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日本の映画作品 ウィキペディアから
『Fukushima 50』(フクシマ フィフティ)は、2020年3月6日に公開された日本映画。
Fukushima 50 | |
---|---|
フクシマ フィフティ | |
監督 | 若松節朗 |
脚本 | 前川洋一 |
原作 |
門田隆将 『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』 |
製作 | 二宮直彦 |
製作総指揮 | 井上伸一郎 |
出演者 |
佐藤浩市 吉岡秀隆 緒形直人 火野正平 平田満 萩原聖人 堀部圭亮 小倉久寛 和田正人 石井正則 三浦誠己 堀井新太 金井勇太 増田修一朗 須田邦裕 皆川猿時 前川泰之 ダニエル・カール 小野了 金山一彦 天野義久 金田明夫 小市慢太郎 伊藤正之 阿南健治 中村ゆり 田口トモロヲ 篠井英介 ダンカン 泉谷しげる 津嘉山正種 段田安則 吉岡里帆 斎藤工 富田靖子 佐野史郎 安田成美 渡辺謙 |
音楽 | 岩代太郎 |
撮影 | 江原祥二(J.S.C.) |
編集 | 鄺志良 |
制作会社 | 角川大映スタジオ |
製作会社 | 「Fukushima 50」製作委員会 |
配給 |
松竹 KADOKAWA |
公開 | 2020年3月6日 |
上映時間 | 122分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 8億8400万円[1] |
門田隆将著の書籍『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』を原作に[2]、東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故発生時に発電所に留まって対応業務に従事した約50名の作業員たち・通称「フクシマ50」の闘いを描く物語。
監督は若松節朗、主演は佐藤浩市と渡辺謙[3][4][5]。新作の日本映画の中では初めてドルビービジョン、ドルビーアトモスを用いた制作作業を日本国内で完結した。ドルビーシネマでも上映された。
公開は新型コロナウイルスのパンデミック開始時にあたり、興行に影響がでた。
劇中に登場する政治家や関係者は役職名として登場するだけで、吉田昌郎以外、モデルとなっている人物の実名では登場しない[6]。また電力会社の名前も「東都電力」に変えられている[7]。
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測史上最大となる地震が発生し、巨大津波が福島第一原子力発電所を襲った。津波による浸水で全電源を喪失してステーション・ブラック・アウト(SBO)となり、冷却不能の状況に陥った原子炉は、このままではメルトダウン (炉心溶融)により想像を絶する被害がもたらされることは明らかだった。
1・2号機当直長伊崎ら現場作業員は、原発内に残り原子炉制御に奔走する。全体指揮を統括する吉田所長は部下たちを鼓舞する一方、状況を把握しきれていない本店や首相官邸に対し怒りをあらわにする。しかし、現場の努力もむなしく事態は悪化の一途をたどり、近隣の人々は避難を余儀なくされる。
首相官邸が試算したこの事故による最悪のシナリオでは被害範囲は半径250km、避難対象人口は約5000万人にも及び、それは「東日本の壊滅」を意味する。現場に残された唯一の手段は「ベント」(手動による圧抜き)で、未だかつて世界で実施されたことのないこの手段は作業員が体ひとつで原子炉内に突入して行う手作業が要求される。外部と遮断され何の情報も入らない中、ついに作戦は始まる。
この節の加筆が望まれています。 |
「復興五輪」と銘打たれた「2020年東京オリンピック・パラリンピック」の開催を控え、「今一度、震災の記憶と向き合い、復興への思いを新たにする作品を世に問う、それこそが映画人の使命である」として、東日本大震災における福島第一原発事故を描いた本作品が製作された[4]。撮影は長野県諏訪市の工場跡地(旧東洋バルヴ跡地)[14]に実際の現場を再現した巨大セットを用いて、2018年11月から2019年4月にかけて行われた[15]。
原子力発電所以外の描写についてもリアリティを追求し、「トモダチ作戦(Operation Tomodachi)」を再現したシーンでは在日米軍横田基地にて撮影が行われた。米国大使館関係者の協力を得て前例のないアメリカ国防総省への撮影申請を行い、粘り強い交渉を経て撮影が実現。作戦会議の場面では施設内の作戦会議室を用いて、東北支援へ発進する場面では米軍のヘリコプターUH-1を実際に飛行させて撮影が行われ、また基地内で募集した本物の米兵が多数エキストラとして出演している[16][17]。
本作品には在日米軍が撮影に協力しているが、これは日本の映画史上初の試みである[16][17]。
さらに陸上自衛隊の協力の下、総理大臣が福島第一原発を緊急訪問した場面では要人移動用の輸送ヘリコプターES-225LP「スーパーピューマ」を用いて、空から原子炉建屋へ放水を行った場面では大型輸送用ヘリコプターCH-47を用いて撮影が行われ、放水シーンでは実際に作戦に従事した隊員らの協力により被曝を防ぐためのアクリル板や装備などが機体内部に忠実に再現されている[16][17]。
井上伸一郎によると、テロップが多い本作の作風は、三池敏夫なども参加した平成ガメラ三部作へのオマージュであるとされる[18]。
キネマ旬報社が運営するKINENOTEの「キネ旬Review」では、3人のレビュアーが全員星5つ中1つの最低評価としている。レビュアーのうち、映画評論家の川口敦子は「戦後日本への道をなぞり、迷いなく美化するような展開に呆然とした」、佐野亨は「この作品は検証や哀悼や連帯ではなく、動揺や怒りや対立を呼びおこす」、福間健二は「自然を甘く見ていたというだけの結論。何を隠蔽したいのか。若松監督、承知の上の職人仕事か」と、揃って厳しいコメントをつけた[19]。
評論家・編集者の中川右介は、事故の事象は「事実」に即しているが、「総理大臣」の描き方は意図的に「事実」を歪曲、あるいは無視しており、なぜ吉田所長と同程度に描かなかったのかと疑問を呈している。作中では「総理が現地へ行くことになったのでベントが遅れ、被害が拡大した」というストーリーに仕立てているが、何種類も出た事故調査委員会の報告書で否定されており、東電側に不備があった事実が抜け落ちている。どんな事故だったのかを知るために多くの人に見てもらいたいとも思うだけに、政治的な「事実の加工」が残念でならないと批判している[6]。
当時の首相だった菅直人自身は、本作品に関して「周囲の人は、描き方が戯画的だとか色々言ってくれるんですが、そんなに、ひどいとは感じていません。劇映画ですしね」と語り、事実と微妙に違う点はいくつかあるが非常に事故のリアリティがよく出ている映画だと好意的に評価している[20]。
科学ジャーナリストの添田孝史は、東電本店の技術者たちは2008年に福島第一でも津波対策は不可避と結論づけていたにもかかわらず、幹部は対策を2016年まで先送りすると決めたが、その意思決定の中心にいたのは当時東電本店の原子力設備管理部長を務めていた吉田所長だった。各種報告書でも推察できるように実際は「想定外の大津波」ではなく、日本原電や東北電力と同じ程度に津波対応を進めていれば避けられた事故だったにもかかわらず、作中ではまるで人間の想定を超えた事態だったと描かれており、東電の責任から目を背け、事故の本当の姿を現場の美談で隠してしまったと批判している[21]。
映画文筆家の増當竜也は、長所も短所もある映画で全面的な肯定も否定もしたくないが、その描出の長短を冷静に見極めた上で福島原発事故という未曽有の大事件に目を向ければ、この映画の存在価値も見出せるのではないか。パニック映画として見るとスリリングな展開で、オールスター・キャストで華やかに映画映えしている。だが作業員らの決死の行動がまるで戦時中の特攻隊を彷彿させることは疑問だし、事故の原因に“大自然の猛威”以上の重大要素があるのでは?という問いにも答えていない。見る側の意識を啓蒙させてくれる真のエンタテインメントに成り得る資格を持ちながら放棄してしまっているのが残念だと評価している[7]。
本作品の公開当時は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大と緊急事態宣言の発令によって多くの映画館が休業したことから、4月17日から5月14日まで期間限定の有料ストリーミング配信として1,900円でレンタル配信を行った[24][25]。
Blu-ray版とDVD版が2020年11月6日にKADOKAWAより発売され、10月16日にEST(ダウンロード動画販売)・TVOD(都度課金)の配信を開始した[26]。
テレビ初放送は2021年1月30日20時からWOWOWシネマで放送された[27]。
2021年3月12日、日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』にて地上波初放送[28][29]。放送日は東日本大震災が発生してから10年の節目を迎えた翌日の放送となる。
回数 | テレビ局 | 番組名(放送枠名) | 放送日 | 放送時間 | 放送分数 | 視聴率 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 日本テレビ | 金曜ロードSHOW! | 2021年3月12日(金) | 21:00 - 23:24 | 144分 | 11.8% | 地上波初放送 本編ノーカット |
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