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人間の活動により意図的または偶然に導入された種 ウィキペディアから
外来種(がいらいしゅ)とは、人間の活動によって他の地域から存在していなかった地域へ持ち込まれた生物のこと[1]。アレロパシーが強い植物など、その一部は生態系や経済に重大な影響を与える際には、環境問題のひとつとして扱われる[2]。
類義語に移入種、帰化種、侵入種、外来生物がある。英語では「introduced species」や「alien species」や「invasive species」という。ただし「invasive species」については、在来種(後述)でありながら、人為的な影響によって分布域の爆発的な拡大や生息(生育)数(個体群)が激増し、 生物多様性および生態系サービスへ悪影響を及ぼしている種に対して「native invasive」という呼び方もする場合もある。英語表記において最も誤解が少ないのは「Invasive Alien Species」(侵略あるいは浸潤的外来種)である。
外来種に対し、従来からその地域で生息・生育するものは在来種と呼ばれる。在来種は、環境に害を与えていない場合が多い。[要出典]。
人類は15世紀中期の大航海時代以降、世界を自由に行き来するようになり、その過程で多種多様な生物を移動させてきた。こうした人間活動によって新たに分布を拡大させた生物に対し、イギリスの生態学者チャールズ・エルトン(Charles S. Elton)は1958年に著書『The Ecology of Invasions by Animals and Plants(侵略の生態学)』のなかで学問のテーマとして外来種問題を大きく取り上げた[3]。
今や外来種は地球上のありとあらゆる環境に侵入している。ハワイでは生息している生物のうち外来種が25 %を占める[4]。また、モーリシャス島では植物について在来種よりも外来種のほうが種類が多く、ロドリゲス島にいたっては在来種の約2.3倍もの種類の外来種が生息している[4]。ニュージーランドでは在来の陸生哺乳類は2種しかおらず、一方で外来の陸生哺乳類は34種も定着している[4]。アメリカ合衆国における外来種に関する経済費用(防除などの活動も含む)は1,370億USドルと算出されている[5]。
日本に定着している外来種は2,000種を超えるといわれており、そのうち4分の3は植物が占める[6]。17水系19河川で実施された植生調査では、確認された全植物種数のうちの13.6 %にのぼる280種の外来植物の分布が明らかとなった[7]。
こうした外来種の拡大が進むにつれ、学術誌に発表された外来種に関する論文は1990年代後半以降に急増するようになった[8]。現在では外来種の問題は環境問題のひとつとして認識されており、さまざまな取り組みや研究が世界中で行われている。
外来種をより正確に定義すると、「人間活動の影響で入り込んだ生物」である。人為的、意図的に持ち込まれた生物でなくても、人間活動に随伴して流入した生物も含む。たとえば木材や船などに入り込んだり、付着したりして入り込んだ生物も外来種である。持ち込まれた時代や国境は関係がない。
外来種という用語の指す内容については、国や研究分野によってその定義が微妙に異なり、世界的に統一した見解はない。日本でも外来種のほかに移入種・帰化種といった言葉が混在して使われてきた[9]。例えば行政においては、環境省は「移入種」を、国土交通省は「外来種」を用いてきた経緯があり、いずれも主に日本国外から移入されたものを対象としていた。植物学者は帰化種(とくに帰化植物)という用語を用いている[9]。2000年代からは多くの分野で外来種と呼ぶのが一般的になってきている[4][10]。
国際自然保護連合の定義では、外来種とは「過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種、亜種、あるいはそれ以下の分類群を指し、生存し繁殖することができるあらゆる器官、配偶子、種子、卵、無性的繁殖子を含むもの」とされる[11]。ここで用いられている導入(introduction)という言葉は、「意図しているかどうかは関係なく人為によって直接的・間接的に自然分布域外に移動させること」と定義されており、「移入」や「侵入」といった言葉で置き換えられることもある[11]。そして、外来種が新たな分布域で継続的に子孫を残して生き続けることを定着(establishment)という[12]。
外来種の中でも、移動先で分布拡大したときに、在来種の絶滅につながるおそれがあるなど、とりわけ生態系や人間の生活に大きな影響を及ぼすようなものを、とくに侵略的外来種(invasive alien species)といい[12]、これらは侵入種と呼ばれることもある[13]。(専門用語では、ニューサンス/Nuisance species)と呼ばれることもある。
「種」より下位の「亜種」または「変種」であっても外来種に含められるが、混乱を避けるため外来生物のような用語を用いる場合もある[10]。 外来種という言葉はその語感から外国から持ち込まれた生物というイメージをもたれることが多いが、本来は外国に限定して適用される概念ではない[14]。移入元が国外か、同一国内の他地域であるかによって、国外外来種・国内外来種と区別する[12]。しかし、現実には「侵略的外来種」あるいは環境省が指定した特定外来生物とされている動植物は全て国外外来種であり、国内外来種が「侵略的外来種」や「特定外来生物」と見なされている種は一例も存在しない。
外来種はあくまで人間活動の影響で導入された生物のことであり、生物自らの能力によって移動してきたものは外来種に含まれない[15]。よって、渡り鳥や迷鳥、回遊する水生生物などは問題視されない[16]。
ただし、ガラパゴス諸島で、地球温暖化の影響で近海の藻類が減少したためにウミイグアナが陸上に進出し、リクイグアナと交雑して問題視されている様に、人間の活動による環境の変化によって生物の自発的な移動が起きて問題が生じた例もある。
外来種の定義を考慮すると、ペットや家畜、園芸植物などのほとんどの生物は広義の外来種であり、常に多種多様な外来種が世界中に導入されている。しかし、導入される外来種がすべて定着するわけではなく、実際に野外へ定着して分布を拡大させる生物(いわゆる侵略的外来種)の割合は10種に1種ともいわれている[11]。したがって、多くの外来種は導入されても野生化することができず、野生化したとしても数世代の短い期間で消滅してしまう。
一方で、原産地ではあまり問題を起こさずおとなしかった生物が、侵入先で侵略性を発揮する事態も少なくない[7]。一部の外来種が定着し、問題を引き起こすほど拡散する原因として、新たな侵入地域にはその外来種の特異的な天敵が存在しないがゆえに外来種の成長や繁殖が向上することが考えられており、天敵解放仮説と呼ばれている[5][8]。また、それに関連して、天敵の不在により防御よりも成長などにエネルギーを投資するように進化する傾向が進むというEICA仮説も提唱されている[5]。外来種の定着が別の外来種の侵入や影響を促進・悪化させる可能性も指摘されており、この現象は侵入溶解(invasional meltdown)と呼ばれる[5][17]。
植物においては、高い種子生産性、耐陰性、耐寒性、アレロパシーといった特徴を有する種がとくに侵略的な外来種となりやすいとされている[18]。
一般的に外来種の導入は、人間がなんらかの目的をもって持ち込んだ意図的導入(intentional introduction)と偶発的に侵入してしまった非意図的導入(unintentional introduction)の2つに大きく区分される[12]。
外来種問題に無理解であるがゆえに、自然を回復させるための自然保護活動やビオトープ活動が逆に地域の自然を破壊してしまう場合も見られる。
侵略性の強い外来種が引き起こす問題として、生態系に与える影響、遺伝子の撹乱、第一次産業などへの被害、感染症及びヒトの生命への被害などが挙げられるが、2つ以上にまたがるものも珍しくない。
在来種の動植物を捕食したり、食物や繁殖場所など生息環境を奪うことで競争種などを減少させたりする。いずれの場合も、生態系のバランスを崩し、二次的にも大きな影響を与える可能性がある。
外来種が在来種と交雑することによって在来種の遺伝子が変容することがある。この現象を遺伝子浸透(遺伝子汚染)という[5]。外来種の遺伝子が広範囲に拡散すれば、それまでの遺伝子プール(その個体群が共有する一定の変異幅をもつ遺伝子の総体)の状態を回復することは、事実上不可能となる。固有種・固有亜種に外来遺伝子が流入した場合、長い進化の歴史を経て形成されてきたそれらの種や亜種が消滅することになるため、問題は特に深刻である。
農作物や家畜の品種改良の場合、人為的条件での適応、すなわち人間にとって優れた特性の獲得が、交配により達成され、原種と大きく異なった形態の品種が生み出されることが多い。このような例を踏まえて、遺伝子の攪乱(かくらん)は種としては新たな適応の機会であり、悪い事ではないという意見も見受けられる[37]。しかし、自然環境下の動植物で遺伝子の攪乱が広がった場合、攪乱前の状態に戻すことはできず、交雑種が新たな害を及ぼしたり、生態系全体のバランスに大きな影響を与える恐れもある。
第一次産業に外来種が大きく貢献することがある一方で、農林業や漁業に膨大な被害を与え、数十億円に達する被害額を生じさせる外来種もいる。
従来その地域では見られなかった病原菌や寄生虫が外来種とともに移入された場合、人間や在来種に被害を与える場合がある。
外来種問題は必ずしも対策が順調に進んでいるとはいえず、仮に対策が実行できたとしても望んだ効果をあげられているとは限らない。ある1種類の外来種を駆除したことで別の外来種が増加し、かえって在来の生態系に負の影響を与えることもある(オオクチバスの駆除によるアメリカザリガニの増加、ジャワマングースの駆除によるクマネズミの増加、ノヤギの駆除による外来植物の増加など)[52][53]。
また、外来種をめぐるさまざまな利害関係者と合意形成を図るのは極めて困難であり、ときには激しく対立して大きな論争となることもある。その一例として、オオクチバスを特定外来生物に指定するための会議では、釣魚愛好家・公益法人・釣り業界など・政治家の反対を受け、議論は大きく難航した[26]。結局このオオクチバスに関しては「釣り人の協力を得る必要がある」とする環境省によって、一旦は指定を先送りすることが決定されたものの、環境相の指示によって方針転換した結果、2005年1月31日に決定された第1陣の指定リスト案に記載されることとなった[26]。オオクチバスの場合は駆除対象になったが、侵略的外来種に該当するもののなかでも害獣や害虫などの駆除に役立っている動物に加え、ニジマスのように外来種であっても、人間にとってその存在が好都合であるために駆除の対象から除かれるものは、まだまだ多い。
外来種対策を進めるうえで障害になるものとして、外来種が地域の文化にすっかり浸透してしまっていたり、保護対象になっていたりすることがある。例えば、身近に生き物を増やしたいという善意による魚の放流やホタルの放虫は各地で当たり前のように行われており、マスメディアもしばしば美談として報道することもあるが、こうした生物の放逐は外来種問題となりうる危険性をはらんでいる[54]。そのため、無秩序な放流を防ぐ目的で専門の研究者や学会が中心となってガイドラインが作成されている[55]。野生化で絶滅した生物について他地域から近縁な個体群を導入して復活させる再導入(re-introduction)においても、遺伝的多様性や在来の生態系に対しての配慮が求められている(オオカミの再導入やトキなどを参照)[56]。特異な事例として、分類学上の扱いの変化によって希少種が外来種になってしまうことがある。タンカイザリガニは滋賀県の淡海湖にのみ生息する希少なザリガニとして地域の人々に保護されてきたが、その後の研究で北アメリカ原産のウチダザリガニと同じ種(もしくは亜種)であることが判明した[57]。北海道の固有のヒキガエルとして考えられていたエゾヒキガエルも本州から持ち込まれたニホンヒキガエルであることがわかっている[12]。これらの外来種が生息する地元では、その生物種が外来種であると明らかになった現在でも保護活動を続けている。こうした矛盾した事例はほかにも存在し、例えばケラマジカやカササギは天然記念物に指定されている外来種である。また、自治体の鳥として外来種を指定している地域もある(例:サウスダコタ州のコウライキジ、埼玉県のシラコバト、佐賀県のカササギ)。極端な例では、2010年に山梨県西湖で再発見され大きなニュースとなったクニマスは、秋田県の田沢湖から持ち込まれた個体群に由来するため、事実上、絶滅種から一転して国内外来種となったことになる[5]。
外来種をめぐるさまざまな社会的な利害関係によって生じる課題があるなかでも解決が難しい問題として、たとえ外来種であろうとも生物を殺すという行為は認められないとする倫理的価値観との対立がある。駆除に関わる反対の主張は、おもに殺し方を問題とする動物福祉と、殺すこと自体を問題とする動物の権利の2つに分けられるが、とくに後者の主張者との間では議論が拮抗して解決が全く見えない事態になることもしばしばである[63]。日本でも、アライグマやノネコなどの捕殺駆除を行う活動組織が動物愛護団体などの反対を受け、物議をかもしている。
外来種問題はそもそも生物そのものに対する善悪論ではなく、生物を扱う人間の怠慢と無責任さが論点にあるという指摘もある[10]。外来種によって在来種が悪影響を被る事実があるとしても、問題の発端は人間にあるため、たとえば子供がペットを諸事情から放流することは動物の愛護及び管理に関する法律に違反する可能性があるなど、外来種が「悪」であるのではなく「被害者」でもあるため、人間の責任問題であるという啓蒙が必要である[64]。
外来種問題への根本的な反対意見として、人間が原因であるにもかかわらず外来種全般を「悪」として悪者扱いしたり駆除を煽動する風潮に疑念を示す主張も見受けられる[9][37][65]。外来種によってとくに植生の多様性や森林火災の抑制など在来種が恩恵を受ける事例も存在し、外来種の中には他の外来種の影響を抑制するニッチを占めている種類も存在する場合がある。そのため、すでに在来種と共に新たな生態系を構築しており[66]、強制的な排除をすることによって在来種にも悪影響を及ぼしかねない場合があるとされる[61][67][68][69]。この様な指摘は日本における活動にも該当し、外来種の強行的な駆除による他の外来種の増加の可能性や、外来種の駆除をエンターテイメントとして煽動することの弊害も指摘されている[70]。また、外来種のすべてが帰化するわけではなく実際には死滅する場合が目立ち、在来の植生に恩恵を与えたり、人類によってダメージを受けた生態系の再生に貢献する場合もある[71]。そして、とくに該当するニッチを占める在来種が絶滅していて代替えとなる近縁種も存在しない地域にて、外来種と在来種の生態系における影響度が類似していても外来種の「害」ばかりをクローズアップして懸念材料として印象付けることは「ダブルスタンダード」であるという意見も存在する[72]。
世界各国とくに欧米圏やオセアニアや南アメリカなど、英語やスペイン語などのヨーロッパ系の言語を使う国々では、人類によって絶滅した動物相が生態系から喪われたことで発生する山火事などもふくめた様々な悪影響を抑制し、可能な限り本来の生態系の機能を復元するという目的を持つ「更新世リワイルディング(英語版)」についての議論が盛んである[59][73][74]。
「更新世リワイルディング」のおおまかな主旨は、「第四紀の大量絶滅」を引き起こしてきた人類の影響で絶滅した多くの生物(とくに大型生物)に近縁な現生種の野生導入や、すでに「外来種」として存在する中で絶滅種に近縁であったり類似したニッチを占める生物種の保護の是非などである[60][61][69]。これらの中には既に法的に承認された上で実行されている事例も散見され、たとえばブリテン諸島のヨーロッパバイソン[75]、ロシア連邦・サハ共和国のシンリンバイソン(ロシア語版)、ドナウ・デルタのスイギュウ[76]、ユーラシア大陸(サハ共和国やヨーロッパなど)のジャコウウシ(英語版)、オーストラリア本土のタスマニアデビル[77]の様に、同種または近縁種が数千年~1万2千年以上も前に絶滅している地域への同種や代用種の導入が開始されている事例も見られる。サハ共和国の「プライストシーン・パーク(英語版)」など、「更新世リワイルディング」に焦点を当てたプロジェクトも少なくない。
自然保護が世界的に関心を集め始めた1990年代から、生態系や生物多様性に悪影響を及ぼす存在としての外来種問題が注目されるようになった。
連邦法であるレーシー法(Lacey Act)が外来種の流通を規制しているほか、各州の野生動物法でも外来種を規制して対策にあたっている[4]。
各国の国内法によって外来種対策が義務化されているが、域内自由経済圏であるEUの出現にともない外来種の管理が難しくなっているという側面もある[4]。
2000年以前の日本では、外来種問題に対して以下のような野生動物やペット・家畜などに関係する既存の法律に基づき、各々の法律の範囲内でばらばらに行動しているに過ぎなかった[79]。
これらの法律は生物多様性へのリスクなどを考慮して外来種問題への具体的な対策にあたるには不十分であった。こうした事実上放置に近い状態にあった外来種問題は、2000年代初めににわかに脚光を浴びるようになり、行政・民間の双方で、さまざまな動きが起こり始めた。まず、2000年に環境省の自然環境局に「野生生物保護対策検討会移入種問題分科会」が設置された。1995年に閣議決定した「生物多様性国家戦略」では簡単な扱いにとどまっていた外来種問題も、2002年の「新・生物多様性国家戦略」では外来種による生態系の攪乱を第3の危機として位置付けられた。2003年12月には「移入種対策に関する措置の在り方について(答申)」が中央環境審議会から提出され、外来種を包括的に扱う法律を作ることが求められた。そして、2004年5月27日に特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)が可決・成立、6月2日に公布され、2005年6月から施行された。この法律では「特定外来生物等専門家会合」および「特定外来生物等分類群専門家グループ会合」で専門の学識経験者の参加のもと、特定外来生物と要注意外来生物を指定し、規制と防除に取り組むことができるようになっている[6]。
地方自治体でも外来種対策に取り組んでいる地域がある。北海道では、絶滅の危機に瀕する生物をリストする「レッドリスト」にちなんで、外来種をその危険性をもとに区分した「ブルーリスト」を作成している[80]。滋賀県では、「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」によって「指定外来種」を規定して、飼育の届け出義務や放逐の禁止を課している[81]。
また、2008年度に文部科学省が示した中学校理科の学習指導要領に於いて、初めて外来種に関する文言が盛り込まれるようになり、外来種問題が学校教育に取り上げられ始めている[82]。
外来種によって深刻な環境破壊が発生しているニュージーランドは、外来種規制が世界でも最も厳しい国として知られる[4]。まず、生物安全保障法(Biosecurity Act)に基づき不要生物(unwanted organism)を指定し、輸入・流通(国内を含む)・放出がすべて禁止される[4]。さらに、危険及び新生物法(Hazardous Substances and New Organism Act)により、専門の委員会によって承認されなければ、外来種は一切の輸入・所持・放出ができない[4]。これは、アメリカのレイシー法や日本の外来生物法のようなブラックリスト方式とは異なり、ホワイトリスト方式という非常に厳しい制限である[83]。そのため、国内の空港では厳しい検疫を受けることになる[83]。
生物多様性条約の第8条h項に「各々の締約国は、生態系、生息地、若しくは種を脅かす外来種の導入を阻止し、又はそのような外来種を制御し、若しくは撲滅すること」と明記されていることからもわかるように、生物多様性を脅かす外来種問題の解決は人間の、そして国の責務になっている[12]。
「外来侵入種によってひきおこされる生物多様性減少防止のためのIUCNガイドライン」によれば、外来種の導入の阻止は最も費用対効果の高い対策であり、外来種の導入によるリスクを最大限考慮するべきという予防原則を提示している[12]。したがって、外来種の輸入や利用を規制し、水際で導入を阻止することが何よりも重要視される。環境省は「(外来種を)入れない、捨てない、拡げない」の外来生物被害予防三原則の実践を一般に呼びかけている[84]。
外来種の導入を未然に防ぐことができず、定着してしまった場合は、外来種をその生態系から完全に取り除く根絶(eradication)と、外来種個体群をその悪影響が問題にならないレベルの密度に抑える管理(control)の2つの方策が検討される[52]。IUCNガイドラインでは、根絶は最良の管理手段であり、とくに定着初期の段階では効果が高いとしている[12]。
根絶や管理のための具体的な手法として、銃やわな、天敵導入、毒物の利用による捕獲・駆除、柵などの移動制限が挙げられる。オーストラリアでは、外来種のウサギを駆除するため、致死性の粘液腫ウイルスの導入が行われたことがあるが、ウサギの耐性獲得とウイルスの弱毒化変異により失敗した。
一度定着した侵略的な外来種を根絶することは非常に難しいが、面積の狭い地域では根絶に成功した事例がいくつかある。日本では南西諸島の島々に拡大したウリミバエに対して20年以上の歳月をかけて不妊虫放飼法と駆除を併用することで根絶を達成した[85]。また、1999年から開始した小笠原の聟島列島の聟島、媒島、嫁島に生息するノヤギの排除事業は、柵への追い込みと射殺により2002年までに完全な排除に成功し、ほかの近隣の島々でも進められている[86]。外来海洋生物の根絶事例は、世界でもオーストラリアの閉鎖的な港(マリーナ)におけるイガイダマシの駆除の一例のみである[31]。
外来種の駆除の新たなやり方として、食べることで駆除する「食べて駆除」が行われるようになった。ブラックバス[87]、カミツキガメ[88][89][87]、他にも対象はウチダザリガニ(シグナルクレイフィッシュ、レイクロブスター)、アメリカザリガニ[90][91][92][87]、クビアカツヤカミキリ[93]、ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)など[94]。
以下は、日本国内に実際に導入されて定着している外来種の一部のリストである。
日本では日本国外の動植物が外来種として意識されるが、日本国外では逆に日本産の動植物が外来種として問題となっている事例もある。外来種として日本から海外に侵出して定着した日本産の動植物のうち、生態系や第一次産業に大きな影響を及ぼしている生物を以下に挙げる(カッコ内は大きな影響の出ている地域)。
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