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両生綱に属する動物の総称 ウィキペディアから
両生類は、古生代の石炭紀頃以降、多くの化石種が知られている。しかしながら、現生のものは、長い尾を持ち、短い四肢のある有尾目(サンショウウオなど)、尾がなく体幹が短くまとまって四肢の発達した無尾目(カエル類)、それに四肢を失い、細長い体の無足目(アシナシイモリ類)の3群のみである。両生類は、約3億6000万年前[1]に陸上においての生活も始めたと考えられており、これが脊椎動物の中では初めて陸上生活が可能となった事例だと考えられている。ただ陸上生活が可能とは言っても、その身体の構造、生活史、生理、生殖などにおいて、陸上生活への適応を示しながらも不十分であり、水辺への依存度が強いという特徴を持っている。特に幼生は、一般に水中生活をしているなど、基本的に水中環境が欠かせない。
現生の種は、ほぼ全てが淡水域を生活の場としている。原始的な形では卵を水中で産卵し、幼生は四肢を持たない形で生まれ、鰓呼吸で水中生活を行う。その後変態を経て肺呼吸で出来る成体になる。ただし、多くの例外があり、その生活は多様である。基本的に皮膚呼吸に頼る面が多いことから乾燥に弱いため、水辺などの湿った環境が生息域の中心であり、陸上で活動可能な体を持ちながら、生活や繁殖を水に依存した生涯を送ることからこの名がある[注釈 1]。「両生」類の名は、水中生活と陸上生活の両方が可能という意味ではなく、両方の環境が必要な動物であるという意味である(これが近年の両生類の減少に繋がっているとの指摘もある)。
本来、欧名を漢訳した両棲類、両棲綱であったが、「棲」の字が常用漢字に含まれないため、現在は多くの場合「両生類」「両生綱」と書かれる。ただし、明治の書物でも、教科書として扱われた「新撰理科書」や「新撰普通動物学」などで「両生類」の表記が見られる[2][3]。
20世紀後半から、世界的に両生類の減少が著しく、多くの両生類が絶滅しつつある。カエルツボカビ症をはじめとする感染症や吸虫の被害のほか、粘膜に覆われた脆弱な皮膚が、環境変化への対応を困難にし、個体数の減少をもたらす原因になっていると考えられている。一説に因ればこのままのペースで減少が続くと、50年以内に全ての両生類が絶滅するとも言われている。
成体は原則的には指のある四肢を持つ。ただし様々な程度にそれを退化させたものもある。無足目は完全に四肢を失っているが、化石種では四肢を持つものが知られている。有尾目のサイレン科は前肢しか持たない。
現存種は前脚には親指がないため前肢の指は基本的に4本で、後肢の趾は5本である。有尾目では後肢の指が4本であったり、前後肢とも3本以下であったり、アンフューマ科のように指趾が1本から3本という種類もある。
両生類の皮膚は分泌腺や毒腺が多くなめらかである。爬虫類のように、体表の多くの場所を覆うような鱗は持っておらず、また、体表のほとんど(場合によっては体表の全て)は角質化していない。これは皮膚が呼吸器としての役割(皮膚呼吸)が多くの割合を占めているからであるが、それゆえ乾燥に弱いという弱点にもなっている。なお、アシナシイモリの体のしわの間に小さな鱗がある。また、化石種には鱗をもったものもある。
現存する無尾目、有尾目、無足目の3目はいずれもかなり生態に差異があり、同じ目内でも例外が多い。
カエルツボカビ症による両生類の絶滅が危惧されている。致死率は90%にも上る。
飼育上の注意点として、麻布大学の宇根有美准教授(獣医病理学)は、「飼っている両生類に異変があれば、すぐに獣医師などに相談してほしい。水の管理が最も重要で、水槽の水を排水溝や野外に流さないでほしい」としている。
下位分類体系の一例を以下に示す。
四肢動物はデボン紀後期の約3億6000万年前に肉鰭綱から進化した。ハイギョ類とシーラカンス類のどちらに近いかは未だ決着がついていない。デボン紀後期になり、両生類が初めて陸上に適応した脊椎動物として現れた[14]。
肺呼吸獲得については「板皮類の肺が食道の変化で先に完成し、それが現生魚類の浮袋に変化した。」という肺先行説と、「硬骨魚類の浮袋が先に完成し、それが肺に変化した。」という浮袋先行説があり、無尾目の胚の発生で最初から肺への動脈に鰓弓動脈の一部が伸びて呼吸器として使う前提の形になっている事は肺先行説に有利な証拠とされている[15]。
最初期の四肢動物であるアカントステガやイクチオステガは曲がりくねった大河川に住んでいたと思われるが、やや時代が下ったチュレルペトンのように海生と思われる種もいた。この時期の四肢動物は、まだ少なくとも一部は鱗に覆われた魚類のような皮膚と、6本以上の指を持つ水を掻くのに適した四肢を持つ、ほとんどを水中ですごす動物であったらしい。
石炭紀になるとペデルペスのように陸上生活に適応した四肢を獲得し、二次的に水中に戻った種も含め多様な種が生まれた。石炭紀後期にはすでに有羊膜類が枝分かれして行き、これら迷歯亜綱に分類される動物たちは徐々に水中生活にウエイトを戻していく。これら古いタイプの両生類は、中生代になっても三畳紀には世界中の淡水系に数mにも及ぶ巨大な種が繁栄していたが、三畳紀末の大絶滅以降急激に衰えて、一部地域に遺存種を残すのみとなり、白亜紀前期に絶滅した。
現生両生類である平滑両生亜綱に属する無尾目・有尾目・無足目の起源と関係は未だはっきりとわからないが、すでに約2億9000万年前のペルム紀前期に無尾目・有尾目・迷歯亜綱分椎目の特徴をモザイク状に有するゲロバトラクスが存在した。
三畳紀のマダガスカルには現生のカエルにある程度近い姿のトリアドバトラクスが生息し、ジュラ紀になると今と外見上は変わらないカエルが世界中に分布を広げていた。
現在発見されている有尾目とされる最古の種は三畳紀後期のキルギスタンに生息していたトリアスルスTriassurus sixtelaeである[16]。ジュラ紀中期にはキルギスタンから Kokartus、イギリスからネオテニー的な水生種 Marmorerpeton の化石が発見されている。これらはもっと後の種の解剖学的特徴のいくつかを持たなかったが、ジュラ紀後期には現在のトラフサンショウウオに似たカラウルスやオオサンショウウオ科のチュネルペトンが生息していた。
無足目はジュラ紀初期のまだ四肢が残っているエオカエキリアの化石が見つかっている。また三畳紀の分椎目キンレステゴピスはエオカエキリアといくつかの特徴を共有しており、類縁関係があるのではないかという説がある[17]。現在の両生類は基本的に淡水域を生活の場としているのにもかかわらず地球上の陸地に広く分布していることなどから、遅くともパンゲア大陸が完全に分裂したとされている白亜紀までに、現生の目は全て誕生していたはずだが、詳しいことはわかっていない。
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