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藤子不二雄の藤本弘による日本の漫画、アニメーション作品 ウィキペディアから
『ジャングル黒べえ』(ジャングルくろべえ)は、藤子不二雄の藤本弘(のちの藤子・F・不二雄)の日本の漫画、同作のテレビアニメである。
アフリカの密林に住むピリミー族[注釈 1]の大酋長[1]の息子である黒べえが、ジェット機を大きな鳥と勘違いし、捕らえようと車輪にしがみついたものの日本上空で力尽きて落下し、落ちた先である佐良利家(漫画では佐藤家)で看病されたことを機に、佐良利家に恩返ししようと得意の魔法や呪術で騒動を巻き起こす物語である。
本作は藤子作品としては珍しい他者によるテレビアニメ化企画が先行した作品である。過去に『オバケのQ太郎』など一連の藤子アニメ作品を手掛けてきた東京ムービーがアニメ制作を担当。藤子(藤本)はストーリーと漫画連載を担当した。
本作の企画の前身は、ある時期から『頭の上のチッカとボッカ』という仮題[2]で進行した企画である。キャラクター原案は当時Aプロダクションに在籍していた宮崎駿が手掛けた。その際に宮崎が出したアイデアは「アイヌ神話のコロポックル(ホビット)と人間の交流を描く」というものであった。宮崎とともに原案を作ったプロデューサーの楠部三吉郎によると、コロポックルの兄妹が人間の住宅天井裏に住みつき、人間のものを「狩猟」と称して勝手に持ち出すストーリーであったという[3][注釈 2][注釈 3]。『頭の上のチッカとボッカ』の企画を楠部が毎日放送に持ち込んだところ、当時はまだ無名であった宮崎の起用に毎日放送は難色を示し、企画は実現しなかった[3]。
宮崎が作った『頭の上のチッカとボッカ』の設定原画は、2016年にまんだらけのオークションに出品され、53万円で落札された[4]。
上記の通り、『頭の上のチッカとボッカ』はあくまでも形を変えつついくつも存在した企画の1つで、宮崎が有名な存在になったからこそ焦点が当てられたに過ぎない。また、宮崎は『ジャングル黒べえ』のスタッフとしてクレジットされていない。「『ジャングル黒べえ』の前身企画の原案作りに宮崎駿が関わった」と記すのは問題ないが、「『ジャングル黒べえ』で宮崎駿は原案を担当した」と記すのは誤り。
無名の宮崎駿がキャラクターのデザイン担当である点が毎日放送に受け入れられなかったため、楠部は(『新オバケのQ太郎』で接点のあった)藤子不二雄に頼むという代案を出し「企画の形がなくなるかもしれないが注文は付けない」という条件で了解を得る[3]。
1983年の書籍[6]において藤本は、本企画に参加した時点で「ジャングルの野生児が東京にやってくる」という設定はすでにあり、そのシノプシスを執筆するにあたり、下記の要素を追加してギャグ化していった旨を記している。
この他に藤本は「穴を小石で埋めることで恩返しを表現」「ベッカンコの神像と雨降り伝説」「2本足で空を飛ぶパオパオ」等の記述の後で「最初のキャラクターづくりをやらなかったので、こんな話で自画自賛するばかり」と述べており、これらの要素が藤本発であることを示唆している。
藤本はのちに楠部に対して「楽しい作品だったけれど、でもあれは私のキャラクターじゃないね」と述べたという[3][注釈 6]。また「キャラクターがボクたち自身でつくったものではないので、味をひき出せなくて苦労したことを思い出します」とも語っている[6](ここでの「キャラクター」が「ジャングルから来た野生児」というキャラクター設定を表すのか、キャラクターデザインを表すのか、どちらなのかは不明)。
いずれかの時期において、企画は『暴れボロンチョ』という仮題となった。その仮題が冠された企画書には「アフリカの酋長の息子・ボロンチョが日本にやってくる」という設定や、「ウ〜ラ!」という掛け声が記されている[7]。
漫画はアニメ版に合わせて1973年2月(3月号)から同年11月(12月号)まで、小学館の学習雑誌(『よいこ』、『幼稚園』、『小学一年生』 - 『小学六年生』)[注釈 7]と毎日新聞(大阪版夕刊)に連載された。
1989年7月に市民団体「黒人差別をなくす会」が、同じく藤子作品である『オバケのQ太郎』の「国際オバケ連合」の回の描写が黒人差別であると指摘。これを受けて、藤子プロ、藤子スタジオ、単行本を出版していた小学館、中央公論社は、『オバケのQ太郎』の当該エピソードが収録された単行本を増版中止・回収する措置をとった。この際に余波や後難を避けるため、抗議や指摘がなかった本作も同時に自主回収したと見られている。その後、本作を「封印」扱いになり、単行本は絶版、『バケルくん』第2巻や『藤子まんがヒーロー全員集合』に収録された一部エピソードや本作の紹介も別作品に差し替えとなった。
一方、自主回収について出版社による公式な説明はなされておらず、公には単なる「販売元品切れで重版は未定」として扱われている。本作の出版がなされなくなった経過についてライターの安藤健二が取材を行い、『国際オバケ連合の抗議を受けた出版元が「黒人差別をなくす会」の背景に部落解放同盟などの同和団体があると思い込んで萎縮し、自主回収の形で葬ったようである』との結論に至ったが、関係者の証言を得て事情を明らかにするまでには至らず、依然詳細は不明のままである。
アニメの再放送も途絶え、1990年から2010年までの約20年間、本作は事実上闇に葬られた(詳細は#アニメの一時的な封印を参照)。
2010年に漫画(#単行本を参照)が、2015年にアニメのDVD-BOXが発売され、それ以降は入手が容易な作品となった。2024年には初めて公式にYouTubeによる配信が実現している。
黒べえ役に起用された肝付兼太は主役だと告げられた際、妙なプレッシャーを感じたと2005年のWEBアニメスタイルとのインタビューの中で振り返っている[8]。 また、当初は主題歌も歌う予定だったが、当時の肝付は楽譜を理解できなかったうえ、歌のテンポも早かったため歌うのは無理だと判断し、合いの手だけで参加したいと頼んだと明かしている[8][注釈 12][注釈 13]。 結局、大杉久美子の歌に合わせて肝付が「ウラッ!」という合いの手を入れることになったが、それでもテンポについていけないため、コロムビアのディレクターが合いの手を入れるタイミングで肝付の頭を叩く形でタイミングを知らせる手法がとられた[8]。
本作のテレビアニメ版は1973年3月2日から同年9月28日まで毎日放送制作、NETテレビ(現・テレビ朝日)系列(中部地区は放映途中に中京テレビ→名古屋テレビへ移行)で毎週金曜日の19時00分 - 19時30分に放送された。30分の1回に2話形式で全31回で合計61話(第25回のみA・Bパート連続)。
九州・沖縄地区では、福岡県を除いてNETテレビ系列局が未開局または他系列優先のクロスネット局だった関係で、熊本県・鹿児島県以外では現在毎日放送が属しているTBSテレビ系列の放送局で放送された。
当初は4月6日放送開始予定だったが前番組の『変身忍者 嵐』が一カ月早く終了したため3月2日からの放送開始となった。
本番組から『ドラえもん』(第2作第2期)が2019年に土曜日に移動するまでの46年7か月間、この放送枠ではアニメの放送が続くことになるが、藤子アニメとしては本番組終了から1981年に同作の第1期が日曜日の放送枠から移動して始まるまでの8年間存在していなかった。
藤子アニメの中で在阪放送局が製作に関わっている唯一の作品である。
(漫画の封印については#一時的な封印を参照)
アニメの再放送は、1989年以降、テレビでの再放送が行われていない(CS放送を含む。詳細は#再放送を参照)。
アニメキャラクターとしての「黒べえ」も、藤子不二雄ランドのCM以降、しばらく登場する機会はなかった[注釈 14]。
1999年に発売された「東京ムービー アニメ大全史」(辰巳出版)では、冒頭の「東京ムービー テレビアニメ作品年表」や巻末の「サブタイトル・リスト」では、放送期間や全サブタイトルが紹介されているものの、作品自体は紹介されていない。
2010年に漫画(#単行本を参照)が発売され封印状態が解かれた後、2011年に川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム内で上映された短編アニメ『Fキャラオールスターズ大集合 ドラえもん&パーマン 危機一髪!?』、ドラえもんED『F組あいうえお』で他の藤子キャラクターと共に「黒べえ」が新作映像で登場した。
2015年9月より藤子・F・不二雄ミュージアムで上映されている短編アニメ『ドラえもん&キテレツ大百科「コロ助のはじめてのおつかい」』には赤べえが台詞付きで登場した。
2015年12月9日には東映ビデオより期間限定生産で全話収録のDVD-BOXが発売された。初放送から約42年を経て、初の映像ソフト化[9]。
2024年1月10日には全話収録のDVD-BOXが通常発売された。
回 | 放送日 | サブタイトル | シナリオ | コンテ |
---|---|---|---|---|
1 | 1973年 3月2日 | 黒べえ大登場の巻! | 金子裕 | さきまくら |
ベッカンコで恩返しの巻 | 鈴木よしたけ | 近藤英輔 | ||
2 | 3月9日 | くっちゃめっちゃドライブの巻 | まつしまとしあき | 出崎哲 |
神さまさかだちベッカンコの巻 | 吉田喜昭 | 小華和ためお | ||
3 | 3月16日 | パオパオがやってきたの巻 | 山崎晴哉 | みぶおさむ |
るす番はまかせろ!の巻 | 金子裕 | 波多正美 | ||
4 | 3月23日 | 槍は黒べえの魂の巻 | 松元力 | 出崎哲 |
わが敵ブタゴリラの巻 | 田原伸二 | 小華和ためお | ||
5 | 3月30日 | パパのやせがまんの巻 | 波多正美 | |
空から赤べえふってきたの巻 | 山崎晴哉 | さきまくら | ||
6 | 4月6日 | パンを守って恩がえしの巻 | 吉田喜昭 | 出崎哲 |
なにがなんでも背をのばせ!の巻 | 近藤英輔 | |||
7 | 4月13日 | やきいものヒミツの巻 | 金子裕 | |
算数なんてじょうしきだの巻 | 松元力 | みぶおさむ | ||
8 | 4月20日 | それいけ!パオパオ自動車の巻 | 石黒昇 | |
黒べえがママでーすの巻 | 吉田喜昭 | 近藤英輔 | ||
9 | 4月27日 | デパートてんやわんやの巻 | 大西洋三 | 波多正美 |
ねむくても起きろ!の巻 | 金子裕 | 小華和ためお | ||
10 | 5月4日 | すばらしいコイノボリの巻 | 松元力 | 出崎哲 |
逃げだしたチンパンの巻 | 大西洋三 | みぶおさむ | ||
11 | 5月11日 | あのリンゴをおとせ!の巻 | 小田健也 | さきまくら |
はんにんはだれだ?の巻 | まつしまとしあき | 小華和ためお | ||
12 | 5月18日 | 教室をのぞくなの巻 | 田原伸二 | 石黒昇 |
いやでも買うのだの巻 | 小田健也 | 近藤英輔 | ||
13 | 5月25日 | ノックアウトで花が咲くの巻 | 田原伸二 | 出崎哲 |
魔法の大せんせい!の巻 | 大西洋三 | 小華和ためお | ||
14 | 6月1日 | 黒べえがテレビに出た!の巻 | 小田健也 | |
タイガーのおねしょの巻 | 金子裕 | 近藤英輔 | ||
15 | 6月8日 | 赤ちゃんをひろった!の巻 | 田原伸二 | 出崎哲 |
とべ!パオパオヒコーキの巻 | 近藤英輔 | |||
16 | 6月15日 | パンツをはいたブルドッグの巻 | 吉田喜昭 | 吉川惣司 |
のびたりちぢんだり魔法の巻 | 金子裕 | さきまくら | ||
17 | 6月22日 | たかねちゃんとアイアイがさの巻 | 大西洋三 | 出崎哲 |
さかさま魚つりの巻 | 松元力 | さきまくら | ||
18 | 6月29日 | わぁー!空中しょうとつだの巻 | 金子裕 | 石黒昇 |
パオパオをつかまえろ!の巻 | 山本優 | 吉川惣司 | ||
19 | 7月6日 | 大酋長がやってきたの巻 | 小田健也 | |
魔法で星がおちてきたの巻 | 金子裕 | さきまくら | ||
20 | 7月13日 | 強敵ガックあらわる!の巻 | 吉田喜昭 | |
黒べえ対ガック、夕陽の決闘の巻 | 吉川惣司 | |||
21 | 7月20日 | 海ぞくサメマリンがやってきたの巻 | 大西洋三 | 近藤英輔 |
魚になった新幹線の巻 | 松元力 | |||
22 | 7月27日 | 生きかえった恐竜タルポの巻 | 大西洋三 | 石黒昇 |
びっくり!タキビドリの巻 | 城山昇 | |||
23 | 8月3日 | 出た!ジャングルドラキュラの巻 | 金子裕 | 出崎哲 |
笑って笑ってゲラゲラポッポの巻 | 九十英夫 | 秦泉寺博 | ||
24 | 8月10日 | 泣き虫珍獣オーイオイの巻 | 川石光 | 開田進 |
エレモンキーのキャンプ騒動の巻 | 小田健也 | さきまくら | ||
25 | 8月17日 | 黒べえピリミーへ行くの巻 | 金子裕 | 吉川惣司 |
26 | 8月24日 | 食っちゃうぞ!パクパクペリカンの巻 | 吉田喜昭 | 秦泉寺博 |
黒べえは音楽0点の巻 | 金子裕 | 石黒昇 | ||
27 | 8月31日 | 黒べえ涙の男泣きの巻 | 吉田喜昭 | |
バクバクは夢どろぼうの巻 | 金子裕 | 吉川惣司 | ||
28 | 9月7日 | ジャングルの大どろぼうをやっつけろ!の巻 | 九十英夫 | さきまくら |
おとぼけ坊やにみんなお手あげの巻 | 山本優 | 石黒昇 | ||
29 | 9月14日 | あっ、人魚姫が食べられたの巻 | 吉田喜昭 | 秦泉寺博 |
ジャングルのとうめい忍者の巻 | 金子裕 | 吉川惣司 | ||
30 | 9月21日 | 母さんどこだ!?涙のポコポンの巻 | 川石光 | 石黒昇 |
ガックの恋よシャラバーイ!の巻 | ||||
31 | 9月28日 | 珍獣わんさか全員集合の巻 | 松元力 | |
大魔法で仲なおりの巻 | 小田健也 | さきまくら |
本放送終了後も、以下のように定期的に再放送された。ネットチェンジ後にはTBS系列局で実施された例もある。
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