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防衛省が設置及び運営する病院の総称 ウィキペディアから
自衛隊病院(じえいたいびょういん)とは、防衛省が設置・運営する陸・海・空自衛隊の共同機関であり、自衛隊中央病院や陸海空幕僚長を通じて指揮監督を受ける自衛隊地区病院の総称。共同機関以外に防衛省が設置する病院として防衛医科大学校病院がある。
自衛隊病院は自衛隊法第24条第5項及び自衛隊法施行令第49条の規定に基づき、自衛隊中央病院及び自衛隊地区病院の組織等に関する訓令(防衛庁訓令第16号)で組織が定められている[1]。具体的には陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊の共同の機関として、自衛隊中央病院と陸・海・空それぞれの幕僚長を通じて指揮監督を受ける自衛隊地区病院(10病院)が設置されている。
なお、以下では、自衛隊中央病院及び自衛隊地区病院の組織等に関する訓令に関しては「訓令」として記載する。
自衛隊病院は一般の病院とは異なり有事に発生する負傷者等の収容等を想定しているため病床数等には余裕を持つ必要があるとされている[2]。
自衛隊病院では、基本的に利用対象者を防衛省職員とその家族、つまり自衛官診療証保有者[3]と防衛省共済組合の被保険者に限定している。ただし、中央、札幌、福岡の3自衛隊病院では、2006年10月から、前述の防衛省職員・家族以外の一般外来受診を開始し、その後、防衛医科大学校病院、自衛隊横須賀・富士・阪神[4]も一般外来受診を行っている。
陸海空の管轄に関わりなく最寄の病院で受診できる。各基地や駐屯地からは職員送迎のための車両が定期運行されている[注 1]。
また、防衛省(旧防衛庁・防衛施設庁を含む)及び自衛隊を退官した者も診察券を所持していれば受診が可能である。ただし、一般外来受診を行っている自衛隊病院以外では、退官後も継続して防衛医官を主治医とする治療が必要と判断された場合に限定され、それ以外の場合は受診できない。
院内で診察・治療・看護・研究等にあたる者も同様に防衛省職員である。すなわち、自衛隊病院の医師・歯科医師のほとんどが自衛官(防衛医官)であり、看護師も多くが隊内で養成した自衛官である。病院長は将または将補、もしくは1佐の階級にある自衛官並びに医療職技官をもって充てられる。具体的には、自衛隊中央病院では将から防衛技官に転官した医官が、那覇病院では医官たる一等陸佐が充てられる。
自衛隊中央病院では、防衛医科大学校と連携して医師臨床研修を受け入れており、中央病院、横須賀病院、入間病院では歯科医師臨床研修の受け入れも行っている。ただし、臨床研修の対象を自衛官(防衛医官)採用者に限っている。
なお、自衛隊病院(中央病院と地区病院)の円滑な管理及び運営に係る基本的事項について審議するため、防衛省に自衛隊病院管理・運営委員会が設置されている(訓令第87条)[1]。
自衛隊中央病院の指揮監督は防衛大臣が陸上幕僚長を通じて行うが(訓令第1条第1項)、統合幕僚監部の所掌事務に係るものにあっては統合幕僚長を通じて行うものとされている(訓令第1条第3項)[1]。
中央病院の病院長は、陸将、海将若しくは空将又は技官をもって充てる(訓令第3条第1項)[1]。病院長には各自衛隊の医官(自衛官)から転官した防衛技官が就任している。
1988年(昭和63年)4月8日、陸上自衛隊地区病院(7院)[5]、海上自衛隊地区病院(5院)[6]、航空自衛隊病院(2院)[7]を共同機関化し、自衛隊地区病院が開設された[8][9]。
2022年現在、10病院(陸:7院、海:2院、空:1院)が設置されている。
各方面隊に1病院(西部方面隊のみ3病院)が設置されている。
かつて存在した病院
海上自衛隊員の集中する主要な基地は、地方総監部の所在地となっているので、各地方総監部所在地に1つずつ、海上幕僚長を通じて指揮監督を受ける自衛隊地区病院が置かれていたが、2022年(令和4年)3月17日、横須賀、呉病院以外は地方隊隷下の衛生隊「診療所」に縮小改編された。
かつて存在した病院
2022年(令和4年)3月17日、航空自衛隊では病院を入間病院に集約し、他の病院は診療所への縮小改編及び陸上自衛隊に移管された[24]。
かつて存在した病院
自衛隊の前身である警察予備隊には、4つの野戦病院、3つの後送病院、2つの移動外科病院があったものの、野戦病院的な性格が強かったため本格的な病院として1951年(昭和26年)に病院計画が策定された[28]。
2009年(平成21年)8月28日の「自衛隊病院等在り方検討委員会」報告書では、医官等の低充足などによる衛生支援への影響、病床利用率の低さなどに起因する医官等の医療技術の維持・向上の制約、医療設備等の老朽化・陳腐化などの問題が指摘された[40]。また、2008年(平成20年)7月1日には財務省から「平成20年度予算執行調査の調査結果」で収支等について指摘を受けた[40]。防衛省でも平成21年に自衛隊病院の運営について、収支比率が著しく悪い病院では病床数が少ないなどとする分析結果(20年度予算執行調査を基に、全国に16ある自衛隊病院の19年の病床規模別の収支比率などを試算して財政制度等審議会に提出されたもの)を公表した[41]。
2009年、防衛省は全国に16カ所ある自衛隊病院を10カ所に集約した上で、現在は一部に限定している自衛隊関係者以外の一般国民の利用をすべての病院で認めることを決めた[42][40][43]。2022年(令和4年)3月17日に以下の再編が行われた[44][45][14]。これにより、10病院(陸:7院、海:2院、空:1院)へ再編された。
自衛隊病院は総合病院に匹敵する診療科を備える病院がほとんどであるが、利用者が自衛隊関係者に限定されていることに加えて、有事に負傷者を収容することを前提として、常に一定の空きベッドを確保して運営されている。非効率な運営を改めるため、2008年に財務省が一般開放などを要請し、防衛省も患者が増えることは医官の技術向上にも役立つとして、2008年11月に省内に委員会を設け見直し作業を本格化させていた。委員会では、いくつの病院を一般開放するか、地元医師会の意向も聞きながら検討。既に開放している病院でも利用率が上がらない(中央病院でさえ平成16年度外来患者数が延べ約13万人と、同規模の公私病院の約2分の1の患者数:平成17年度政策評価書)ことから、どうすれば一般患者が使いやすい病院になるかや、地元の医療機関との連携も模索している。
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