ヨーロッパバイソン

哺乳綱ウシ目(偶蹄目)ウシ科バイソン属に分類される偶蹄類 ウィキペディアから

ヨーロッパバイソン

ヨーロッパバイソンBison bonasus)は、哺乳綱ウシ目(偶蹄目)ウシ科バイソン属に分類される偶蹄類。生息地であるヨーロッパで「ヴィーゼント」 または「ウィーセント」([ˈvzənt][ˈwzənt])、ポーランドベラルーシでは「ジュブル」または「ズーブル」(pl:Żubr)と呼ばれる[1][2]

概要 ヨーロッパバイソン, 保全状況評価 ...
ヨーロッパバイソン
ヨーロッパバイソン
ヨーロッパバイソン Bison bonasus
保全状況評価[a 1]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ウシ目 Artiodactyla
亜目 : ウシ亜目 Ruminantia
: ウシ科 Bovidae
亜科 : ウシ亜科 Bovinae
: バイソン属 Bison
: ヨーロッパバイソン B. bonasus
学名
Bison bonasus (Linnaeus, 1758)
和名
ヨーロッパバイソン
英名
Wisent
European bison
過去の分布
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分類

コーカサスバイソンの復元を目指して野生に放たれたアメリカバイソンとのハイブリッドを新亜種 Bison bonasus montanusポーランド語版)とするべきだという意見もある[3]。また、家畜のウシとの交配個体は「ズブロン(Żubroń)」と呼ばれる。


分布

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チェルノブイリ立入禁止区域には、ヨーロッパバイソンの他にモウコノウマも原発事故後に保護目的で野生導入されている。

野生個体は絶滅しており、純粋種がポーランドベラルーシの国境地帯にまたがるビャウォヴィエジャの森に、基亜種がカフカース山脈などに再導入されている[4][5][6]

以前はヨーロッパ西部からレナ川以西やバイカル湖沿岸まで分布していた[4][6][7]

近年はヨーロッパアジアロシアの各地にて野生導入が行われており、中にはチェルノブイリ原子力発電所事故で被災して人間の社会活動が基本的に消失して野生動物の生息に適するようになったチェルノブイリ立入禁止区域も含まれている[8]

2022年にはイギリスにて、2024年にはポルトガルにも導入が開始され、ブリテン諸島イベリア半島の生態系にバイソン属およそ6,000-10,000年ぶりに復帰した。ヨーロッパバイソン自体がブリテン諸島やイベリア半島やイタリア半島に生息していた「証拠」は見つかっておらず、現状ではステップバイソンBison schoetensacki の代用という形であったが[9][10]、ヨーロッパバイソンと別種のバイソン属の雑種の可能性のある個体の記録がイタリア北部から発見されており[11]、2025年にはヨーロッパバイソン自体もイベリア半島に生息していたことを示すDNA上の証拠が発見されたと発表された[12]

形態

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アメリカバイソンよりも脚が長く、背部や腰のくびれが目立つ体型をしており、アメリカバイソンよりも木の葉などを食べる傾向が強いために首もより上向きになっている[13]

体長オス250-350センチメートル、メス220-280センチメートル[6]。尾長オス50-110センチメートル、メス45-100センチメートル[6]。肩高オス150-190センチメートル、メス140-170センチメートル[6]体重オス650-1,350キログラム(記録上の最大は1,900キログラム[14])、メス430-700キログラム[6]。上半身の体毛が短く[6]、外観から耳介が見える[4]

角はやや細長い[4]。角の先端は内側に向かう[6]。四肢は長い[4][6]。シンリンバイソン[注 1]の方がヨーロッパバイソンやヘイゲンバイソンよりも祖先のステップバイソンにより近い体躯をしている[15][16][17]

なお、ヨーロッパバイソンの方が平均して脚部が長いが、同年代の個体を比較した際にはヨーロッパバイソンの体高はヘイゲンバイソンと似た数値を持ち、同年代同士の比較では体長は全体的にアメリカバイソンの方が大きくなる[18]が、ヨーロッパバイソンの最大級の個体もシンリンバイソンの大型個体に匹敵する体高と体長を持ち、体高は210センチメートルに達するとする記録もある[14]

生態

開けた森林ステップに生息する[6]。メスと幼獣からなる小規模な群れを形成して生活するが[6]、大規模な群れを形成することもある[4]。オスは単独で生活するか[6]、若いオスのみで群れを形成する[4]

食性は植物食で、主に木の葉や樹皮を食べるが、芽、果実、地衣類、キノコなども食べる[4][6]

繁殖形態は胎生。7-9月に交尾を行う[4][6]。妊娠期間は254-272日[5]。4-6月に1回に1頭の幼獣を産む[4]。授乳期間は7-12か月[6]。生後2-4年で性成熟し、寿命は40年と考えられている[6]

アメリカバイソンよりも走る速度は遅く持久力も劣るが、助走無しの状態から幅3mをジャンプし高さ2mの障害物を跳び越える等ジャンプ力では上回るとされる[19]

人間との関係

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19世紀末に撮影されたとされる成体のコーカサスバイソン

開発による生息地の破壊、食用の乱獲、家畜との交雑などにより生息数は激減した[4][6]。20世紀までにベラルーシとポーランドの国境付近の世界遺産ビャウォヴィエジャの森とカフカース山脈の個体群を除いて絶滅した[6]。さらに1919年にビャウォヴィエジャの個体群が、1925年にカフカース山脈の個体群が絶滅したことにより野生個体は絶滅したとされる[5][6]。ロシア皇帝が各地の動物園に贈った個体に由来する個体の再導入が、主にヨーロッパ東部や旧ソビエト連邦領の地域で進められている[4][6]。ビャウォヴィエジャでの1945年における生息数は12頭、1962年における生息数は40頭と推定されている[4]。現在は世界で約4000頭、そのうち25パーセントがポーランド領内に生息する[1]。各国で保護・繁殖・野生化などが行われている[20]

ビャウォヴィエジャの森でとれるバイソングラスを使ったズブロッカのラベルには、ヨーロッパバイソンが描かれている[1]

脚注

外部リンク

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