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都市で空地を空地のまま存続させることを目的に確保した土地 ウィキペディアから
緑地(りょくち)とは、都市計画・法律用語としては、「交通や建物など特定の用途によって占有されない空地を空地のまま存続させることを目的に確保した土地」を意味する。
一般には樹木、草花などの緑で覆われた土地を指す(国語辞典などでは「植物に被われた土地」の意味で掲載されている)が、実際は農地などの裸の土の地面や水面も含むことが多いことから、空地(くうち)=オープンスペースとほぼ同義である。この意味の緑地には、公園・広場・墓園などが含まれ、必ずしも植物が生えている必要はない。もちろん、関東大震災において緑化植栽のなされていなかった陸軍被服本廠跡地で多数の死者が出たことに学び、この語の成立時にはすでに空地は植物に覆われている火除地であれば、なお良いとされている。緑地を確保して市民に貸し与え、市民農園(分区園de:Kleingarten)のようにして使うこともできる。
また、河川沿い(暗渠化跡を含む)や廃線跡などのスペースを活用した歩行者専用道路(遊歩道)、自転車専用道路などは一般的に緑道(りょくどう)と呼称されている(後節を参照)。
立法府・行政府において専門用語の緑地と一般用語の緑地が混用されている結果、比較的新しい法律や条例、各種行政刊行物などでは何を意味しているのか判読不能なことが多い。
日本では公園緑地事務所、公園緑地協会、公園緑地設計業務委託、公園緑地系統など、公園と緑地をセットにした「公園緑地」という言葉が使用され、一方で緑地公園という名称の公園も全国に数多くある。公園#専門用語としての公園にあるとおり、都市計画学や造園学などの分野で専門用語として使われる「公園」自体英語パブリックパーク (Public park) の訳語で、緑地の一形態であり、都市公園法で都市公園の中には緩衝緑地、都市緑地、緑道が定められている。このように公園と緑地とのちがいはどうなのか、ということは、今日でさえ明確な解答が出ていない。同じようであるようにも考えられ、そこに多少ニュアンスのちがいがあるようにもとられている。
ただ簡単に説明すれば、公園のうち都市公園については都市民の保健休養に端的直接に役立てるものであるから施設本位となるのに対し、緑地は、面積もかなり大きくなる場合公園の機能をももつ上に更に都市防衛、都市の過大化防止策等をかねた土地という広い意味をももつ。従って密度の高い施設等は必要とせず、農耕地、疎林、水面、草地など、自然のままの形態を残しつつ利用に供される営造物、ということになる。
都市計画法での緑地は、東京緑地計画のいう緑地よりも狭い観念であり、自然の地形・風致を生かし、あまり施設整備をしない大公園という趣旨である。
専門用語としての起源は、ドイツの都市計画図で「確保された空地」が緑色で塗りわけられることから発生した「緑地」(Grünfläche)に対応する日本語として造語されたらしい。東京市が郊外公園構想を樹立しこれを実現させた頃には「緑地」という言葉はないが、1885年の東京市区改正審査会で公園について「人口稠密ノ都府ニ園林及空地ヲ要スルハ其因由一ナラズト雖モ云云」と審議されていて、さらに「園林空地ヲ市府ノ内外ニ設置シテ常ニ無価ノ清風ヲ居民ニ供給スルノ他求ムベキノ道ナシ」「欧州四大府ニ現存スル空地及ビ公園ノ比例ヲ掲ゲテ其参照ニ供」とし、公園とは区別される空き地というものを別に考えていて、これが日本における緑地概念の最も早い発想として位置づけることが出来る。ここでこの用語は、すべての公園を含むと同時に、他の緑の土地を含むように考えられる、としていた。
1930年にドイツ語に堪能な内務技師北村徳太郎が都市計画の用語として命名し、昭和7年10月に設置された東京緑地計画協議会で公式に使用したとする文献が残っている一方で、当時飯沼一省は英語のオープンスペースの訳語として「自由空地」を同様の意味で用いていた。前島康彦によると、佐藤昌が「自由空地」と「緑地」という言葉について池田宏、大屋霊城、上原敬二、関一等各人が使用している旨を克明に調べ上げた上で、「緑地」を概念的に明確化したのは、飯沼、北村の両人であろうと博士論文や著書『日本公園緑地発達史』で指摘していること、そして「緑地」という言葉の初見は、大正13年7月『都市公論』誌七巻七号にのせられた内務省都市計画局私案として発表された「公園計画基本案」において都市公園の説明の中に出たものであるとしている。
他に都市計画図上の色の塗り分けにちなむ語には赤地、青地、白地があるが、法律用語等になったものはなく、正式の文書等で使われることはない。
英語でも都市計画用語としてGreenfield landという表現がある。これも直訳によって緑地となりうるが、空地とほぼ同義であり、北村の緑地とは意味が違う。英語では更に、過去に建物があった空地をBrownfield landとして区別している。またフランスではespacelibreという概念が早くから定着している。
事実、用語の混乱を避けるため昭和8年の東京緑地計画協議会によって、
とGrünflächeやオープンスペースに近い意味で再定義され、統一がはかられた[1][2]。この「空地」とは、土地たると水面たるとを問わず、総て永続的に空地であることを要し、分譲予定地、商工業地予想地などは、たとえ未建築地であっても緑地ではないのであるが、この言葉自体当時としては専門家以外はほとんど周知していなかったので、こうした定義を附したのである。緑地の基準や計画案の作製といった東京緑地計画協議会の一連の作業、決定した内容は、要すれば新しい地域計画を導入した「緑地」を含めて既成市街地の公園をも包含していることがいえ、これが日本ではじめて試みられた市域内外の公園緑地設置の指針を示したものといえる。
1939年(昭和14年)につくられた大東京における緑地帯、景園地などを含む総合的な緑地計画。日本の都市計画および公園史上初めての大規模かつ具体的なマスタープランである。内容および同計画における緑地の分類は、東京緑地計画を参照。
その一方、一般向けの辞書の類においては字の印象からか古典籍によったかは不明であるが、「植物に被われた土地」を第一義に上げる。緑地を造園学・都市計画学の大家でもある北村、飯沼両名は新造語として掲げていることから、1930年代当時、一般の用法としてこの意味で使われていたとは考えにくい。
新旧いずれの都市計画法においても緑地の定義は書かれていないが、首都圏近郊緑地保全法、都市緑地保全法では、「緑地」を「樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地が、単独で、若しくは一体となつて、又はこれらに隣接している土地が、これらと一体となつて、良好な自然的環境を形成しているものをいう」として英語のGreenfield landに近い意味で定義している。 このため、法律内限定で都市計画法等と違う意味で「緑地」を使用することの宣言を行っているという見方と、法律中の定義が正式の語義であるという見方が混在することとなった。
後の都市緑地法では、都市緑地を都市の自然環境の保全や景観の向上を目的として都市計画で定められる緑地の意味で用いているが、今日では都市計画の専門辞典においても、一般辞書の語義を用いている例もある。
緑地資源とは地域に残っている樹林地、竹林、草地、農地、水辺などを、環境維持、改善のための貴重な資源とみる考え方で、具体的には資源の種類、所在地、規模、内容、貴重度などを調査、評価して、地域景観計画、環境基本計画などの立案の参考資料としている。
緑に覆われ、緑を楽しみながら安全に歩けるようにしている歩行者専用道路(遊歩道)や自転車専用道路、自転車歩行者専用道路などを緑道といい、日本では都市公園(営造物公園)の種類にもある。緑道は緑のネットワークをつくるうえで重要な要素である。既成市街地では小河川や水路沿いの環境(もしくは暗渠化跡のスペース)を活用したものも多く、ニュータウンなどでは意図的に取り入れられる場合もある。この他、鉄道の廃線跡や線路の移設に伴い生じたスペース(高架化した線路の下、地下化による線路跡等)、更には高圧電線の下部空間を有効利用したものなどもある。
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