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哺乳類ネズミ目の数科の総称 ウィキペディアから
ネズミ(鼠)は、哺乳類ネズミ目(齧歯目)の数科の総称である。ハツカネズミ、ドブネズミ(ペットとしてはファンシーラット)など、1300種[1]あるいは1065-1800種[2]が含まれ、一大グループを形成している。英語では大型のものを「Rat」、小型のものを「Mouse」と呼ぶ。
ネズミのほとんどが夜行性である。また、ネズミの前歯は一生伸び続けるというげっ歯類の特徴を持っているため、常に何か硬いものを(必ずしも食物としてではなく)かじって前歯をすり減らす習性がある。硬いものをかじらないまま放置しておくと、伸びた前歯が口をふさぐ形になり食べ物が口に入らなくなってしまい餓死してしまう。
世界中のほとんどあらゆる場所に生息している。ネズミ上科のほとんどの種が、丸い耳、とがった鼻先、長い尻尾といった、よく似た外観上の特徴をもち、外観から種を見分けることは難しい。このため、頭骨や歯によって識別がなされている。
繁殖力が旺盛である。ハツカネズミなどのネズミは一度の出産で6-8匹生むことが出来、わずか3-4週間程度で性成熟し子供が産めるようになる。
古い分類では、ネズミ亜目の総称とされていた[3][1][2]。ただし、ネズミ亜目の分類は当時から変化し、現在のネズミ亜目はかなり異なる。あるいは狭義にはネズミ上科[1][4]、さらに狭義にはネズミ科[1][5]の総称ともされる。
広義に取った場合、古い分類でネズミ目ネズミ亜目に分類されていた3上科9科が含まれる。これは現在の分類では、ネズミ亜目の2上科8科とリス亜目の1科に分類される(いずれも、科数は分類により若干増減する)。
現在のネズミ亜目には、以前はリス亜目に分類されていた、ホリネズミ科・ポケットマウス科・ビーバー科・ウロコオリス科・トビウサギ科も含まれるが、これらは通常、ネズミとされない。
ヤマネ科は、古い分類ではネズミ亜目とされ、ネムリネズミの異名もあり、ネズミに含められてきた[3]。しかし、現在の分類ではリス亜目であり、標準和名に「ネズミ」が入ってないことも相まって、ネズミとしないことも多い。
ネズミ亜目の残りや、近縁なヤマアラシ亜目にも、和名に「ネズミ」が含まれる種が散見され、俗に「ネズミ」と呼ばれることがある。ただし、解剖学的にはネズミ亜目と異なる点もあり、生物学的な観点からは「真のネズミではない」とされる[2]。ただし、ホリネズミ科をネズミに含めることがある[6]。
和名に「ネズミ」を含む主な種は以下の科に含まれる。分類群は関連するもの以外は省略。
さらにこれら以外でも、顕著な外見上の特徴(ヤマアラシのような)がない、チンチラなどの小型種はいずれも、漠然とネズミと呼ばれることがある。また、カピバラやフーティアのような(ネズミ目としては)大型動物でさえ、「巨大なネズミ」と表現されることもある。古来から、地上性の小獣をネズミと総称したとされる[2]。
ネズミ目以外にも「〜ネズミ」という和名の生物がいるが、これらは最も広義のネズミにも含められることはなく、あくまで名前がそうであるだけのものとして扱われる。
人類にとって、ネズミは収穫した後の穀物を食害したり、家財を損なう害獣と古来認識されている。農作業において、自然の鳥獣が時折田畑の作物を食べに出てくるのは自然なことであり、人間が自然の恵みによって間接的に自然から食料を得ているという意識のもとでは、そうした鳥獣は必ずしも殺して駆除すべき対象ではなく、基本的に追い払うだけであった。しかし、収穫後の穀物は自然と切り離された人間の所有物であり、それを食べるネズミは大事な物を盗み取っていると見なされ、古今東西忌み嫌われてきた。
アリストテレスの『博物誌』では、農作物に害をなすことが述べられているとともに、塩を舐めているだけで交尾をしなくても受胎すると考えられていて、繁殖力が強い事は知られていた。中世のヨーロッパでは、ネズミは不吉な象徴であり、ペストなどの伝染病を運んでくると考えられていた(実際にペストを媒介する)。また、「ゾウはネズミが天敵」と信じられていた(ネズミはゾウの長い鼻に潜り込んで窒息死させると言われていた)。これは単なる迷信などではなく、ネズミは自分より体の大きなものであっても襲うことがあるためである。人間の乳児や病人などはネズミにかじられてしまうことが多々あった。飢饉などで動けなくなり周囲も看病をできなかった弱った人間がネズミにかじられて指を失った事例などは世界中にある。
また、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種はイエネズミと呼ばれ、人間社会にとってもっとも身近なネズミである。現代でも病原体を媒介したり、樹木や建物、電気機器などの内部や通信ケーブルなどをかじったりして人間に直接・間接の害を与える衛生害獣であり、駆除の対象となっている。
20世紀に入って以降になると、次第にネズミはイヌやネコと並んで、物語や漫画、ゲーム、アニメなどの動物キャラクターとして登場するようになる。個体の均一性やネズミの体重が軽いことと安く飼育して増やせることに着目し、薬品や化粧品開発などの実験動物として使われたり、アフリカ・タンザニアでは、ベルギー人のバート・ウィートジェンスが創設したNGO・APOPOが、ネズミを使って地雷を発見するという活動を始めている。ネズミの仲間のハムスターなどはペットとして人気がある。
縄文時代の貝塚における発掘調査で、微小な動物遺体の水洗選別を行った際にネズミの骨が回収されている[7]。これらはアカネズミ・ヒメネズミなど森林性のネズミ類であり、狩猟対象獣であるイノシシ・シカ・タヌキなどに比べて微量であること、また小さいことから食用ではなかったと考えられている[7]。また、貝塚から出土する動物遺体には、ネズミの齧り跡が認められることもある[8]。
東京都北区に所在する七社神社裏貝塚では、魚骨・貝殻などが廃棄されていた縄文後期前葉の土坑内部からハタネズミ・アカネズミで構成される大量のネズミが出土している[7]。ゴミ坑から出土したことから食用であることも想定されるが、全身の部位が残っている個体が多く、焼けた形跡も見られない。このため食用ではなく、縄文人の採集生活において、堅果や加工品を食糧とする森林性のネズミは競合関係にあり、このため駆除を目的としてゴミ坑に廃棄しており、また土坑は落とし穴として機能していた可能性も考えられている[9]。
弥生時代にも人間の生活圏にネズミが存在した痕跡が見られる[10]。1947年(昭和22年)に静岡県静岡市に所在する登呂遺跡における発掘調査により出土した楕円形・蓋状の木製品は、その後の類似した木製品の出土事例の増加により、食料貯蔵庫である高床倉庫の柱に設置するネズミ返しであるとする説が提唱された[10]。高床倉庫のネズミ返しは、取り付け位置・ネズミの種類からクマネズミ属のクマネズミ・ドブネズミには通用せず、ハタネズミを対象としたものであり、そもそもクマネズミ属は弥生時代には生息していなかったとも言われる[11]。
一方で、奈良県磯城郡田原本町唐古に所在する唐古・鍵遺跡では、弥生時代のものと推定されるドブネズミの骨が出土している[10]。また、同遺跡から出土した壺形土器には、4本の掻き傷が見られ、大きさ・本数からネズミのものであると考えられている[10]。ドブネズミは東南アジアを起源とするクマネズミ属であり、世界中に進出している[11]。一般に集落の形成期にはハタネズミ・アカネズミなどの野ネズミが多く出土し、集落の成長に伴い人家の周辺に生息するドブネズミが出現し、さらに集落が衰退すると再び野ネズミが増加するという[10]。唐古・鍵遺跡における出土事例から、弥生時代には稲作農耕の開始に伴い渡来したとする説がある[11]。従来、日本列島へのネズミの渡来は飛鳥時代に遣唐使の往来に伴い渡来したとする説や、江戸時代に至って渡来したとする説もあったが、唐古・鍵遺跡の事例により、これを遡って弥生時代には渡来していたと考えられている[11]。
石川県金沢市に所在する畝田ナベタ遺跡から出土した平安時代(9世紀)の木簡には、ネズミ歯形が認められてる[11]。この木簡は籾の付札で、穀倉を棲家とするネズミが存在していたことを示している[12]。同時代には、宇多天皇の日記『寛平御記』などの文献資料において、猫の飼育に関する記録が見られ、仏典などを守るためネズミの天敵である猫が導入されたとする説もある[13]。
江戸時代の大阪では、養鼠家による飼育が行われ、変わった毛色のネズミが珍重された[14]。『養鼠玉のかけはし』『珍翫鼠育艸』などの飼育書が販売された[15][14]。
和名の「ネズミ」という言葉について、過去に以下のような語源説が唱えられた。
野外に棲息するアカネズミ、ハタネズミなどの「野ネズミ」に対して、人家やその周辺に棲息するネズミ類を「家ネズミ」と呼ぶ。日本のネズミ類のうち家ネズミに当たるものは、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種類にほぼ限られる。
近年ではクマネズミを中心に、ワルファリンに薬剤抵抗性のある肝臓の毒代謝能力の高いものが現れている。クマネズミ以外のネズミにも、同様の耐性を持つ個体が見られるようになり、これらを含め総括してスーパーラットと呼ばれる。スーパーラットのほとんどがクマネズミである。スーパーラットにも効く殺鼠剤も研究されて、薬局などで市販されている。
2007年6月と7月に中華人民共和国湖南省岳陽市を中心に洞庭湖の周辺地域で、洞庭湖の水位上昇を受けて居場所から追い立てられた野ネズミ20億頭が、農村部へ流出する事件が発生した。農作地の被害は160万ヘクタールに及んだ。
ベトナム、タイなどでは、穀物を主食とする田ネズミが食材として用いられ、農家等で飼育されることもある。
南洋のイースター島においては、遺跡から出土する動物遺体のうちネズミが魚を上回る量で出土しており、陸鳥の絶滅や大型魚の減少・貝の小型化などの食糧条件の変化によりネズミを食用としていたと考えられている。イースター島は環境破壊によって樹木が枯渇し、漁船を作って海に出ることが困難になったことでも知られる[18]。
関西学院大学教授の中島定彦らが2015年に発表した論文では、ラットもマウスも固形飼料よりもチーズを好むとし[19]、さらに同年に発表した別な論文では、マウスはアーモンド・リッツ・干し芋よりもチーズを好んだとした。同論文で中島は、ネズミはチーズを好まないという先行研究は妥当性を欠いていると指摘した[20]。
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主に一般家庭用での駆除用として、殺鼠剤や粘着シート、ねずみ捕りなどがドラッグストア、ホームセンターなどで売られている。
飲食店などのように状況がひどい場合や工場などのような事業所については、ゴキブリなどと合わせて専門の駆除(ペストコントロール)業者に依頼することが多い。
代表的なものに以下のものがある。
ネズミに関する言葉や慣用句には、その生態から「こそこそと悪事を働く者」「泥棒」「小さい者、小物」「どんどん殖えていくもの」「子孫繁栄」などの意味が込められる。
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