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音声のデジタルコピーを抑止するための技術、および同技術を導入した音声記録媒体 ウィキペディアから
コピーコントロールCD(英語: Copy Control CD, Copy Controlled Compact Disc)は、主にパソコンでのリッピングやデジタルコピーを抑止する目的で導入されていた技術、もしくはその技術を導入した音声記録媒体の総称である。CCCDと略される。コピープロテクトCD(英語: copy-protected CD)[1]、コピーガード機能付きCD[2]ともいう。
名称は通称であり、コンパクトディスク(CD)の規格としては扱われない。
2000年代、パーソナルコンピュータ(パソコン)の進歩によってCDの音楽データをパソコンにリッピングしたのち、音楽ファイルを再生して楽しめるようになった。一方で同時期のインターネットの普及に伴い、この音楽データをWinMXやWinnyなどのファイル共有ソフトに違法アップロードする著作権侵害行為も増加。
そのため、ソニー・ミュージックエンタテインメントでは音楽データの著作権侵害対策として、世界に先駆けて有料音楽配信サービス「bitmusic」を立ち上げ、他社もこれに追随していた。
しかし、当時の有料音楽配信サービス自体が発展途上であったことから、さらなる違法コピー対策が急務となる。当時の音楽業界は「ファイル共有ソフトを使用した違法コピーによって、CDの売上げが減少している」と主張し、オーディオ機器での再生が可能ながらパソコン上へのコピーが不可能な規格として開発が行われた。
主に音楽用CD-DAに含まれている楽曲情報(データ)をパソコン上で複製したり、リッピングできなくすることが目的であるが、実際には特定の環境でしかコピーコントロール機能の目的を達成できず、表面上は問題なく複製に成功してしまう環境や、コピー目的ではない音楽再生時にまで問題が発生してしまう環境が存在する。また、前述の通りCDの規格外であるため、厳密にはCCCDの正常な再生動作を保証した対応音響機器はほぼ存在しない。
2001年に欧米で発売され[3]、2002年(平成14年)から日本でも導入された[4]。
アメリカ国内で最初に発売されたCCCDは、2001年5月15日に発売されたチャーリー・プライドのアルバム『A Tribute to Jim Reeves』である[1][注 1]。また、メジャーレーベルではユニバーサルミュージックが同年に発売した『ワイルド・スピード』のサウンドトラック盤で初めて採用された[6]。
日本国内においては、エイベックスが2002年3月に採用した[4]ことを皮切りに他社が追随。初めて規格が用いられたのは同年3月13日に発売されたBoAのシングル『Every Heart -ミンナノキモチ-』(レーベルはエイベックス(AVCD-30339))[4][7]。アルバム第1号は同年3月20日に発売されたDo As Infinityのベスト・アルバム『Do The Best』(レーベルはエイベックス(AVCD-17110))[4]。また、2003年(平成15年)1月22日にはSMEが“レーベルゲートCD”(後述)と呼ばれるものを展開した[8]。
なお、日本国内で発売されているCCCDについては、2002年より日本レコード協会(RIAJ)がCCCD技術を使用したことを示すマークを付与するよう定めている[3]。ただし強制力はない[3]ことから、東芝EMI(現:ユニバーサルミュージック)がCDS-300方式によるセキュアCDに切りかえた際には、CDS-200およびレーベルゲートCDと比べ機器の挙動が異なることを理由に当該マークを付与していない。また、CDS-200方式の中でもビクターエンタテインメントのエンコードK2(ENC K2)とCCCDを合わせた「CCCD K2」は、独自のロゴのみであり当該マークは付与しておらず、RIAJに指定されたCCCDマークを付与している。またインディーズ系等の作品にもCCCDだった作品があったが、その作品すべてRIAJに指定されたCCCDマークを付与している。
CD再生時には毎秒数回の読み取りエラーが発生することから、レッドブックの仕様に「誤り検出訂正の目的でリード・ソロモン符号を埋め込む」と定められている。CDプレーヤーは再生時に常にこのデータに沿い読み取りエラーを訂正しているが、CCCDでは意図的に間違ったエラー訂正符号を記録しておくことによって、機能が正常に働かなくなることを狙ったものである。
多くのオーディオ用CDプレーヤーおよびアナログモードで動作中のCD-ROMドライブでは、訂正が不可能な状態であっても補正機能によって不自然ではない程度に予測補完して再生することが可能であるが、デジタルモードで動作中のCD-ROMドライブでは誤り訂正に成功するまで読み取りを一定回数再試行するため、元々の信号から変化してしまったものと誤認し正しく読み出すことができない(CD-ROMドライブを使用している一部のオーディオ用CDプレーヤーで、再生に不具合を生じるのはそのため)。これにより、音楽データをCDからパーソナルコンピュータにリッピングされるのを防ぐ。
この仕組みは、音響機器で再生された(アナログ信号に復号した)音楽を、コンピュータに音声入力してデジタル化することは防止できず、CD-ROMドライブによっては、音楽CDであればデジタルモード時でもアナログモード時と同様に補正機能が働く例がある。加えてWindows Media Playerなど取り込みに使用するソフトウェアによっては、デジタルモードでの取り込みに失敗した場合に、アナログモードに切り替えてオーディオデータをコピーすることが可能な場合があり、事実上コピー抑制の役割を果たしていないのが実情である。反対に音響機器の中にも、デジタルモードで動作中のCD-ROMドライブと同様に、エラー訂正を優先する実装がされているものがあるため、その場合は再生できないことがある。
なお、EUでの流通盤では、ミニディスクやDATへのデジタルダビングも禁止しているCCCDが存在していた。このタイプのコピーガードは、SCMSによる複製の制限を利用したものであり、レッドブックには違反しないため、他のCCCDで問題になっている再生上の不具合は発生しない。
「CD」と定義されるものは、前述のようにレッドブックで定められており、CDプレイヤーなどの再生機器は、その仕様に基づいて作られたCDを再生することを前提として設計されている。それに対し、CCCDの場合は各社様々な手法を取り、一般的にはCD EXTRAをベースにTOC改変・エラーセクタ挿入などの手法を取っている場合が多かった。詳細な構造は、仕様が非公開のため不明である。
音声記録領域とPCデータ領域が共存しているものにはCD EXTRAが存在し、CCCDもこれと一部共通した構造を持つ。そのため、エイベックスがCCCDを導入した時期はこれらが共存不可能であったため、いずれか一方のみが採用されていた。shelaやEvery Little Thingなどは、CCCDの回避目的でディスク内にPVなどのパソコン用特典データを収録したケースも存在する。その他、SMEのレーベルゲートCD2およびEMIのセキュアCDで出た製品の一部には、CD EXTRAとしての要件を満たさないエンハンストCD規格により、パソコン用特典データとコピーコントロールデータを共存させている作品もあった。
コピーコントロールが機能しているパソコンではCCCDが再生できないため、パソコン向けに専用の再生ソフトと音楽データを用意し、製作者の望んだ制限の元で再生可能なように処理されている場合がある。この機能はMicrosoft Windows専用で、Windows以外のオペレーティングシステムにおいてはサポートされていなかった。これらの再生ソフトは「ユーザーの同意を得ずに勝手に再生ソフトをインストールする」という仕様を持つ場合が多く、コンピュータ脆弱性の問題が取りざたされることにもなった(後述のセキュリティ問題を参照)。
Macintoshとの互換性については、帯や外貼ステッカーに「Macintoshでは再生できません」などと注意事項が記載されている。しかし実際の所、iTunesには読み込み時のエラー訂正オプションがあり、再生やCD-Rへの複製までも通常のCD同様に可能である場合がほとんどである。またMacintosh用のディスク管理ツール「Roxio Toast Titanium」でも、CCCDを無視して複製が可能であった。
なお2022年現在、MacはもちろんWindows 10・11環境で実行したiTunesにもCDの取り込み時「エラー訂正オプション」がありパソコンに取り込むことやCD-R/RWに焼くことが可能である。
ソニー・ミュージックエンタテインメントによって発売されたCCCDで、CCCD導入当初から抱えていた問題点の解決を図ると同時に「PC用の部分」をATRAC3データに置き換えたものである。
構造は1stセッションエリアと2ndセッションエリアに分かれている。
コピーコントロールCDでは、登場当初から多くの問題点を抱えていた。以下に挙げる。
前述のように「レッドブック規格から逸脱している」ため、CDプレーヤーを発売する製造企業側は「CCCDの再生は保証外」としている[12]。例えば、一時期ビクターエンタテインメントからCCCDでコンテンツがリリースされていた時期があったが、親会社の日本ビクター(現・JVCケンウッド)では自社製品での再生を保証していない。SMEでも同様で、親会社のソニーが販売するオーディオ機器では動作保証外としている[13]。このようにCCCDは再生が保証されない「CDと同形の円盤」となっている。
そのうえ、データの読み取り誤りを意図的に引き起こす方式から、制御機構への過剰な負担に加えてジッターの増加や誤り検出補正機能の作用によって、通常のCDよりも音質は悪くなる[要出典]。そのためジャズ、クラシックの様な再生時の音質における再現度が重要視されるジャンルでは、EMIグループを除いてCCCDの利用は少ない。またエイベックスでは、クラシック音源は原則SACDとCCCDのハイブリッドディスクでリリースしている。一方でエイベックス広報部は「CD-DAと比較して音質の劣化は一切見られない」と、各種媒体上で反論を見せた[14]。
さらに、再読出しするために同一セクタへの連続シークなどが発生するので、制御機構へ過剰な負担がかかることから、再生機器の製品寿命低下や動作不良を引き起こす可能性がある。これら故障は「音楽CDとしての仕様を満たしていないディスクの利用による故障」「ユーザーの故意の破損」と見なされてメーカー保証の対象外となり、有償修理または修理拒否となる可能性がある。
コピーガード技術についてはDVDで採用されている暗号化とは異なる。そのためディスク自体に細工をすることでプロテクト解除をしたり、ドライブによっては(機構面への負担を除くと)CD同様に読み出せるものもある。また、他の防止策と同様コピーを完全に防止することは事実上不可能のため、再生音質を向上させる、あるいは自分の再生機器で再生を可能にする目的として複製が行われることがある。
通常のCCCDとは異なり、PC用データを条件付きでコピー可能にすることが特徴だったレーベルゲートCDにも、以下のような問題点があったことから普及が進まなかった。
CCCD導入当初からアーティスト側にもCCCDに対して批判的な者は見られ、CCCD非導入レーベルから音楽CDを販売している者もいる。アーティスト側だけでなく、CCCDをリリースしているレコード会社のスタッフにも批判的な者が少なくなかった。
一方で、著作権保護を理由にCCCDを容認したミュージシャンもいた。しかし、これがいざ自らのCDがCCCDになってから音質の悪さに気付いて、あるいはファンからCCCDの抱える諸問題について手厳しい批判を受けて、ようやく問題視するようになったという者もまた数多かった。
アメリカ合衆国の大手レコード会社である、ソニー・ミュージックエンタテインメント (米国)がリリースしたCCCDに、マルウェア(コンピュータウイルス)であるrootkitの技術を取り入れていることが、セキュリティ会社の調査によって判明した。この事実を受け米国在住の男性が、ソニーBMGを相手取り訴訟に踏み切った。
その後、XCPの動作がコンピュータウイルスに利用された例が2005年(平成17年)11月10日に報告された。ソニーBMGは7日、コンピュータプログラムを削除はせず、機能停止するツールを公表したが、駆除ツールにバグがあり、不正なActiveXを実行し得る仕様になっていたことから、16日に公開を停止した。その後ソニーBMGは、該当コピーコントロールCDの回収・交換措置に踏み切った。日本のソニー・ミュージックエンタテインメントも自社が輸入した該当コピーコントロールCDの回収・交換を行う。
2003年(平成15年)度におけるオリコンチャート年間シングルチャートランキング1位となった、SMAPの『世界に一つだけの花』(ビクターエンタテインメント製)は、CD-DAだったが250万枚以上を売上げており、必ずしもCD売上の減少が、違法コピーによるものとは言い切れないことを裏付けた。逆に、CCCDを主導したエイベックスは、2004年(平成16年)3月の時点で、コピーコントロールCD発売前よりも売り上げを20%も落とす結果となった[要出典]。なお2003年の年間オリコンシングルチャートTOP10のうち、CCCDは1枚のみ、年間TOP20でも4枚だけだった[要出典]。
前述の通り、CCCDは多くの問題点を抱えたまま発売され、結果的にCCCDが抱える問題点の解決策を見出せなかったために、この種の方式を採用し続けてきたレコード会社に対して、購入者・ファンやミュージシャン側からの不満が続出した。
また、CCCDの登場段階以上にリッピング行為・iPodを代表とするデジタルオーディオプレーヤーが普及し、iTunes Music Storeの登場に音楽を聞く環境も変化していった。
CCCD導入の先陣を切ったエイベックスは、2004年(平成16年)9月22日以降発売の作品は「作品ごとにCCCDを採用するかどうかを決定する形へ緩和する」ことを発表し[21]、その後段階的に撤廃してCD-DAでのリリースに戻した。SMEも同年10月以降段階的に廃止し、同年11月17日以降に発売する新譜はすべて通常の音楽CDで発売すると発表した[22]。
エイベックスのCCCD撤廃は、当初販売用CDに対してのみ行われ、レンタル用・プロモーション用にはほぼ全面的に、あるいは販売用であっても一部のアニメ関連作品およびクラシック作品にはCCCDが導入されていたが、2007年(平成19年)1月以降は前述の一部のアニメ関連作品およびクラシック作品に加え、レンタル用にもCD-DAでの供給が開始されている(事実上のCCCD撤退)。
2005年(平成17年)7月27日には、SMEがレーベルゲートCDで発売したアルバム105タイトル、10月26日にもシングル190タイトルの計295タイトルがCD-DAとして再出荷されると同時にレーベルゲートCD商品はすべて廃盤となり、店頭からはほぼ消滅した。再販に当たって品番が変更されており、品番の古い物が廃盤になっている[23][24]。但し、レーベルゲートCDの中古およびレンタル版については回収の対象外となり、現在においても置き去りにされた状態である。また、複製サービスもLGCDは2006年(平成18年)11月30日に、LGCD2も2008年(平成20年)3月31日をもってそれぞれ終了した。
最後までCCCD推進の立場を崩さなかった東芝EMIは、その後もCCCD撤廃を検討せずセキュアCDなる新方式を採用し導入を続けていたが、2006年(平成18年)にCCCDでのリリースから事実上撤退し、2006年(平成18年)6月以降リリースは行われていない。
2024年(令和4年)6月現在、新譜でCCCDがリリースされることはなくなり、CCCDでリリースされた数々の多くの作品がそのまま継続販売されているのみである。
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