本稿では東京大学 の建造物 (とうきょうだいがくのけんぞうぶつ)について解説する。
日本 で初めて設立された当時としては近代的な大学 である東京大学において、明治 以降の日本における教育史 を象徴する数多くの建造物が関東大震災 や東京大空襲 などによる被害から免れ、残存している。そのため、重要文化財 や登録有形文化財 となっている建築物も多い。さらに指定までは受けていないものの建築関係者に評価の高い建物などもある。本記事では、重要文化財や登録有形文化財となっている建築物を中心に東京大学のキャンパス 内に現存している、もしくはしていた建造物に関して歴史的意義などを踏まえながら解説を行う。
弥生キャンパス
弥生キャンパス3号館
1937年 完成。設計は内田祥三。弥生キャンパス の正門である。2003年 3月23日 に改修され、2005年 に門灯も復元された。なお、弥生門は本郷キャンパスの門であり、弥生キャンパスとは関係がない。
1930年 完成。設計は内田祥三。農学部正門を入って右手にある。
1936年 完成。設計は内田祥三。農学部正門を入って左手にあり、農学部1号館と対をなしている。
東京都選定歴史的建造物。1941年 完成。設計は内田祥三。農学部正門を入って正面にある。農学部 の事務室は農学部3号館内にある。地下には東大生協の店舗・食堂が設置されている。
浅野キャンパス
浅野キャンパス南部にある。2003年 にタケダ理研工業株式会社(現株式会社アドバンテスト )の創業者武田郁夫 の寄付により建設された。東京大学の建造物で個人名がつけられたのは武田先端知ビルが初めてである(安田講堂は正式名称ではない)。内部は、工学系研究科、大規模集積システム設計教育研究センターが使用している。
駒場IIキャンパス
先端科学技術研究センター13号館
駒場IIキャンパス にも内田ゴシックの建物がいくつか残っている。
旧航空研究所 風洞部研究室。1928年 完成。設計は内田祥三、清水幸重。
旧航空研究所本館。登録有形文化財。1929年 完成。設計は内田祥三、清水幸重。
旧航空研究所発動機部研究室。1930年 完成。設計は内田祥三、清水幸重。
2006年 完成。柏キャンパス 西端にあるS字形の建物である。柏キャンパスの他の建物と違って、外壁が青緑色になっている。また、環境への配慮がなされており、2007年 に日本建築家協会環境建築賞優秀賞、千葉県 建築文化賞を受賞した。新領域創成科学研究科 環境学研究系の各専攻が利用している。
2022年 9月から2023年 春にかけて順次竣工した。UTSSI(University of Tokyo Sports Science Initiative、東京大学スポーツ先端科学連携研究機構 )の拠点であり、丸和運輸機関 の社会人ラグビー部「AZ-COM丸和MOMOTARO'S 」の練習グラウンドとしても使用されている。
1937年 完成。設計は内田祥三。
隣接する国立保健医療科学院 (旧:国立公衆衛生院 )白金庁舎も内田祥三の設計であり、ロックフェラー財団の寄付により1940年 に建設された建物であるが、国立保健医療科学院は2002年4月に埼玉県 和光市 に移転し、解体される可能性が出てきた。そこで、2009年3月に港区 が建物と敷地を取得し、2018年 11月1日に区立郷土歴史館を中心とする複合施設「ゆかしの杜」に生まれ変わった[19] 。
医科学研究所1号館
医科学研究所1号館
医科学研究所1号館
旧国立公衆衛生院
理学系研究科附属植物園 (小石川植物園)内には、以下の歴史的建造物がある。
1939年 完成。設計は内田祥三。内部は植物分類学 などの研究室 がある。関係者以外は立ち入りできない。
1919年 に理学部植物学教室教授柴田桂太 により小石川植物園内に設立された東京帝国大学理学部植物生理化学実験室であり、1934年 まで使用されていた。設計は東京帝国大学営繕課。2005年 に改修された。内部は一般公開されている。
旧東京医学校 本館。国の重要文化財。1876年 完成。東京大学に現存する建物としては最古のものである。1877年 の東京大学設立後は医学部本部棟として使用されていた。当初は鉄門の近くにあったが、1911年 に規模を縮小して赤門脇に移築された。さらに1965年 に解体され、1969年 に小石川植物園内に再建された。2001年 11月 より総合研究博物館の分館として一般公開されている。
小石川植物園本館
柴田記念館 外観
柴田記念館 館内
総合研究博物館小石川分館
国立天文台第一赤道儀室
登録有形文化財。1921年 完成。国立天文台は現在東京大学とは別の組織であるため、正確には東京大学の建造物ではないが、東京帝国大学営繕課が設計した建物であるため、本記事で紹介している。ドーム内にはカール・ツァイス 製の望遠鏡 が設置されている。国立天文台三鷹キャンパス も参照。
注釈
365日24時間車両や人の出入りがあるため、門で閉ざしておく必要がないため。
ただし経済学部便覧には、改装されていない7教室や6教室のある部分が「別館」と表記されている。
出典
「伝アインシュタイン・エレベーター 」『東京大学理学系研究科・理学部ニュース』第46巻第4号、東京大学大学院理学系研究科・理学部、2014年11月20日、4頁、2021年11月8日 閲覧 。
「理学部4号館第1期工事完成 」(pdf)『東京大学理学部広報』第1巻第11号、東京大学理学部、1969年9月8日、9頁、2021年11月9日 閲覧 。
「理学部7号館の竣工について 」(pdf)『東京大学理学部広報』第18巻第4号、東京大学理学部、1987年3月、35頁、2021年11月9日 閲覧 。
赤松秀雄「化学新館完成によせて 」(pdf)『東京大学理学部広報』第15巻第1号、東京大学理学部、1983年5月、4頁、2021年11月9日 閲覧 。
大久保修平「三四郎の置土産 ~重力基準点 」『東京大学理学系研究科・理学部ニュース』第41巻第3号、東京大学大学院理学系研究科・理学部、2009年9月20日、7頁、2021年11月9日 閲覧 。
「化学新館竣正式典 」(pdf)『東京大学理学部広報』第15巻第1号、東京大学理学部、1983年5月、1頁、2021年11月9日 閲覧 。
牧島一夫「《はじめに》理学部旧 1 号館の記憶 」『東京大学理学系研究科・理学部ニュース』第45巻第4号、東京大学大学院理学系研究科・理学部、2013年11月20日、14頁、2021年11月9日 閲覧 。