立正佼成会(りっしょうこうせいかい)は、日本の仏教系新宗教およびそれを信仰する宗教団体(宗教法人)。霊友会から派生した日蓮系・法華系の宗教。文化庁『宗教年鑑 令和5年版』における信者数は、1,985,809人[1]。宗教学者の島田裕巳は、大阪商業大学の調査をもとに信者数を20万人と推定している[2]。
- 本尊
- 久遠実成大恩教主釈迦牟尼世尊(立像または立画を表装したもの)
- 経典
- 開結「法華三部経」(訓読)(無量義経・妙法蓮華経・仏説観普賢菩薩行法経)
- 主な教義書
- 「新釈 法華三部経」「法華経の新しい解釈」「仏教の根本義」「仏教のいのち法華経」
西田無学が提唱した、在家が法華経によって先祖供養を行うという点では霊友会と同じである。ただ、法華経の一乗思想と根本仏教の融合が特徴と言える[3]。人間の内面の修養を行いつつ、自他共に救われる修行を推奨(教団では「心田を耕す」と呼ぶ)している。また、リーダーを中心に生活や信仰の悩みを互いに語り合う「法座」という活動も特徴である[4]。
- 立正佼成会は中心団体として[7]、崇教真光、PL教団などと、創価学会とライバル関係にある新興宗教の団体「新日本宗教団体連合会」(新宗連)を1951年に組織し、同組織は当初から政治家の靖国神社参拝に反対する姿勢をとっている[8][9]。歴代最長の新宗連会長である二代目会長(1965年11月7日-1992年)が立正佼成会創設者である庭野日敬(立正佼成会初代会長)、5代目会長(2004-2008年)を立正佼成会会長の庭野日鑛(立正佼成会第2代会長)が務めている[8]。
- 翌15日の靖国神社に集う政治的保守派への牽制で、毎年8月14日の千鳥ヶ淵で新日本宗教団体連合会の関係組織主催で大集会を行っている。2019年8月14日の大集会へ大島理森衆議院議長や枝野幸男立憲民主党代表、福島瑞穂社会民主党副党首といった大物政治家たちが参加し、「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」の大合唱が行われた[9]。
- 政治的には設立当初は自民党を中心に旧新自由クラブや民社党といった政党の中で特定の候補者を「推薦」を出して支援していた。立正佼成会創設者である庭野日敬が新宗連会長である期間に、参議院の全国区選挙では新宗連の事務局長の楠正俊(1965年7月7日-1983年)を組織内候補として当選させてきた。選挙法が改正による参議院選挙での全国区廃止・比例区導入以降は山岡賢次(1983年-1993年。後に栃木県の選挙区の衆議院議員として当選)を新宗連は支援・当選させている[10][11][12]。立正佼成会も新日本宗教団体連合会も、創価学会を母体とする公明党と自民党が連立政権を樹立する1999年の小渕内閣 (第2次改造)以前から政治家の靖国神社参拝へ反対の立場や改憲反対を表明してきたものの[8][13]、1998年の参院選では民主党候補者での推薦候補がおらず、自民党候補者中50人に推薦を出していた[13]。しかし、公明党との連立と改憲を目指す自民への反発から2007年参議院選挙では自民3人、民主31人に推薦候補数が逆転している[13]。
- 2007年の参議院選挙において、風間直樹(参議院比例区。立正佼成会の組織内候補)、金子恵美(福島県選挙区)を含む民主党公認候補者計31人を推薦している[13]。創価学会との敵対関係から、2008年8月時点で小沢一郎民主党代表(2006-2009年)による号令で民主党が公明党・創価学会攻撃に力を入れ始めたことで、立正佼成会が民主党候補の応援に回るケースが目立っている[14]。立正佼成会が中心団体である新宗連[7]は、2019年時点でも政権の主張の逆を張るかのように改憲や政治家の靖国神社参拝に反対している[9]。
公明党との対立による民主党との緊密化
- 2001年の参院選では民主党の佐藤道夫(当選)を支援した他、新党・自由と希望を結党して立候補した白川勝彦(元:自民党衆議院議員・自治大臣)も支援したものの落選した。2004年の参院選では民主党から比例区で立候補した藤末健三を支援し、当選後も機関紙に定期的に投稿するなど関係を強めている。他に、韓国の朝鮮日報日本支社の前社長である白眞勲も同時に推薦を受けて同年の参院選に立候補・当選した[15]。ただし、立正佼成会の福島県内の会員は6万8000世帯とされていたが、2004年の参院選で立正佼成会推薦の民主党の比例区候補が県内で獲得したのは1万票余りだったため、佼成会幹部は福島県内の選挙結果について、「散々な結果だった」と振り返っている[13]。
- 2004年3月22日に女性タレントの蓮舫(当時36歳)は民主党本部で菅直人代表と同席で記者会見し、現職の小川敏夫に続く2人目の参院選東京都選挙区(改選数4)民主党公認候補として立候補表明し、立正佼成会の支援を受ける予定である。立正佼成会は蓮舫以外にも民主党の比例代表公認候補2人も推薦する予定であり、民主党との関係は一層緊密化した[16]。
- 2005年の衆院選では信者の自由投票となり、民主党への支援へと移行した。2007年の参院選ではいずれも民主党の風間直樹・大島九州男を支援した一方、自民党から立候補した元外務大臣の川口順子を支援し、3名とも当選した。
- 2009年の衆院選では「反創価学会」を旗印に結束した「新日本宗教団体連合会」(新宗連)として、当時の民主党を支持して政権交代の原動力になった[17]。
- 2010年の参院選では民主党の藤末・白両議員を再選させた。2013年の参院選では民主党の党勢退潮から立正佼成会は支援を大島九州男に絞る(風間は新潟県選挙区に転出)。一方で、立正佼成会の支援を受けていたが引退する川口順子の後継として、自民党は若狭勝を支援したが落選した。立正佼成会支援候補の当選は大島1人にとどまった。
- 民主党が維新の党と合併し、2016年に民進党と改名後も引き続き民進党を支援。党勢がやや回復したことから2016年の参院選藤末・白両議員を比例区で出馬させ、2人合わせて約28万票でどちらも3選させた[18]。
- 民進党が希望の党との統一会派結成構想がなされた際、風間は離党し立憲民主党に参加。その理由の一つに支援を受けている立正佼成会の意向も踏まえたものである事を明らかにしている[19]。2018年5月、民進党と希望の党が合併し国民民主党が結成された際、白は民進党から離党し立憲民主党に参加した、が大島は党に残留するなど組織内議員の対応が分かれた。
- 2017年に行われた第48回衆議院議員総選挙においては、立正佼成会の推薦と当選数は希望の党73人(同31)、立憲民主党48(36)、自民33(当選33)、維新1(同0)、社会民主党1(同0)、無所属27(同19)の183人推薦し、119人の候補が当選した[20]。
- 2019年7月に行われた第25回参議院議員通常選挙においては、立憲民主党11人(同5人)、自民党8人(当選8人)、国民民主党8人(同3人)、無所属9人(同7人)の候補を推薦し、推薦36人中23人の候補が当選した[21]。2019年9月には「立正佼成会小倉教会発足60周年記念式典」に立憲民主党の城井崇衆議院議員(福岡10区)が出席している[22]。
- 2022年の第26回参議院議員選挙では、立憲民主党を支援している。例として、北海道で4月23日に立正佼成会が北海道支教区内の立憲民主党議員との懇談会開催した際に、徳永エリ(北海道選挙区)は「今日(4/23)は立正佼成会の皆さんが立憲民主党の議員との懇談会を開いて下さいました。白 真勲先輩とともに頑張ってまいります。」とブログに投稿している[23]。後にブログ記事が削除されたものの、5月13日には「立正佼成会の苫小牧教会でご挨拶と意見交換」と投稿で徳永は「東京から新千歳空港に到着して、まっすぐ伺ったのは立正佼成会の苫小牧教会。」「室蘭教会長さんをはじめ、苫小牧教会長さん他、幹部の皆さんがお忙しい中お集まり下さり、ご挨拶と意見交換の場を作って下さいました。」と述べている[24]。他の関わりのある立憲民主党議員には、全国比例で白眞勲議員、森裕子議員(新潟県選挙区)、杉尾秀哉議員(長野県選挙区)などを支援している[25][26]。なおこの選挙で自民党から出馬した藤末健三、立憲民主党から出馬した白真勲の両議員は落選し、2019年の参議院議員通常選挙で不出馬となった風間直樹、国民民主党から出馬し落選した大島九州男と合わせて、組織内議員は0となった。
- かつて創価学会と立正佼成会の信者獲得活動に対して、様々な行過ぎや人権侵害等、公共の福祉に反するという訴えが各方面より度々なされた(創価学会の折伏大行進による数多のトラブル、佼成会による霊能指導は、多くの問題を生むこととなった)。昭和20年代後半から40年代初頭に掛けて創価学会と立正佼成会間での非難合戦は熾烈を極めた。こうした動向が国会でも取り上げられる問題となり、衆議院の法務委員会の調査結果に基き、1956年6月3日、不当な宗教活動に対して警告を発する「不正なる宗教活動に対する決議」が満場一致でなされた[27]。
- 1956年(昭和31年)教勢の急激な拡大による、佼成学園をはじめとする教団本部関連施設の建設用地取得に絡む不正取引などに始まる読売新聞の報道等によって、教団幹部を含む会員延べおよそ7万人の大量退会騒動が起きた。 また、霊能指導を行っていた長沼に対して「長沼教祖・庭野会長待望論」・「長沼新教団独立論」が水面下で一部の教団幹部より発せられ騒動になる(いわゆる「連判状事件」)。教団は、「第一の階梯」「第二の階梯」「第三の階梯」として、教団と会員同士の結束強化と教義の明確化・充実を図り、布教活動と機構の改革を行った。青年部内に「報道事実調査委員会」という内部組織を立ち上げ、読売新聞の報道を精査すると共に、会員の勧誘方法や運営に当たっての諸問題点を会長・教団に提言した(翌1957年〔昭32年〕9月10日に長沼副会長は死去する)。
- 「一食を捧げる運動」、「ユニセフ街頭募金」、「アフリカに毛布を送る運動」など教団の社会奉仕活動(または官民合同の慈善事業)と、各教会単位で行われる地域の清掃奉仕、施設慰問、障害者施設の奉仕活動などが活発に行われている。また、毎年5月の第3日曜日を「青年の日」とし、全国の青年部員が各教会単位で上記活動に加え、この日の正午に「平和の祈り」という黙祷を捧げている。また、「青年教育課程」となる仏教や佼成会の教えを学ぶ勉強会を行っている。
- 新宗連(新日本宗教団体連合会)や日宗連(日本宗教連盟)などを通じた他宗派や他宗教団体との協調・連携活動が活発である。WCRP(世界宗教者平和会議)においては、後方支援を行っている。日蓮宗[注釈 3]、神社本庁、天台宗、PL教団、善隣教、妙智会教団、ローマ教皇庁[注釈 4]などとの交流も盛んで、一部の日蓮・法華系の新宗教(創価学会、冨士大石寺顕正会など)に比べて、共調的な立場を取っている。
- アメリカ合衆国、ブラジル、台湾、韓国、香港、オーストラリア、シンガポール、ロシア、スイス、イギリス、タイ、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、インドに同会の拠点がある。ここ数年は東南アジア地域において教勢の伸出が盛んである。
- 信者の高齢化や左派系野党との協調を嫌った保守系会員の退会もあり、令和元年から令和4年までの4年間で約13%、会員数を減らしている[28]。普門館の取り壊し、佼成看護専門学校の閉校、東京佼成ウインドオーケストラの事業継続断念による一般社団法人化での独立。佼成霊園の運営移管。佼成病院の事業譲渡など財政面で大変厳しい運営が続いている。
法輪閣
大聖堂内部。奥の像が本尊
京都教会、地方教会例、京都市東山区
本部の施設
全国5ヶ所に本部直轄の施設がある。
- 東京・杉並
- 大聖堂
- 一乗宝塔
- 法輪閣
- 開祖記念館
- 発祥の地
- 第二団参会館
- 事務庁舎
- 東京・青梅
- 新潟・十日町(菅沼)
- 東京・東大和
- 長野・安曇野
文化団体、施設・教育機関
- 佼成カウンセリング研究所(こころの悩みの無料相談)
- 教育者教育研究所
- 家庭教育研究所
- 佼成武徳会(剣道を通して心身の鍛練と人間教育)
- 佼成学林(法華経精神に基づく人材育成を行い、当会職員や他方教育機関等の幹部候補を養成している)
- 芳澍女学院情報国際専門学校
- 佼成育子園(保育・幼稚園)
- 佼成学園中学校・高等学校(男子校)
- 佼成学園女子中学校・高等学校
- 府中佼成幼稚園
- 佼成図書文書館(1993年TBS金曜ドラマ「高校教師」で二宮繭と教師の羽村が図書館で鬼ごっこをするシーンのロケ地である)
- 立正佼成会附属佼成霊園
- 中央学術研究所
- 庭野平和財団(宗教的精神を基盤とした平和のための思想・文化・科学・教育等の研究と諸活動、また世界平和の実現と人類文化の高揚に寄与する研究と諸活動への助成)
※1960年代には硬式野球部が存在し、都市対抗野球大会2回、日本産業対抗野球大会5回の出場を果たし、NPB入りした選手も多かったが、1967年限りで活動を休止した。
※ よく間違われるが立正大学、東京立正中学校・高等学校・短期大学は、日蓮宗の宗門大学とその付属校であり、立正佼成会とは無関係である。
保険・その他マネジメント事業体
- 立花産業
- 佼成ライフプラン(葬祭業・保養施設、有料老人ホーム、通所および訪問介護施設などの管理運営)
注釈
初代会長は村山日襄、副会長は石原叔太郎(ともに国柱会の出身)であったが、実質の会の運営・指導は庭野・長沼のコンビで運営されていた
主に法華経読経による先祖供養・九星による方位学や五大真理による姓名鑑定・媒体者などによる霊能指導を行っていた
1963年には、核兵器禁止宗教者平和使節団の一員として庭野開祖会長が訪欧、時のローマ教皇パウロ6世と謁見するなど、仏教の枠組みを超え他の宗教とも積極的に交流を重ねた
出典
“組織”. 公益財団法人 新日本宗教団体連合会. 2022年7月24日閲覧。
“杉尾ひでや事務所”. www.facebook.com. 2022年7月25日閲覧。
ウィキメディア・コモンズには、
立正佼成会に関連するカテゴリがあります。