博多港(はかたこう)は、福岡県福岡市にある港湾。海の中道、博多平野及び糸島半島により囲まれた博多湾の湾奥に位置している。港湾管理者は福岡市。港湾法上の国際拠点港湾、港則法上の特定港に指定されている。1899年8月4日に開港した。古くは、那の津・那大津・博多津と呼ばれていた。三津七湊。
近年、博多港は九州地域の経済を支える中枢港湾として、東アジア諸港における国際競争力の確保から国際海上コンテナターミナルの整備を進めており、高度物流の拠点港湾を形成している。外貿コンテナ取扱個数国内第6位。
外国人旅客数およびクルーズ船寄港数は日本一となっている。また、神戸港より西の西日本では貿易額、コンテナ取扱量ともに首位である。
364日・24時間入出港及び荷役が可能であり、北米・欧州航路のコンテナ船などが寄港する。また、福岡空港や都市高速が近くにあるため、都心からの利便性が高い。他にも、海岸沿いには福岡国際センター・マリンメッセ福岡・福岡国際会議場などのコンベンション施設があり、福岡ドームや福岡タワーなどの観光施設、シーサイドももちといった新都心も博多湾の沿岸に集中している。
旅客港として韓国や中国に近い博多港は、韓国・釜山との間に高速船を運航するなど需要も多く、外国航路の旅客数日本一の港である。
港則法に基づく港域については、海上保安庁発行の海図では西戸崎西端(志賀島橋橋台)から能古島北部也良岬を経由し今津の碁石鼻南側を結ぶ線を港界と定める。箱崎埠頭から荒津までの防波堤の内側を第1区と定め、香椎浜埠頭(香椎かもめ大橋橋台)と東区西戸崎南東端を結ぶ線の北側を第2区、残りの海域のうち能古島南部と小戸妙見岬を結ぶ線の東側を第3区、西側を第4区と定めている。
港湾法に基づく港湾区域については、1952年(昭和27年)10月に運輸大臣の認可を受けた、志賀島東端から能古島の北端を経由し、西区今宿まで引いた線に湾として囲まれた範囲が指定されている[3]。また、1970年(昭和45年)9月17日の許可では、道切(満切)から能古天狗鼻まで引いた際、能古天狗鼻において真方位208度に引いた線とにより囲まれた海面並びに石堂川(御笠川)及び那珂川各博多港臨港鉄道下流の河川水面、ただし、漁港法により指定された博多漁港の区域を除くとされている[4]。
博多湾内は水深確保のため能古島と大岳(海の中道)の間から浚渫による航路[注釈 1]が設定されており、ここからパイロットが乗船する水先区となる(強制水先区ではない)。航路は西戸崎沖から、アイランドシティや香椎パークポート方面への「東航路」と、荒津地区 – 東浜埠頭方面への「中央航路」に分かれる。
なお「福岡港」という呼称は明治から昭和初期まで、現在の中央区港(みなと)にある福岡船溜り[5] を指していたもので、ここは古くから荒戸(波戸)と呼ばれ、江戸時代に福岡藩はここを整備して御座船や長崎警備にむかう長崎番船を出入港させていた。また明治から昭和初期における「博多港」は、現在の築港本町・石城町付近、福岡国際センターなどが建っている一帯にあり、両港は元々は別々の港であった[6]。1970年頃までに中央埠頭・博多埠頭が一体埋め立て整備されると、博多港として統一された。2019年時点の国土地理院地図では、中央埠頭西側の旧福岡港側が博多港の一部「博多漁港」とされている。なお、「福岡港」の呼称は、中央埠頭整備後に開通した(旧)博多臨港線の貨物駅名「(貨)福岡港駅」として残っていたが、それも1998年に廃駅となった。
1994年から2006年まで博多港にはアメリカ海軍のイージス艦が計14回寄港している。2004年まで第7艦隊所属アーレイバーク級ミサイル駆逐艦「DDG-56 ジョン・S・マケイン」が須崎埠頭に、2006年には「DDG-62 フィッツジェラルド」が箱崎埠頭に接岸した。寄港中に艦内閲覧が行われたこともあったが、2006年の寄港では報道関係者のみの内覧に制限された。
- 東浜埠頭(東区東浜)
- 箱崎ふ頭(東区箱崎ふ頭)
- 香椎パークポート(東区香椎浜ふ頭)
- 福岡アイランドシティ(東区香椎照葉及びみなと香椎)
- 博多湾に造成された人工島であり、都市の機能としては、西側のみなと香椎地区と東側の香椎照葉地区とに大きく分けられる。香椎照葉地区においては、中高層の共同住宅や一戸建ての住宅を中心としたゾーン、新産業・研究開発機能が集積するゾーンが配置され、学校、福祉関連施設、商業施設等も立地している。また、みなと香椎地区においては、香椎パークポートの対岸に造成された港内最新のターミナル等が整備されている。貨物取扱量増加や船舶大型化に対応し、5万トン級のコンテナ船1隻と6万トン級のコンテナ船2隻が同時に接岸できる。大型ガントリークレーン5基やトランスファークレーン19基を備える。2010年7月から、港湾荷役時の二酸化炭素排出削減を図る国の実証実験事業としてトランスファークレーンの電動化を行うこととなり[9]、ターミナル内のクレーンの走行路に集電レールを設置し、7月時点で使用中のディーゼル電気駆動クレーン13基を地上給電方式併用に順次改造した[10]。2010年11月には、世界初となるリチウムイオン電池搭載の完全電動型クレーン4基が新たに導入され[11]、2010年12月20日から電動化クレーン17基体制での本格稼働を開始した[12]。
- 能古地区(西区)
- 市街地と能古島を結ぶ渡船が利用する港がある。観光客が多く利用する。
- 西戸崎地区(東区)
- 市街地と海の中道の西戸崎を結ぶ渡船が利用する港がある。隣接してジャパンオイルネットワーク福岡油槽所や、船舶・定置機関整備事業者のエンジンドックがある。
- 博多漁港(中央区)
- 福岡船溜(中央区)
- 博多漁港の西側にある船だまり。船舶への給油船(バンカー船)などの基地となっている。北岸側には福岡造船福岡工場がある。
- 長浜船溜(中央区)
- 須崎埠頭と博多漁港の間にある船だまり。周囲には倉庫が並ぶ。壱岐・対馬方面の貨物船航路が発着するほか、水産庁や福岡県の漁業取締船の基地となっている。入口付近の北岸側には船舶修理事業者の曽我鉄工所がある。
- 東浜船溜(東区)
博多湾内航路
- 福岡市営渡船
- 博多・志賀島航路 (博多埠頭第1 ‐ 西戸崎 ‐ 志賀島)
- 玄界島・博多航路 (玄界島 ‐ 博多埠頭第1)
- 能古・姪浜航路 (能古島 ‐ 姪浜旅客待合所)
- 小呂島・姪浜航路 (小呂島 ‐ 姪浜旅客待合所)
- 安田産業汽船
- ももち・海の中道航路 (ももち〈マリゾン〉 ‐ 海の中道渡船場)
- 博多・海の中道航路 (博多埠頭第1 ‐ 海の中道渡船場)
- 海上タクシー(能古・姪浜航路)
湾内クルーズ
水上バス
- 「福博みなとであい船」(博多埠頭・ベイサイド – 天神・福博であい橋、2011年3月27日 – )[7][8]
国内航路
- 九州郵船
- 高速船「ヴィーナス」「ヴィーナス2」(博多埠頭第1)、「フェリーちくし」、「フェリーきずな」(博多埠頭第2)
- 「フェリーうみてらし」(博多埠頭第2)
- 野母商船「太古」(博多埠頭第2)
- 対州海運「フェリーたいしゅう」(須崎埠頭)
2007年7月1日時点。
北米西岸
- Westwood Shipping Lines(アメリカ)
東南アジア
- 日本郵船(NYK)(日本)/現代商船(ヒュンダイ)(韓国)/Siam Paetra International Co.,Ltd. (SPIC)(タイ)
- 陽明海運股份有限公司(YANG MING)(台湾)
- ワンハイラインズ(台湾)/エバーグリーン(台湾)
- ワンハイラインズ
- バンコク、レムチャバン、香港、高雄、基隆、台中
- 高雄、香港、塩田
- エバーグリーン
- 台中、高雄、香港、蛇口(深圳)
- シンガポール、マニラ、ポート・クラン(マレーシア)、タンジュンペラパス、ペナン(マレーシア)、パシールグダン(マレーシア)、基隆、台中、高雄、香港、釜山、光陽
- 商船三井(MOL)(日本)
- 山東省煙台国際海運公司(SYMS)(中国)
- 新海豊集装箱運輸有限公司(SITC)(中国)
中国
- ジェネック(アカシアライン)(日本)
- 浩達船務有限公司(FAIR WIND SHIPPING)(中国)
- SYMS
- 上海
- 連雲港、青島
- 天津、大連、煙台
- 上海、寧波、釜山、光陽
- 煙台、大連
- 煙台、石島、釜山
- SITC
- 天敬海運(CK Line)(韓国)
- 上海スーパーエクスプレス(日本) RORO船
- 東進商船(Dong-Jin)(韓国)
- 安通海運国際有限公司(Onto Shipping International)(中国)
- 大連集発環渤海集装箱運輸有限公司(DBR)(中国)
- 大連威蘭徳船務有限公司(Winland Shipping)(中国)
海上出入総貨物量は、外国貿易が 1,830 万トン、内国貿易が 1,406 万トン(2012年)、出入別の割合では、輸移出が33.4%、輸移入が66.6%となっている。博多港は輸移入中心の港湾であるといえる。
外国貿易では取扱量の4割が輸出で6割が輸入。輸出品目はゴム製品・完成自動車・再利用資材・が、輸入品目は家具装備品・麦・飼料、肥料・衣類・果実、野菜が上位を占める。貿易相手国は中国・アメリカ・韓国が上位で、中でもトヨタ自動車の中国向け輸出車の積出港としての成長が著しい。
下記のデータは2012年時点のもの[14]。
入港船舶
- 外国航路:5,148隻(前年比104.1)・43,600,490トン(前年比102.2%)
- 内国航路:25,904隻(前年比98.7%)・18,056,661トン(前年比104.4%)
船舶乗船人員
- 博多港の外国航路は釜山航路のみだが旅客数は日本一
- 内国航路:1,116,137人(前年比102.5%)
国際海上コンテナ取扱量
- 取扱個数(実入コンテナと空コンテナの合計値)単位:TEU
- 外国貿易(ダイレクト)
- 輸出:404,042(前年比100.7%)
- 輸入:414,505(前年比100.4%)
- 内国貿易(フィーダー)
- 移出:13,899(前年比95.7%)
- 移入:16,887(前年比77.1%)
海上出入
- 貨物量
- 外国貿易
- 輸出:7,046,473トン(前年比101.0%)
- 輸入:11,251,626トン(前年比98.1%)
- 内国貿易
- 移出:3,763,569トン(前年比107.3%)
- 移入:10,292,461トン(前年比105.6%)
- フェリーによる航送車輛
- 移出:867,675トン(前年比95.2%)
- 移入:882,285トン(前年比93.4%)
注釈
電動化前の各荷役レーンへ自由に移動できる、タイヤ式トランスファークレーン。博多港アイランドシティCTにて、2009年5月5日撮影。
本来は貨物船だが、船舶安全法第8条に基づき最大12名までの旅客を受け付けている。
出典
二万五千分の一「福岡」地図、大正15年測図、昭和4年11月30日発行(今昔マップより)
“博多港統計年報” (PDF) (2012年). 2016年9月25日閲覧。
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