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日本の小説、メディアミックス作品 ウィキペディアから
『みをつくし料理帖』(みをつくしりょうりちょう)は、髙田郁による日本の時代小説シリーズ。全10巻。ハルキ文庫(角川春樹事務所)より2009年5月に第1作『八朔の雪 みをつくし料理帖』が刊行され、2014年8月刊行の第10作『天の梯 みをつくし料理帖』にて完結した。
登場人物のその後を描いた特別巻『花だより みをつくし料理帖 特別巻』が2018年9月に刊行されている。
2012年および2014年にテレビ朝日にて北川景子主演でスペシャルドラマ化、2017年および2019年にNHKにて黒木華主演で連続ドラマ化。また、角川春樹の監督、松本穂香主演で映画化され、2020年10月16日に公開された[1][2][3]。
江戸に下ってきた大坂出身の料理人・澪が、東西の味の好みや水の違いに苦心しつつも徐々に道を切り拓き、料理を通じて人を幸せにしていく姿を描く[4]。作中には江戸の食事情が盛り込まれ、作中に登場する料理を著者が試行錯誤を重ねつつ実際に作ったレシピを「澪の料理帖」と題し巻末に収録している[5][6]。
大坂と江戸の対比は、兵庫県で生まれ育った著者が進学のため東京に来て「8枚切りの食パン」[注 1] や「中濃ソース」[注 2] を初めて目にして驚きを感じた実体験がベースとなっており、「江戸時代ならさぞや」と思いを馳せて、大坂から江戸に下った主人公の「初めての江戸」の体験を読者が一緒に楽しめるようにと作品が構想された。大阪と東京を往復ししつつそれぞれの図書館の資料や司書・学芸員への取材をもとに時代考証を行い、作中に登場する料理は著者自身がすべて実際に作り再現している。原稿を担当編集者に送付する際に料理写真を添付したところ「お腹が空きます」「美味しそうです」と言われたことをきっかけに、「それならレシピもつけましょうか」と巻末にレシピ集「澪の料理帖」を収録するに至った[7]。
第1作の刊行当初より書店員からの支持を受け、2009年の「歴史・時代小説ベスト10」(『週刊朝日』)、「最高に面白い本大賞! 文庫・時代部門」(『一個人』)、「第2回R-40本屋さん大賞 文庫部門」(『週刊文春』)において第1位を獲得。30〜60代女性を主な読者層として版を重ね、シリーズ累計の発行部数が190万部を突破した2012年には『この時代小説がすごい!文庫書き下ろし版』(宝島社)で第1位となり、テレビ朝日にて北川景子主演によりテレビドラマ化[5][8]。全10巻で300万部を超える大ヒットシリーズとなった[9]。
2021年には累計発行部数が400万部となったが、これは角川春樹の深層心理を突いた戦略によるものが大きく、第1作発行の段階で、「初版」「2刷」「3刷」「4刷」「5刷」と奥付表記が変更されたものが5千部ずつ、合計5万部が発行されている。これは作品が版を重ねて売れていると読者に思い込ませるためであり、書店には初版から5刷までが同時に並び、取次店からクレームが入る事態となったという[10]。
享和2年(1802年)の水害で両親を亡くし天涯孤独の身となった少女、澪は、大坂随一の名店と謳われる料理屋「天満一兆庵」の女将、芳に助けられ奉公人として勤め始める。やがて天性の味覚を主人の嘉兵衛に見込まれた澪は、厳しい修業に耐え、着実に腕を磨いていくが、隣家からの延焼で店は焼失してしまう。江戸店を任せていた息子の佐兵衛を頼って江戸へやって来た3人を待ち受けていたのは、佐兵衛が吉原通いで散財し店を潰し、行方をくらませているという報せだった。
度重なる心労により、嘉兵衛は「天満一兆庵」の再興を澪と芳に託して亡くなってしまう。店の再興と佐兵衛の行方探しを胸に、慣れぬ土地で芳と暮らしながら働き始めた澪は、「祟る」と噂され荒れ果てた小さな稲荷を1人で整えた姿を見込まれ、蕎麦屋「つる家」の主人・種市に店で働かないかと誘われる。
上方との味の違いから、当初は澪の作る料理は評判が良くなかったが、様々な人の助けを得て様々な新しい料理を考案し、愛し合った小松原との別れや、料理人仲間である又次の死などの悲しみを乗り越えながら、「つる家」を江戸で評判の店へと成長させていく。
そんな中、澪は、吉原で幻の花魁と呼ばれているあさひ太夫が、水害で行方不明になった幼なじみ、野江であることを知る。いつしか澪は、自分の料理で評判を取り、その売り上げであさひ太夫を身請けするという、とてつもない夢を抱くようになる。そして、その夢の実現のため、「つる家」を辞めて新しい道に進むことになった。
「つる家」を離れた澪は、あさひ太夫の客である摂津屋らの力を借り、あさひ太夫を吉原から取り戻すことに成功する。澪は、野江に戻ったあさひ太夫と、長年澪に恋心を寄せ、見守ってくれていた医師の源斉とともに故郷である大坂へ戻り、新しい人生を切り開くこととなった。
角川春樹事務所〈ハルキ文庫〉より刊行されている。各巻の巻末には、各話で取り上げられる料理のレシピ「澪の料理帖」が掲載されている。
年齢は初登場時に準ずる。また、本編の他、特別巻「花だより」中のエピソードについても言及する。
この節の加筆が望まれています。 |
テレビ朝日系列で2012年9月22日土曜日の21:00 - 23:21に放送された。
当初はNHK総合でドラマ化が企画されたが、日本の地上デジタルテレビ放送の完全移行による編成の見直しで、NHKの放送枠が消滅したため、テレビ朝日に企画が持ち込まれた[12]。
主演は北川景子で、映画『花のあと』(2009年公開)での時代劇初挑戦に続き、本作が時代劇ドラマ初主演となる。料理人役を初めて演じるにあたり、撮影に先立って料理学校で2か月間指導を受け、カツオをおろすシーンなど劇中の調理シーンは特訓を重ねてほぼ吹き替えなしで撮影に臨んでいる[13][14][15]。また、脚本の吉田紀子、監督の片山修、プロデューサーの中川慎子はいずれも本作が時代劇初挑戦。新鮮な顔ぶれで制作された本作は、料理のシズル感を出すため原色に近いクリアで鮮やかな色彩にこだわってハイビジョン撮影を採用し、従来の時代劇ドラマとは一味異なる映像美を追求、テンポ感や音楽の使い方にも若い視聴者にも受け入れられやすいような現代的な手法を用いるなど、時代劇であることをあまり意識せず現代劇のイメージにて制作されている[15][16]。
第2弾が2014年6月8日日曜日の21:00 - 23:10(『日曜エンターテインメント』)に放送された[17][18]。
話数 | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 監督 |
---|---|---|---|---|
1 | 2012年9月22日 | 天涯孤独の女料理人現る!! 今は亡き人々への想いを胸に…江戸の粋と心をつなぐ奇跡の料理!! 190万部の大ベストセラー映像化 |
吉田紀子 | 片山修
|
2 | 2014年6月 | 8日
みをつくし料理帖 | |
---|---|
ジャンル | 時代劇 |
原作 | 髙田郁 |
脚本 | 藤本有紀 |
演出 |
柴田岳志 佐藤峰世 |
出演者 |
黒木華 森山未來 永山絢斗 成海璃子 萩原聖人 麻生祐未 小日向文世 安田成美 |
音楽 | 清水靖晃 |
国・地域 | 日本 |
言語 | 日本語 |
時代設定 | 文化10年 - (1813年) - 文化12年(1815年) |
製作 | |
制作統括 |
城谷厚司(NHKエンタープライズ) 山本敏彦(NHK) 須崎岳(NHKエンタープライズ) 髙橋練(NHK) |
制作 | NHKエンタープライズ |
製作 | NHK |
放送 | |
放送国・地域 | 日本 |
みをつくし料理帖 | |
放送チャンネル | NHK総合 |
放送期間 | 2017年5月13日 - 7月8日 |
放送時間 | 土曜 18:05 - 18:43 |
放送枠 | 土曜時代ドラマ |
各話の長さ | 38 |
回数 | 8 |
公式ウェブサイト | |
みをつくし料理帖スペシャル | |
出演者 | 富司純子 中原丈雄 徳井優 |
放送チャンネル | NHK総合 |
放送期間 | 2019年12月14日 - 12月21日 |
放送時間 | 土曜 21:00 - 22:13 |
放送枠 | 土曜ドラマ |
各話の長さ | 73 |
回数 | 2 |
公式ウェブサイト | |
特記事項: 【みをつくし料理帖スペシャル】 NHK BS4Kにて12月29日に前後編を一挙放送。 |
『鎌倉河岸捕物控』のドラマ化で接点があったNHKエンタープライズのプロデューサーから「『おしん』のような時代小説はないか?」というオーダーを受けて、角川春樹が本作を提示し、NHK総合の土曜時代劇の企画候補に上がるも、テレビの完全デジタル化に伴う編成の見直しで土曜時代劇が終了、角川は企画をテレビ朝日に持ち込んでドラマ化し、テレ朝版の視聴率が良かったため、NHK版の企画が継続することになる[12]。
NHK総合の「土曜時代ドラマ」枠で、2017年5月13日から7月8日まで放送された。全8回。2017年4月より「土曜時代劇」から「土曜時代ドラマ」へとリニューアルされる放送枠の第1弾として制作され、木曜時代劇『ちかえもん』で向田邦子賞を受賞した藤本有紀が脚本を担当、主演の黒木華[19] は本作がNHKドラマへの初主演となる[20][21]。
主演の黒木は、角川春樹とプロデューサーの山本敏彦が、2014年に山田洋次監督の『小さいおうち』でベルリン映画祭で銀熊賞を獲った実績で推され[22]、クランクインに先立って出汁の引き方や米の炊き方など料理を基礎から習い、3キロほどのカツオを一からおろすなど、劇中の料理のシーンはすべて吹き替えなしで自身で演じている[23]。また、番組のエンディングロールには澪に扮した着物姿の黒木が現代のシステムキッチンでエピソード内に登場した料理のレシピを紹介する「澪の献立帖」のコーナーが設けられ[24]、公式サイトではレシピとあわせて「原作・高田郁先生のちょいたし料理帖」と題したコラムも掲載している[25]。
続編となる『みをつくし料理帖スペシャル』が、NHK総合「土曜ドラマ」枠で2019年12月14日および12月21日に前後編にて放送[26]、またNHK BS4Kにて12月29日に前後編を一挙放送。
放送回 | 放送日 | サブタイトル | 演出 | 澪の献立帖 |
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第一回 | 2017年 | 5月13日はてなの飯 | 柴田岳志 | その一 はてなの飯 |
第二回 | 5月20日 | とろとろ茶碗蒸し | その二 とろとろ茶碗蒸し | |
第三回 | 6月 3日 | 三つ葉尽くし | その三 三つ葉のおひたし | |
第四回 | 6月10日 | ほろにが蕗ご飯 | その四 ほろにが蕗ご飯 | |
第五回 | 6月17日 | ひとくち宝珠 | 佐藤峰世 | その五 ひとくち宝珠 |
第六回 | 6月24日 | 「う」尽くし | その六 卯の花和え | |
第七回 | 7月 1日 | ふっくら鱧の葛叩き | 柴田岳志 | その七 ふっくら鯛の葛叩き |
最終回 | 7月 8日 | 寒鰆の昆布締め | その八 寒鰆の昆布締め |
放送回 | 放送日 | 放送時間 | 本編回 |
---|---|---|---|
前編 | 2017年12月31日 | 8:00 - 8:59 | 第一回 - 第四回 |
後編 | 9:00 - 9:59 | 第四回 - 最終回 |
放送回 | 放送日 | サブタイトル | 演出 |
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前編 | 2019年12月14日 | 心星(しんぼし)ひとつ | 柴田岳志 |
後編 | 12月21日 | 桜の宴(うたげ) |
NHK総合 土曜時代ドラマ | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
みをつくし料理帖
(2017.5.13 - 7.8) 【ここから土曜時代ドラマ枠】 |
悦ちゃん
〜昭和駄目パパ恋物語〜 (2017.7.15 - 9.16) |
|
NHK総合 土曜18:05 - 18:10枠 | ||
悦ちゃん
〜昭和駄目パパ恋物語〜 (2017.7.15 - 9.16) |
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NHK総合 土曜18:10 - 18:43枠 | ||
忠臣蔵の恋
〜四十八人目の忠臣〜 (2016.9.24 - 2017.2.25) ※18:10 - 18:45 【ここまで土曜時代劇枠】 |
みをつくし料理帖
(2017.5.13 - 7.8) 【ここから土曜時代ドラマ枠】 |
悦ちゃん
〜昭和駄目パパ恋物語〜 (2017.7.15 - 9.16) |
NHK総合 土曜ドラマ | ||
少年寅次郎
(2019年10月19日 - 11月16日) |
みをつくし料理帖スペシャル
(2019年12月14日 - 12月21日) |
心の傷を癒すということ
(2020年1月18日 - 2月8日) |
角川春樹の最後の監督作品として映画化され、2020年10月16日に公開された[1][3]。主演は松本穂香[2]。主題歌の作詞・作曲は松任谷由実が担当[30]。
映画化の企画は2016年に松竹に持ち込まれたが、2年経っても結論が出ず、角川春樹が「待たせるだけじゃなく、本音を言ってください」と質すと、角川と確執のある弟の角川歴彦が取締役会長を務めるKADOKAWAの『Fukushima 50』を捻じ込んで映画化したため、松竹での映画化は破談ととなる。角川は企画を東映に持ち込んだが、映画『流れ板七人』の大失敗で父の岡田茂の逆鱗に触れた経験を持つ会長の岡田裕介は「料理は食べるもので撮るもんじゃない。”料理もの”には手を出すな」という家訓を語って難色を示した[注 13]。その後、2018年に大阪で行われた高田郁の作家生活10周年記念パーティで、角川が映画化を宣言した[31]。
角川春樹事務所として約10年ぶりに製作する作品で、角川は当初プロデューサーとして関わる予定だったが、角川の原作への思い入れを熟知した妻からの「製作だけならばやるべきではない。監督・角川春樹の最後の監督作になって初めて伝わる想いがあるはず」との進言や70歳で誕生した息子の存在に背を押され、自身最後の監督作品としてメガホンをとることとなった[32]。
角川は、東映のプロデューサーだった遠藤茂行に相談し、遠藤が岡田裕介を説得して東映は配給のみ手掛けることで、企画がようやく動き出したという。角川春樹事務所が幹事となって製作委員会を作り、28社が出資を行った。映画と連動して「高田郁フェア」を各社でやることになり、作品を出している全ての出版社が参加した。読者層30代から40代の女性を想定して、SNSや新聞雑誌でなく、テレビによる宣伝に注力し、読売テレビ、KBC九州朝日放送、名古屋テレビ、RCC中国放送、東日本放送を製作委員会へ参加させた[33]。
原作者の高田はNHK版の配役や脚本を気に入り、映画版での続投を要望したが、黒木華は舞台出演の都合でスケジュールが確保できず、脚本家の藤本有紀には断られたため、仕切り直しが行われた。脚本には角川自身も加わり、ハコ書きの段階で撮影担当の北信康を呼んで撮り方まで決めて行った[28]。
主演の澪役には、テレビドラマ『この世界の片隅に』で見せた演技や『世界ウルルン滞在記』での自然体の姿が評価されて、松本穂香が起用された。幼なじみの野江役には角川自身が製作を手掛けた『男たちの大和/YAMATO』の蒼井優と共通するものを感じたという奈緒を、又次役には中村獅童を起用している。角川の「最後の監督作品」と銘打ち、石坂浩二、若村麻由美といった角川映画のスターたちや、「角川三人娘」として原田知世とともに1980年代の角川映画を牽引した薬師丸ひろ子、渡辺典子が出演するなど[34][35]、現在の邦画界におけるオールスターキャスト映画となるとしている[32]。原田知世は日本テレビのドラマ『あなたの番です』に出演中であったため、出演できなかった[33]。
撮影は、料理がおいしく映るという理由により、デジタルで行われた。料理は服部栄養専門学校の理事長である服部幸應と『蕎麦の膳 たかさご』の宮澤佳穂が現場で誂えた。包丁も当時使っていたものを大阪の堺で復元させ、神田明神の神職に「火の要慎」の札文字を書いてもらい、吉原の廓言葉の指導に春風亭一朝を起用したり、場面によって江戸風鈴と鉄風鈴を使い分けるなど、時代考証を入念に行った[36]。
役者とロケ地のスケジュールの都合上、撮影日数は21日しか取れなかった[28]。撮影は栃木県の江戸ワンダーランド日光江戸村および東京都内の東宝スタジオにて行われ、2019年8月21日にクランクイン、9月下旬にクランクアップしている[32][37][38]。松本は役作りのため服部栄養専門学校に通って料理を習い、自宅でも野菜を切るなどの練習を積んで撮影に臨んだという[39]。
主題歌は松任谷由実が作詞・作曲を、松任谷正隆が編曲を手掛け、角川監督作品の主題歌を夫妻で担当するのは1997年公開の『時をかける少女』以来23年ぶりとなる。角川の強い希望で編曲を引き受けた正隆は、本作が「角川映画の集大成」であるなら「これは僕の音楽の集大成、と言っておこうかな」として本曲の制作に臨んだ[40][41]。
全国311館で公開され、2020年10月17日・18日の全国週末興行成績(興行通信社)では初登場8位(観客動員)となった[42]。2億円の宣伝費をかけてプロモーションが行われたが、新型コロナウィルスの蔓延の中、爆発的なヒットを記録した『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』に、当時「感染源」とマスコミに揶揄された10代から20代の観客が映画館に押し寄せたため、本作が想定した30代から40代の女性客層が感染を恐れて足を運ばなかった。結局、配給収入は2億5000万円に留まった[43]。
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