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日本の法律 ウィキペディアから
金融商品取引法(きんゆうしょうひんとりひきほう、英語: Financial Instruments and Exchange Act[1]、昭和23年法律第25号)とは、金融商品の取引の公正を図り、投資家の保護や経済の円滑化を目的とする日本の法律[2]。制定時の題名は「証券取引法」であったが、2007年9月30日に証券取引法等の一部を改正する法律により金融商品取引法に改題された。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
所管官庁は、金融庁監督局証券課および証券取引等監視委員会事務局である。金融庁発足前は、大蔵省証券局証券市場課が所管していた。
元は、昭和憲法施行直後の1947年(昭和22年)に、証券取引法(昭和22年法律第22号)として制定されていた。翌1948年(昭和23年)の「証券取引法を改正する法律」(昭和23年法律第25号)によって全部改正され、現在の形となった。株式、公社債、信託受益権などの有価証券の発行や売買、デリバティブ取引に関して、開示規制、業規制、不公正取引規制、関連するエンフォースメントなどを規定する。
金融商品取引法において規定されるルールの中には、インサイダー取引などの不正な取引を排除するための規制や、有価証券そのものや有価証券の発行会社などの関連法人に関する開示に関するルールが含まれる。また、株式の公開買付制度など株式の取得に関するルールを規定し、それぞれの金融商品を取扱う業者についての取扱いを定めている。
なお、実際の取引は、本法のほか、金融商品の販売等に関する法律(金融商品販売法)、金融商品取引所・金融商品取引業協会が定める規則や商慣行などによっても規制される。
「国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的」としているが、これを達成するため、直接的には、同条の冒頭にあるとおり、
について規定する法律である。
そのため、企業内容に関する開示について定めるほか、金融商品取引業の登録制度や、金融商品取引所や金融商品取引清算機関、証券金融会社に関する免許などについて定める一方、信頼される金融商品市場の形成を目的として、不公正取引などが禁止され、これに対応する課徴金や刑罰などについても規定がある。
有価証券(適用除外有価証券を除く。)の募集または売出しに際しては、原則として、有価証券届出書の提出や投資家に対する目論見書の交付が求められる。
証券をこれから発行しようとする段階で、公正な発行を促す目的で、発行者、証券発行の仲介者、その他の関係者の規制を行う。 有価証券届出書は、有価証券の募集または売出しが内閣総理大臣に届けられる際に提出される書類で、受理されて15日後に、応募または売出しの効力が発生する。また、この書類の写しは、その証券が上場されている証券取引所等に提出し、公衆の閲覧(縦覧という)の対象になる。さらに、有価証券届出書の発行会社は、目論見書を発行して、募集または売出しの勧誘にあたって投資者に交付する必要がある[3]。
有価証券届出書を提出した者など一定の者は、有価証券報告書、半期報告書または四半期報告書、および臨時報告書といった継続開示書類の提出が求められる。
証券を発行した後に、市場での証券の公正な取引と流通を促すため、関係者の規制を行う。 有価証券報告書は、金融商品取引所に上場されている証券の発行会社・発行法人、その他、金融商品取引法の規制対象の証券の発行会社が、事業年度経過後3か月以内に内閣総理大臣に提出することを求められる書類で、その写しは金融商品取引所等に提出され、公衆の閲覧(縦覧)の対象になる[3]。
一定の株式等を取得する場合には公開買付けが義務付けられるとともに、同時に一定の開示が求められる。
一定の株式等を保有する場合には大量保有報告書の提出が義務付けられる。
一定の事業については、以下のとおり参入規制が定められている。
上記の参入規制に服する事業者については、一定の行為規制が定められている。
以前は「証券取引法」という題名であったが、2006年3月に「証券取引法等の一部を改正する法律」が国会に提出され、同年6月に成立したことにより、金融先物取引法などの金融商品に関する法律群をこの法律に統合し、それに伴い、名称が「金融商品取引法」に改題されることが決定し、2007年9月30日に施行された。
この改正は、
などを主内容としている。
日本では90年代後半から日本版ビッグバンに代表される金融システムの改革・再編に関する議論が盛んであり、今回の金融商品取引法の制定もその流れの延長線上に位置付けられる。
日本の証券取引法の母法であるアメリカの証券法における「証券」概念はそもそも幅広い対象を予定するものであった。またその他の諸国においても、イギリスでは2000年金融サービス・市場法(FSMA)において定義された「投資物件」概念、ドイツの2004年証券取引法改正、EUで2004年4月に採択された金融商品市場指令(Mi-FID)において導入された「金融商品」概念など、各投資商品(金融商品)について横断的な規制を及ぼす方向に移行しつつあり、国際的な金融市場の整備という点からも同様の横断的な規制を及ぼす必要が生じていた。
従来の証券取引法で用いられていた語句のうち、「証券」との語が付く用語は、原則として「金融商品」が付く語に置き換えられている。このため、金融商品取引法においては、いくつかの章のタイトルも変更されている。
なお、以前の証券取引所、証券会社は、いずれも概念として廃止され、相当する法律上の用語としては、「金融商品取引所」「(第一種・第二種)金融商品取引業者」となったが、「証券取引所」、「証券」の名称・商号を使用することは可能である。
この法律の制定前後においては「投資サービス法」という名称が仮称として、官庁の文書などを含めて使用された。ただし正式名称として金融商品取引法という名が採用されてからは、投資サービス法という名はもはやあまり聞かれなくなった。なお、「投資サービス法」と並べて用いられた言葉が「金融サービス法」であった。前者は投資商品(投資性のある金融商品)のみを規制の対象とするものとして、後者は投資性のないものも含めたあらゆる金融商品を規制の対象とするものとして用いられた。金融商品取引法は投資性のあるもののみを「金融商品」として規制対象とするので「金融サービス法」ではなく「投資サービス法」なのである。
この法律の一部について経済界、監査法人などを中心に「日本版SOX法」あるいは「J-SOX法」(オリジナルのSOX法はアメリカ連邦法)と呼称されている。これは金融商品取引法全体を指すのではなく、新たに義務付けられた内部統制報告書の提出に関する部分についてのみを指すのが一般的である。内部統制報告書ないしは内部統制システムについての詳細な基準については、内閣府令に委ねられている。「日本版SOX法」による日本の内部統制については「内部統制」の項にて詳述。
Financial Instruments and Exchange Act(直訳は「金融商品及び取引所法」)という(直訳ではない)一見奇妙な英語訳は、「証券取引法」の英語訳であるSecurities and Exchange Act(直訳は「証券及び取引所法」)を受け継いだものである。そして、Securities and Exchange Actという訳語は、証券取引法が、米国の1933年証券法及び1934年証券取引所法の双方を合わせたものに相当することを示すための、意訳である。なお、米国では、この双方の法律を担当する連邦政府の規制当局は、Securities and Exchange Commission(証券取引委員会;直訳は「証券及び取引所委員会」)という名称が与えられている。
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