特別なイベントや目的のために走る貸し切り列車 ウィキペディアから
観光列車(かんこうれっしゃ)とは、鉄道事業者が観光を目的に運行する列車、およびその目的で保有している鉄道車両のことである。
同じ「観光列車」といっても、その定義は定義した者によって異なる。
大手旅行代理店・JTBのシンクタンクであるJTB総合研究所は、観光列車を「内外装を凝らし、味覚を楽しみながら旅行が出来るなど、乗ること自体を目的にした列車」と定義づけている[1][2]。一方で、奈良県立大学教授(交通経済学・交通政策・観光地交通)の新納克広は、日本民営鉄道協会の広報誌への寄稿の中で「観光客(目的が鉄道であるか否かにかかわらず)が利用する列車」全般を観光列車と広く定義づけ、観光客向けから車両そのものの観光へと、定義自体が変わったと述べている[2]。また、北海学園大学講師の藤田知也(交通経済学・地域経済学・観光経済学)は、上述の定義も踏まえた上で、「①主な利用者が観光客で、②観光資源を内包しており、③内装・外装のデザインが特徴的なもので、④固有の愛称を持ち、専用車両で運行している列車を(広義の)観光列車」と定義している[3]。
なお、同じく特別な内外装を持つ車両としてジョイフルトレインという呼称もあるが、前述の新納によれば、これは「団体旅行のサービスの一環」という点において観光列車とは趣を異にするものであるという[2]。但し、観光列車が団体列車として(ジョイフルトレインとして)運用されることもあり、両者の区別が曖昧なことから、鉄道趣味誌では両者を混同して扱うこともある[4]。
以上の通り、用語としての『観光列車』の定義がやや複雑なため、本項では事業者側が「観光列車」や類似の名称を用いたものを全て記載する。
初めて現在の意味の「観光列車」の呼称を用いたのは、1990年にJR東日本に登場した「ノスタルジックビュートレイン」である[5]。同列車はそれまでの「ジョイフルトレイン」と違い、ほぼ五能線でのみ運行された。同列車は好評だったことからその後「リゾートしらかみ」として引き継がれ、2000年代に入るとJR東日本の他路線でも「きらきらうえつ」「きらきらみちのく」といった追随例が生まれたほか、JR北海道やJR西日本などでも同様の列車が運行され始めた。
2010年代には利用客の増加や沿線観光地の振興を目的に、地方私鉄でも相次いでこうした列車が生まれた。 また、JRでは「伊豆クレイル」や「伊予灘ものがたり」など全車グリーン車の列車が複数登場し、豪華志向を楽しむ新たな方向性の事例も出てきている。
JRの旅客各社ではすべて「観光列車」と呼ばれる列車を運行している。このうちJR北海道とJR東海以外の4社は列車一覧のポータルサイトを設けるなど、体系化して旅客に案内している。また、JR東日本とJR九州では「観光列車」の呼称を補助的に用いつつも、独自のカテゴライズを行っている。
1997年から「ノスタルジックビュートレイン」に代わって五能線で運行されている観光列車。「青池」「橅」「くまげら」の3編成が存在し、HB-E300系気動車(青池・橅)またはキハ48形気動車(くまげら)の4両編成で運行されている。
1999年から磐越西線で運行されている観光列車。2008年に「SLばんえつ物語号」から改称された。C57形蒸気機関車が12系客車7両編成を牽引する形で運行されており、のってたのしい列車で初めてグリーン車を連結している。
2010年から長野地区(信越本線・篠ノ井線・大糸線)で運行されている観光列車。HB-E300系気動車の2両編成で運行されている。
2012年から大船渡線で運行されている観光列車。キハ100形気動車の2両編成で、「ポケモントレイン気仙沼号」で運行されている。車両は2017年にリニューアルされた。
2013年から八戸線で運行されている観光列車。団体専用列車扱いで一般発売はない。キハ110系気動車の3両編成で、食堂車を連結する。
2014年から新潟地区で運行されている観光列車。一般の指定席と旅行商品専用席があり、それぞれ発売が分かれている。キハ40形・キハ48形気動車の3両編成で、「越乃Shu*Kura」「ゆざわShu*Kura」「柳都Shu*Kura」の3系統が存在する。
2015年から飯山線で運行されている観光列車。キハ110形気動車の2両編成であるが、定期普通列車と共通運用するために吊り革や優先席といった装備を維持している。
2017年から小海線で運行されている観光列車。キハ103形・キハ112形気動車の2両編成で、日中の「HIGH RAIL」および夜間の「HIGH RAIL 星空」として運行されている。なお、通常より高額な指定席料金が適用される。
2018年から上越線(高崎駅 - 水上駅)で運行されている観光列車。列車自体は1989年から「SLみなかみ」として運行されていたが、2018年に現名称に改称され、のってたのしい列車に編入された。C61形蒸気機関車またはD51形蒸気機関車が旧型客車または12系客車を牽引する形で運行される。水上駅到着後に構内の転車台で方向転換を行い、SLのみで往復運転される事が多い。
2018年から信越本線(高崎駅 - 横川駅)で運行されている観光列車。列車自体は1999年から「SL碓氷」として運行されていたが、2018年に現名称に改称され、のってたのしい列車に編入された。終点の横川駅に転車台がない関係上、往路の下り列車はEF64形電気機関車またはDE10形ディーゼル機関車、復路の上り列車は「SLぐんま みなかみ」同様にC61形ないしD51形による牽引で運行される事が多い。下りの電気・ディーゼル機関車牽引の場合はそれぞれ「ELぐんま よこかわ」「DLぐんま よこかわ」の列車名が使用される。
2018年から両国駅を拠点に房総地区で運行されている観光列車。209系電車の6両編成で、自転車を搭載できる構造である。通常より高額な指定席料金が適用される。
2019年から「きらきらうえつ」に代わって羽越本線で運行されている観光列車。HB-E300系気動車の4両編成で、通常より高額な指定席料金が適用される。
2023年から青森県・岩手県内で運行されている観光列車。HB-E300系気動車の2両編成で、のってたのしい列車ではSLばんえつ物語以来となるグリーン車を連結している。
2024年から宮城県・福島県・山形県内で運行されている観光列車。HB-E300系気動車の2両編成で、グリーン車を連結している。
日本国有鉄道(国鉄)時代の1979年から山口線で運行されている観光列車。C57形蒸気機関車もしくはD51形蒸気機関車の牽引で運行される。客車は当初12系であったが、2017年からは本列車専用に新造された35系5両編成が使用されている。
2015年から七尾線で運行されている観光列車。キハ47形気動車の2両編成である。JR西日本の他の列車と異なり、種別は特急となっている。
2015年から氷見線・城端線で運行されている観光列車。キハ40形気動車の1両単行運転である。日によって城端駅まで運行する便と氷見駅まで運行する便を分けている。
2016年から岡山駅を中心に瀬戸内海沿岸各地で運行されている観光列車。213系電車の2両編成で、全車グリーン車指定席である。目的地別に四つの系統が設定されており、一部で自転車を積み込んで利用することができる。
2018年から山陰本線の鳥取県・島根県内で運行されている観光列車。キロ47形気動車の2両編成で、全車グリーン車指定席である。
2019年から城崎温泉駅を中心に運行されている観光列車。キハ40形気動車の1両。定期普通列車での運転で、運行区間は日によって異なっている。車内は一部が窓向きのカウンター席に改造されている。
2024年から西日本エリア各地で運行されている観光列車。キハ189系気動車の3両編成で、全車グリーン車指定席である[12]。
2000年から四国各地で運行されている観光列車。「土讃線アンパンマン列車」「予讃線アンパンマン列車」など4系統の総称であり、運行区間や列車種別や使用車両などは様々である。
2011年から予土線で運行されている観光列車。後述の「しまんトロッコ」「鉄道ホビートレイン」とともに「予土線3兄弟」と呼ばれる。キハ32形気動車を改造した1両で、定期普通列車で運行される。2016年からはラッピングを更新した「かっぱうようよ号」の愛称を使用している。
2013年から予土線で運行されている観光列車。「予土線3兄弟」のひとつ。トラ45000形貨車を専用塗装のキハ54形気動車が牽引して運行する。
2014年から予讃線で運行されている観光列車。後述の「四国まんなか千年ものがたり」と「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」とともに「ものがたり列車」と呼ばれる。全車グリーン車指定席である。車両は当初キロ47形気動車の2両編成であったが、2022年4月より二代目としてキロ185系・キロ186系気動車の3両編成が使用されている。
2014年から予土線で運行されている観光列車。定期普通列車で運用され、「予土線3兄弟」のひとつ。キハ32形気動車の1両で、0系新幹線の部品や0系を模した装飾が施されている。
2017年から土讃線で運行されている観光列車。「ものがたり列車」のひとつ。キハ185系気動車の3両編成で、全車グリーン車指定席である。
2020年から徳島線で運行されている観光列車。キハ185形気動車とキクハ32形気動車の2両編成で、キクハ32形はオープン構造である。
2020年から土讃線で運行されている観光列車。「ものがたり列車」のひとつ。キハ185形気動車の2両編成で、全車グリーン車指定席である。
1989年から久大本線で運行されているD&S列車。キハ71系気動車・キハ72系気動車の2編成による運行である。特急列車。
2009年から日南線で運行されているD&S列車。廃線となった高千穂鉄道から譲渡された気動車を利用したキハ125形の2両編成で、それぞれ「海幸」「山幸」の愛称がある。
2011年から豊肥本線で運行されているD&S列車。キハ183系気動車4両編成である。全車普通車扱いであるが、パノラマシートなど一部の座席で高額な料金設定となっている。
2011年から指宿枕崎線で運行されているD&S列車。キハ47形・キハ140形気動車による3両編成であるが、2両編成で運行することもある。
2011年から三角線で運行されているD&S列車。キハ185形気動車による2両編成。
2015年から九州各地で運行されているD&S列車。車内でコース料理を味わいながら移動するもので、車両はキロシ47形気動車による2両編成。他の列車と違い団体専用列車扱いで、一般発売はされていない。
2017年から肥薩線で運行されているD&S列車。キハ47形気動車による2両編成で、それぞれ「かわせみ」「やませみ」の愛称が付けられている。
2020年から九州各地で運行されているD&S列車。食事付きで1日かけて移動するもので、多くは個室席である。車両は787系電車による6両編成で、全車グリーン車指定席である。
2022年から長崎本線・大村線で運行されているD&S列車。主に土休日を中心として、午前は武雄温泉→長崎(長崎本線経由)、午後は長崎→武雄温泉(大村線経由)で運行されている。車両はキハ40形・キハ47形気動車による3両編成で、「はやとの風」および「いさぶろう・しんぺい」(予備車)から改造された[13]。
2024年から久大本線で運行されているD&S列車。車内で料理を味わいながら移動するもので、車両は2R形気動車(キハ47形気動車「いさぶろう・しんぺい」およびキハ125形気動車から改造)による3両編成。他の列車と違い団体専用列車扱いで、一般発売はされていない。
地域別に記載する。車両に対する呼称の場合と列車に対する呼称の場合が存在するが、ここでは特に区別しない。また、観光列車に類似する名称のものも含む。
なお、地元観光局やニュースサイトが独自に「観光列車」と称しているものもあるが、ここではあくまで事業者側が呼称するもののみ記載する。
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