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やなせたかしの絵本『アンパンマン』および関連作品に登場するキャラクター ウィキペディアから
アンパンマン(ラテン文字表記:Anpanman[1][2][3])は、やなせたかしの絵本『アンパンマン』およびその関連作品に登場する架空のキャラクターであり、これらの作品の主人公。
アンパンマン | ||
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『アンパンマン』 『それいけ!アンパンマン』のキャラクター | ||
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登場(最初) | PHP研究所『こどものえほん』1969年10月号掲載の青年向け読物「アンパンマン」(※後述) | |
作者 | やなせたかし | |
声優 | 戸田恵子、ほか | |
プロフィール | ||
性別 | 男性 | |
出身地 | ジャムおじさんのパン工場 |
アンパンマンとその作品としての『アンパンマン』は、PHP研究所が発行する青年向け雑誌『PHP』の通巻第257号に当たる、『こどものえほん』の1969年10月号(同年〈昭和44年〉10月1日刊行)に掲載された青年向け読物、やなせたかし(えと文)「アンパンマン」という形で初出した[4][5][6]。この時期、やなせが『こどものえほん』のために執筆した読物は連載12本の短編で、「アンパンマン」はその6本目の作品だった。これら12篇は、株式会社山梨シルクセンター(※3年後、株式会社サンリオへ社名変更)より単行本『十二の真珠』名義で1970年(昭和45年)に刊行された。
初版から絵本として刊行されたものでは、フレーベル館の月刊絵本「キンダーおはなしえほん」シリーズの1作品として1973年(昭和48年)に発売された、やなせたかし『あんぱんまん』[7]が最初だった[8][9]。
映像としては、テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』第1話「アンパンマン誕生」、1988年(昭和63年)10月3日放映回(関東エリア)にて初登場[10][11]。
普段はパン工場でジャムおじさん達と共に暮らしている。パトロール中にひもじい者を見かけたら、あんパンでできた自分の顔を差し出す。
1969年(昭和44年)に最初にやなせが考えた「アンパンマン」(※上述参照)は、人間の姿をしていた。また、1973年(昭和48年)の作品集『アリスのさくらんぼ』の中の作品、「飛べ!アンパンマン」に登場するアンパンマンは頭がパンになっているものの、一人称は「おれ」であり、性格もニヒルなものである。1976年(昭和51年)の絵本『あんぱんまん』に出てくる「あんぱんまん」から、テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』やその後のやなせの絵本作品に登場するキャラクターと同じ性格付けになっている。
アンパンマンの誕生日は、作者の誕生日と同じ2月6日だとされている[12]。これはやなせが子供にアンパンマンの誕生日を訊かれて困ったときに自分の誕生日を言ったことに由来する[13]。また、原型作品が発表された『PHP』誌が発行された10月1日、テレビアニメ放送開始日(第1話『アンパンマン誕生』)の10月3日を誕生日とする説もある[注 1]。テレビアニメ第1話には3歳の誕生日を迎えるシーンがあるが、年齢に関しては、やなせ本人が「アンパンマンは架空の存在・フェアリーなので年齢はない」「アンパンマンワールドに年齢の概念は無い」という趣旨を述べている。また、アンパンマンへの質問に対して、年齢はないが、作品の誕生30年周年時に「あえていえば最初の絵本から数えると30歳」と答えている[14]。
ジャムおじさんが作ったあんパンの種に空から降ってきたいのちの星が宿り、誕生した。その際に「ぼく、アンパンマンでちゅ。」と自ら名乗っている。また、裸体ではなく、ベビー服に小さなマントを着用していた。
ジャムおじさんによれば、幼少期の時点から飛ぶ力はあり余るほど備わっており、ジャムおじさん一人を持ち上げられる程度の力は既に身に付いていた。しかし、当初は上手く飛ぶことができずに悔しい思いをしていた。そんな時、「自分の力だけでなく風と仲良くするように飛ぶことが大事だ」とジャムおじさんに教えられ、「次は上手に飛べるかもしれない」と希望を持って練習を積んだ結果、上手く飛べるようになった。崖から転落したジャムおじさん(※2009年〈平成21年〉8月28日放映のテレビアニメ第1000話『ぼく、アンパンマンです!』では、やなせうさぎ)を助けたことで人を助けることの意味を学び、森の中で泣いていためいけんチーズを救出したことでひもじい者の役に立つことを決心するようになった。
一人前のヒーローとして成長してからは、顔の材料も最上等のものが使われるようになり、バタコさんからは特製のマントをプレゼントされたため、それまでより高く遠くまで飛べるようになった。ばいきんまんと初めて出会い戦ったのはその直後の出来事だが[15]、のちのエピソードでは幼少の頃から既に戦っていたという設定になっている[16]。
困っている人やお腹を空かせた人がいないかパトロールしたり、パン工場のパンを町中に届けたりするのが毎日の仕事。仲間のしょくぱんまんやカレーパンマンらと共にパトロール活動をすることもある。時々休暇を取るジャムおじさん[17] やバタコさん[18]、不定期でパン工場へ手伝いにやって来るメロンパンナやクリームパンダと違い、アンパンマンには休日がない[19]。雨天でも潜水服のヘルメットのような透明の防水具を被ってパトロールに出掛ける[19]。パン工場への出入りはたいてい煙突を使用している。
クリスマスイベントやキャンプがあっても、基本パトロールに勤しむ。群衆の遊びや踊りの輪に加わることはほとんどなく、[注 2]ジャムおじさんらと一緒に傍観していることが多い。カレーパンマンは子供達と遊ぶ描写が多いが、アンパンマンはあくまでも付き添いという立場でいる[20]。
自らは飲み食いせず、みんなが食事をしているときも傍観者でいる。[注 3]これには「自身を食事として差し出す役目があるから」「頭の中のあんこをエネルギー源にするため、食事の必要がない。」[21]「体と頭が繋がっていないために食道もなく、飲食ができない」などの説がある。だが、バースデーケーキを食べたり、他の者と同じようにパンを取ったり[22]、自分の席の前にも配膳されたりと、ごく稀に食事の描写が見られること(アニメ初期のみ)から、飲食が出来ないというわけではない模様。また、小象のジャンボが果物を顔の欠けたアンパンマンに食べさせようと考えたり[23]、カレーパンマンが甘いアンパンマンに「カレーを食べさせてやろうか」と言ったこともある。ほかにも、ばいきんまんがアンパンマンに変装して飲食する場面も存在する。
睡眠は必要としていて、あくびをしたり、パン工場の個室で休んだりする描写がある。しかし、遠くまでパトロールをして朝帰りしたり、困っているゲストキャラクターを助けるためや、アンパンマン号の操縦のために徹夜することもある[24]。ただし、排泄や入浴はしない。[25]
頭部はあんパンでできている[26]。あんパンの餡で最も一般的なのはこし餡(こしあん)と粒餡(つぶあん)だが、原作者やなせは、アンパンマンの餡は粒餡だと言った。その理由としては、自分が好きなのが粒餡だから、そして、粒餡の形状を脳みそに見立てたのだという。また、やなせと一緒に仕事をしていた永六輔が「こしあんが好きだから(アンパンマンの顔も)こしあんだ」と言うと、やなせは「絶対に粒あんだ」と言って譲らなかったらしい。その理由は、「沢山の人がいて一つのことができるように、あんこも沢山の粒がないと成り立たない。こしあんだと一粒一粒が残らない。」というものだった[27])。なお、本項では「頭部」「頭」と呼んでいるが、作品『アンパンマン』では、古いものから新しいものに取り換えられるこのような頭部を「顔」と呼んでおり、新しく用意された頭部(改めて作られたあんパン)のことを「新しい顔」と表現している。
茶色のマントを着用しており、これで空を飛ぶことができる。飛行に制限はなく[28]、宇宙まで飛んでいったこともある。また、マントの上に誰かを乗せた状態でも飛ぶことも可能。このマントはバタコさんが縫っており、破れると飛べなくなる。基本的には同じものを何度も縫い直しているようで、近くでよく見ると継ぎ接ぎの跡がみられる[29]。ただし、破れたり焼け焦げたりしたマントを新しい物と完全に取り換えることもある[30]。
体の構造は不明。「身体はない」という説もある[31]。ただし、「アンパンマンはパンの妖精(のような存在)なので、体が何でできているのかは分からない。」という設定は存在する[32]。やなせは生まれた時の裸体を一度だけ描いたことがある[33]。前述のとおり、飲食をしないが、かつては歯が生えている描写があり、はみがきまんが登場する話では歯磨きをしていた。また、涙や汗を流すことが稀にあり、それが原因で力が半減したこともある。
また、目には見えないが、アンパンマンの体には前述の「いのちの星」が溶け込んでいる。いのちの星がないと復活することができず、映画『いのちの星のドーリィ』では死亡する描写がある。ほかにも火事や雪崩などに巻き込まれた際に生死不明となったことがあるが[34]、いずれも最終的には星の力によって復活している。
赤を基調とした服の真ん中にニコちゃんマークを付けている。黄色い手袋をしている。初期は時々五本指が描かれていたが、その後、常にボール状に描かれるようになった[35]。履いているブーツも色は黄色。
寝るときはパジャマに着替え、ナイトキャップをかぶってベッドで寝ることがあるが、昼間と同じ格好のまま寝ている(マントを除く)時もある。演劇に出演する時をはじめ、浴衣[36] やタキシード[37] など、他の衣服を着ることもあるほか、服が洗濯中の際にカレーパンマンの服を借りたこともある[38]。
前述のように、本作で「顔」と呼ばれている頭部は、粒あんのあんパンでできている。これは食べることができ、お腹の空いた人に与えることができる。その味は口にした誰もが「おいしい」と声を揃えるほどの美味とのこと。このあんパンを人に食べさせてあげようとして拒まれることもあり、その際、カレーパンマンやみるくぼうやなど、他の者が代わりに助ける場合もあるが、その様子を見ても決して嫉妬することはない。
顔全てを与えることも可能で、絵本では自身の頭を近づけさせて、全て食べ尽くされて首なし状態のアンパンマンが描かれたこともあり[39]、頭がなくても空も飛べるうえに話すこともできる[39]。身体に最低限のエネルギーを蓄えておくことができる[39]。しかし、首なしは残酷に見えるため、テレビアニメでは一部を与える表現に留めている。[注 4]もっとも、映画『すくえ! ココリンと奇跡の星』では自分の顔を全て与えているシーンがある。この時は新しい顔をもらうまで全くしゃべらなかったため、意識があったかどうかは不明。絵本のアンパンマンは、死ぬほどお腹を空かせた者でなければ顔をあげなかったため、自らあんパンを食べに狙う者が現れると避けていた。また、テレビアニメでも、ばいきんまんの策略で、ぶたまんまん、アンコラ、なめくじらが襲ってきた時は顔をあげるのを嫌がっていた。手を使わずとも頭を速く何周も回すこともできる。
水に濡れる、カビや泥で汚れる、強い打撃で歪む、誰かに頭を与えたために欠けているなど、頭になんらかの異常を来した場合、つまり、食べられない状態になってあんパンとして駄目になったとき、力が出なくなる。また、ばいきんまんに騙されたさんかくまんに、顔の形を三角にされた時も力が出なくなった。[40]また、そのように力が出なくなった際、目が「+」のような形になる。
テレビアニメ初期では異常を来しても、ジャムおじさんに知らせずに自ら解決したことが多々あった。かびるんるんに全身を汚されてもアンパンチでばいきんまんを追い払ったことがある。海に落ちてもそのお蔭で目が醒めてあくびどりを助けたこともあった。テレビアニメでは、2000年(平成12年)以降、自ら「ジャムおじさんに知らせて」と言うことが多くなった。一方で、顔を汚されるもばいきんまんが勝手に退却したことや、顔が欠けたり歪んだりしていても他のキャラクターの援助によってそのままばいきんまんを撃退した例も稀にある。また、水中に潜っても、早めに上がればパワーダウンしなかったり、ずっと潜れば徐々にふやけてパワーダウンしたりしている。ばいきんまんがコンピューターで分析した結果、顔の3分の1を失うと力が65パーセントまで低下することが判明している。顔が汚れた状態で石化された時は、石化が解かれても顔は汚れたままになっている。また、顔に落書きされた場合でも力が出なくなってしまう。OVA『いっしょにおべんきょう 1 お花畑でおべんとう たのしいサイクリング』では、蜂に鼻を刺されて腫れ上がったことがあるが、この時は痛がっていただけで力が減少することはなかった。雨が降っている時や潜水する時は、顔が濡れないようにヘルメットを被っているが、ばいきんまんに壊されたり、ドキンちゃんに外されてしまうケースも多い。鼻の取り外しは可能だが、その場合も力は半減する[注 5]。パンのため、誰かに頭を与えてあげて全く痛みはなく、「むしろ快感」だと答えたこともある[14]。なお、かつては敵にやられて力が出ない状態になる展開がほぼ毎週・毎パートで見られたが、その割合は年を重ねるごとに減少していった。2020年(令和2年)時点では、1か月(8〜10パート)に1回程度という、むしろたまにしか見られないシーンになっている。
ジャムおじさん達によって作られる新しい顔(頭)と交換することで「元気100倍、アンパンマン!!」になり、再び活力が湧く。基本的に体がどのような状態でも顔さえ替えれば復活できるが、いのちの星が体から抜けている状態では復活できない。ばいきんまんの作ったプログラムが分析したところでは、顔を取り替えた直後は100パーセント以上の力を発揮する。このため、ばいきんまんはアンパンマンに新しい顔に取り替えられないように邪魔をすることも多い。顔が付け替えられる前にばいきんまんに弾かれてしまい、自分で探して付け替えたこともある。なお、顔の交換の際に弾き飛ばされた古い顔は自然消滅する[41]が、珍しく古い顔が残っている描写もあった。敵の攻撃によって状態異常(動物や物体への強制変身、汚染や石化光線による固め)になっても、新しい顔と交換すると元の体に戻る、あるいは、石化・凍結・汚れなどといった身体の異常を弾き飛ばすこともある。しょくぱんまんやカレーパンマンより後から攻撃されても、最優先に彼の新しい顔が焼かれる。パン工場に行く間がない場合、どんぶりまんトリオの掃除機でカビを吸い取ったり、ひのたまこぞうやらーめんてんしに凍った顔を溶かしてもらったり、バケルくんやマシュマロさんに顔を丸くしてもらうなどして復活することもある。新しい顔は顔単体ではしゃべりだすことはなく、動いたりすることはできない。なお、新しい顔を投げるのは大半は、バタコさん[注 6]、 めいけんチーズ[注 7]、メロンパンナ[注 8]、ゲストキャラクター[注 9] が多いが、たまにジャムおじさん[注 10]、カレーパンマン[注 11]、しょくぱんまん[注 12]、クリームパンダ[要出典]、どんぶりまんトリオ[注 13]、頼りになる味方[注 14]、町の子供たち[注 15]、敵キャラクターでもあるロールパンナ[注 16]、ホラーマン[注 17][注 18] が投げたこともある。そのほか、特殊な例では、1989年(平成元年)9月11日放送のテレビアニメ第48話Bパート「アンパンマンととぶ木馬」(※当初この回は最終回のエピソードとして放送される予定だった)ではばいきんまんが新しい顔を投げた。詳細は「ばいきんまん#アンパンマンとの関係」を参照のこと。
餡の代わりに、カレー、クリーム、栗餡(くりあん)を使ったり、パンの代わりに、饅頭、金太郎飴、パイ、メレンゲ、最中、中華まん、餅、素麺を使ったこともあるが(※『#変装と変身のバリエーション』節を参照のこと)、それでも本来の「元気100倍」には及ばないことが多かった(元気と勇気が3倍しか出ない、『元気100倍』ではなく『元気いっぱい』、『元気70倍』、元気ではなくパワー、甘さが『100倍』という表現もあった。)。ただし、素材によってはその素材特有の特性(素麺なら滑りやすくなり、ばいきんまんのハサミ攻撃が通じにくくなるなど。)が出る場合もある。また、その餡自体が「勇気の花」のジュースが混ぜられている特別製で、これが入っていないと本来の力は全く出ない。ジュースの入っていない極普通のアンパンでは「元気3倍」だった。一度だけ黄金の小麦を使った顔に取り替えたこともあるが、その時は普段を遙かに超えた「元気200倍」になった。
性格は誰にでも優しくお人好しで、この世界に住んでいる人みんなが好き。その性格上頑固な一面も持っており、物語によってはこの部分が強調されることがある。テレビアニメ初期はスキーができないばいきんまんをバカにするなど若干意地悪な描写があったが、その後、落ち着きのある礼儀正しいキャラクターに変わっていった。優しい性格ゆえに弱い者を庇うが、結果的にそれが甘やかしに繋がってしまうというところは短所とも言え、その点をジャムおじさんに指摘されたこともある[42]。
太陽と譬えられるアンパンマンは夕焼け空や朝の空も好きだが、星空はそれらよりも好きらしい[43]。心の中にあるいのちの星に勇気や元気が湧いて来るからとのこと[43]。
極度の上がり症で、芝居は苦手としている。2011年(平成23年)7月の『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』のスペシャルゲストクイズに出演した際も、自ら「スペシャルゲストさんからのスペシャルヒント」として、「人前では緊張してしまい、歩く時に右手と右足が一度に出てしまうことがある。」と語っている。このため、演劇や大勢の前でパフォーマンスをする時は、必ずと言っていいほどにしゃべり方が棒読みになってしまい、しらたまさん曰く「芝居に全く向いていない」とのこと。芝居に向いていない点は本人も自覚しており、演劇出演の誘いが来ても自ら断っている。同様に商売の口上も苦手[44]。ただし、講談は非常にうまい[45]。
恋愛は、正義の味方であるためか「みんなが好き」ということで、特定の人物だけを好きになったり、「友達」「他人」などと関係性に優劣をつけることは無いが、映画『勇気の花がひらくとき』の作中ではゲストのキララ姫を気にしている様子があり、好意を抱いていた。その後「みんなのことが好きだよ」とアンパンマンが言ったことでキララ姫は自分の勘違いで傷つくことになり、物語の終盤に大きく影響する。また、映画『すくえ! ココリンと奇跡の星』では、ばいきんまんに強制変身させられたココリンに対して「君は僕の大切な友達だ!」と言ったこともある。ばいきんまんを含め、特定の誰かを嫌いになったり蔑視したりすることは無いが、しらたまさんやドリアン王女などの押しの強い人物から、パトロールやパンの配達を口実に遠ざかろうとする描写はある。
お腹を空かせて苦しんでいる者を助けるために飛んでいき、自らの顔のあんぱんを分け与える逆転しない正義がアンパンマンの一番の正義である。空腹以外でも困っている者を助けたり、悩みを持つ者の相談に乗ることも多く、それらの者達が笑顔になる事もアンパンマンの正義の一つである。
ばいきんまんやらくがきこぞう、ドキンちゃんと出会ってからは、度の過ぎた悪戯でみんなを困らせる者を注意したり、懲らしめたりすることもあるが、それは困っている人を助けるためである。
やなせは、「本当に戦うべき相手とは飢えや公害など」と語っている。そのため、原作絵本だけでなく、テレビアニメにおいても、アンパンマンがみんなを困らせる者を止めようと戦うシーンが描かれることがあってもそれが物語の主軸として扱われることはない。敵との戦いによって汚染・破壊された自然や町、建物を復元しようと協力したり、ジャムおじさん達と一緒にパンを配ったりしている描写が特徴である。
敵と味方、善と悪を明確にせず、目の前で困っている者を優先的に助けている。テレビアニメ第11話Aパート「アンパンマンとイタイノトンデケダケ」(1988年〈昭和63年〉12月12日)では、川で溺れたばいきんまんと子供達の食中毒を治すための「イタイノトンデケダケ」がそれぞれ別方向に流された際、悩んだ末に助けを求めたばいきんまんを救出していた。
前述の通りお人好しで、隙を突かれてダメージを受けてしまったり、ばいきんまんに利用されたりしてしまうことが多い。ばいきんまんやドクター・ヒヤリは、騒ぎを起こせば必ずアンパンマンが駆け付けに来ることを知っている。みんなを守るために弱くても戦う勇気が必ずあり、自らを盾にしてでも最後までみんなを守り続ける強い自己犠牲の心も持ち合わせている。特に、映画『いのちの星のドーリィ』、映画『シャボン玉のプルン』、映画『ブラックノーズと魔法の歌』など、21世紀以降の映画ではアンパンマンのこの部分が強調されて描かれている。
悪事を働くばいきんまんをアンパンチで懲らしめる姿を見て、良い者が悪者を徹底的にやっつけるスーパーヒーローと勘違いされ、弟子にして欲しいと頼まれることがある。地味な人助けを優先する彼に幻滅する者もいるが、そういった者も最後にはアンパンマンの愛と勇気を理解する。「正義の力は喧嘩のために用いるのではない」[46] という信念を持ち、「戦うのはみんなを守るため」[47]、「困っているひとを助けているだけ」と発言するなど、アンパンマン自身、戦いが主ではないと思っている。
『アンパンマンのマーチ』の歌詞にあるように、誰かの夢を“守る”ことはあっても“叶える“ことはしない。夢に向かうも挫折してしまった者に顔(頭)を食べさせて力を与えたり、ばいきんまんの「アンパンマンをやっつける」という夢を保ち続けさせるために彼を悪い夢から覚まさせる[48] などの活躍をしている。
アンパンマンにとっての「強さ」とは“愛”や“優しさ”、“本当の勇気”である。「世界最弱のヒーロー」[49] とも言われ、ひもじい人を助けたり、顔が濡れたりすれば力が出なくなってしまう(とは言え、昔に比べれば、力が出なくなってばいきんまんに追い詰められることも激減しており、弱さを見せる場面も少なくなっている。)。どんなに困難な状況でもくじけずに諦めずに戦おうとする。しかし、テレビアニメでは敵から逃げたり、そのまま動けなくなってしまい、ゲストキャラクターがピンチに陥ることも多い[50]。
ばいきんまんとは永遠に戦う宿命にある。[要出典]みんなに迷惑をかけている時のばいきんまんには厳しいが、嫌っているわけではなく本当は仲良くしたいと思っている[注 19]。テレビアニメ版のエンディングで一緒に体操を踊ったり、知育ビデオなどのOVA[注 20] で敵対せず一緒に遊んだり勉強したり漫才のような掛け合いを見せたりなど、本編以外では仲良くしていることが多い。ばいきんまんをどう思っているかの質問へは「クラスメイトのような一種の仲間」「いたずらをしたらアンパンチでこらしめるけれどかといっていなくなればいいということではない。たとえば胃腸の中の善玉菌と悪玉菌のように。光と影のようにぼくたちはお互いがなくてはならない存在」と答えている[14]。
テレビアニメ版に関しても、ばいきんまんがいたずらをしたり、食べ物を奪ったりなどして周りを困らせれば、彼の暴走を止めに入るシーンがある。説得しても聞き入れなければメカを壊したり、遠くへ飛ばしたり(バイキン城に送り還す場合とそうでない場合がある)、除菌したりする。謝罪、監禁、労働(主に片づけ)を強制することもあるが、最終的には彼を許し逃がすことが多く決して殺めることはしない。その理由として、「正義とは相手をやっつけることではないから」「ばいきんまんにはばいきんまんなりの正義を持っているかもしれないから」「正義とは簡単に逆転してしまうから」などが挙げられる。
ばいきんまんとの戦いは単純な“勧善懲悪”を描いているのではなく、“共生”をメッセージとしている。光と影、プラスとマイナス、理性と欲求…と、バランスを保とうとしている。ばいきんまんに顔を汚されたりして戦闘不能に陥ることもあるが新しい顔をもらったりして必ず復活する。武器を携帯せず素手で戦う姿勢は、どんな時も自分の力で困難を乗り越えていく姿を示している。そして、どんな相手でも徹底的に打ちのめさず、ばいきんまんの存在を完全になくすようなことはしない。
また、すなおとこやこおり鬼、スゴイゾウなどが襲ってきた場合、アンパンマンとばいきんまんは互いに争うことをしない。これは、“一大事に敵も味方もない”ことを両者が理解しているためである。
メディア専門家であるトーマス・へーレンは、『失楽園』(ジョン・ミルトン)、『フランケンシュタイン』(メアリー・シェリー)および『スタートレック』の中に、アンパンマンとばいきんまんに結びつくものがあると述べている[51][52]。
一人称は「ぼく」。二人称は誰に対しても「きみ」「きみたち」で、稀に「おまえ」「あなた」(主に目上の場合)と言うこともある。ジャムおじさんやバタコさんなどの目上の人には丁寧語で話す。
アンパンマンの台詞には下記のような言い回しが多い。
変身は以下の通りいろんなやり方があるため、変身の記号は以下の通り。
元気100倍アンパンマン(げんきひゃくばいアンパンマン)○
元気3倍アンパンマン(げんきさんばいアンパンマン)○
勇気100倍アンパンマン(ゆうききひゃくばいアンパンマン)○
元気300倍アンパンマン(げんきさんびゃくばいアンパンマン)◆
アメパンマン★[注 22]
あんまんマン★[注 23]
黄金アンパンマン(おうごんアンパンマン)★
お月見アンパンマン(おつきみアンパンマン)★
巨大アンパンマン(きょだいアンパンマン)◆
黒砂糖アンパンマン(くろざとうアンパンマン)■
笹団子アンパンマン(ささだんごアンパンマン)★
素麺パンマン(そうめんパンマン)★
大福まん(だいふくまん)★[注 24]
電気アンパンマン(でんきアンパンマン)◆
春巻きアンパンマン(はるまきアンパンマン)★
ビー玉アンパンマン(ビーだまアンパンマン)◆
ホットケーキアンパンマン★
水あめアンパンマン(みずあめアンパンマン)△
蒸しアンパンマン(むしアンパンマン)▲
赤ちゃんアンパンマン(あかちゃんアンパンマン)、ベビーアンパン◆
忍者(にんじゃ)▼
主人公であることや独特の体質などから、強制変身や固めの頻度は比較的少ない。
代表曲「アンパンマンのマーチ」はテレビアニメ『それいけ!アンパンマン』の主題歌でもあり、ほぼすべての『それいけ!アンパンマン』関連のアルバムに収録されている[69]。「アンパンマンのマーチ」「アンパンマンたいそう」「ドレミファアンパンマン」「アンパンマン音頭'89」はドリーミングが、「なんのために飛ぶ」「ぼくらはヒーロー」「勇気のルンダ」「アンパンマン絵かきうた」は担当声優の戸田恵子が、「アンパンマン音頭'99」ではドリーミングと戸田の両者が歌唱に参加している[70][71]。
テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』放送30周年特別企画として、アンパンマンシリーズのテレビアニメと映画 (cf. category) に登場した全キャラクターを対象とした人気投票「いちばん すきなの だあれ?」が2018年(平成30年)7月20日から8月20日まで行われた[73]。結果は10月3日の「アンパンマンの日」に発表された[73]。アンパンマンは第1位(3,713票)で、第2位(1,995票)のばいきんまんと大きな差が付いた[74]。
アンパンマンシリーズのキャラクターの姿を象ったオブジェは、日本各地にいくつか点在している。主人公だけあってアンパンマンのオブジェが数多い。香美市立やなせたかし記念館前に設置されている巨大な「たたかうアンパンマン像」(■画像あり)や、バンダイ本社ビル前に設置されているFRP人形(■画像あり)など、作品の製作および配給の関係者が設置したもののほかにも、原作者にゆかりある地域に設置されているものなどがある。作品の関係者以外が設置したもののうちで、記載するに値するような経済的もしくは規模的に大掛かりなものを以下に挙げる。
石造りのものに関しては、高知市のものを例外として、大半は同じ規格で作られている(2020年時点)。それらの各キャラクターは御影石でできており[75][76]、標準的な大きさのものは、頭頂高[注 27] 90センチメートル[75]、全高[注 28] 約1.2 - 1.4メートル[76]。
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