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特定商取引法第33条で定義される販売形態 ウィキペディアから
マルチ商法(マルチしょうほう)あるいはネットワークビジネスは、会員が新規会員を誘い、その新規会員が更に別の会員を勧誘する連鎖により、階層組織を形成・拡大する販売形態である。英語では"Multi-level marketing"(マルチ、マルチレベルマーケティング、MLM)あるいは"network marketing"(ネットワークマーケティング)と呼ばれる[1][2]。個人を販売者(ディストリビューター)として勧誘(リクルート)し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、連鎖的に販売組織を拡大していく[3][4][5]。紹介や口コミで販売者のネットワークを構築し、会社の流通チェーンを拡大することに重点が置かれている[6][2][7]。
マルチ商法は、従来のネズミ講の単なるバリエーションとして、一部の法域で違法または厳しく規制されてきた[8][9]。日本では特定商取引法で連鎖販売取引として規制されている[10][11]。
商法であると同時に、ポジティブシンキングを組織的に学んで自己変革をする運動でもあり[12][13][14]、仲間づくりの仕組みでもある[15]。ビジネスや人生で実践することでセラピー的プロセスが生まれ、宗教的要素もあると考えられている[16][17][18]。
「マルチレベル・マーケティング」と称される商形態の起源は諸説あるものの何れもアメリカで始まったという点では一致している。1868年に創業したホームプロダクツ業者のJ・R・ワトキンスは代理店を通じて製品を販売する一方で代理店が別の業者を代理店としてスカウトした場合に報酬を支払う商法を採用しマルチ商法の原型を生んだと言われている[19]。その後1890年にはカリフォルニア香水社(現エイボン・プロダクツ)・1934年にはカリフォルニア・ビタミン(その後ニュートリライトに改称し現在はアムウェイ傘下)が創業し、同様の販売手法を採用した。
日本には1970年代にアメリカのホリディマジックが進出した頃から始まったと言われている。マルチ商法は、Multi-Level Marketingの日本語訳として定着し使用されていた。当時この商形態を規制する法律がなく、取引や勧誘に際しての問題や事件が発生し社会問題となったことから、1976年に制定された「訪問販売等に関する法律」において「連鎖販売取引」として定義され、要件に該当するものは勧誘などの行為が法律による規制の対象となった。「訪問販売等に関する法律」は、2000年に「特定商取引に関する法律(特定商取引法、以下・特商法)」に改称され[10]、以降数度の法改正を重ねて現在に至っている。
2001年までは特定負担金の額(2万円以上)など連鎖販売取引の定義条件に当てはまらないものが「マルチまがい商法」と呼ばれていた。そして、当時の大手を含めた多くのマルチ商法企業は、規制逃れを目的に特定負担金を連鎖販売取引の定義条件以下(2万円未満)に設定していた為、連鎖販売を主宰している企業のほとんどがマルチまがい商法という状況だった。そのため、2001年6月1日の法改正にて、連鎖販売取引の定義から特定負担金の条件がなくなった結果、規制逃れをしていた企業もすべて連鎖販売取引(マルチ商法)にと区分されることになった。
マルチ商法の勧誘の手法は、カルトが使うマインド・コントロールに結びつけて論じられ「経済カルト」と呼ばれることもある[20][21]。三菱総合研究所と大学生協はマルチ商法を大学生活で注意すべき50の危険の内の1つに数え、大学生に向けて注意喚起を行っている[22]。
ピラミッド型のヒエラルキーを形成することや、新たな参加者の勧誘などの販売展開の方法がねずみ講と類似しており、過去に「ESプログラム」や「アースウォーカー」は、マルチ商法(連鎖販売取引)として展開していたものの、実質はねずみ講であったとして摘発されている。マルチ商法の形態は多種多様である。
実際「マルチ商法」という用語は正式な法律用語等ではなく合法違法の別なく様々な定義が存在するが、その中で使われている代表的な用法をいくつか示す。
また、無限連鎖講の防止に関する法律(ねずみ講防止法)によって禁止されているねずみ講と近接する部分が多く、公序良俗違反として同法の違反が認定された判決も多い[25]。マルチ商法の中には、売買契約と金銭配当組織とを別個の契約と解し、金銭配当組織部分は実質的にはねずみ講であり公序良俗違反とされた判例もある[26]。
相手を「誰でも簡単に高収入が稼げる」などと勧誘して販売組織に加入させ、紹介料やマージン等の利益を得る構造となっている[27][28]。1人で創業したマルチ商法組織が毎月1人ずつ新加盟者を参加させられたと仮定した場合も、32か月でほぼ全地球人口が加盟者となる計算になる。マルチ組織に誘引された人の大部分は、知識の乏しい学生、主婦、若い勤労者などとなっている[28]。マルチ商法組織と、宗教カルトや自己啓発カルトなどには共通点があり、狙う対象や取り込まれ方も似ている[29]。
勧誘に応じた側は、借金による自己破産、人間関係の断絶、家庭の崩壊を経験する[30][31]。親がマルチ商法に関わっている「マルチ商法2世」にも影響が及ぶ[31]。
表向き合法であるマルチ商法を謳う組織でも、違法となるネズミ講と判断された事例も多い。やり方はカルト宗教と同じように勧誘してくる[32]。
西田公昭によると、他者の夢や不安につけ込んでマルチ商法や投資の勧誘をしてくる人々は商業カルトとも言われる[33]。
マルチ商法は数段階下からの不労所得的な報酬(コミッション、ボーナス)を勧誘時の誘引材料にしている場合がもっぱらである。『ダウン』と呼ばれる配下の加盟者を勧誘・加入させ、かつ一定額以上の商品購入を継続して行わなければならないことが現実(表面に現れないノルマとも言われている)である。また加盟者が期待する様な、安楽な生活ができるほどの高額報酬を得るためには自分の下である加盟者が多数が必要であるため、結果として成功者は加盟者全体に対しる上位僅かのみになる。「1人の会員が2人ずつ新規会員を加入させた」と仮定した場合、28世代目では日本の総人口を上回る1億3千万人(227)が必要となる。
マルチ商法は、法律違反や「人間関係のしがらみ」を利用した断りにくい勧誘方法など様々な問題のある活動が相次いだことにより、国民生活センターや消費生活センターでは、マルチ商法を悪質商法であるとし、注意喚起を行っている[34][35]。 上記の為、社会一般でマルチ商法と言うとき、その印象は極めて悪いものとなっている。そうした事情から「ネットワークビジネス」「紹介販売」等の別の呼称を使っている場合がある。また業者により独自の呼称で呼んでいる場合もある。しかしながら商法の呼称に関わらず特商法にいう「連鎖販売取引」に該当している限り、同法の規制を受けることとなる。
連鎖販売取引は、特商法その他関係する法律を遵守する限り違法なものではないが、一般的な商取引に関係する法律に加えて特定商取引法により更に規制を受けている形であると言える。
日本国では、マルチ商法はトラブルが起きやすいために特商法で「勧誘目的を告げる」など事業者側へ義務や禁止行為を規定する規制をしており、違反した会員が出た場合に事業者自体も処分することができる。特定商取引法で禁止されているのは、目的や事業者名を相手に明かさない勧誘、又は商品やサービスの概要を記載した書面を渡さない勧誘などであり、これらのどれかに反したマルチ商法の勧誘は違法となっている[36][37][38]。しかし、これらに違反しても、勧誘者らの逮捕例は無く、マルチ商法が野放し状態になっていた[37]。
2021年11月11日に京都府でマッチングアプリ経由で知り合った人に、勧誘目的であることを隠して勧誘行為をしたアムウェイ勧誘者らが逮捕され[39]、マルチ商法(マルチ・ネットワークビジネス)勧誘者ら検挙の初事例となった[37]。
違反時には消費者庁から法的な処罰が与えられる。連鎖販売業者「日本アムウェイ合同会社」は、社名や目的を言わずの勧誘(統括者の名称及び勧誘目的の不明示)、目的を告げずに勧誘相手を密室や公衆の出入りしない場所に連れ込んだ勧誘、相手の意向を無視した一方的勧誘、契約締結前に書面を交付しない勧誘(概要書面の交付義務に違反)、という4種類の特商法違反を確認されたため、消費者庁によって2022年10月14日に「6カ月の取引停止」という法的処罰が与えられた[40][41][38]。
紀藤正樹弁護士は、アムウェイについて1997年に国民生活センターに「苦情・相談件数が4年連続で1000件を超えている」と公表され、マルチ商法という言葉を日本に広めた企業だと述べている[42]。マルチ商法は「原則違法」であり、特定の条件(後述)を満たした場合のみ合法となっている商法であると解説している[42]。
紀藤弁護士によれば、当初の特商法は、特定負担(初期費用)が2万円以上かかるマルチ商法のみを違法としていたが、特定負担が2万円未満の悪質マルチ商法が多発した。そのため、2000年の改正で「特定負担が1円以上のマルチ商法は、特定の条件を満たさない限りは違法」と定められた。特定の条件とは、製品名や価格、販売員の氏名、クーリングオフの告知など、必要な要件が定められた契約書の作成である[42]。
連鎖販売取引もマルチ商法も、「ネットワークマーケティング、ネットワークビジネス、MLM」などの別称で呼ばれる事が多い。連鎖販売取引とマルチ商法が同義であるかという件については、各省庁や消費生活センターなどの公的機関においても見解が分かれている。
このように、公的機関内であっても見解が一致しておらず、連鎖販売取引がマルチ商法、ネットワークビジネスをはじめとして、主宰する企業によって様々な別称で呼ばれる場合も多く、消費者にとって非常にわかり難い状況になっているのが現状である。
業界紙「月刊ネットワークビジネス」の2008年11月号「マンガ安心法律学校(4)/マルチ商法とねずみ講の違いって?」において、「(連鎖販売取引が)マルチ商法ではない」と告げることは「不実の告知(真実を言わない、告知しない)」という法律違反となる恐れがあると、注意を呼びかけている。又、同様の説明をしている企業もある[45]。
マルチ商法(MLM)の集団は、前向きな心的態度を活用する「積極思考」(ポジティブシンキング)を信奉し教化する特殊な集団であり、成功も失敗も完全に自分次第であるという究極の自力信仰でもある[46][47]。販売員は、「積極思考」を組織的に会合やビデオ、本などを通じて学び、ビジネスや人生に実践しようとする[48]。現代人の「自分探し」欲求に強烈にアピールする魅力があり、経済的成功の夢で、会社での地位が低い男性や虚無感を抱える主婦、将来に明確なビジョンを持てない若者[49]などを強く惹きつけている[50]。資本主義社会に対しては極めて肯定的である[50]。自己啓発セミナーとMLMは、起源が共通なことで価値観や組織の実践が似ている[51][14]。ポジティブシンキングで人生がうまくいくという考え方は「動機付けの心理学」とも呼ばれ、多くの自己啓発書で見られるものである[48]。自己啓発セミナーは、集団で常識を改変するようなグループ・セラピー(集団心理療法)の場であることや、セミナー受講後に友人を勧誘するように指導されることが、社会的論争の多いカルトのような存在になる要素になっている[51][52]。自己啓発セミナーとMLMとは、内容やマインドコントロールの手法などに類似点が多く、現在では両者の違いは曖昧になっている[14]。MLM型の自己啓発セミナーでは、受講生に新規顧客を獲得する役割を与え、彼らは感謝の気持ちから行動しているものの、実際には集客ツールとして利用されている[53]。また、無償で働かされるなど、搾取的な側面が存在する[53]。同様の構造は、高額塾やカルト宗教などに対しても見られる[14]。
日本においても、その最初期からマルチ商法と自己啓発セミナーとは極めて近い関係にあった[54]。日本における自己啓発セミナーの元祖「ライフダイナミックス(後にアーク・インターナショナルと改名)」の取締役には、「マルチ商法の教祖」である島津幸一が就任していた[54][55]。自己啓発とマルチ商法の相性がよいため、自己啓発の思想をボードゲーム化したもの(『金持ち父さん 貧乏父さん』をボードゲーム化した「キャッシュフローゲーム」や「7つの習慣ボードゲーム」、ナポレオン・ヒルの自己啓発書をボードゲーム化した「アチーバス」など)を使ってマルチ商法の勧誘をする人が多く[56]、一般的なボードゲーム会ではこのタイプのボードゲームは持ち込み禁止とされていることがほとんどである[54]。
社会心理学的には、宗教カルトに似た手口で販売員を勧誘する商業カルトと位置づけられ、マインドコントロールにより心理的に支配し、抜け出せない状況に追い込むと説明されている[18][57][58][59]。宗教社会学的には、宗教色の濃いセラピー、心理療法や自助組織、自己啓発セミナー等を「アイデンティティ変容組織(Identity Transformation Organization, ITO)」と規定し、擬似宗教との位置づけからの研究も行われている[18][46]。アメリカでは、友情、奉仕、親交を中心とした「教会」になぞらえることもある[17]。強く願うことは実現し、そのことで物質的な成功につながるという考え方は、アメリカの民衆の宗教意識「調和の宗教」に根ざしている[13][15]。また、初見の人物を関係性構築や各種活動によって集団と同化させていく手法は、アメリカの教会伝道手法とも共通している[60]。
カルト宗教とマルチ商法は、「集団利益の絶対優先」や、「リーダーへの絶対服従」「情報のコントロール」「外敵を作り出す」「私生活への干渉」など、多くの共通点があり[61]、ターゲットとなる人を複数で囲い込んで「いい商品だ」と信じ込ませる手口も、いったん入ると離脱しにくいという点も似ている[58]。本来の目的を隠して勧誘する偽装勧誘も問題になっており、宗教団体とともに、全国の大学などが警戒を呼びかけている[61][62][63][64]。組織の加入にあたり、自己変革させるイニシエーション的なプロセスを経過することもある[17][65]。ターゲットになるのは、人生の夢や生きる意義を失いかけていたり、自意識が高く社会的に成功する「原石」だと思っている人々など、現状を変えたい志向を持つ人物で[66][67]、特に「自分は特別」という優越感に陥りやすい人、陰謀論に影響されて「一般的な商品は危険なものが含まれているのに隠されている」と信じやすい人は惹き込まれるリスクが高い[58]。マルチ商法は、スピリチュアルとも相性が良く、顧客層が重なりやすい[68]。信奉者は、いくつかの点で宗教信者に似ていると指摘されている[69][70]。彼らは会社とその製品に絶大な信頼を置いており、ポジティブ思考の力がイエスへの信仰に取って代わるセミナーやミーティングに出席する[69]。ミーティングでは、統一教会が考案したとされる「愛の爆弾」というテクニックを使用して、新規会員を熱烈に歓迎し、特別な機会に参加することを祝福する[71][72]。
2019年、MLMの被害者の代理人を務めるダグラス・ブルックス弁護士は、国際カルト学会でMLMの問題を指摘し、熱狂的なディストリビューターが高レベルのスピーカーにスタンディングオベーションを与える大規模な会議、神秘的な用語、勧誘に執拗に焦点を当てること、ポジティブシンキング、組織に時間とエネルギーを捧げる傾向などを批判した[71][57]。マインドコントロールの専門家であるスティーブン・ハッサンや[72]、反カルト活動家のグラハム・ボールドウィンは、マルチ商法のモチベーション・ミーティングをカルト・ミーティングに例えている[69]。ハッサンは、MLMの勧誘や維持の戦略が、虚偽の表現、感情に訴えるアピール、多くの情報の不透明さに依存しており、個人の意思決定プロセスに不当な影響を与えていると指摘している[73]。そして、自由な意思決定のためにインフォームドコンセント(情報提供の原則)に基づいて規制を開発・施行すべきであると主張している[73]。社会心理学者の西田公昭・立正大学教授は、マルチ商法は「カルト宗教のようにマインドコントロールで心理的に支配し、抜け出せない状況に追い込む」「上位会員に共感して信者組織化し、営業を成り立たせている[70]」と指摘している[61][74]。また、身近な人が陥った時は「頭ごなしに否定したり、怒ったり、馬鹿にするのではなく、心理的理由を理解し、自らが誤りに気づく機会を与え、自尊心を取り戻す支援が大切」と指摘している[66]。評論家の荻上チキは、宗教2世当事者への大規模調査著書を行い、「いわゆる『カルト宗教』にハマってしまう人たちが、「カルト宗教」を脱会した後でも、陰謀論やマルチ商法、オーガニックカルトなど様々なカルトを渡り歩く傾向にあることが専門家や当事者の方々、複数から指摘されている」と述べている[75][76]。宗教社会学者の塚田穂高は、両者に次のような共通点があると指摘した[49]。「断定的な強い言葉による感情の揺さぶり」「選択肢の恣意的しぼりこみ」「正体を隠した勧誘」「周囲との関係の断絶」「活動献身にともなう自己犠牲」「今やめたら、『負け』」という「引き返せなさ」など[49]。西田公昭や塚田穂高は対策として、学校教育における消費者教育を充実させ、「マルチ商法」「カルト問題」の具体的な「手口」や「典型的パターン」を広く知らせることが重要だと指摘している[49][77]。
マルチ商法はカルト宗教と同様の家族被害を引き起こし、マルチ商法会員の子どもは「マルチ商法2世[78]」「マルチ2世[79][80]」と呼ばれている[81][82]。商業カルトとも言われるマルチ商法の親族被害という側面は『みんなの宗教2世問題』(晶文社、2023年)でも取り上げられている[78][83]。
ラリーという大会が定期的に開かれ、そこでは成績優良者の表彰と成功談のスピーチが行われ、勧誘のモチベーションが高められる[84][60][73]。派手なパーティで会員を熱狂させたり、会員をステージに立たせるのは[85]、スピリチュアル・ビジネスでも見られる手法である[86]。熱気のある大規模イベントやミーティング、勉強会、お茶会など様々な機会を通して価値観を内面化し、自己変革が図られる[84][14][87]。ビジネスの「成功」は人間関係の構築に依存し、友情、思いやり、その他の社会的に肯定的なイメージの認知に左右される[73]。多くの人は、仲間を助けたいという願いに突き動かされ、ディストリビューターになることで達成感や自尊心を高め、社会的視野の拡大による心理的な後押しを受ける[88]。セミナーや動画コンテンツでは、農薬や添加物の害など「隠された真実」を語り、特別な情報を持つ人間だと錯覚させる[14]。アクティブな会員は、ライバル企業や自分たちに否定的な人を攻撃したり、あらゆる手段を講じてプログラムと製品を擁護する[7][89][72]。商品や組織に対する周囲の批判に際しては、「無知だから」「誤解があるから」と信じて疑わなくなる[66]。さらに、集団内でしか通じない用語を使用し、それによって帰属意識を高め、「特別なことをやっている」という思いを創造する[90]。このようなネットワークは家族のようなコミュニティで、夢を叶えようと情熱を注ぐほど、社会との緊張を生み、さらにグループ内のつながりを強めていく[91][84][92]。
多くの場合、小売よりも勧誘が重視され、自己のネットワークを拡大することが奨励される[6]。製品の消費は、ディストリビューター自身の消費分がほとんどで、販売員というより愛用者のネットワークという性格が強い[6][69]。1991年に、平均的なアムウェイのディストリビューターは、約700ドル/年を稼いだが、アムウェイ製品に約1000ドル/年を費やしていた[2]。ディストリビューターは、自己消費以外にも会費、セミナー代など様々な費用が必要になる[6][93][69]。一般参加者が支払うお金の大部分は、一部の上位会員の利益に回るが[71][88]、多くの場合、一般勧誘開始前には上位の座が既に決まっている[14]。米連邦取引委員会(FTC)のウェブサイトに掲載された報告書によると、アメリカのMLM企業350社に参加した人のうち純利益を挙げられるのは全体の1%以下であり[94][95][96]、多くのディストリビューターは無償労働をしている[97]。一生の仕事にしようと決意し、最初に数十万円の商品を購入するが、ほとんどの人はそれを回収する前に諦め撤退している[98][98]。多くの人は2年以内でアクティブなディストリビューターをやめ、新しい参入者がまとまった初期投資を行い挫折して去ることで、上位の人間が利益を得る形でこの業界は成立している[99][98][88][100]。
これまでは、胴元(主催企業)だけが力を持つと考えられていたが、近年はプロ会員の力が増している[101]。プロ会員は、多くの下部会員を紹介できる人脈を持つ会員で、マルチ商法などの組織を渡り歩いている[101]。新しいマルチ商法組織を立ち上げる際には、彼らの取り込みが企業の成否を決定することもある[101]。
ディストリビューターは、労働組合・医療保険・労働保険がなくても組織への忠誠心は非常に高いという、組織としては理想的な労働力になっている[97]。「前向きな態度が成功をもたらし、それは誰にでもできる」というメッセージが内部の不平等を隠している[6][46]。勧誘活動は、「説得や相談による軋轢、義理買いの不快感、オーバートークや虚偽説明によるトラブル、自己啓発の勧めへの反発」など、社会との緊張関係をもたらしている[102][58]。
2016年、ニュースキンは中国でマルチ商法を行ったとして、また中国の高官に賄賂を贈ったとして、米国の裁判所から計約4775万ドルの和解金の支払いを命じられた[103][104]。2019年、アメリカ合衆国司法省(DOJ)は、ハーバライフの従業員2人を連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)違反の共謀罪で起訴した[105]。彼らは、販売許可を調達するため、またハーバライフに対する調査に影響を与えるために、中国の役人に賄賂を贈ったとして告発された[105][106]。
MLM企業は「直接販売協会(DSA)」という業界団体を通じてロビー活動に多額の資金を投じている[72][107][108]。また、有名人を高額で雇い、信用を高めようとしている[72]。過去にはトランプ前大統領もMLMに関わっており、2021年時点で訴訟問題になっている[72]。アムウェイ創業者リッチ・デヴォスの息子で同社元社長のディック・デボスは、共和党全国委員会の財務委員長を務め[109]、妻のベッツィ・デヴォスはトランプ政権時代に教育長官を務めた[110][111][112]。
著者自らの体験を基にマルチ商法の実態を描いた小説。
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