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1981年に東京12チャンネルで放送された日本のテレビアニメ番組、映画作品 ウィキペディアから
『伝説巨神イデオン』(でんせつきょじんイデオン、英表記:Space Runaway Ideon)は、1980年5月8日から1981年1月30日まで、東京12チャンネルで全39話が放送された、日本サンライズ)制作のテレビアニメ。
伝説巨神イデオン | |
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ジャンル | ロボットアニメ |
アニメ | |
原作 | 矢立肇、富野喜幸 |
総監督 | 富野喜幸 |
キャラクターデザイン | 湖川友謙 |
音楽 | すぎやまこういち |
アニメーション制作 | 日本サンライズ |
製作 | 東京12チャンネル 東急エージェンシー 日本サンライズ |
放送局 | 東京12チャンネル(現・テレビ東京) |
放送期間 | 1980年5月8日 - 1981年1月30日 |
話数 | 全39話 |
映画:THE IDEON 接触篇 THE IDEON; A CONTACT | |
総監督 | 富野喜幸 |
監督 | 滝沢敏文 |
制作 | 日本サンライズ |
配給 | 松竹 |
封切日 | 1982年7月10日 |
上映時間 | 85分 |
映画:THE IDEON 発動篇 THE IDEON; Be INVOKED | |
総監督 | 富野喜幸 |
監督 | 滝沢敏文 |
制作 | 日本サンライズ |
配給 | 松竹 |
封切日 | 1982年7月10日 |
上映時間 | 99分 |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | アニメ |
ポータル | アニメ |
放送時間は1980年9月25日放送分(第21話)までは毎週木曜18:45 - 19:15、第22話の放送日時の変更を挟んで[注 1]、同10月10日放送分(第23話)より毎週金曜19:30 - 20:00(いずれもJST)。
1976年放送の『恐竜探険隊ボーンフリー』に端を発した、トミー(現・タカラトミー)の企画によるテレビキャラクター・シリーズ第5弾である[3]と共に、2020年現在同シリーズの最終作でもある。発表試写会はトミー本社内のプレゼンテーション・ルームで行われた[要出典]。
本作品は、宇宙に進出した2つの種族が不幸な出会いを果たし、無限のエネルギー「イデ」を巡って誤解を重ねて泥沼の戦いを続ける物語であり、精神医学的な理論とバイオレンスな感性を融合した作品である。『機動戦士ガンダム』テレビシリーズ終了直後の富野喜幸(現・由悠季)を総監督に迎え、『ガンダム』の劇場版シリーズと並行して制作が進められた。制作体制にとどまらず、視聴率と玩具販売の不振で打ち切られながらも、後にスタッフとファンの熱意により映画化されるという、同作品と同様の経緯をたどった。さらに劇場版ではテレビシリーズでは放送されなかった物語の終盤に当たる部分も映像化され、登場人物全員が次々と壮絶な死を迎える。
テレビシリーズでは塩沢兼人が、劇場版では田中信夫がナレーターを担当している。あまりにも多くの登場人物が唐突に死んでしまう展開に塩沢は「でもナレーターは大丈夫だろう」と思っていたところ、第34話の最後に流れたナレーションは途中でイデの流星の効果音に遮られてしまい、「ナレーターも例外じゃないのか?」と本気で肝を冷やしたという[4]。このような展開は作劇演出の一環である以外にも、声優のギャラを抑えるためにスポンサーサイドから登場人物を殺すよう要求があったからだと、富野が自著の中で述べている[5]。富野は「もうイデオンみたいなのはやめましょう」と、こうした全滅作劇の傾向を嫌っていたが、後年のインタビューでは「(発動篇のラストについて)ああいった美しいリーンカーネーション=輪廻を描けた自分は死というものを素直に受け入れられるかもしれない。そういった意味ではいいものをやれた」とも語っている[6]。
前述のとおり、本作品はトミーのテレビキャラクター第5弾として、また『科学冒険隊タンサー5』の後継番組として企画された。トミーとサンライズが組んだ作品としては第2作になる。
サンライズ企画室からの発注により、メカニカルデザインのサブマリンがイデオンのデザインを担当した。サンライズはイデオンのデザインでトミーにプレゼンテーションをし、企画が始動してから富野が作品に参加している(このようにサンライズの作品は基本的にマーチャンダイジング先行で、ロボットのデザインから作品がスタートする)。またキャラクターデザインには『無敵鋼人ダイターン3』でコロスを描き、富野に賞賛された湖川友謙が起用された。富野は「湖川の“女”の部分がほしいと思った」と述べている[7]。その湖川はテレビシリーズの終了後に、バッフクランのヘアカラーをカラフルにした件について「アニメ界に悪影響を与えた愚行だった。自分が日本のアニメからリアリティを奪った」とアニメ誌で後悔の念を露わにしている[8]。もっとも、ビビッドな色彩の髪のキャラクターは虫プロ全盛時代からあったものでもある。
前述した企画の経緯への反発から、富野はイデオンのデザインを見るなり「これは第六文明人の遺跡です」と言った[要出典]。富野によれば「あんなひどいデザイン、誰が使います?」[9][注 2]。富野曰く、日常の延長といった性質を消すためにサイズを巨大にした(=第6文明人を巨人に設定した)、と後に語っており、作品がハード路線になったのもイデオンのデザインに耐え得るだけのパンチ力のある展開を目指した結果であると証言している[9]。アニメ監督としてはむしろ「イデオン自身が障害」[9]であり、企画から間違っている物を売れるようにするために必死でやったとのこと。その結果、小説家の福井晴敏が『BSアニメ夜話』に出演した際「いや、あれは遺跡にしか見えない」と語ったように、ある種、特異な世界を生み出すことには成功している。
もっとも、このような反発を持ちながらも富野は仕事をしっかりとこなす姿勢も見せており、1980年1月18日付けの富野のメモには、イデオンの玩具の「エレクトロクニクス搭載で音と光が出る」「タンサー5の玩具と同じくボタン一つで変形する」などのギミックを作品に取り入れることや、旧作である恐竜シリーズの流れを取り入れることなどの記述がある[10]。
1980年5月に放映が開始され、同年10月からは放送時間帯もゴールデンタイムに移行したが、視聴率は低下。トミーやアオシマなどから発売された関連商品である玩具などの販売が振るわなかったため、全43話の予定が第39話で打ち切られた。他方で、放送中に刊行された『アニメック』の記事では全39話の予定との記述がある[11]。中盤頃に4話延長が持ち上がったものの、スケジュールも考えずに結局は立ち消えになった制作現場の身勝手さを非難する意味で、富野は「打ち切り」と呼んでいる[要出典]。後の劇場版「発動篇」は、前述した残り4話分の未制作エピソードが元になっている。
テレビシリーズの最終話では、イデが仕組んだカララとドバの会談が決裂、ドバがソロ・シップの撃滅を命じたところで、唐突にイデが発動して両人類が滅亡するという内容だったが、これについて富野は後に「ソロ星で両人類が戦闘を始めた時点で発動していてもおかしくはなく、テレビシリーズの最終回だって嘘じゃない」と述べている[12]。また最終話の脚本を担当した松崎健一によると、彼が書いた第39話の脚本を、富野がラスト2分を変更して最終話にしたとされ、「だから(最終回は)最後の2分以外は、ただの39話なんですよ」と語っている[13]。
テレビシリーズは当初の想定とは異なる形で打ち切られたものの、制作スタッフ達は本作品の結末を何らかの形で発表することを望み、番組終了後に劇場版の制作が決定した。当初は『機動戦士ガンダム』劇場版と同様に複数に分けての公開も考えられていたが、興行不振で最終作を制作できない事態になる恐れを考慮し、一本にまとめられた。新作の原画は作画監修の湖川友謙がほとんど1人でこなしているが、一部の新作の戦闘シーンの原画は板野一郎が担当している。また本作品の制作スタッフは劇場版『ガンダム』の制作現場と同じスタジオで作業を行っている。[要出典]
こうして1982年7月10日にテレビシリーズの総集編『THE IDEON 接触篇』と、新作映画『THE IDEON 発動篇』(英語タイトルはTHE IDEON A CONTACT、THE IDEON Be INVOKED)が併映の形で同時公開され、両篇合わせておよそ3時間にも及ぶ長大な上映時間となった。プロモーション上(劇場版ポスター等)はテレビシリーズと同じく『伝説巨神イデオン』のロゴが使用されており、公開後もそのタイトルで紹介される場合が少なくないが、実際には劇場版のタイトルは『THE IDEON』である。徳間書店ロマンアルバム(51)でのインタビュー記事にて富野監督本人が『伝説巨神イデオン』でなく『THE IDEON』に改題した明確な理由を説明している[注 3]ため、これは単なる表記上の違いではない。
内容は『接触篇』がテレビシリーズ前半の総集編で、『発動篇』が最終回の完全版となっている。『発動篇』の制作を優先したため、『接触篇』はストーリーの流れよりも作画クオリティを重視して主に湖川が担当した回を中心に構成された。富野は「起承転結の“承”の部分がないので、劇作としては0点」と評している[12](しかし、後に「こんなすごい映画とは思わなかった!」とも[要出典])。
「皆殺しの富野」と呼ばれる監督の作品らしく、キッチン、ギジェほか、キャラクターは凄惨な死を迎え、老若男女問わず徹底した人体破壊描写が行われた。ラストについて富野は「『禁じ手』を使ってしまったのかもしれない」と語っている[14]。
公開時には商業的な成功こそ収められなかったものの、テーマ性、作風、演出方法がアニメ業界へ与えた影響は非常に大きく、アニメ業界関係者を中心に作品のファンは多い[15]。
アニメ業界出身の杉山卓は放映中に執筆した『青春アニメ・グラフィティ テレビ編』(集英社文庫コバルトシリーズ、刊行は放映終了直後の1981年)の中で、ロボットアニメの枠を超えた高度な内容を盛り込むことを目指すとスタッフが公言していた本作品の制作姿勢を高く評価し、ぜひそれを押し通して成功してほしいとエールを送っていた[16]。
また、映画解説書においては
といった評価が記されたものがある。
旧アニメ版『美少女戦士セーラームーン』シリーズのシリーズディレクターで知られる幾原邦彦は、富野由悠季のドラマ作りに於けるターニングポイントであり、それまで富野が模索してきたアニメーションに於けるドラマ描写について、「観念だけでもドラマにできる」という自信を深めた作品だとする一方で、湖川友謙が描くキャラクターが作風とマッチし過ぎており、富野由悠季の意図的な描写をそのまま伝えてしまって、視聴者側に考察する余地を与えていないと指摘している[19]。
2013年に発売されたBlu-ray BOXに同梱されたブックレットでは『機動戦士ガンダムUC』の原作者の福井晴敏、『新世紀エヴァンゲリオン』の監督の庵野秀明、『魔法少女まどか☆マギカ』の監督の新房昭之が、ファンとして本作品へ対するコメントを寄せている[15]。このほかにも『踊る大捜査線』の本広克行や『守り人シリーズ』の上橋菜穂子が本作品への好意や思いを公にしたことがある[15]。
本作品こそ富野作品でも最高傑作であるとの感想を述べている作家の福井晴敏は、自身が原作を務めた『機動戦士ガンダムUC』の中に、イデオンが搭載するシステムと同名の「インテンション・オートマチック・システム」を登場させたり、アニメ版『UC』の終盤にはイデオン・ソードの効果音を挿入する[20][21] など、いくつか本作品へのオマージュ的要素を取り入れている。
「アニメ!アニメ!」創設者の数土直志はもし『イデオン』がなかったら、現在のようにアニメに関わる仕事はしていなかったとしている[22]。2020年12月の文章で、「『伝説巨神イデオン』には、何十年経ってから鑑賞しても、物語、作画、キャラクター、あらゆるものに新鮮さがある」という評価を与えているが、『機動戦士ガンダム』と比べたときの知名度の低さについて、ファンに1960年代生まれの世代が多いことに着目し、その原因として「突如打ち切られ、満を持しての映画化。作品を巡る環境そのものがドラマなのだが、これは今から体験できない」ため、薦めるわけにもいかないことを挙げている[23]。また若い世代側ではタイトルや主役メカデザインが古い印象を与えて新規の視聴者を受け入れにくいこと、(2020年代のテレビアニメと比較して)39話という「長さ」を挙げており、「(TV放送時に10代だった)彼ら彼女らの思い入れは次世代に引き継がれず、作品と共に生きた人たちのみに支持されていることになる」と危惧している[23]。
西暦2300年。地球人類が外宇宙へ移民を開始して50年経過した遠い未来。地球人は2年前から移民を行っていたアンドロメダ星雲の植民星A-7・ソロ星で、異星人文明の遺跡を発掘。地球人類が外宇宙に進出して出会った6度目の異星人であることから、「第6文明人」と呼称された。
一方その時、伝説の無限エネルギー「イデ」の探索のために、「ロゴ・ダウ」(=ソロ星)を訪れた異星人バッフ・クランと、地球人の移民が接触。さらに、無思慮な行動で本隊より離れたバッフ・クランの貴人カララ・アジバを捜索に出た下級兵士の発砲と、両者の疑心暗鬼により武力衝突へと発展。第6文明人の遺跡は合体し、巨大人型メカ「イデオン」となった。
主人公ユウキ・コスモらは戦いを終結するべく「戦意はない」ことを示すために白旗を上げるが、バッフ・クラン社会でのそれは「お前らを地上から抹殺する」という逆の意味だったため、事態はさらに悪化することとなる。地球人たちはイデオンで応戦しつつ、同じく発掘された宇宙船ソロ・シップに乗り込み宇宙へ逃れる。だが、その遺跡にこそバッフ・クランの探し求める無限力「イデ」が秘められており、カララを乗せたソロ・シップの脱出により、事態は局地紛争から星間戦争、そして最終的には人類対バッフ・クランの全面戦争へと突入してしまう。安住の地を求めソロ・シップは地球人側の移民星に逃げ込むが、無限エネルギー「イデ」を求めるバッフ・クラン側は
劇中さまざまな人間模様が繰り広げられ、ソロ・シップは艦内に不和を抱えたまま宇宙を逃走し続けるが、次第に「イデ」の目覚めにより宇宙規模の異変が起こる。
最後に「イデ」が発動し、人類とバッフ・クランの双方が滅亡する。
本作品では、実在の固有名詞の使用が極力避けられている(架空の固有名詞は人名、地名、天体名、艦船名など全く使用を避けていない)。実在の固有名詞がほとんどもしくは全く登場せず、架空の固有名詞が大量に登場する作品はフィクションにはありふれており、あえて特筆するようなことではない。しかし本作品では、「地球」という単語を、地球人類が誕生した惑星に付けられた固有名詞ではなく、「主に地上で活動する知的生命体は自分の母星をそう呼ぶだろう」という発想による普通名詞とするほど徹底しており、バッフクラン側も「私たちの地球」という言い方をしている。同様に「月」も固有名詞ではなく、あくまで「衛星」の意味である。コスモたちが月面上で移動せずに「地球の出」を見ることについて設定ミスという指摘をされることがあるが、これも特定の星の話ではないので一概に誤りとは言えない。
全高105メートル・重量5,650トン。ソロ星で発掘された第6文明人の遺跡。3台のメカが合体することで巨大人型メカとなる。無限エネルギー「イデ」によって動く。バッフ・クランは「
起動時やパワーの増加に合わせ、コックピットにある半球形のスクリーン(作中では「ゲージ」と呼ばれる)にギリシャ文字のΙ(イオタ)、Δ(デルタ)、Ε (イプシロン)、Ο(オミクロン)、Ν(ニュー)を重ね合わせたかに見られるサインが現れ、フォルモッサ・シェリルがこのサインを「ΙΔΕΟΝ」=「イデオン」と読んだことから、イデオンと呼ばれるようになった。単純にアルファベットで、ゲージの中に“IDEON”と描くケースもある。
格闘戦のほか、イデのパワー上昇に伴い、ミニ・ブラックホールやイデオン・ガン(波導ガン)、イデオン・ソードというイデの無限力を体現したイデオン本来の武器を使用可能となる。
完成直前にイデ誕生によって第6文明人が滅亡したため、未完成となっていた内装は地球人側の技術によって作られている。よってコンピュータやパネルなどは本来の仕様とは違うものと考えられる。
腕や脚などにミサイルやグレンキャノンなどの武装が追加されたが、本来の装備ではないため機体の変形により位置が変化する。物語序盤ではこれらの取り付け位置を間違ったため変形後使用できなくなるといった不具合もあった。
特徴的な攻撃方法である全身からのミサイルの一斉発射は、敵に囲まれたときに使われることが多い。
全身がイデオナイトと呼ばれるイデの流れを放出する特殊装甲で覆われている。
全長400メートル。ソロ星で発掘された第6文明人の遺跡。星間航行が可能な宇宙船。上部にイデオンを寝かすことが可能な甲板がある。バッフ・クランは「ロゴ・ダウの舟」「ロゴ・ダウの異星人の船(主に発動篇)」「四つ足(主に小説版での呼称)」と呼称する。ブリッジにイデオンのコクピットにあるものと同様のゲージが存在する。
ブラジラーに訪れた際に武装の強化を行い、主砲やグレンキャノンを装備した。これによりイデオンの支援やバッフ・クランの艦船との戦闘が行えるようになった。
強力なバリアーを発生させることが可能であり、ある程度の攻撃に耐えることができる。このバリアーはイデオンのバリアーと同じくイデの力の高まりによって防御力が変化する。イデの力が弱まっていると敵の重機動メカの攻撃で貫かれることもあれば、逆に強まっているときはガンド・ロワの攻撃すら防ぐ。しかし、防御をバリアーに頼りきっているため白兵戦に弱く、バッフ・クランとの白兵戦により乗組員に多数の被害が出ている。
主人公側が属する種族。外宇宙に進出し各地に移民星を持つ。劇中、社会体制についての描写はなかったが、異星人の脅威に対抗するための地球連合軍や各植民星軍といった軍隊が社会で幅をきかせている。そのため、各植民星では政府に交渉するよりも統治している軍隊と交渉することが多かった。ロゴ・ダウ(=ソロ星)で初接触したため、バッフ・クランからは「ロゴ・ダウの異星人」と呼ばれる。
なお、作中では「地球」は固有名詞ではなく、バッフ・クランも含めて人間型の知的生命体の母星の意味である。そのため、ここで語られる「地球」は、太陽系第3惑星としての「地球」などの特定の星を指すものではない(#作中の惑星・宙域および生物を参照)。
敵方となる種族。宇宙進出は主人公側よりも遠大で先行している。髪は直毛が多くバリエーションに富む色の瞳、また左利きが多いという身体的特徴をもつ。ズオウ大帝による独裁政治が行われ、封建制が色濃く残る階級社会をもつ。
軍人は自分達をサムライと称しており、プライドが高い者や出世を望む者が多い。
バッフ・クラン(バッフ族。クランは氏族)とはあくまで民族名であり、彼らは主人公側と同じく自分達の母星を「地球」と呼んでいる。なお、バッフ・クランの勢力圏に住む総ての民族がバッフ・クランではなく、彼らが戦闘の末に征服した多くの民族も地球の繁栄による恩恵にあずかっている。ゲルマン民族のような彫りの深い風貌、白い肌がバッフ・クランの純血者の証明であり、ロウ・ロウルやルクク・キルのようにその特徴に当てはまらない者が異民族とされる。
なお、後付設定ながら[注 5]富野が「バッフ・クランはハングル文字のような字体を用いている」と発言しており、『コミックボンボン』[要文献特定詳細情報]にその設定を活かした「バッフ・クラン文字」が掲載された。
地球側が移民を行っていた星。アンドロメダ星雲内にあり、地球から250万光年離れている。バッフ・クランでは「ロゴ・ダウ」と呼称し、伝説のエネルギー「イデ」が存在する星と見当をつけていた。事実、地球人は第6文明人の遺跡をこの星から発掘した。劇中で、地球とバッフ・クランの母星はソロ星を挟んで正反対の位置にあることが示されている。
軍事は戦闘機カービアン・クロッサス12機を持つ空軍。戦車トカモフ、ジネラル各3両を有する陸軍。更に魚雷艇3隻を持つ海軍(劇中未登場)が存在する設定[24]で、固有の宇宙艦艇は皆無の植民地駐留軍である。
イデオンやソロシップを作った文明のこと。既に滅びた状態で発見された。地球人類にとって「6番目に遭遇した地球外文明」という意味。その後に地球人類が遭遇したバッフ・クランは「第7文明人」に相当するが(作中ではバッフ・クランを「第7文明人」と呼ぶ描写はない)、第1から第5文明人の中には、実はバッフ・クランが含まれていたらしい[要出典]。特に第5文明人との接触は“輝きのコンタクト”と呼ばれ、接触した宇宙船が異星人の攻撃により沈められるという事件だった。この事件で地球に対する敵対的異星人の存在が明らかになり、地球文明は外宇宙への植民を推進するようになった。
バッフ・クランで伝説として語られている、無限のエネルギー。その調査にソロ星(ロゴ・ダウ)を訪れ地球人と接触した。なお、地球側には無限エネルギーの伝説はなかった。これは絶対帝政によって単一の文化が持続したバッフ・クランに対し、地球側では多くの政治形態や文化・宗教の興亡によって正確に伝承されず、各地の神話や伝承にその名残を留めるのみになってしまったものと考えられる。
シェリルの調べた結果やギジェの発言からすると、イデオンやソロ・シップに備わっているイデの力は第6文明人の数十億の意識を集めたものと推測される。
富野によれば、「イデは第6文明人の精神の一部をエネルギー利用する実験の失敗により誕生したものであり、その際に第6文明人はすべての精神を吸い取られて滅亡した」とされている[25]。
また小説版には「イデが目覚めた時、雑多な自己に戸惑った」との記述がある[要ページ番号]。
登場する戦闘機や宇宙戦艦などの一般兵器は伝説巨神イデオンの登場兵器を、重・軽機動メカなどについては重機動メカを、ハーケン攻撃、生体発信器、準光速ミサイル、ゲル結界、フリーザー・スカッチについてはバッフ・クランをそれぞれ参照。
本作品の世界は人類が外宇宙に進出して50年が経過した未来、として設定されている。
地球人類とバッフ・クランはほぼ同等の技術レベルにあり、多くのキーテクノロジー(核融合、超光速通信、重力制御など)を両種族が持っている。ただし、機動メカを兵器運用するという思想は地球側にはなく、生体利用技術においてもバッフ・クランが進んでいる。
作中では同一技術を地球人類側では英語ないしカタカナ、バッフ・クランでは漢語で呼んでいる。
劇中では「反物質エンジン」という言葉だけで説明はなかったが、物質と反物質を対消滅させて発生するエネルギーを宇宙船の推進力として使用している。イデを除けば次項の「亜空間飛行」を実現する推力をもたらす唯一の推進器。地球、バッフ・クラン、第6文明のいずれも使っていた。『伝説巨神イデオン大事典』などの関連書籍では、アンチマター、つまりAM(Anti-Matter)エンジンとも略される。
反物質エンジンの噴射物には反物質が含まれているため、地上など居住地近傍での使用は常識では考えられないとされている。ソロ・シップの反物質エンジンがソロ星地表で作動した際は、樹木や土壌が対消滅していった。
作中では、反物質エンジンに対して核融合エンジン(アトミックフュージョン=Atomic-fusion、AFエンジン[26])や化学燃料ロケットエンジン(ケミカルリアクション=Chemical-reaction[27]-rocket、CRエンジン)など通常の噴射機関を「ノーマルエンジン」と呼称している。
本作品の世界における超光速航法。亜空間飛行はバッフ・クラン側の呼称。地球側でDSドライブ(デスドライブ。Dimension-Space-Drive)と呼ぶ。
反物質エンジンで発生させた巨大なエネルギーを推進力として別次元の「亜空間」へ船体を転移、亜空間を経由すると現実空間に対するいわば近道をとることができ、結果として光速を超えて移動することができる。ただし、転移座標(亜空間内での近道のゴールに相当する座標)を正確に設定することが困難である。亜空間は進行方向の前後に伸びるチューブ形の空間として描写され、大きな推進力を持たなければ亜空間の外(通常空間)に弾き飛ばされる。亜空間内で進行方向を上下または左右に大きくそれると亜空間内のルートを外れてしまい、予定と全く違う通常空間に出てしまう。逆に許容範囲内であれば亜空間内の座標をずらすことも可能で、コスモたちはそれを利用して第38話では亜空間内で消えたり出現したりして敵を攻撃する戦法をとった。第5 - 9話の亜空間は無数の人魂が舞い飛ぶような描写だったが、その後は簡素化された。劇場版では青い光がときおり明滅して流れるような描写となっている。
また本作品では亜空間飛行中の戦闘も頻繁に行われ、バッフ・クラン軍は亜空間戦闘に特化した重機動メカ「ギラン・ドゥ」や、「アディゴ」などの汎用機動メカを駆使して、初期は亜空間戦闘に不慣れなイデオンやソロ・シップを苦しめた。
亜空間での戦闘は亜空間戦闘・DSファイト(デスファイト)、亜空間からの脱出は亜空間飛行解除・DSドライブブレーキ(デスドライブブレーキ)、DSアウト(デスアウト)と呼ばれる。
いわゆる荷電粒子砲。地球軍、バッフ・クランともにミサイルと並んで大気圏内外を問わず使用される主力兵器。対空用の機銃サイズのものから戦艦や重機動メカの主砲まで、サイズも用途もさまざまだった。ガンド・ロワの基本構造もこれと同じで、エネルギー源(後方の超新星よりエネルギーを得ている)のスケールが異なるだけである。
地球、バッフ・クランともに使用する個人用白兵戦兵器。物語の序盤からその切れ味の良さはうかがい知ることができた。重機動メカの武器としては使用されておらず、イデオン・ソードが唯一の例外となるが、発生原理が異なるため厳密には別物である。
劇中ではこの名称は出てこなかったが、地球、バッフ・クランともに使用している無重力空間移動用の個人装備。地球タイプは第13話で初登場[28]。宇宙服の腰に巻くように装備する。腰の後ろにある2本の支持架がスライドして伸び、その先端にボールジョイントで動くノズルがある。バッフ・クランタイプは第15話で初登場[29]。背中に装備して4本のハーネスで固定、胸の部分にも装置がある。両肩から後ろ斜め上方に伸びた支持架の先端にノズルがあり、やはりボールジョイントで自在に動く。操作方法については説明がなかったが、この装備を使用して宇宙空間でかなり自由に活動している。
地球の中継基地があったアジアン星がバッフ・クランからの準光速ミサイル攻撃で全滅しかけた時に出現した兵器である。イデオン腹部にあるシャッターが開きマイクロブラックホールが出現、飛来する準光速ミサイルを吸い込んで撃破した。
波導ガン(イデオン・ガン)はマイクロ・ブラックホール兵器に指向性を持たせた兵器である。劇中では「竜巻」のように描写されている。「超重力」場を発生させる兵器で、空間をねじ曲げ通常空間から直接「亜空間飛行」をしている敵艦にも被害を与えることが出来る。「発動篇」では一貫して「イデオン・ガン」と呼ばれる。「波動ガン」は誤り。
一方で第28話でコスモ達が作動原理を調べた際、「構造がグレン・キャノンその物」との結論に至っており、本来は波導ガンもまた、ガンド・ロワと同様の超大型加粒子砲に過ぎないことが示唆されている[注 6]。
HW機関 (Highpar-Wave-System)。小はガダッカのような軽機動メカから、大はバイラル・ジンに至る艦船まで広く利用されているバッフ・クラン側の反重力システム。重機動メカの成立もこのHW機関なしには成立しなかったとされ[30]、これが地球側に対する技術的なアドバンテージとなっている。
元々は富野喜幸の小説版からの設定である。イデオンが飛行するのを見たダミドが、その飛行に驚いて「単なるハイパーウェーブとは思えん」との疑問を呈しており、バッフ・クランにもイデオンの飛行原理(イデの力)が理解不能であったのが判る描写がある。
MBH (Mini Black Hole) 通信機は「イデオン」の世界でなんとかリアル・タイム、あるいはそれは近い感覚で通信ができないものかと考えられた通信方法である[31]。
発売元はいずれもキングレコード。
第1話にはオープニングテーマの曲名「復活のイデオン」、最終話にはエンディングテーマの曲名「コスモスに君と」のサブタイトルがそれぞれ与えられている。第40話から第43話は短縮に伴い放送されず、後に劇場版『発動篇』として制作された。第39話と第43話のサブタイトルが重複しており、本来の予定通りに全43話だった場合、第39話のサブタイトルが何だったかは未だ公式な言及はなされていない(ライナーノートでは「カララとドバ」と書かれている)。
制作局の東京12チャンネルにて放映された最終話には、エンディング主題歌の終了直後に、戦闘BGM付きの名場面集(30秒)が挿入されていた。
サブタイトル、脚本、演出、作画監督の出典→[33]
話数 | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 演出 | コンテ | 作画監督 |
---|---|---|---|---|---|---|
第1話 | 1980年 5月8日 |
復活のイデオン | 山浦弘靖 | 三浦将則 | 斧谷稔 | 湖川友謙 |
第2話 | 5月15日 | ニューロピア炎上 | 富田祐弘 | 滝沢敏文 | ||
第3話 | 5月22日 | 激震の大地 | 松崎健一 | 石崎すすむ | 吉田浩 | |
第4話 | 5月29日 | ソロ星脱出せよ | 渡辺由自 | 関田修 | 斧谷稔 | |
第5話 | 6月5日 | 貞光紳也 | 坂本三郎 | |||
第6話 | 6月12日 | 裏切りの白い旗 | 富田祐弘 | 三浦将則 | 吉田浩 | 湖川友謙 |
第7話 | 6月19日 | 亜空間脱走 | 滝沢敏文 | 藤原良二 | 上村栄司 | |
第8話 | 6月26日 | 対決・大砂塵 | 山浦弘靖 | 石崎すすむ | 谷口守泰 | |
第9話 | 7月3日 | 燃える亜空間 | 古賀あらた | 関田修 | 斧谷稔 | 鈴木英二 |
第10話 | 7月10日 | 奇襲・バジン作戦 | 松崎健一 | 滝沢敏文 | ||
第11話 | 7月17日 | 追撃・遺跡の星 | 渡辺由自 | 三浦将則 | 斧谷稔 | 湖川友謙 |
第12話 | 7月24日 | 白刃の敵中突破 | 石崎すすむ | 坂本三郎 | ||
第13話 | 7月31日 | 異星人を撃て | 富田祐弘 | 関田修 | 斧谷稔 | 谷口守泰 |
第14話 | 8月7日 | 撃破・ドク戦法 | 滝沢敏文 | 神宮慧 | ||
第15話 | 8月14日 | イデオン奪回作戦 | 三浦将則 | 湖川友謙 | ||
第16話 | 8月21日 | 必殺のダミド戦法 | 渡辺由自 | 石崎すすむ | 坂本三郎 | |
第17話 | 8月28日 | 激闘・猿人の星 | 関田修 | 斧谷稔 | 湖川友謙 | |
第18話 | 9月4日 | アジアンの裏切り | 松崎健一 | 滝沢敏文 | ||
第19話 | 9月11日 | ギャムス特攻指令 | 古賀あらた | 三浦将則 | 坂本三郎 | |
第20話 | 9月18日 | 迫撃・双子の悪魔 | 石崎すすむ | 菊池城二 | ||
第21話 | 9月25日 | 敵戦艦を撃沈せよ | 富田祐弘 | 関田修 | 湖川友謙 | |
第22話 | 10月3日[注 1] | 甦える伝説[注 8] | 古賀あらた 富田祐弘 松崎健一 渡辺由自 |
三浦将則 石崎すすむ 滝沢敏文 関田修 貞光紳也 |
坂本三郎 | |
第23話 | 10月10日 | 戦慄・囮の星 | 松崎健一 | 谷田部勝義 | 藤原良二 | 湖川友謙 |
第24話 | 10月17日 | 潜入ゲリラを叩け | 古賀あらた | 三浦将則 | 斧谷稔 | 坂本三郎 |
第25話 | 10月24日 | 逆襲のイデオン | 渡辺由自 | 石崎すすむ | 谷口守泰 | |
第26話 | 10月31日 | 死闘・ゲルの恐怖 | 関田修 | 菊池一仁 | 二宮常雄 | |
第27話 | 11月7日 | 緊迫の月基地潜行 | 富田祐弘 | 滝沢敏文 | 湖川友謙 | |
第28話 | 11月14日 | 波導ガンの怒り | 古賀あらた | 三浦将則 | 菊池一仁 | |
第29話 | 11月21日 | 閃光の |
松崎健一 | 谷田部勝義 | 斧谷稔 | |
第30話 | 11月28日 | 捨て身の狙撃者 | 富田祐弘 | 関田修 | 坂本三郎 | |
第31話 | 12月5日 | 渡辺由自 | 滝沢敏文 | 菊池一仁 | 昆進ノ介 | |
第32話 | 12月12日 | 運命の炎のなかで | 三浦将則 | 康村正一 | 湖川友謙 | |
第33話 | 12月19日 | ワフト空域の賭け | 富田祐弘 | 石崎すすむ | 谷口守泰 | |
第34話 | 12月26日 | 流星おちる果て | 関田修 | 菊池一仁 | 湖川友謙 | |
第35話 | 12月29日[注 9] | 暗黒からの浮上 | 渡辺由自 | 滝沢敏文 | 上村栄司 | |
第36話 | 1981年 1月9日 |
さらばソロシップ | 谷田部勝義 | 斧谷稔 | 坂本三郎 | |
第37話 | 1月16日 | 憎しみの植民星 | 松崎健一 | 石崎すすむ | 鈴木英二 | |
第38話 | 1月23日 | 宇宙の逃亡者 | 富田祐弘 | 関田修 | 斧谷稔 | 湖川友謙 |
第39話 | 1月30日 | コスモスに君と | 松崎健一 | 滝沢敏文 | 坂本三郎 |
放送時間は個別に出典が提示されている局を除き、1980年6月中旬 - 7月上旬時点のものとする[34]。
劇場版公開にあたり、『機動戦士ガンダム』と比較して一般的な盛り上がりが不足しているという見方から制作サイドがファンを巻き込んだ形で行ったイベントの名称。当時のアニメ雑誌の執筆陣や編集者達も半ばスタッフのような形で参加した。スタッフとして加わったゆうきまさみは、当時『月刊OUT』に掲載した漫画「イデオンマイナーノート」にこの模様を描いている。ほかに岡田斗司夫や武田康廣も関与した。スタッフの一人で当時『アニメック』編集長だった小牧雅伸によると、当初は「現在日本で最高水準のアニメ作品」という路線でイベントを打つ予定だったが、『戦闘メカ ザブングル』の第1話のオンエアを見たスタッフから、そのうたい文句は『イデオン』に使えないという話が出て、イベントと割り切ったファンの協力で話題作りをする路線に変更したという[50]。
前代未聞のラッシュフィルム試写会を行ったり、パロディ作品の公募などが行われ、後述の『アジバ3』もその一環として制作された。しかし、できあがった作品内容とのギャップがあまりにも激しかったためか、ガンダムの「アニメ新世紀宣言」のようなかたちで語り伝えられることはなかった。
これらの盛り上がりはテレビ特番まで作られたが、イデオンの興行はアニメーション部門でもベスト5に入れなかった。小牧はこのイベントを「今考えても無理のある企画」と振り返っている[50]。
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