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88星座の1つ ウィキペディアから
Pegasus | |
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属格形 | Pegasi |
略符 | Peg |
発音 | 英語発音: [ˈpɛɡəsəs]、属格:/ˈpɛɡəsaɪ/ |
象徴 | ペーガソス[1] |
概略位置:赤経 | 21h 08m 42.9079s - 00h 14m 57.7547s[2] |
概略位置:赤緯 | +36.6069069° - +2.3256910°[2] |
20時正中 | 10月下旬[3] |
広さ | 1120.794平方度[4] (7位) |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 88 |
3.0等より明るい恒星数 | 5 |
最輝星 | ε Peg(2.39等) |
メシエ天体数 | 1 |
確定流星群 |
6月ペガスス座流星群 ペガスス座イプシロン流星群 7月ペガスス座流星群[5] |
隣接する星座 |
アンドロメダ座 とかげ座 はくちょう座 こぎつね座 いるか座 こうま座 みずがめ座 うお座 |
α・β・γ とアンドロメダ座のα星[注 2]からつくられる四辺形は、ペガススの四辺形[8][9]や「秋の四辺形」の名で親しまれている。
最も明るく見えるε と「ペガススの四辺形」を成す α・β の計3つの2等星がある[10][11][12]。α・β・γ とアンドロメダ座α の4つの星を頂点とする台形に近い形をした四辺形は、「ペガススの四辺形[13](英: Great Square of Pegasus[14])」や「秋の四辺形[15]」と呼ばれる。台形の脚に当たる γ-アンドロメダ座α と β-α の線分をそれぞれ延長した直線が交わる辺りに北極星を見つけることができる[16]。
2023年10月現在、国際天文学連合 (IAU) によって15個の恒星に固有名が認証されている[17]。
その他、以下の恒星が知られている。
18世紀フランスの天文学者シャルル・メシエが編纂した『メシエカタログ』に挙げられた球状星団が1つ位置している[57]。また、3つの天体がパトリック・ムーアがアマチュア天文家の観測対象に相応しい星団・星雲・銀河を選んだ「コールドウェルカタログ」に選ばれている[58]。
ペガスス座の名前を冠した流星群のうち、IAUの流星データセンター (IAU Meteor Data Center) で確定された流星群 (Established meteor showers) とされているのは、6月ペガスス座ι流星群 (June iota Pegasids)、ペガスス座ε流星群 (epsilon Pegasids)、7月ペガスス座流星群 (July Pegasids) の3つである[5]。6月ペガスス座ι流星群は2015年8月に追加された流星群で、6月27日頃に極大を迎える[5]。ペガスス座ε流星群は7月8日頃に極大を迎える[5]。2012年8月に追加された7月ペガスス座流星群は C/1979 Y1 (Bradfield)、または C/1771 A1 を母天体とする流星群で、7月10日頃に極大を迎える[5]。
現在では古代ギリシアの伝承に登場する翼を持つ馬ペーガソスがモチーフであるとされているが、古代ギリシアではこの馬の星座は有翼の馬ペーガソスであると特定されてはいなかった[88]。実際、紀元前3世紀前半のマケドニアの詩人アラートスの詩篇『パイノメナ (古希: Φαινόμενα)』から帝政ローマ期のクラウディオス・プトレマイオスの天文書『ヘー・メガレー・スュンタクスィス・テース・アストロノミアース (古希: ἡ Μεγάλη Σύνταξις τῆς Ἀστρονομίας)』、いわゆる『アルマゲスト』に至るまで、この星座は単に「馬」を意味する Ἵππος (Hippos) と呼ばれてきた[6]。例えば、アラートスの詩篇『パイノメナ』では、ペーガソスという名は全く使われていない[89]。また、紀元前3世紀後半の天文学者エラトステネースの天文書『カタステリスモイ (古希: Καταστερισμοί)』では「この星座には翼がないのでペーガソスではあり得ないと考える人もいる」として、半人半馬の賢人ケイローンとニュムペーのカリクローの間に生まれたヒッペーが変身した姿であるとする説を紹介している[88][89]。このように、ペーガソスが有力な候補とされながらも異説も出されるという状態が長く続き、星座がペーガソスと特定されるようになったのは2世紀のプトレマイオス以降のこととされる[88]。
ペガスス座に属する星の数は、エラトステネースの『カタステリスモイ』や1世紀初頭の古代ローマの著作家ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスの『天文詩 (羅: De Astronomica)』では18個、プトレマイオスの天文書『アルマゲスト』では20個とされた[88]。大きく時を下った17世紀初頭の1603年にドイツの法律家ヨハン・バイエルが編纂した星図『ウラノメトリア』では、α から ψ までのギリシャ文字を用いて23個の星があるとされた[90][91]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Pegasus、略称は Peg と正式に定められた[92]。1930年に全ての星座の境界線が明確に定められた際、バイエルが「へそ、アンドロメダの頭と共通」とした δ は、アンドロメダ座に属することとされた。
ペガスス座の原型となったのは、現在のペガスス座ととかげ座の位置に置かれていたバビロニアの馬の星座であったと考えられている[93]。しかし、現在のペガスス座が南に頭を向け、前半身しか描かれていないのに対して、バビロニアの馬の星座は北を頭に向けて全身が描かれており、一致しているのは星座の場所と前脚のみとされる[93]。この全身を持つ馬の星座は、10世紀のペルシアの天文学者アブドゥッラハマーン・スーフィーが『アルマゲスト』を元に964年頃に著した天文書『星座の書』の中でもペガスス座とは別に描かれている。アッ・スーフィーは、この星座をペガスス座とこうま座の隣に置き、現在のとかげ座の星々を頭部、β を右脚、α を左脚とし、ペガスス座東部の星々を体と後ろ脚とする全身を描いた[93][94]。
また、うお座をティグリス川とユーフラテス川に見立て、2つの川に挟まれたペガススの四辺形をバビロンと見なすこともあったとされる[95][96]。紀元前500年頃に製作された粘土板文書『ムル・アピン (MUL.APIN)』では、ペガススの四辺形が「野」[97][96]、ζ・θ・ε の3星が「ツバメ」の星座とされていたと考えられている[97]。
イスラームの月宿である manzil(マンジル、詳しくは manāzil al-qamar(マナージル・アル=カマル))では、ペガスス座の α・β が第26月宿のアル=ファルグ・アル・アウワル、γとアンドロメダ座α が第27月宿のアル=ファルグ・アッ=サーニーにあたるとされた[98]。
アッ・スーフィーの『星座の書』では、ペガスス座は「偉大な馬」を意味する al-Faras al-A'ẓam という星座名が付けられ、20個の星があるとされた[99]。
ドイツ人宣教師イグナーツ・ケーグラー(戴進賢)らが編纂し、清朝乾隆帝治世の1752年に完成・奏進された星表『欽定儀象考成』では、ペガスス座の星は、二十八宿の北方玄武七宿の第四宿「虚宿」、第五宿「危宿」、第六宿「室宿」、第七宿「壁宿」に配されていたとされる[100]。
虚宿では、11番星が俸禄を司る官職を表す星官「司禄」に配された[100][101]。危宿では、θ・ε が屋根の上を表す星官「危」に、2・1・12・9 の4星が万民を表す星官「人」に、π2・23 の2星が杵を表す星官「杵」に、κ・ι・32 の4星が臼を表す星官「臼」に、それぞれ配された[100][101]。室宿では、α・β の2星が天帝の宮殿あるいは軍の糧食を入れる倉庫を表す星官「室」に、ζ・ξ・σ・55・66・70 の6星が雷を表す星官「雷電」に、それぞれ配された[100][101]。壁宿では、γ が壁あるいは宮廷の図書館を表す星官「壁」に配された[100][101]。
ペーガソスという名前はギリシャ語で「泉」または「水」を意味する Πηγαί (pegai) に由来するとされている[6]。ペーガソスは、ムーサたちの住むボイオーティアのヘリコン山に辿り着き、ムーサたちを喜ばせようと岩を蹄で撃って、そこから泉を湧かせたとされる[6][102]。なお、エラトステネースは泉を作った馬とペーガソスはそれぞれ別の馬であるとしていた[88][89]が、のちのヒュギーヌスの『天文詩』やパウサニアースの『ギリシア案内記』[103]では2頭の馬は同一視されており、2つの伝承が混交したものと見られている[89]。
伝アポロドーロスの『ビブリオテーケー (古希: Βιβλιοθήκη)』では、翼を持つ馬ペーガソスは、ポセイドーンとメドゥーサの子[88][104][105][106]で、勇者ペルセウスがメドゥーサの首を切って倒したときにクリューサーオールと共に胴体から生まれ出たとされる[6][105]。そしてペーガソスはそのまま天に昇り、大神ゼウスの雷電の矢を運ぶ役目を負ったとされる[6][88]。日本では、ペルセウスがアンドロメダーを助けた際にペーガソスに乗って現れたように伝えられることがある[107][108]が、古代ギリシア・ローマ時代の伝承ではペーガソスとペルセウスの間に接点はない。
リュキア王イオバテースから怪物キマイラ退治の命を受けたベレロポーンは、ペイレーネーの泉で水を飲んでいたペーガソスを女神アテーナーから授かった黄金の手綱で捕らえ、自らの乗馬とした[6]。ペーガソスに乗ったベレロポーンは、空中から矢と槍でキマイラを打ち倒した[6]。やがて増長したベレロポーンは、神の仲間入りをしようとペーガソスに乗って天を目指したが、ゼウスの遣わした虻を嫌ったペーガソスに振り落とされ、墜死した[6]。ペーガソスはベレロポーンが墜死した後も天へ向かって飛び続け、ゼウスにより星座とされたとされる[88][89]。
エラトステネースの『カタステリスモイ』や1世紀初頭の古代ローマの著作家ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスの『天文詩 (羅: De Astronomica)』では、紀元前5世紀の詩人エウリーピデースの戯曲『メラニッペー』[注 4]に書かれた話として「この星座はケイローンの娘ヒッペーが婚外子の出産を父親に見られないようにするため神々に祈って変身した姿である」と伝えられている[88][89]。女神アルテミスは彼女の願いを聞き入れ、彼女を星座に変えるとともに、ケイローンを表すケンタウルス座[注 5]の視界にヒッペーの姿が入らないような天の領域に置いた、とされる[89]。
世界で共通して使用されるラテン語の学名は Pegasus、日本語の学術用語としては「ペガスス」とそれぞれ正式に定められている[109]。現代の中国では、飞马座[110](飛馬座[111])と呼ばれている。
明治初期の1874年(明治7年)に文部省より出版された関藤成緒の天文書『星学捷径』で「ペガシエース」という読みと「翼ノアル馬」という解説が紹介された[112]。また、1879年(明治12年)にノーマン・ロッキャーの著書『Elements of Astronomy』を訳して刊行された『洛氏天文学』では「ペガシュス」と紹介された[113]。30年ほど時代を下った明治後期には「ペガスス」と呼ばれていたことが、1908年(明治41年)7月に刊行された日本天文学会の会報『天文月報』の第1巻4号に掲載された「七月の天」と題した記事で確認できる[114]。この訳名は、東京天文台の編集により1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「ペガスス」として引き継がれ[115]、1944年(昭和19年)に天文学用語が見直しされた際も「ペガスス」が継続して使用されることとされた[116]。戦後も継続して「ペガスス」が使われ[117]、1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[118]とした際も Pegasus の日本語名は「ペガスス」とされ[119]、以降も継続して用いられている。
これに対して、天文同好会[注 6]の山本一清らは異なる読みを充てていた。天文同好会の編集により1928年(昭和3年)4月に刊行された『天文年鑑』第1号では、星座名 Pegasus に対して「ペガスス」の読みを充てた[120]。しかし、翌1929年(昭和4年)刊行の第2号ではこれを「ペガス」と改め[121]、以降の号でもこの表記を継続して用いた[122]。これについて山本は東亜天文学会の会誌『天界』1934年4月号の「天文用語に關する私見と主張 (2)」という記事の中でCentaurusやCepheusやPerseusや,Taurusや,Pegasus等の語尾のは,ラテン語の男性名詞を表はす語尾なのだから,此等を日本語に譯する場合には必ずしも性に囚われる必要はない.(元々,日本語には性の區別は無いのだから.)只,「センタウル」,「セフェ」,「ペルセ」,「牛」,「ペガス」で好いのである.
[123]と述べている。
日本各地に、α・β・γ・アンドロメダ座αの4つの星に対する呼称が伝わっている。静岡県御前崎市白羽で「シボシ(四星)」と呼ばれていたことが、1943年(昭和18年)の実地調査で確認されている[124][125]。また静岡県静岡市葵区清沢では「ヨツボシ(四つ星)」という呼称が伝えられていた[124]。また、四辺形の四隅に星があることに由来する「ヨツマボシ(四隅星)」という呼称が、埼玉県坂戸市入西・静岡県富士宮市淀師・御前崎市白羽に、「ヨスマボシ(四隅星)」という呼称が静岡県静岡市清水区河内に、それぞれ伝わっていた[124]。4つの星が形作る四辺形を枡に見立てた呼称としては、「マスボシ(枡星)」が富山県射水市大島に、「マスガタボシ(枡形星)」が新潟県胎内市中条・広島県賀茂郡に伝わっていた[124]。熊本県北部や新潟県村上地方では、ペガススの四辺形を枡に、アンドロメダ座β・γ・δの3星を柄に見立てた「サカマス(酒枡)」という呼称が伝わっている[124]。このほか、四辺形を狩猟で獲った動物の皮を木の板に張って乾燥させた姿に見立てた「カワハリボシ・カアハリボシ・カハリボシ(皮張り星)」などの呼称が静岡県静岡市各地に伝わっている[124]。
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