでき[48]、梅茶漬けにアクセントとして添えるといった利用法がある。
中国では紀元前から酸味料として用いられており、塩とともに最古の調味料だとされている。日本語でも使われるよい味加減や調整を意味する単語「塩梅(あんばい)」とは、元々はウメと塩による味付けがうまくいったことを示した言葉である。また、話梅(広東語: ワームイ)と呼ばれる干して甘味を付けた梅が菓子として売られている。
加工製品は、カリカリ梅、メシル茶、梅花茶、煮茶梅(凍頂茶梅)、梅粉[49]、メシルチョン、梅酒、酸梅湯、プラムソースがある。
薬用部位として、5 - 6月ごろの未成熟果実(青梅)を利用する[50]。未成熟果を燻製にした烏梅(うばい)、未成熟果をすりおろした汁から抽出した梅肉エキス、また梅酒や梅干しをそのまま利用してもよいとされる[50]。
漢方薬の「烏梅(うばい)」は、未熟果(青梅)の皮を剥ぎ、種子を取り去り、藁や草を燃やす煙で真っ黒に燻したウメの実である[20][21]。健胃、整腸、消炎、細菌性腸炎、腸内異常発酵、駆虫、止血、強心作用があるとされるほか、「グラム陽性菌、グラム陰性の腸内細菌、各種真菌に対し試験管内で顕著な抑制効果あり」との報告がある[21][51]。民間療法で、風邪のときに烏梅1 - 2個を水200 - 400 ccで半量になるまで煎じて飲む用法が知られている[21]。家庭では、烏梅の代わりに梅干しをアルミ箔に包んでフライパンで蒸し焼き(黒焼き)にしたものを用いて、風邪の初期症状のときに茶碗に黒焼きを入れて熱湯を注ぎ、崩して飲んでもよいといわれている[20][52]。
梅肉エキスは、目の細かいおろし器で青梅をおろし、途中で水をかけながら布で梅肉の汁を搾って、調理用のホーロー製のバットや鍋などに薄く汁を入れて、日光または極弱いとろ火で煮詰めて水分を蒸発させて飴状にしたもので、これを採取して瓶に蓄える[21][52]。色は真っ黒で粘りがあり、味はかなり酸っぱい[52]。下痢、腹痛、食あたりのときに、大豆粒くらいの梅エキスを薄めて飲んだり[50][52]、また扁桃炎のときに梅エキスを10 - 20%に薄めてうがいするとよいと言われている[53]。
咳には梅酒をガーゼに浸して胸に湿布したり、頭痛のときに梅干しの果肉をこめかみに貼ったりするといった民間療法がある[50]。手足にトゲが刺さったときに、梅干しの皮をすり潰して、患部に厚め塗って固定しておくと自然に抜けるという[52]。
サッポロ飲料株式会社と近畿大学生物理工学部、和歌山県工業技術センターのマウスを用いた共同研究で、梅の果実成分による疲労軽減効果が報告されている[54]。
6カ月の梅酒飲用で、HDLコレステロールが有意に増加し、動脈硬化指数が有意に低下し、血圧が低下傾向となり、血糖値は変化が認められなかった、との報告がある。ただしこちらは研究の前に行われる予備的な調査であり、チョーヤ梅酒株式会社から梅酒の提供を受けて行われている[55]。
国立健康・栄養研究所は、ウメの人を対象にした信頼性の高い研究で[56][57]、健康に対する効果は確認されていないとしている[51]。また成分のクエン酸に関しても、現時点では「疲労回復によい」などの十分な根拠は得られていないとする[58]。
食薬区分においては、果肉や未成熟の実は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」(非医薬品)にあたり[51][59]、医薬品的な効能効果を表示することができない。ただし果実のように『明らか食品(医薬品に該当しないことが明らかに認識される食品)』であれば薬機法(旧薬事法)には違反しない[60]。しかし「癌が治る」「血糖値が下がる」「血液を浄化する」といった誇大な医薬品的効果効能表示(店頭や説明会における口頭での説明も含む)を行うと、景品表示法や健康増進法の規制の対象となる[61][62]。
梅やクエン酸を関与成分とした特定保健用食品(トクホ)は存在しないが[63]、クエン酸を機能性関与成分とした梅の加工食品が、機能性表示食品として届けられている。機能性表示食品とは、国が審査は行わず、事業者が自らの責任において機能性の表示を行うもので、「日常生活における軽い運動後の一時的な疲労感を軽減することが報告されています」と表示している[64][65][66]。
ウメ、アンズ、モモ、スモモ、アーモンド、ビワなどのバラ科サクラ属植物の種子 (種皮の内部にある胚と胚乳からなる仁)には、種を守るために青酸配糖体であるアミグダリンが多く含まれ、未熟な果実や葉、樹皮にも微量含まれる[67][68][69]。
アミグダリン自体は無毒であるが、経口摂取する事で、同じく植物中に含まれる酵素エムルシンや、ヒトの腸内細菌が持つ酵素β-グルコシダーゼによって体内で分解され、シアン化水素(青酸)を発生させる[70][71]。 シアン化水素はごく少量であれば安全に分解されるが、ある程度摂取すれば嘔吐、顔面紅潮、下痢、頭痛等の中毒症状を生じ、多量に摂取すれば意識混濁、昏睡などを生じ、死に至ることもある[72][73]。ただしシアン化水素(青酸)の致死量は50 - 60mg程度であり、青梅(未熟な梅の実)1粒から生じる青酸量は0.15mg程度なため、青梅100 - 300個を1度に摂取しない限り致死量には達しない。しかし中毒を引き起こす可能性があるため生食は避ける[74][75]。また、種子のアミグダリンは果肉に比べて高濃度である[67]。
熟した果肉や加工品を通常量摂取する場合には、安全に食べることができる[67][76]。 アミグダリンは果実の成熟に従い、植物中に含まれる酵素エムルシンによりシアン化水素(青酸)、ベンズアルデヒド(アーモンドや杏仁、ビワ酒に共通する芳香成分)、グルコースに分解されて消失する。この時に発生する青酸も揮散や分解で消失していく[77]。 また、梅干しや梅酒などの加工によっても分解が促進される[67][78]。
しかし、種子のアミグダリンは果肉に比べて高濃度であるため、成熟や加工によるアミグダリンの分解も果肉より時間がかかる[67]。種子がアミグダリンをもつのは自分自身を守るためにあると考えられ、外的ショックを受けてキズが入った種子には1000 - 2000ppmという高濃度のシアン化水素を含むものもある[67][70]。生の種子を粉末にした食品の中には、小さじ1杯程度の摂取量で安全に食べられるシアン化水素の量を超えるものある[79]。2017年に高濃度のシアン化合物(アミグダリンやプルナシン)が含まれたビワの種子の粉末が発見されたことにより、厚生労働省は天然にシアン化合物を含有する食品と加工品について、10ppmを超えたものは食品衛生法第6条の違反とすることを通知した[79][80][81]。欧州食品安全機関(EFSA)は、アミグダリンの急性参照用量(ARfD)(毎日摂取しても健康に悪影響を示さない量)を20μg/kg体重と設定している[73]。 アミグダリンの最小致死量は50mg/kgであり[73]、 3gのサプリメント摂取による死亡報告がある[72]。
2018年に国民生活センターは、ウメを原材料とした4銘柄の国産ウメエキスのシアン化合物濃度を測定した。シアン化合物は6.5 - 18ppm検出され、3銘柄で10ppmを超えていた[81]。1日量に換算すると健康に影響する量ではないものの、結果を受け国民生活センターは、事業者へは品質管理の徹底を、行政機関には指導の徹底を要望した[81]。 また消費者には、ウメの種子などを原材料にした健康食品等は、利用する必要性をよく考え、利用する場合は、製造者等により原材料や製品、摂取する状態でのシアン化合物の濃度が調べられているかを確認し、1度に多量に摂取しないようアドバイスをしている[81]。
都道府県 | 収穫量(単位 t) | 出荷量(単位 t) |
---|---|---|
全国 | 96,600 | 86,400 |
青森県 | 1,200 | 1,000 |
宮城県 | 1,110 | 611 |
福島県 | 823 | 333 |
茨城県 | 760 | 616 |
栃木県 | 771 | 698 |
群馬県 | 3,680 | 3,400 |
埼玉県 | 900 | 760 |
千葉県 | 468 | 248 |
神奈川県 | 1,390 | 1,220 |
福井県 | 1,470 | 1,370 |
山梨県 | 1,710 | 1,550 |
長野県 | 1,220 | 1,070 |
静岡県 | 745 | 429 |
愛知県 | 1,060 | 838 |
三重県 | 1,500 | 1,070 |
奈良県 | 798 | 762 |
和歌山県 | 64,400 | 62,200 |
広島県 | 774 | 374 |
徳島県 | 355 | 288 |
福岡県 | 888 | 644 |
大分県 | 1,180 | 808 |
農林水産省大臣官房統計部 2022によると、全国の結果樹面積は13,500 ha、収穫量は96,600 t、出荷量は86,400 tである。都道府県別の収穫量割合では、和歌山県が全国の約7割を占めている。
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
(※ 作況調査〈果樹〉各年度版ならびに市町村別データ長期累年一覧による。)
日本国内の主な産地は、和歌山県、群馬県、山梨県、長野県などで、地方の品種も多く見られる[41]。和歌山県で国内総収穫量の6割以上を占める寡占状態が続いているが、ウメの産地は全国に分布している。作況調査(2014年版)では、14県が年間生産量が1000トン以上、また北海道と沖縄県以外は全都府県とも100トン以上となっている。
1962年に日本国内の梅が凶作となったのを皮切りに日本への輸入が増加するようになった[91]。
ウメの品種改良は進んでおり、数多くの品種がある。果実をとるもののほか、花を観賞する目的のためのものなど多数ある[23]。
枝や樹皮、樹皮に付くウメノキゴケは、煮出すなどして布を染めるのに使われる。この梅染の起源は飛鳥時代に遡ると考えられ、加賀友禅の源流になった[110]。月ヶ瀬梅林がある奈良市月ヶ瀬地区では、烏梅と紅花を組み合わせた染色が行われている[111]。
別名に好文木(こうぶんぼく)、春告草(はるつげぐさ)、木の花(このはな)、初名草(はつなぐさ)、香散見草(かざみぐさ)、風待草(かぜまちぐさ)、匂草(においぐさ)などがある。
花を扱う歌は以下である[注釈 3]。そしてウメは古里(ふるさと=奈良平城京)の静かな美しさと文化的郷愁の花となり[112]、和歌や能に取り上げられることになる[113]。
天平2年(730年)1月13日、大宰帥・大伴旅人の邸宅(現在の福岡県太宰府市・坂本八幡宮辺りとの説がある。地図)で開かれた宴会で、いわゆる筑紫歌壇の員により梅花を題材に32首の歌が詠まれた。この宴会を「梅花の宴」と呼び、これら32首の歌は『万葉集』巻五に収録されている。これを基に、元号『令和』が制定されている。
天文14年(1545年)4月17日に後奈良天皇が、京都の賀茂神社に梅を奉納したと『御湯殿上日記』にあることに因み、「紀州梅の会」が新暦の6月6日を梅の日に定めている[114][115]。また、古来より梅の名所として「梅は岡本、桜は吉野、みかん紀の国、栗丹波」と唄われた岡本梅林(兵庫県神戸市東灘区岡本)は、起源は明確ではないが山本梅崖の『岡本梅林記』に羽柴秀吉の来訪が記されており、寛政10年(1798年)には摂津名所図会に岡本梅林の図が登場するほどの名所であった[116]。
平安時代の政治家・碩学であった菅原道真は梅をこよなく愛した。道真は死後に天満大自在天神(天神)として神格化され、梅はそのシンボルとみなされて、飛梅伝説(後述)などを生んだ。このほか、江戸時代の禅僧で禅画を多く描いた白隠の代表作の一つ「渡唐天神図」には、「唐衣(からころも)おらで北野の神ぞとは そでに持ちたる梅にても知れ」(意訳:これが天衣無縫の唐衣を着た北野天満宮の神であることを、彼が袖に持っている梅によっても知りなさい)の賛が残されている(古くは『菅神入宋授衣記』にほぼ同様の和歌が記載されている)[117]。ところで日本では申年はウメが不作になることが多いと言われてきた[118]。この申年のウメを使って平安時代の村上天皇は疫病を退けたとの言い伝えがあることから、申年の梅は縁起がよいとも言われる[118]。
日本郵便は、2014年3月3日[119]から2019年9月30日[120]まで82円普通切手と、2019年8月20日に84円普通切手を発売した[120]。ウメはその意匠である。庭木や盆栽などにも用いられ、鑑賞される。
俳句では梅は春の季語である[121] が、「早梅」「寒梅」や「探梅(たんばい、うめさぐる)」は冬の季語[122][123]。
梅紋(うめもん)は、ウメの花を図案化した日本の家紋である。その一種で「梅鉢(うめばち)」と呼ばれるものは、中心から放射線状に配置した花弁が太鼓の撥に似ていることに由来している。奈良時代に文様として用いられ始め、菅原道真が梅の花を好んだことにより天満宮の神紋として用いられ始めたと考えられている。
「梅」は、太宰府天満宮、「星梅鉢」は北野天満宮が用いている。武家では、菅原氏の末裔や美濃斉藤氏の一族が菅原天神信仰に基づいて用いた。おもに、加賀前田氏の「加賀梅鉢」や相良氏の「相良梅鉢」などがある。また、天理教の紋が「梅鉢紋」であるのは、教祖・中山みきの中山家の家紋に由来する。
図案は、「梅(うめ)」、「梅鉢(うめばち)」、「捻じ梅(ねじうめ)」、「実梅鉢(みうめばち)」などがある。「匂い梅(においうめ)」や「向う梅(むこううめ)」などの写実的な図案の梅花紋と、「梅鉢」などの簡略的な図案の梅鉢紋に大別される。
この他、ウメとは直接関係ないが、音が「埋め」と同じであるために、田を埋めた場所である埋め田を「梅田」という漢字に変えるといったことが行われてきた。
1194年に、文化人の張功甫が著した『梅品』にて具体的な鑑賞法が書かれているように、中国では古来から愛されてきた花である。また、1987年に行われた中国伝統十大名花選挙にて、1位となっている。
四大梅園という梅の観光地がある。
「春蘭花、夏荷花、秋菊花、冬梅花」の4種を四君子(花中四君子)と呼び、芸術のモチーフとした。また、歳寒三友という冬の松・竹・梅を用いた芸術のモチーフにも使われる。
日本各地にはウメの名所があり、観梅の季節はそれぞれ賑わう[23]。 全国の天満宮 - 梅がシンボルになっている。
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