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緊急自動車の一つ ウィキペディアから
日本における救急車(にほんにおけるきゅうきゅうしゃ)は、消防車やパトカーと同様の緊急自動車の一種で、車内に傷病者を収容し緊急走行で病院などの医療機関まで搬送する車両を指す。ドクターカーも救急車の一種である。消防法施行令上の正式名称は救急自動車(きゅうきゅうじどうしゃ)。
現在は高規格準拠の3車種(トヨタ・ハイメディック、日産・パラメディック、札幌ボデー・トライハート)が「高規格準拠救急自動車」または「高規格準拠救急車」として販売されている[注釈 1]。
日本の救急車は以下の6つに大別され、所属している組織によって、配備の目的や車内の装備、管轄省庁などが異なる。
(各社現行型高規格準拠救急車詳細は後述の国産高規格準拠救急自動車一覧を参照)
消防法施行令第44条で救急車は「救急自動車」と表記され、特種用途自動車の緊急自動車の形状例示では「救急車」と表記されている。道路交通法施行令第13条では緊急自動車の指定を受けることができる自動車として「国、都道府県、市町村、関西国際空港株式会社、成田国際空港株式会社又は医療機関が傷病者の緊急搬送のために使用する救急用自動車のうち、傷病者の緊急搬送のために必要な特別の構造又は装置を有するもの」を挙げている。
車体の色は道路運送車両法で白色と定められている。車体横のラインは法律の定めはなく、赤色のラインが引かれているのが一般的であるが、青色[注釈 8] 又は黄緑色[注釈 9] のラインが引かれている車両もあるなど、ラインの色やデザインは地方自治体ごとに異なる。例えば、札幌市消防局の場合は色帯を「Sapporo」の頭文字である「S」のモチーフに変形させたものや、大阪市消防局[注釈 10] を含む一部の地方自治体では、赤色のラインが無い車両もある。
車両上部に赤色警告灯(側面や後部に補助警告灯として高輝度LEDを用いたものが設置されている)やスピーカー、消防無線機などを備えている。
ピーポー音サイレンは、1970年(昭和45年)に保安基準に適合しているか運輸省に照会して認可された法令上正式な救急車サイレン音である[12][18]。近年では、交差点進入時などに補助警告音として使用されるモーターサイレン「ウー」音に加えて、交差点進入用「ウー」音サイレン・Yelp音サイレン(大阪サイレン製サイレンアンプ)や交差点進入用「ウー」音サイレン(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント製サイレンアンプ)、独自開発された交差点進入用サイレン・渋滞通過用サイレン(パトライト製サイレンアンプ)などを装備する車両が増えている。Yelp音は日本の法令上正式なサイレン音として認可されておらず、公道でのYelp音単独吹鳴は違法[注釈 11][注釈 12] となってしまうため、必ず正規の「ピーポー」音と同時に吹鳴して、保安基準に適合させる仕組みとなっている。
デザインは所属・隊名の他に、スター・オブ・ライフや消防本部または市町村章のマーク、オリジナルキャラクター、火災予防や救命講習の呼びかけなど、多種多様である。車両前部に“救急”の表示を左右反転させ鏡文字にしている車両があるが、これは走行中の一般車両が後方から接近する救急車をバックミラーで容易に認識させるためで、ヨーロッパ[注釈 13] などで一般的である。空港近くの消防署・出張所に配置されている救急車に、空港構内へ進入して航空機のすぐ近くへ接近するために、空港構内専用のナンバープレート「ランプパス」を登録した車両もある。
日本の地方自治体が救急車を購入する場合、一般的に競争入札で購入する。納入までの主な手順は次の通り。
消救車(しょうきゅうしゃ、正式名称:消防救急自動車)は、それまで別々に出動していた消防自動車と救急自動車の両方の機能を持つ車を配備することに目指して開発された車である。
救急救命士が車内で迅速に救命処置ができ、医療器具などを無理なく搭載できる「高規格救急車」を1991年(平成3年)に規格化することになったが、 当時、日本の自動車メーカー製高規格救急車は開発途中で未販売だった為、外国製をベースにした車両を政令指定都市に先行導入した
東京消防庁に配備されている「特殊救急車:スーパーアンビュランス」(京成自動車工業・ヨコハマモーターセールス製造)に代表される大型車のことである。
自衛隊の車両はおおむね陸上自衛隊と海上自衛隊がOD色、航空自衛隊は紺色だが、現在は3自衛隊において白色の車両も導入されている[48][49]。 災害派遣で出動するのは 1トン半救急車と呼ばれる緊急車両で、一般車と比べて悪路走破能力などの高機動性に優れており、多くの(ベンチ席の場合は8名、担架搬送患者の場合は4名)の傷病者を一度に救急搬送できる[50][出典無効]。 陸自 衛生科では、手術車・手術準備車・滅菌車・衛生補給車の4台で構成される野外手術システムを各部隊に配備している。
また海自・空自は海難・航空機事故に備えて、高規格救急車の配備を進めている。
医療機関が所有する救急車は、患者容体の急変や専門外の治療など他施設へ転院搬送を要する患者の救急搬送に主に使用される車両である。「病院救急車」は俗称で、法令上の正式名称は消防と同じく「救急自動車」である。
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空港の救急車は、海外から我が国に入ってくる感染症(伝染病)患者からの病原体拡散や2次感染の拡大を防止するため、患者を収容・搬送することを第一の目的としている。
人工呼吸、心臓マッサージなどの他に、現在では救急救命士の免許取得後一定の講習を修了した「気管挿管(きかんそうかん)認定救急救命士」によって、気管挿管で呼吸の確保が行える、自動体外式除細動器(AED)の発達により電気的除細動を医師の指示なしに行うことも可能になっている。2006年(平成18年)4月からはやはり講習修了済みの「薬剤投与認定救急救命士」によって、アドレナリンの投与が可能になった。
多くの場合、救急隊長、機関員(運転手)、救急隊員(救急救命士資格者の場合もある)の3名で構成され、午前9時から翌日午前9時までの24時間勤務である。従って、1台の救急車を維持するために3交代とする必要上3個隊9名が必要であり[注釈 40]、救急の専属でなく、消防隊(ポンプ・梯子)・救助隊との兼任で隊員資格を取得させ要員を確保している救急隊もある。
総務省消防庁によると近年救急車の出場回数は増え続け、2022年の救急車による救急出動件数は、前年比16.7%増の722万9838件となり、1963年の集計開始以来の最多を更新、初めて700万件を突破した。搬送された人の数も、同13.2%増の621万6909人で最多を更新した[67]。
連続的な救急出動による救急隊員の疲労が原因みられる事故も発生している。2022年12月には東京都内で居眠りが原因とみられる救急車の横転事故が、2023年8月には三重県内で注意力散漫が原因と見られる電柱への衝突事故が発生した[68][69]。
こうした事態を受け、総務省消防庁は、適切な労務管理を通じて出動回数や走行距離を基に負担が一部の隊員に偏らないよう配慮を要請[70]。全国の消防本部では救急隊員によるコンビニや病院での食事休憩への理解を求める動きが広まっている[71]。
こうした救急需要増加への対応として、以下のような救急隊が運用されている。
日中の救急需要が多い地域での現場到着時間の短縮を目的として、運用を平日の日勤時間帯(8時30分から17時15分)に限定した救急隊。日勤救急隊、機動救急隊、日勤機動救急隊と呼ばれる[72][73]。24時間勤務の難しい、出産や育児などで休職していた救急隊員らの復職を促し、潜在的な救急資格保有者の有効活用につなげる目的もある[74]。
東京消防庁では、2019年5月に池袋消防署で運用を開始し、2021年10月に、荏原消防署・金町消防署・板橋消防署の3署にも設置された[75]。同様の取り組みは宮城、群馬、神奈川、静岡、長崎などでも導入されるなど全国に拡大している[76][77][78][79][80]。
機動救急隊、日勤機動救急隊では日勤時間帯の運用に加え、救急需要の分析・予測結果に基づき、救急事案多発エリアに能動的に移動待機する[81]。
救急隊の現場到着時間の短縮を実現させる取組のひとつとして、時間帯などによって変化する救急需要に応じて待機場所を変更し、素早く救急需要に対応する救急機動部隊。 東京消防庁で2015年6月から運用を開始した。通常は消防署に待機する救急車をあらかじめ駅などに配備し、一刻も早く隊員が現場に駆け付けられるようにする。消防施設や病院以外に配置するのは全国初とみられる[82]。4隊の救急隊が、日中は観光客などによる救急要請が多い東京駅エリア・世田谷エリア、夜間は繁華街からの救急要請が多い六本木エリア・新宿エリアに移動して対応する。多数の傷病者が発生するなどの特殊な災害や感染症傷病者にも対応している[83]。
「虫歯が痛む」「深爪した」「病院まで歩くのが苦痛」などの、救急車を出動させる必要のない不適切な要件でいわゆるタクシーのような利用を含む軽症事案を事実上拒否できないことが大きな要因とされる。そのために本当に救急車が必要な症状のケガ人や病人を搬送するための救急車が足りない、サイレンが騒音公害になる(詳細は後述)など多くの問題が発生している。
消防庁は救急車出動の有料化を検討し、国民の間では40%が有料化に賛成、50%が反対している[84][85]。一定の条件の下で民間の患者搬送車に緊急自動車認定をおろすことも検討されている。自治体によっては使用の基準の広報活動や緊急性の薄い患者は民間患者搬送車への紹介等を行っている。悪質な患者と判断できるケースの場合偽計業務妨害罪が成立することもあり過料他罰則を設定する自治体もある。
救急車の出動回数が増えているのは前述の通りで、本来非常時にのみ運用されるべきはずであった緊急走行が現在では慢性的に行われ、サイレンが市民生活に与える影響もそれに伴い増大している。サイレンが人々に負担を与えるものであることが住民意識調査により示されている[86]。救急車がうるさいという事象は、歌謡曲の歌詞にもなっている[87]。一方、消防庁側は新たに騒音対策を検討する予定はないとしている。そのため、騒音を巡る住民とのトラブルとして、搬送中の救急車に自転車が投げつけられる[88]など事件に至るケースもある。
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