Loading AI tools
ウィキペディアから
エアロエースは、三菱ふそうトラック・バスが製造している大型観光バスのシリーズ名である。
スーパーハイデッカーのエアロクィーン(Aero Queen)とハイデッカーのエアロエース(Aero Ace)。かつては、二階建てのエアロキング(Aero King)もあった。
なお本項では、エアロエース以前の三菱ふそうの大型観光バス・MS系の略歴およびその前身である三菱大型観光バスシリーズ(エアロバスなど)についても記述する。
1962年(昭和37年)登場。MR/MAR系などに搭載される直列6気筒の6DB1 (8,550 cc)とモジュラー設計のV型8気筒エンジン・8DB1 (11,400 cc)を搭載し、高速バス・観光バス向けに発売された。
1967年、高速輸送時代の到来に合わせて新たに開発したショートストロークの90゜V型ディーゼルDC系エンジンと共に、MR/MARの観光用とMAR820の後継車として発売されたのが新系列のB8/B9シリーズ。V型8気筒8DC2エンジン(265PS)・11.2m尺のB905N型1型式のみでスタートし、後年12m車(型式末尾記号がS)や8DC2エンジン(230PS)搭載車(B806系)、8DC4エンジン(300PS)搭載車(B907系)、12DC2エンジン (350PS)を搭載した国鉄向けの専用モデル(国鉄専用型式)(B906R型)などが追加されて一大ファミリーを形成した。
B800シリーズには、V型6気筒エンジンを搭載した観光モデルや路線モデル(B800/805系)も存在した。路線モデルについてはエアロスターの項目を参照されたい。
なおB8、B9系でも標準の観光ボディのほかに、路線バス用のボディ(G4型、呉羽73MC型)を架装したモデルも阪急バスや日本交通(鳥取) などで見られた。
三菱自動車工業(三菱自工、名古屋・大江工場)製の新設計のボディ(B35型)は次に記すMS512/513系から採用されるが、両備バスはこれに先駆けてB905に新設計の標準ボディを架装した。
またB9系の特殊形式としてフレーム付構造のB915があるが、バス用としては東京特殊車体が車体を架装しはとバスが導入したB915Nがあるのみである。
1974年、国鉄東名・名神ハイウェイバス向け特注モデル(国鉄専用型式)のB906R型の後継としてMS504Q型が登場。重量軽減のためエンジンを自然吸気V型10気筒の10DC6 (350ps/2400rpm) に変更した。
1979年には排出ガス規制に対応したK-MS504R型となり、1982年まで製造が続いた。
ボディは引き続き富士重工R13型を架装しており、B906Rとの外観上の区別はウインカーや電気ホーンの配置など軽微なものにとどまった。
1976年、前述のB806系とB900シリーズを統合する(ただしB8・B9系は翌年まで併売)形で発売。エンジンはいずれも直噴式の8DC4(265PS)をB806系に代わるMS512系に、8DC8(305PS)をB900シリーズを受け継ぐMS513系にそれぞれ搭載。ボディはK11型を継承。
1977年には、MS513N型/513R型に三菱自工純正のB35型ボディを架装したフルデッカー・パノラマデッカーなどの高床モデルが追加され、上級仕様として人気を博した。
このシリーズでも、阪急バスや日本交通では、MS512M/512N型をベースに後乗り・前降りの路線用ボディ(呉羽自工製73MC型)を架装した車両が存在した。阪急バスの場合は六甲・有馬地区の路線で運用されていた。
MS512/513系の54年排出ガス規制対応モデルで、1980年に登場した。MS613系のエンジンは旧MS512系と同じ8DC8型であるが、排ガス・騒音対策から定格回転数が引き下げられ、最高出力も275PSとなった。また、MS615系には8DC9型エンジン (310PS) が搭載された。
フルデッカー仕様も引き続き生産されたが、溶接組み立て・リベットレス構造のボディを架装した「フルデッカII」モデル(改造型式扱い)が主力となっていった。後に呉羽自工から登場する「サンシャインデッカー」モデルは、このフルデッカIIのデザインを発展させたものといわれる。
初代エアロバスは1979(昭和54)年、当時の三菱自工・名古屋自動車製作所で開発・設計が始められ、1982年11月15日に発売された。
車体はイタリア人デザイナー、アルド・セッサーノが基本デザインを手がけ、モノコックボディとスケルトンボディの長所を組み合わせた独自の工法“スーパー・コンプ・ストラクチャー”によって組み立てられたもので、その秀逸なスタイリングが全国のバス事業者に注目された。
国産観光バス初の前輪独立懸架採用、8DC9型(320PS)高出力エンジンの搭載など性能面での評価も高く、前輪後ろから車高を高めたスーパーハイデッカーのスーパーエアロI、新呉羽自動車工業(以下、新呉羽)製ボディ(新呉羽製も三菱純正のボディとされる)を架装した低運転台モデルのスーパーハイデッカーエアロクィーンK、エアロキングとシャーシを共通化した3軸スーパーハイデッカーのエアロクィーン(エアロクィーンMの登場後はエアロクィーンW)、2階建のエアロキングなどの派生モデルも含め、6年間でおよそ7,000台という、大型バスとしては驚異的な売り上げを記録した。また、新呉羽製ボディのハイデッカー車も存在し、こちらはサンシャインデッカと呼ばれる。ただし、運転席まわりの機器類(インパネ、ハンドル、シフトレバー)は、先代のMS6系のものを踏襲していた。また、新呉羽製ボディで西日本車体工業・C-II型に類似したステップアップルーフのサンシャインデッカも存在した。
1984年に昭和60年騒音規制への適合を中心としたマイナーチェンジが行われ、運転席まわりの機器類が、同年にデビューしたエアロスター(初代:MP2/6系)と同等のものに変更された。
1985年にはエアロバスをベースに車両全体に渡り車高を高めたスーパーエアロII、フロントガラスを二分割し二階建風低運転台のエアロクイーンK、三軸のエアロクイーン(後のエアロクィーンW)が追加された。
1988年に再度マイナーチェンジが行われ、フロントバンパー変更とトランクの大型化が行われた。スーパーハイデッカーでは、スーパーエアロの後継車として8DC11型(355PS)エンジンやフルオートエアコンが搭載されたエアロクィーンMが追加され、三軸車はエアロクイーンWになった。同時にエアロバスにも8DC11型(355PS)が設定されたが生産台数は少ない。そしてハイデッカー車にもエアロクィーンMと同じフロント部分を持つものが登場し、こちらはエアロバス・ハイデッカM(通称:エアロバス・クィーンバージョン、エアロバスQver、エアロバスQV)と呼ばれる。新呉羽製ボディのハイデッカー車も1988年にボディを全面的に変更し、エアロバスKとなったが、中型車エアロミディと共通のイメージを持つスタイルが好まれなかったのか、特定の事業者に偏る傾向があり、あまり普及しなかった。
1989年には低運転台スーパーハイデッカーのエアロクィーンMVも追加されている。
1990年のマイナーチェンジではハイデッカー車のエンジンが335馬力の8DC10型エンジンに変更された。
エアロクィーンMは大型ヘッドライトの周囲に施された特徴的な処理から「パンダエアロ」の異名をとった。エアロクィーンMは当時のバブル景気による高級観光バス需要の高まりや、相次ぐ長距離高速バス路線の開設などを追い風に、大ヒットモデルとなった。また、このマイナーチェンジでは室内の内装が茶色系から灰色系へと変更されると共に、フロントバンパーの形状も一部変更された。
また、従来型のエアロバスにエアロクィーンW、新呉羽製ボディのエアロクィーンK、エアロキングも引き続き小変更を行いラインナップされている。
1982年秋、「ふそうブランド誕生50周年」にあたり、それまでのMS613/615系をフルモデルチェンジ、新たにエアロバス(Aero Bus)と命名。三菱ふそうのバスはマイクロバスのローザを除き順次“エアロシリーズ”で統一されることになり、その第一弾であった。昭和58年排出ガス規制にいち早く適合した。
三菱自工(大江工場)製のハイデッカ、スタンダード(ミドル)デッカーが標準であるが、新呉羽製のサンシャインデッカ・エアロキング類似の車体を架装したエアロクィーンK、改造扱いで前輪後ろから車高を高めたスーパーエアロI・段差のない屋根でエアロクィーンWの原型となるスーパーエアロIIも用意された。日本交通(鳥取)のスーパーエアロIIは運転席・客ドア上部がエアロバス同様傾斜した形で導入されている。
エンジンはいずれもK-MS613/615系から引き継ぎ、パワーアップした8DC8と8DC9を搭載、さらに高出力を求めるユーザーに向けてターボチャージャーつきも加えられた。スーパーエアロIIは、初期の夜行高速バスでも採用されている。なお1988年のマイナーチェンジでABSが搭載されるようになり、そしてスタンダードデッカの8DC8型エンジン搭載車は型式がMS715改と改造扱いに変更しそしてフルエアブレーキ車は、型式名の末尾に「A」が加わる(KC-MS8系まで同様。)。
平成元年排ガス規制に伴い、1990年にマイナーチェンジ。スタイルはほとんどP-MS713/715/725/729系と同一であるが、バンパー形式や内装が前4形式の後期形と同一になった。
エンジンはMS716改(スタンダードデッカ)は8DC9のままであるが、MS716/726は8DC10(335PS)に変更された。1992年に一部改良を実施し、ABSが標準装備になった。MS729はエアロクィーンと同じエンジンをエアロバスのシャシーに搭載した強馬力仕様のモデルで生産台数は少なく、まとまった台数を導入したのは東京空港交通・ジェイアール東海バスと広交観光・防長交通程度である。
1984年から86年まで、国鉄東名・名神ハイウェイバス向けに16台が製造された特注モデル。ターボ付き8DC9型エンジン(350PS)やフルエアブレーキの搭載、富士重工業(富士重)製ボディの採用などが大きな特徴。国鉄最後の特注車であると同時に、最初の高床路線車でもあった。2000年に全廃。
1985年10月、2階建てバス・エアロキングにやや遅れて追加された後2軸スーパーハイデッカー。スーパーエアロIIとほぼ同様の車体で、架装重量に余裕があることから、ハイグレード仕様の観光バスに導入された他、国鉄バス「ドリーム号」にも採用された。
しかし、車体を全面的に刷新したエアロクィーンMの登場後、エアロクィーンWとしての販売台数はかなり減少している。なお、他社が2階建てバス製造を中止した後もエアロキングのベース車としてシャーシ型式そのものは存続されていたため、シャーシ型式で見た販売台数はさほど落ちていない。
エアロクィーンKと同等の車体を架装した車両が2台、エアロクィーンMと同等の車体を架装した車両が1台存在する。
1988年、エアロバスシリーズの追加モデルとして発売。折しも高速バスの開業ブーム・ハイグレード観光需要ブームと重なったため、それまで三菱ふそう車の導入実績がなかった会社も含めて、非常に多くの会社で導入され、生産終了までに800台近い台数が販売された。
この型式には改造扱いで新呉羽ボディのエアロクィーンKも存在する。
1989年、フロントガラスが分割された低運転台仕様としてエアロクィーンMVも登場したが、こちらは高速バス車両としての採用はほとんどなかったため、販売台数は多くない。岐阜バスや両備バスなどでは、観光用として導入した後に高速バス用に転用された車両がある。また、小型トラックとの衝突事故で乗務員が死亡する事故が発生し、低運転台仕様の安全性に問題を投げかけたモデルでもあった。
西日本車体工業製の車体を架装した車両は、九州のバス事業者や阪急バスを中心に多数存在する。
西日本車体工業製の車体を架装したMS725Sには、車体の前後を切り詰め、S尺でありながら全長11.5mの車両(同型式の本来の車両長は11.99m)が多数存在した。改造車扱いで、主に同社のS型車体架装車である。
富士重工業製の車体を架装した車輛も、国鉄バス発注の車両(国鉄専用型式もその例である)をはじめとして数社が導入しているが、西工車体と比べて少数派である。
1992年10月にはエアロバスシリーズの観光・高速系のみがフルモデルチェンジが実施され、2代目エアロバスが登場した。2代目エアロバスから自社製車体と新呉羽製車体の設計が統一された。スーパーハイデッカ仕様にはフロント1枚ガラスのエアロクィーンIと、旧エアロクィーンMV・エアロクィーンKに代わる低運転台仕様のエアロクィーンIIの2モデルが設定され、さらに翌年には床下運転台(セミダブルデッカ;SDD)構造として客室前方視界を拡大したエアロクィーンIIIが追加された。
初代の流れを汲みながらも社内デザイナーが手掛け、当時のトレンドであったオーガニック・エアロフォルムに一新して発売された2代目エアロバスシリーズは、全シリーズに共通して以下のような特徴を持つ。
1995年(平成7年)・2000年(平成12年)・2005年(平成17年)には排出ガス規制強化に伴うマイナーチェンジが施され、特に2005年10月実施のマイナーチェンジでは、搭載エンジンが従来のV型8気筒自然吸気エンジンから、大型トラックのスーパーグレートに採用されている直列6気筒インタークーラーターボエンジン(6M70系)に換装され、それにともないリアオーバーハングの延長とホイールベースの短縮が行われた他、2006年1月実施の灯火器保安基準改正に対応するため、リアコンビネーションランプの位置変更等、大規模なマイナーチェンジが行われた。
また、この間の1998年には大型バス生産がMBMに一本化されているが、優美なイメージを持つ基本デザインは変化しておらず、15年間にわたり多数の国内バス事業者からの支持を獲得し続けた。なお、エアロクィーンIIIは2005年のマイナーチェンジ時に製造を中止している。
1992(平成4)年にフルモデルチェンジ。MS8シリーズとなる。登場時のキャッチコピーは「バス・ルネッサンス」。
8DC9 (300PS) を搭載した標準床・前輪車軸懸架タイプのMS815、8DC10 (335PS) を搭載するMS826、8M20-1 (400PS) を搭載するMS821(MS826・MS821は前輪独立懸架)の3種類が存在する。
なお、MS826及びMS815には長尺車(11.99m車。ハイデッカ:P尺、スタンダードデッカ:S尺)及び短尺車(11.2m車。同、M尺及びN尺)の両方が存在するが、MS821にはハイデッカ、スーパーハイデッカ共に長尺車(P尺)しか存在しない。
エアロクィーンIIでエアロクィーンIIIと同等の車体を架装した車両が1台存在する。
1995年(平成7年)に強化された排出ガス規制に対応するためマイナーチェンジ。8DC9 (310PS) を搭載した標準床・車軸懸架タイプのMS815、8DC11 (355PS) を搭載するMS829、8M21 (420PS) を搭載するMS822(MS829・MS822は前輪独立懸架)の3種類が存在する。
U-車と同様、MS815の長・短尺車(S尺・N尺)及びMS829にも長・短尺車(P尺・M尺)の両方のモデルが存在するが、MS822にはハイデッカ・スーパーハイデッカ共に長尺車(P尺)しか存在しない。 北海道バスに、MS829のエアロクィーンIが存在する。なお、この代をもって、富士重工業製のボデー架装が中止された。
U-車との識別点は、運転席空気圧計高圧側のレッドゾーンの有無(レッドゾーンがあるのがU-車、無いのがKC-車)であるのと、フロントバンパーの形状の違い(エアロクィーンII&IIIを除く)である。
1997年(平成9年)にはハンドルを衝撃吸収形の形状とするものに変更され、翌1998年(平成10年)にはMBMへの製造一本化と共に、運転席のランプ類がLED式となった。また変速機の作動音も若干変化した。さらに1999年(平成11年)には平成10年騒音規制に対応させるために一部改良を実施。ヘッドライトがディスチャージヘッドランプに変更され(角型4灯のスタンダードデッカ車は除く)、マフラーの位置が右側になっている。
静岡県警察の警察音楽隊に、INOMAT2のクラッチ制御を採用した数少ないINOMATを装備したエアロクィーンが存在した。
2000年に強化された排出ガス(長期規制・KL-)に対応するためマイナーチェンジ。KL-MS86M/85K系となる。外観は前代とほとんど変化はない。なお、この代のモデルから、全車ヘッドランプにプロジェクター式を採用。(今までの、スタンダードデッカの角型4灯モデルは廃止された。)
型式には、搭載機関が8DC11 (330PS) のMS85K(SD/ND:いずれもスタンダードデッカ・前輪車軸懸架)、8M21-1 (370PS) を搭載するMS86M(PH1/MH1:EX観光、PH1B/MH1B:廉価版のSA観光、SD1/ND1:スタンダードデッカ、前輪独立or車軸懸架)、8M21-3 (430PS) を搭載するMS86MP(H3:ハイデッカ/Q3:クィーンIスーパーハイデッカGX観光/C3:クィーンI夜行高速バス用ハイウェイライナー/V3:クィーンII/W3:クィーンIII、いずれも前輪独立懸架)の3種類が存在する。なお、この型式より、エンジン出力はネット出力となっている他、全車フルエアブレーキ・ホイールパーク式サイドブレーキとなっている。ミッションはフィンガーコントロール式6MTが標準となっているが、エアロバスおよびエアロクイーンIではロッド式も設定されていた。
U-車、KC-車と同様、8M21-1・8DC11機関搭載車には長尺車(P尺・S尺)及び短尺車(M尺・N尺)の両方が存在するが、8M21-3機関搭載車にはハイデッカ・スーパーハイデッカ共に長尺車(P尺)しか存在しない。
本型式よりハンドルにはSRSエアバッグが標準装備された(注文によりエアバッグ無しとすることも可能だった)新設計のものとなっている。さらに、ホイールパーク式サイドブレーキ動作音がKC-車とは若干異なっている。
2005年、平成16年新短期排出ガス規制に適合させマイナーチェンジ。エンジン搭載の関係でホイールベースが更に短縮されて6,150mm→6,000mmになり、リアオーバーハングが延長となった。それまでは2種類の車体長を持つモデルが設定されていたが、この代で12m級のPJ-MS86JP型に一本化され、11.2m級モデルや前輪車軸懸架の設定はなくなった。また、スタンダードデッカの設定もなくなった。一方で、従来は特注仕様だった直結エアコン・大容量床下トランク装備モデルがエアロバスに標準設定された(エアポートライナー仕様)。
エンジンは初代エアロバス以来のV型8気筒から、直列6気筒・インタークーラーターボ搭載のタイプに変更され、6M70(T2) 型 (350PS) と6M70(T4) 型 (420PS) の2機種に整理された。出力では旧来のV型8気筒に比べわずかに劣るものの、低回転域のトルクの向上で総合的にはドライバビリティーは向上しており、燃費も約15%向上し、静粛性も格段に向上した。
また、車体関連では平成18年灯火器保安基準適合のため後部灯火機器の配置変更やサイドリフレクター(反射板)の追加が行われ、制動灯が従来の位置とリアバンパーの間に設置された。なおこのモデルから、西日本車体工業へのシャーシ供給は取りやめとなったほか、ミッションもフィンガーコントロール式のみとなり、ロッド式は廃止された。
このモデルはライバル車の日野・セレガ/いすゞ・ガーラがフルモデルチェンジしたことや、リコール隠し問題の影響もあり、販売台数が以前よりも減少している。
三菱ふそうの純正ボディは、前記のとおり三菱自工(1998年まで)とMBM→MFBMが担当するが、西日本鉄道をはじめ九州・中国・関西地方では西日本車体工業(西工)による架装が多く見られる。1992年10月、純正ボディと同時期にフルモデルチェンジしたネオロイヤルC/SD型のほか、比較的運行距離の短い中距離都市間路線にはS型も架装された。特にC/SD型はスペースをなるべく広く取る工夫がなされており、夜行都市間高速バス用としては最適である。
SD型のうちSD-II型は三菱ふそう専用(ネオロイヤルになり日産ディーゼル・スペースウィングに2軸スーパーハイデッカーモデルが追加されてからは日産ディーゼル向けも製造)で、高出力なMS729Sの後継モデルであるU-MS821P/KC-MS822P/KL-MS86MP(Q3)と組み合わされる。なお、九州内の昼行長距離都市間路線(フェニックス号・桜島号)用には、ハイデッカーにセグメントされるSD-I型が採用された。
ちなみに西工架装車には、ECS(SD-IIなど高出力車を除く)を省略した車両が多数存在する。
富士重工業製は既に少数派であったが、1998年には日野自動車とともにバス車体の架装は中止された。西工製についても2005年秋以降は同社へのシャーシ供給を停止しており、これまでSD-IIボディを採用してきた西日本鉄道や阪急バスにも純正ボディの夜行バスが採用されるようになった。
2002(平成14)年以降、三菱ふそうトラック・バスでのリコール隠し問題が相次いで発覚したことから、各地でエアロバスの新規導入・更新を手控える事業者が後を絶たなかった。例えば系列にふそう系ディーラーを持ち、昭和40年代以降一貫してバス車両を三菱自製に統一していた名鉄バスや岡電バスなどでも日野自動車のセレガを導入するなど、当面の動向が懸念された。1999年にホイールハブ破損によりタイヤ脱落事故を起こしたJRバス中国でも三菱自工製の車両を多数導入してきたが、2004年8月以降の新車はいすゞ自動車製のみを採用している。
その後、ここ数年の逆境で落ち込んだシェアがかつての水準にまで回復しており、明るい兆しが見え始めた。しかし、いすゞ・日野が2005年9月に大型観光バスをフルモデルチェンジしてセレガ/ガーラとして発売させたり、西工製車体の日産ディーゼル・スペースアローはトルコン式6速ATのみに絞り込まれたのに対し、エアロバスの2005年10月12日の改良では、フルモデルチェンジも新長期規制への対応もなく、新短期規制適合かつ超低PM排出ディーゼル車認定制度75%低減レベルに留まった。メーカー側は中身の充実に重きを置いたと説明している。
マイナーチェンジに留めた理由は一連のリコール問題に起因する開発の停滞と誤解されるが、実際は排出ガス規制適合は継続生産車の場合、適合期限が新規車種(フルモデルチェンジ)とは違うためである。
新長期規制への対応は、後述の2007年のUDトラックス(旧:日産ディーゼル)との業務提携・バス事業の相互OEM供給が行われる車種からとなった。
2007年(平成19年)6月、15年ぶりにフルモデルチェンジを実施し、3代目エアロシリーズが発表された(発売は同年8月29日)[1]。
ハイデッカーは従来のエアロバスからエアロエース(Aero Ace)へと名称が変更された。スーパーハイデッカーにおいては従来と同じエアロクィーン(Aero Queen)の名称が継続して使用されている。
エンジンは先代PJ-MS86JP系で採用された6M70がキャリーオーバーされているが、コモンレール噴射方式、高精度クールドEGRの高効率化技術が採用されるなど、エンジン本体に大幅な改良が加えられた。
また排気後処理装置として尿素SCRシステムを採用されることになった。この尿素SCRシステムは日産ディーゼル(現・UDトラックス)との業務提携により、同社より供給が行われ、スペースウイング/スペースアローなどと同一のコンポーネントとなっている。尿素水の消費量は燃料の3 %と見積もられている。
これら総合的なエンジンの改良により、新長期規制に適合したのはもちろんだが、省燃費性能や経済性、さらには動力性能も先代モデルよりも一層向上した。
さらにドライブトレインにも、タイヤの扁平・小径化、また低回転域のトルク増大に伴う最終減速比の変更が行われ、これにより静粛性も先代モデルより一層向上した。
車体や内装は、次の4つのコンセプトを元にしている。
全高は、サブエンジン冷房車の場合、エアロクィーンは3.52 m、エアロエースは3.26 mである。直結冷房はエアロエースにオプション設定されているが、エアロクィーンでは全高の増大を避けるため設定がない。サブエンジン式冷房は三菱重工業製が標準、デンソー製はオプション。直結式はデンソー製のみ。
なお、初代エアロバス以来のスケルトンとモノコックの複合構造だったボデー構造は、エボバス(英語版:EvoBus)との技術交流も生かされ、今回から角鋼管材を全面に使用したオールスケルトン(マルチチューブラーフレーム)構造になり、フロント/リアパネルにはFRPを、サイドのロアパネル、ラゲッジリッドはアルミ製となっている。
ドライバーズシートも、本モデルから2代目エアロバスに標準装備されていたサスペンションシートが廃止され、固定シートのみとなった。ワンマン運行も想定して、インパネには3DINオーディオを装備出来るスペースが用意されている。
乗降扉は2021年に折戸モデルが発売されるまでは、全車外開きのプラグドアのみとなっていた。
また、この車両は日産ディーゼル工業(現・UDトラックス)にOEM供給され、スーパーハイデッカーが「スペースウィングA」、ハイデッカーが「スペースアローA」として発売される。
2007年(平成19年)10月、エアロクィーン、エアロエース共にグッドデザイン賞を受賞した[2]。
2007年(平成19年)8月29日に発売された型式で、新長期規制(平成17年排出ガス規制)に対応している。前述のように、新規に尿素SCRシステムを採用するなどした結果、基準値に対し窒素酸化物 (NOx)・粒子状物質 (PM)の10 %減を達成した。また、平成27年燃費基準も達成しており、識別記号が「BKG-」となったが、これは国内のディーゼルバスでは初である。
エンジンは6M70エンジンを搭載しており、出力は309 kWあるいは257 kW(エアロエースのみに設定)である。トランスミッションは6MTのみである。車体は、引き続き三菱ふそうバス製造製である。
同年10月には、高速路線仕様のハイウェイライナー、および空港路線仕様のエアポートライナーが追加設定された。
型式は、BKG-MS96JPで、日産ディーゼルへのOEM供給車はBKG-AS96JPとなる。
2010年9月1日より発売。今回は主に平成21年度排出ガス規制(ポスト新長期規制)への適合が主に置かれた大規模マイナーチェンジで、今回のモデルでエンジンが変更となり大型トラックである三菱ふそう・スーパーグレートと共通の新エンジン6R10(親会社であるダイムラー・トラックとの共同開発)に変更された。出力はBKG-車と同様の309kWあるいは257kWである。また排気ガス後処理装置も全面変更されこれまでのUDトラックス製尿素SCRシステムからダイムラー・トラック製「BlueTecシステム」(DPF+尿素SCR)に変更された[3]。 その他の改良面としては、サービスボックスの容量拡大や、それに伴いその形状を見直して最前列の足下空間の余裕拡大を実現したほか、従来オプション設定だった運転注意力モニターが標準装備となるなど、かなり大幅な改良となっている。ホイールベースは従来車より95mm延長され、リアオーバーハングが短縮され、旧来のV8搭載車のそれに近くなっている。またラジエーターはベルト駆動から、日野・セレガと同様の油圧によるシャフト駆動に変更され、ラジエーター位置も後方から見て右側から左側に変更され、左側のルーバーの直後にラジエーターが配置され、BKG-代には無かったエンジンルームの左側にもルーバーが設けられている。さらにはリアボンネットに「BLUETEC」のロゴシールが貼り付けられている。これがBKG-車との区別ができる識別点となっている。
また、新排出ガス規制対応による重量増に対しては、ハイデッカーの一部車種に軽量サスを設定し、従来車と同等の乗車定員を確保している。
エンジンもダイムラー社と共同開発の6R10型に変更された。最大トルク・出力とも旧来の6M70型と同じであるが、最高出力の発生回転数は2000rpmから1800rpmになり、実用域でのトルク特性も若干向上したほか、静粛性も一段と向上している。
なお、今回から空調システムは直結式・サブエンジン式ともデンソー製に一本化されており(ただしオプション設定で従来の三菱重工製もあり)、UDトラックスへの供給車はLKG-AS96VPとなる。
2012年4月より発売。新エコカー減税対応により、排出ガス規制記号を変更。 2012年7月、同月に施行された国際連合欧州経済委員会 (ECE)が定める国際基準に準じた安全規制に適合させたほか、ブレーキオーバーライドシステム(ブレーキとアクセルを同時操作させた場合、ブレーキが優先される)やサイドビューカメラを全車に標準装備し、安全性の向上を図っている[4]。 エンジンはLKG-車と同様の6R10型を継続搭載しているが、21年度低排出ガスへの適合によって規制記号はQRG-に変更された。また、サブエンジン式エアコンは廃止され、新開発の床下設置型の直結式エアコン(全てデンソー製)に置き換えられている。ただし、エアロエースには従来の天井設置型の直結エアコンがオプション設定されている。また客席の冷風吹き出し口の風量ダイヤル表示が初期の楕円と四角から矢印と×に改められた。
2013年1月15日には衝突軽減安全ブレーキ(AMB)、ディスタンスウォーニング(車間距離警報)、ASR(アンチスピンレギュレーター)を標準装備とするマイナーチェンジを実施した[5]。マイナーチェンジ以前にもこれらをオプション装備した車両もあるが、今回のマイナーチェンジによってバンパー中央の開口部の形状が丸型から角型に変更されたため、見分けは容易である。
2014年9月12日にマイナーチェンジを実施。6R10エンジンに搭載されるターボチャージャーにはダイムラーグループで多く採用されているアシンメトリックターボチャージャーを採用した他、ECOドライブモード、プラズマクラスターイオン発生装置、抗菌シート生地を標準採用した。また、室内灯と路肩灯もLEDを採用し、後部ガラスもポリカーボネート製に変更された[6]。
2015年4月登録分より、QTG-MS96VPへと排ガス規制記号が変更され、燃費基準の向上はしているものの、車線逸脱警報装置の保安基準の適合前なので、燃費基準ステッカーのみでの識別となる。2015年7月発売モデルより、車線逸脱警報警報装置の保安基準に適合し、フロントダッシュボード上にある白線認識カメラの形状が正方形型から長方形(縦長)型になっている。
エンジン点検口部分へ平成27年度・燃費基準+15%達成を示すステッカーがあれば当該モデルと識別可能。
2017年(平成29年)5月15日発表[7][8]。ポスト・ポスト新長期規制適合となり排出ガス記号が変更となった。エンジンが13L級の6R10から7.7L 2ステージターボの6S10(ダイムラー製)へ、同時に組み合わされるトランスミッションがフィンガーシフト式6MTから“SHIFT PILOT”と呼称する8速AMTに、標準装備またはオプション設定されるリターダは永久磁石式から流体式に変更されている。またシフトレバーがインパネからコラム左側へ変更となり、ワイパーレバーをウインカーレバーと統合した。 またレバー併設ハザードスイッチが道路運送車両法改正により認可されなくなり、ハザードボタンをインパネに新設している。
空調システムは直結式だが、熱交換器はエアロエースが全車天井設置となり、床下設置はエアロクィーンのみとなった(共にデンソー製)。外観上ではサイドウインドウの前方下部に「FUSO AERO」のエンブレムが施され(非装着車もあり)、リアウインドウに上位グレードにはLEDシグネチャーライトが標準装備となったほか、AdBlueタンクが左リアオーバーハングから左後輪前に移設、エンジンルームの左側のルーバーが小型化した。室内は日野・セレガと同様、通路と客席の間がフルフラット化され、段差が解消されたことに伴いトランクルームの高さが高くなり、容量が増大している。ホイールベースはMS96VP系の6095mmから再び6000mmに戻り、リアオーバーハングが少し長くなっている。
運転席周りはステアリングホイールやメータークラスタが同日発表の大型トラック「スーパーグレート」と同様の新しいものに置き換えられたほか、衝突安全ブレーキ等の機能も強化され、安全性を大きく向上させている。エンジンは従来、標準出力(257 kW/350㎰)と高出力(309 kW/420㎰)の2種類があったが、今回の新型エンジン搭載と8速AMT搭載によりその中間出力である280kW/381㎰に一本化された。新型小排気量エンジンとAMTとのマッチングにより、ドライバビリティや燃費も格段に向上している。さらにエンジンの軽量化により車両重量も軽減され、エアロエースでは定員増が可能になり、一部グレードでは64人の乗車定員を実現しているほか、全車リアサスペンションにワイドサスの搭載も可能になり、乗客の快適性も大きく向上した。
この代から型式が従前のMS96VPからMS06GPへ変更されている。
2018年9月27日、エレベーター搭載モデルをエアロエースに追加した[9]。車両メーカー純正でのエレベーターの架装は初であり、車椅子の乗降時間短縮、天候に左右されず車椅子の乗り降りを可能とした。
この節の加筆が望まれています。 |
2019年4月発売開始[10]。主な変更点は日本国内の大型観光バスで初となる車両左側方のモニタリングを行う「アクティブ・サイドガード・アシスト」の追加、衝突被害軽減ブレーキの機能強化(歩行者検知機能を追加)、マイクロバスのローザに次いでの採用となる「ふそうブラックライン」の導入とヘッドランプ・フォグランプのLED化に伴うフロントフェイスの刷新、ドライバー異常時対応システムの装備など。
2021年4月26日に名鉄バスへ折戸(2枚片折戸)仕様の初号車を納車し、同日より折戸仕様車の販売が開始された[11]。
2022年12月に一部改良[12]。変更点は2023年10月の規制施行に先駆けてオートライトが搭載されたほか、騒音規制の規制値「フェーズ2」への対応、ヘッドランプ内にデイライトが搭載された。
韓国の現代自動車は三菱自工と業務提携していたことから、2009年までエアロバスを「エアロエクスプレス/エアロスペース」シリーズの名称でライセンス生産していた。ボディスタイルも三菱と同時期にフルモデルチェンジされ、前面2枚ガラスや直結エアコンを特徴とした。エンジンは以前から直列6気筒・インタークーラー付きターボチャージャー(6D22型ターボインタークーラーエンジンであるQ340、独自開発のパワーテックエンジン)を搭載しているようで、日本より先進的であった。ただし、廉価版の車種では日本向けにない6D22型自然吸気エンジン(235PS、1986〜1999年)、リーフサス(板バネ、1988〜2009年)仕様のものが存在するなど、一部にコストダウンの影響も垣間見えた。
トルコでもテム・サ社において、三菱からの技術提供で1987年からエアロバスの現地生産が行われている。
中国ではコピーされた類似車が多数製造されており、いすゞ自動車の中国現地法人だった広州いすゞでも、初期は広州ガーラではなく、部品現地調達の必要性でLTベースにエアロバスに類似したボディを架装していた[13]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.