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テレビアニメ『ルパン三世』の第1シリーズ(1971年〜1972年) ウィキペディアから
『ルパン三世 (TV第1シリーズ)』(ルパンさんせい)は、モンキー・パンチの漫画を原作とするアニメ『ルパン三世』の作品群のうち、1971年10月24日から1972年3月26日まで放送された日本のテレビアニメを指す。映像上の題名は『ルパン三世』。同シリーズで初めてアニメ化された作品[注 1]であり、読売テレビ(よみうりテレビ)が制作し日本テレビ系列局で放送された。
アルセーヌ・ルパンの孫で大泥棒のルパン三世が、仲間の次元、不二子、五ェ門や、ルパン逮捕に執念を燃やす銭形警部と繰り広げる活躍を描く。作風は、大人向けのハードボイルドタッチな演出が多い前半と、子供の視聴をある程度考慮したギャグタッチな後半に分けられる。
後続シリーズとの識別のため、タイトルに第1シリーズ・第1期などと付記することがある。また、製作会社のトムス・エンタテインメントはソフト化以降、『ルパン三世 1st series』[1] または『ルパン三世 PART1』[2]としている。
本項では便宜上『TV第1シリーズ』と表記する。
レギュラーメンバー全員が揃うことは稀で[注 2]、全話に登場するキャラクターはルパン三世だけである。
ルパン三世の作品では珍しく同じ登場人物が度々登場するため記述する。
1969年に劇場用アニメを想定してルパン三世 パイロットフィルムが製作され、原作者のモンキー・パンチもそのクオリティの高さに製作を快諾していた。だが、受け入れる制作会社がなかったことで企画は停滞し、約2年後によみうりテレビからテレビアニメ化することが決まる。
演出(監督)は、パイロットフィルムから大隅正秋が続投する。それまでは人形劇などを手がけていた異色の演出家である大隅に依頼がなされたのは、東京ムービーの社長だった藤岡豊が大隅の演出した『オバケのQ太郎』のオープニングを気に入っていたからである。藤岡に「初の大人向けのアニメを作ろう」と言われた大隅は意気投合し快諾したといい、後に「中学生以下の視聴層は全くターゲットにしていなかった」と語っている。
キャラクターデザイン・作画監督には大塚康生が起用される。パイロットフィルムに参加した芝山努が他作品に参加していた都合から参加できず、同じくパイロットフィルムに参加していた大塚が抜擢されたという。大塚は、パイロットフィルムの時点でいつでも参加できるよう所属する東映動画から東京ムービーの下請けであるAプロダクションに移籍しており、その後は大隅・大塚両者の話し合いでキャラクターのテレビ用人物造形が決まった。
脚本には大和屋竺などが参加した。大和屋は、大隅が彼の執筆した映画『毛の生えた拳銃』に感銘を受け、パイロットフィルム製作時もオファーしていたことで参加が決まったという[4]。
原作の世界をアニメでそのまま再現することは様々な要因から不可能であり換骨奪胎することが求められ、以下の方針が打ち立てられた[5]。
この様な試行を経て大人向けに製作され、新聞などにも大人向けとして広告されたそれまでにないアニメとしてスタートしたが、視聴率は厳しいものとなる。
当時、テレビアニメは作れば一定の視聴率が取れると考えられていた時代で、同じ東京ムービー作品の『巨人の星』は20%を超えたりしていたが、当作は初回6.5%、その後も3%などといった桁違いに低い視聴率をとり、即打ち切りも仕方ない状況だった(同局の歴代ワースト記録で、2024年現在も破られていない)。一つの原因としては、大人向けと広告したのが、1970年代当時の家庭での倫理観にそぐわず、意識的に子供に見せまいとした親側の圧力などが考えられていた。初回から峰不二子の衣装作画やルパンとのからみや退廃的な世界観は現代の視点でも扇情的なものであったが、作品の内容そのものはそこまでアダルトではなかった。
第3話の視聴率が出ると、局サイドやスポンサーは藤岡と大隅を大阪に急遽呼びつけ「この低視聴率はどういうことだ」「子供に人気が無い」と問いただす。大隅は「大人向けのアニメを作ったまで」と率直に答え「じゃあ子供向けにやって、人気が出る確証はあるんですか?」と反論もしたが、対照的に藤岡は「今後は子供向けに改善して立て直す」と約束した。その帰り、大隅は藤岡に番組降板を切り出し、藤岡もそれを受諾。この時、藤岡は大隅へ「君のための花道は作ってあげられない」と告げたという。
この日を境に、大隅は現場に必要以上の混乱を与えないため、スタジオに一歩も足を踏み入れなかった。これにより、引継ぎなどは一切行われず、現場に私物を残したままという異例の状態で大隅は降板となった。後年に大隅は「誰もこのあとを引き継ぐやつなんていないだろう」と考えていたことを明かし、「当時は自分の精神状態を保つのに目一杯だった。若さゆえの選択で、引き継いだ人や視聴者へ申し訳ないことをした」と述べている。
それまでの製作が大隅に全てを預け任していたような状態だったことから、大隅の降板は重大な出来事となり、「大隅さんが降りるなら」と脚本家数人も降板することとなった[5]。
岐路に立たされた大塚は、東映で一緒に子供向けアニメを作り、当時はAプロダクション〈現・シンエイ動画〉に在籍していた高畑勲と宮崎駿に演出を依頼した。当時のAプロが東京ムービーの下請け会社だったことや偶然手が空いていたこと、旧知の間柄の大塚が困っていたことから二人は依頼を引き受けるが、“匿名”であることを仕事を請ける条件にしたため、二人の名前はクレジットされず「Aプロ演出グループ」名義となっている[6]。宮崎は後年、「その話が決まったとたんテレビ局の会議室に引っ張り出されましてね、行くとテーブルの向こう側にスポンサーや放送局などの人間がズラリ、こちら側は東京ムービーの社長始め、僕たちが並んだ訳です。その会議室が、また凄まじくてね。『どうしてくれるんだ、コラッ!!』『こんな物作って子供たちは分かるか!!』と言った罵詈雑言のオンパレード。こちらは只ただ頭を下げるんですが、東京ムービーの社長など『ハハッ!』 って平伏しっぱなし(笑)。こりゃ、大変なところに足を踏み込んじゃったなぁ、とその時ツクヅク思った物でした。」と当時を回想している[7]。
両名は、原作の影響の強いハード・タッチの作風を中盤以降、徐々に低年齢層向けに軌道修正していく。しかし、大隅降板時点ですでにほとんど完成していたフィルムや、それ以前に発注済だった脚本・絵コンテ・作画もあったため[8]、どこまでが大隅演出でどこからがAプロダクション演出かは、厳密には区別できない。高畑・宮崎両名で出来うる限りコンテや脚本を見直したりしたが、時間的に変更が不可能だった話もあったためでもあった(一応、演出クレジットは1-6、9、12話が大隅正秋名義となっている)。4-8、10-12話は高畑・宮崎コンビによる部分直しやコミカルな演出で、一般的にはAプロ演出と思われている7話の後半は大隅の指示を受けた出崎統によるもの、6話と9話は基本的には大隅演出のままということである。ストーリー的には、犯罪者を主人公とすることを嫌う高畑にはどうしても6話と9話は大きく変えることはできなかったと本人が回想している。完全にAプロダクション演出になったのは、宮崎によるキャラクターの性格変更が行われた13話以降であるが、絵は大隅演出時代のものと思しきものも流用されている。
宮崎は後年、大隅時代からAプロ時代のルパン像の変化を、「富裕の倦怠を紛らわすために泥棒をする退廃したフランス貴族の末裔から、常にスカンピンで何かオモシロイことはないかと目をギョロつかせているイタリア系の貧乏人への変化」と称している。高畑・宮崎コンビ演出のルパンは、視聴率は9%程度と序盤よりは安定していったものの、約半年後の全23話で放送が打ち切りとなった。だが、関係者の証言によると当初から2クール、26話の予定で制作されていた為、実際には3話分が減らされた状態だったという[9]。
パイロットフィルム2作でのルパンの声は、野沢那智、広川太一郎がそれぞれ演じていたが、両名共にスケジュールの都合から当作への出演が難しくなっており[注 6]、大隅が偶然鑑賞した舞台「日本人のへそ」に出演していた山田康雄が抜擢された[10]。
次元大介はパイロットフィルムから小林清志が続投。一部作品を除き、2021年まで50年に亘り同役を担当した。
パイロットフィルムで石川五ェ門を演じた納谷悟朗は、台詞が少ないことが気になり大隅に相談した結果、銭形警部役に変更となった[11]。合わせて、パイロットフィルムで銭形を演じた大塚周夫は石川五ェ門役となった。
峰不二子役は、パイロットフィルムで演じた増山江威子から二階堂有希子に変更された。大隅は変更理由に「(増山が)お色気シーンができなかったら」と発言しているが、「実際には演技の問題でなく、初期の“グラマー”で“肉感的”な大塚のデザインに合う声がかわいらしい声質の増山より二階堂だったのでは」とする声もある[12]。増山は本作の14話にゲスト出演したほか、後の『TV第2シリーズ』で峰不二子役になっている。
町山智浩の映画秘宝の文によれば、本作は「危いことなら銭になる」や「殺しの烙印」「毛の生えた拳銃」「狙撃」岡本喜八「殺人狂時代」などに強いに影響を受けており、各作品のヒロインである浅丘ルリ子や真理アンヌ、団令子が峰不二子のモデルのである可能性に、「忍びの者」の市川雷蔵が五右衛門のモデルであることを論じた。前述の映画作品には山崎忠昭や大和屋も関わっているものが多くある[13]
フランスの俳優ジャン=ポール・ベルモンドはルパン自体のモデルとして知られているが、1969年日本公開の『オー!』は、本作の一話に影響を与えているかもしれない指摘があり、前半ではレースが描かれるが、本作の第一話もF1レース絡みである[14]
オープニングテーマおよびエンディングテーマのタイトルは、テイチクではエンディングテーマに、朝日ソノラマではオープニングテーマに「ルパン三世その1」のタイトルが付けられている。後に様々なレコード会社から発売されるようになって以降も、発売元によってテイチクに準ずる場合と朝日ソノラマに準ずる場合があった。
1980年代になってから以下の各欄に最初に記したものが正式なタイトルとしてJASRACに登録された[15]が、CDの種類によっては旧タイトルを表記している場合もある。
以下に記した使用状況は、DVD版のもの。
奥田民生によってカバーされている(シングル「イージュー★ライダー」のカップリング曲)。
話数 | 放送日 | サブタイトル | 演出 | 脚本 | 絵コンテ |
---|---|---|---|---|---|
第1話 | 1971年 10月24日 | ルパンは燃えているか・・・・? ! | 大隅正秋 | 山崎忠昭 | 高橋和美 |
第2話 | 10月31日 | 魔術師と呼ばれた男 | 大和屋竺 | 奥田誠二 | |
第3話 | 11月7日 | さらば愛しき魔女 | 宮田雪 | 斉九洋 | |
第4話 | 11月14日 | 脱獄のチヤンスは一度[19] | さわきとおる | 佐々木正広 | |
第5話 | 11月21日 | 十三代五ヱ門登場 | 山崎忠昭 | 小華和ためお | |
第6話 | 11月28日 | 雨の午後はヤバイゼ | 松岡清治 | 小泉謙三 | |
第7話 | 12月5日 | 狼は狼を呼ぶ | Aプロダクション演出グループ | 大和屋竺 | 斉九洋 |
第8話 | 12月12日 | 全員集合トランプ作戦 | 宮田雪 | 奥田誠二 | |
第9話 | 12月19日 | 殺し屋はブルースを歌う | 大隅正秋 | さわきとおる | |
第10話 | 12月26日 | ニセ札つくりを狙え! | Aプロダクション演出グループ | 矢沢則夫 | |
第11話 | 1972年 1月2日 | 7番目の橋が落ちるとき | 宮田雪 | 小華和ためお | |
第12話 | 1月9日 | 誰が最後に笑ったか | 大隅正秋 | 鶴見和一 | |
第13話 | 1月16日 | タイムマシンに気をつけろ! | Aプロダクション演出グループ | 宮田雪 | 斉九洋 |
第14話 | 1月23日 | エメラルドの秘密 | 岡崎稔 | ||
第15話 | 1月30日 | ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう | 松岡清治 | 小華和ためお | |
第16話 | 2月6日 | 宝石横取り作戦 | 七條門 | 出崎哲 | |
第17話 | 2月13日 | 罠にかかったルパン | 斉九洋 | ||
第18話 | 2月20日 | 美人コンテストをマークせよ | 松岡清治 | 小華和ためお | |
第19話 | 2月27日 | どっちが勝つか三代目! | 小山俊一郎 | 棚橋一徳 | |
第20話 | 3月5日 | ニセルパンを捕えろ! | 七條門 | 小華和ためお | |
第21話 | 3月12日 | ジャジャ馬娘を助けだせ! | 松岡清治 | 高橋春男 | |
第22話 | 3月19日 | 先手必勝コンピューター作戦! | 宮田雪 | 小華和ためお | |
第23話 | 3月26日 | 黄金の大勝負! | 田村多津夫 | 吉川惣司 |
※原作のストーリーラインやキャラクターを借用してアニメ用に大幅にアレンジした物が多く原作とはほぼ別物になっている作品も少なくない[20]。
※先述の通り、大隈降板の時点で23話分の脚本が発注されており、順当に映像化されたのは12話までとなった。13話以降に用意されていた下記の脚本は未使用に終わったが、一部のエピソードはTV第2シリーズでアニメ化されているほか、「ルパン三世H」名義でコミカライズされている(後述)。
放送系列は当時のもの。
放送地域 | 放送局 | 放送系列 | 放送時間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
近畿広域圏 | 読売テレビ | 日本テレビ系列 | 日曜 19:30 - 20:00 | 制作局 |
北海道 | 札幌テレビ | 日本テレビ系列 フジテレビ系列 |
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青森県 | 青森放送 | 日本テレビ系列 | 日曜 19:30 - 20:00[22] | |
秋田県 | 秋田放送 | |||
山形県 | 山形放送 | |||
岩手県 | テレビ岩手 | 日本テレビ系列 NETテレビ系列 |
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宮城県 | 宮城テレビ | |||
福島県 | 福島中央テレビ | 火曜 18:00 - 18:30[23] | 1972年4月から放送 | |
関東広域圏 | 日本テレビ | 日本テレビ系列 | 日曜 19:30 - 20:00[24] | |
山梨県 | 山梨放送 | |||
新潟県 | 新潟総合テレビ | フジテレビ系列 日本テレビ系列 NETテレビ系列 |
||
長野県 | 長野放送 | フジテレビ系列 | 水曜 18:00 - 18:30[25] | 本放送終了から約4年後の1976年1月14日 - 6月16日放送[26] |
静岡県 | 静岡放送 | TBS系列 | ||
富山県 | 北日本放送 | 日本テレビ系列 | 日曜 19:30 - 20:00[27] | |
石川県 | 石川テレビ | フジテレビ系列 | ||
福井県 | 福井放送 | 日本テレビ系列 | 日曜 19:30 - 20:00[27] | |
中京広域圏 | 名古屋放送 | 日本テレビ系列 NETテレビ系列 |
『TV第2シリーズ』以降は、中京テレビで放送。 | |
鳥取県 | 日本海テレビ | 当時の放送免許エリアは鳥取県のみ | ||
広島県 | 広島テレビ | 日本テレビ系列 フジテレビ系列 |
||
山口県 | 山口放送 | 日本テレビ系列 | ||
徳島県 | 四国放送 | |||
香川県 | 西日本放送 | 当時の放送免許エリアは香川県のみ | ||
愛媛県 | 南海放送 | |||
高知県 | 高知放送 | |||
福岡県 | 福岡放送 | |||
長崎県 | テレビ長崎 | フジテレビ系列 日本テレビ系列 |
||
熊本県 | テレビ熊本 | フジテレビ系列 日本テレビ系列 NETテレビ系列 |
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大分県 | テレビ大分 | |||
宮崎県 | テレビ宮崎 | |||
鹿児島県 | 鹿児島テレビ | |||
琉球政府 | 沖縄テレビ | フジテレビ系列 | 当時は米国の施政下[注 8] |
数年後の各局での再放送で、夕方の放送枠にもかかわらず、局によっては20%台という異例の高い視聴率を叩き出し評価が高まることとなった。なお、高畑・宮崎両名が築いた路線は『TV第2シリーズ』、ひいては以後のテレビシリーズの作風を決定付けたとも言われている。
1978年12月8日の夕方に日本テレビで行われた最終回(第23話)の再放送は、32.5%の視聴率を記録(ビデオリサーチ・関東地区調べ)。これは『ルパン三世』シリーズ全体を通しての最高視聴率であると同時に、ビデオリサーチがオンライン調査を開始した1977年9月26日以後に放送されたテレビアニメの視聴率の中では歴代6位となっている[28]。
大塚康生は、本作について「長編からテレビへ移った僕たちにはテレビの質は長い間馴染めなかった。宮崎さんや高畑さんが入ってやっと救われたのが真相と言えます。話の骨格はモンキーさんが作られたものなので、その力量に負うところが大きかったと思っています。完成度の低い作品にもかかわらず大勢の聴視者が今でも存在して、こんなインタビューを受けるということが、何だか不思議に思えます。」とコメントし、本作の中で特に印象深いエピソードに『脱獄のチャンスは一度』を選び大隅正秋降板後、高畑勲・宮崎駿に交代するまでの境目に当たる作品であり、大変苦労したので印象深いと評している[29]。
大隅正秋は、後年、再放送の人気が高まった理由を当時のテレビ局で聞いた際「余計な説明をしていない、新しさが未だにある。」など、視聴率が低かった理由と全く同じだったと語っており、視聴者からの再評価は、宮崎・高畑両名の参加による路線変更部分だけではなかった。そして本放送終了から約5年後、再放送時の人気を背景として新作アニメ(『TV第2シリーズ』)が製作される事になった。
宮崎駿は、劇場版第二作『カリオストロの城』や『TV第2シリーズ』での2作は「第1シリーズでやったことの総棚ざらえ」と称している。『TV第1シリーズ』については「ぼくらはまぎれもなくハングリーだった。スカッとしたおもしろい仕事をやりたいという願望と気力はいくらでもあったのだ」と意欲が強かったことを語っている。しかし「放映中の路線変更は製作を混乱させ、テレビアニメーションの技法が停滞した時期もあって、画面は乱れ、完成度は低く、技術的に見るところのない作品であった」と評している。再放送で人気を得た理由を「ベンツに乗るルパンと大衆車のフィアットに乗るルパンがせめぎあい、結果として番組に活力をもたらしたのが原因では」と語っている[30]。
奥田誠治は、「私は本作にも参加しているんですが、本作らしさは1話から4話しかないと思っているんです。その絵コンテを作ったのは、1話が吉川(高橋和美名義)、2話が私で、3話は出崎統(斉九洋名義)、4話は石黒昇です。本作は、その4人が全力を出し切ったんです。これが今でも『ルパン三世』のスタイルになっていると思います。」とコメントしている[31]。
吉川惣司は、「大塚康生さんや宮崎駿さんがこういう作り方は間違いだ、とよく大隅さんと口論していた。それは僕もよくわかります。彼らは漫画映画としての完成度を求めている。大隅さんのはまるで実験映画。脚本からしてわかりにくい。でも『ルパン』は、通俗ヒューマニズムや胸キュンで癒されるような世界じゃないでしょ。大隅さんのほうが断然好きでした。無茶やってるなって感じで。たとえば大和屋さんはシュールで、今じゃ考えられない、いくら読んでもわかんないホンを書いてた。あの頃はまだ70年安保の余韻があって、アナーキーで反権力的な空気がスタイルに出てます。」とコメントしている[32]。
板野一郎は、「あの当時の人達はみんなそうだったけど、本作とか『宇宙戦艦ヤマト』が好きだったんです。」とコメントしている[33]。
森本晃司は、今でも好きな凄まじいシリーズの1つに本作を挙げている[34]。
増田敏彦は、「ルパンはいえばファースト・ルパン#1、#2、#5、#9。キャラの色っぽさ、カッコよさ、全てこの4本に凝縮されていると思います。」とコメントしている[35]。
小林治は、「『ルパンVS複製人間』も『カリオストロの城』も大好きだし、本作は最高のハードボイルド作品だと思っている」とコメントしている[36]。
渡辺信一郎は、少年時代に影響を受けたアニメは『天才バカボン』と本作で、独特の大人っぽい雰囲気に惹かれたとコメントしている[37]。
神山健治は、「監督をやるなら観ておきたい20本」で『ルパンVS複製人間』『カリオストロの城』などと共に本作を選出している[38]。
小池健は、『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』制作にあたり、「僕らが子供の頃に出会った本作とか『ルパンVS複製人間』は、大人ペースなアニメーションだったんですよ。だから、ああいう雰囲気のルパンにもう一回戻れないものかと探っていったことが、原点回帰に繋がっていきました。」とコメントしている[39]。
小黒祐一郎は、「本作も基本なんで、全部観てほしい。作画も勿論凄いんだけど、最近思うのは、画作りにしろストーリーにしろ、とにかく本作はアイデアや描写が独創的であり、なおかつ魅力的だったんだ、という事。今になっても延々とパクられたり、『本作に戻ろう』と言われるのは、そういうわけでしょう。単にキャラクターが魅力的だったとか、作画がよかったとかいう事だけではない。宮崎駿、高畑勲、さらには吉川惣司、出崎統と、当時の東京ムービーとしては考えられるスタッフが全て投入されているよね。作画だけでなく、演出もいいところが多い。」とコメントしている[40]。
NHKがBSプレミアムで2017年5月3日に放送した「ニッポンアニメ100 発表!あなたが選ぶアニメ ベスト100」で本作は140位にランクインした[41]。
本放送当時、朝日ソノラマから録りおろしドラマ「魔術師パイカル」を収録したソノシート(品番AM-32)が発売された。第2話を元にしているが、パイカル役は村越伊知郎で、銭形が登場するなど展開が一部異なる。ジャケット内にはカラー彩色された、ドラマと連動した漫画も付いている。
その後は長らく別メディアで販売はされていないが、2018年に講談社より刊行されたDVDアニメ付きムック本「ルパン三世 1stシリーズ DVDコレクション」(2014年に同社から刊行された「ルパン三世DVDコレクション」全57巻から1stシリーズのみを抜粋し、全6巻で一挙刊行)全巻購入特典として、ソノシートをCDに置き換えた以外はジャケット・漫画を含め完全復刻した版を希望者全員が手に入れる事が出来る[42]。
なお、このソノシートで使用された、セリフが被っていなかったBGMは後述の「ルパン三世 '71 ME TRACKS」に収録されている。
山下毅雄によるサウンドトラックは、放送後にマスターテープが紛失している。後述する『ルパン三世 '71 ME TRACKS』のライナーノーツでは「持っている人がいたら自首してください」との記載がある。
この事情から、現在では完全な形でのレコード化あるいはCD化が不可能な状態となっているが、多くのファンの要望により代替案として、過去に3つの企画盤が発売されている。
2000年代にHDリマスター(デジタルリマスター)が行われた。原盤である35mmネガフィルムから色調整や傷の補正など修復をすることで、より鮮明な画質になっている(第17話「罠にかかったルパン」後半のみ原盤紛失のため、16mmフィルムを素材としている。)。近年の放送などは、基本的にこの映像が使用されている。なお、リマスターは二度行われている。
『ルパン三世officialマガジン』では、早川ナオヤによるコミカライズ版が連載されており、このうち、第1話から第4話と第17話がコミカライズされている。1話から4話は、アニメに忠実な作りになっている。ただし第4話のコミカライズ版に関しては、放送問題用語が用いられていたため、一部の台詞が変更または削除されている[注 10]。また、前述したボツ脚本のうち「刺客の時は来た」「華麗なる標的」の2作品もコミカライズされた。
17話は、不二子の視点で描いたコミカライズ作品となっている。物語の構成自体は同じだが、印刷したお札が、ルパンの手によって紙幣として使い物にならないようにいたずらされていた事を知って、不二子が本気で悔しがるというシーンが最後のページに加えられている。このシーンでは、悔しがる不二子の横でルパンたちを罠に嵌めた星影銀子が力なく崩れ落ちている。
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